IPO(新規公開株式)の買い方完全ガイド|2026年の公募割れと初値売りも解説

遠藤 悠市

日本投資機構株式会社 アナリスト

IPO(新規公開株式)の買い方完全ガイド|2026年の公募割れと初値売りも解説

IPO株は、上場前の公開価格で買える可能性がある一方、通常の株式のように好きな時間に注文すれば買えるわけではありません。証券会社で需要申告を行い、抽選に当選したあと、期限内に購入申込まで済ませて初めて取得できます。

2026年は年初から7社連続で初値が公開価格を下回り、「IPOなら勝ちやすい」とは言えない相場になりました。この記事では、IPO株の買い方を申込前の準備から上場日の売却まで順番に解説し、公募割れを避けるために見る数字も紹介します。

目次

IPO株は上場前の抽選と上場後の市場売買で買い方が異なる

IPO株は上場前の抽選と上場後の市場売買で買い方が異なる

IPOとは、非上場企業が証券取引所へ株式を新規上場し、一般の投資家が売買できる状態にする手続きです。企業は新株の発行や既存株主による売出しを通じて株式を投資家へ配分し、上場後は市場で自由に売買されます。企業側の目的と投資家側の買い方は分けて考えます。

同じIPO株でも、公開価格で取得する方法と初値がついた後に買う方法では、購入手順も負うリスクも別物です。まずは「どの段階で買うのか」を分けると、IPOの仕組みが分かりやすくなります。

公開価格で買うにはブックビルディングへの参加が必要

上場前のIPO株を公開価格で買うには、幹事証券会社が受け付けるブックビルディングへ申し込みます。ブックビルディングは、投資家が希望する価格と株数を申告し、需要を集計する手続きです。申告しただけでは購入できず、抽選または証券会社の配分を受ける必要があります。

当選後も購入申込の期限が設けられており、意思表示を忘れると当選は無効になります。需要申告、抽選結果の確認、購入申込の3段階を予定表へ登録しておくと、手続き漏れを防げます。

上場後の購入は抽選不要だが初値天井のリスクがある

抽選に外れても、上場して初値がついた後なら通常の現物株と同じように市場で購入できます。これがIPOのセカンダリー投資です。証券会社の取扱銘柄であれば抽選は不要ですが、公開価格より大きく上昇した初値をそのまま追いかけると、高値で買う危険があります。

公開価格で買った投資家や既存株主が売り始めるため、上場直後は値動きが荒くなりがちです。公開価格での取得と初値後の購入を同じ「IPO投資」として扱わず、セカンダリーでは業績と時価総額を改めて調べます。

IPO株の買い方を口座開設から購入申込まで4段階で解説

IPO株の買い方を口座開設から購入申込まで4段階で解説

IPO株の購入は、証券口座を開き、ブックビルディングへ申し込み、抽選結果を確認し、購入申込を完了する流れです。証券会社によって入金の期限や抽選の順番は異なりますが、必要な作業そのものは大きく変わりません。

最も多い失敗は、ブックビルディングだけで手続きが終わったと思い、当選後の購入申込を忘れるケースです。申し込みたい銘柄を見つけたら、上場日だけでなく需要申告、価格決定、抽選、購入申込の各期限を確認します。

1.上場予定と幹事証券を確認して口座を準備する

最初に日本取引所グループや証券会社のIPO予定表から、上場日、仮条件の決定日、ブックビルディング期間、購入申込期間を確認します。IPOはすべての証券会社で扱うわけではなく、銘柄ごとに主幹事と幹事証券が決まっています。

口座開設には数日以上かかる場合があるため、ブックビルディング開始後に動くと間に合わない可能性があります。IPOの承認発表後、取扱証券会社が判明した段階で口座を用意し、電子交付書面の受取設定まで済ませておきます。

2.仮条件と必要資金を確認して需要申告を行う

ブックビルディングでは、仮条件の範囲内で希望価格と申込株数を入力します。100株単位の銘柄なら、仮条件上限が1,500円の場合、100株で15万円が必要です。証券会社によっては、抽選時までに申込金額以上の買付余力を求めます。

公開価格が申告価格を上回ると抽選対象外になる場合があるため、購入意思があるなら仮条件の上限かストライクプライスで申し込むのが一般的です。ただし、上限で申し込む行為は「その価格なら割安」という意味ではありません。

3.当選・補欠当選を確認して購入意思を表示する

公開価格が決まると、証券会社ごとに抽選または配分が行われます。結果は当選、補欠当選、落選などで表示されます。当選した場合は、目論見書と訂正目論見書を確認し、購入申込期間中に購入意思を表示します。

当選表示だけでは株式の取得が確定しない証券会社もあります。補欠当選も自動購入とは限らず、繰上当選を希望するなら期限内の申込が必要です。購入代金の入金時期も同時に確認してください。辞退時の扱いも証券会社ごとに異なります。

4.上場日までに売却方針と指値を決める

購入が確定したら、上場前に初値で売るのか、決算を見ながら保有するのかを決めます。上場直前の地合い悪化で初値予想が変わる場合もあるため、公開価格と気配だけでなく、同時期に上場する銘柄数やグロース市場の値動きも確認します。

新規上場日の初値が決まるまでは成行注文を出せないため、初値売りには指値注文が必要です。注文受付の開始時刻は証券会社ごとに異なります。上場日前営業日または上場日早朝に注文画面を開き、受付状況を確認します。

2026年は22社中9社が公募割れ|IPOなら上がるとは限らない

2026年は22社中9社が公募割れとなったIPO市場

IPOは公開価格に割安さを持たせて値付けされる場合があり、公開価格を上回る初値がつく年も少なくありません。しかし、初値は企業の業績だけでなく、公開株数、既存株主の売出し、上場時の相場、投資家の人気で大きく変わります。過去の高勝率をそのまま当てはめられません。

2026年は「当選したら初値で売れば利益」という説明が通用しない結果が続きました。買い方を覚えるだけでなく、申し込まない銘柄を選ぶ力も必要です。

8月4日までの通常IPOは13社上昇・9社公募割れ

2026年8月4日までに東証へ上場した通常IPOを集計すると、公開価格を上回ったのは22社中13社、下回ったのは9社でした。年初はTOブックスからビタブリッドジャパンまで7社連続で公募割れとなり、その後は回復したものの、初値上昇率は銘柄によって大きく割れています。

直近ではチャットプラスが公開価格の2倍を超えた一方、ティアフォーは公開価格を約7%下回りました。人気テーマだけで決めず、公開規模や赤字額まで比べなければ、同じ年のIPOでも結果は正反対になります。

上場日企業名公開価格初値騰落率
2026/6/16GO(581A)2,400円2,910円+21.3%
2026/6/23LiNKX(584A)790円1,075円+36.1%
2026/6/30ネイス(589A)1,320円1,476円+11.8%
2026/7/15チャットプラス(598A)1,080円2,284円+111.5%
2026/7/22ティアフォー(593A)1,085円1,009円-7.0%
2026/7/29ビーエイブル(604A)700円1,016円+45.1%
2026/7/29アイ・グリッド・ソリューションズ(603A)770円953円+23.8%
2026/8/4エブリー(607A)230円294円+27.8%

出所:日本取引所グループ「新規上場会社情報」SBIネオトレード証券「2026年IPOデータ」東京IPO「IPO・上場スケジュール一覧」をもとに作成

公募で当選した人と初値で買った人では勝率が違う

「IPOは上がりやすい」という説明の多くは、公開価格で取得し、初値で売った場合の成績です。抽選に外れた人が初値で買う場合、すでに人気を反映した価格から投資を始めます。公開価格から初値までの上昇率を、初値で買う人の期待利益として使ってはいけません。

初値が公開価格の2倍になった銘柄ほど、上場直後の時価総額も大きく膨らみます。その後の決算が高い期待に届かなければ、業績が伸びていても株価は下がります。公募投資とセカンダリー投資は、入口の価格を分けて評価します。

初値で買った後は7割超が値下がりした集計もある

楽天証券が2024年から2026年7月15日までのIPOを調べた集計では、2026年7月17日時点の株価が初値を上回っていた銘柄は3割未満でした。反対に見れば、7割超は初値で買って保有した投資家が含み損になる水準です。

上場時期が違う銘柄を同じ日に比べた集計なので、保有期間には差があります。それでも「話題のIPOを初値で買い、そのまま持てば成長を取れる」とは限らない実態が分かります。初値後に買うなら、上場前の人気より次の決算を優先します。

参考:楽天証券「IPO投資は『ゴールデンチケット』のはずが…実は7割超が負けている!?」

当選確率は主幹事・抽選配分・資金の3点で変わる

IPO株の当選確率を左右する主幹事と抽選配分

IPOの取扱株数は証券会社ごとに異なり、同じ銘柄へ申し込んでも当選しやすさは同じではありません。主幹事には多くの株式が割り当てられる傾向があり、各社はその中から個人投資家向けの抽選分や裁量配分を決めます。申込口数だけでは比べられません。

口座数だけを増やすより、主幹事へ優先的に申し込み、各社の抽選対象になる資金を期限までに置く方が先です。証券会社のルールは変更されるため、銘柄ごとの申込画面と公式案内を確認します。

主幹事証券から申し込むと抽選対象の株数が多い

主幹事証券は、発行企業と上場準備を進め、公開価格の決定や株式の販売を中心となって担います。一般に引受株数も多く、平幹事より個人向けに回る株数が多くなりやすいため、1社だけ選ぶなら主幹事を優先するのが基本です。

ただし、主幹事でも申込者が多ければ当選確率は下がります。平幹事の配分が少なくても、申込者数も少なければ当選する余地は残ります。主幹事を軸にしつつ、資金と管理の手間が許す範囲で幹事証券にも申し込みます。

全株が平等抽選ではなく証券会社ごとに配分方法が違う

日本証券業協会のルールでは、証券会社が個人顧客へ配分する予定数量の10%以上を抽選に回します。裏を返せば、すべての株式が1人1票の完全抽選になるわけではありません。取引実績、預かり資産、抽選ポイントなどを使う証券会社もあります。

「IPOは誰でも機関投資家と同じ条件で平等に当たる」という説明は正確ではありません。資金量に左右されにくい抽選を望むなら、オンライン抽選分の割合と1人あたりの抽選口数を公式サイトで確認します。

複数口座は抽選機会を増やすが当選率は単純加算できない

複数の幹事証券へ申し込めば抽選機会は増えます。ただし、各社の配分株数と申込者数が違うため、「1社で1%なら10社で10%」とは計算できません。同じ資金を使い回せるかどうかも、前受金や買付余力を確認する時刻によって変わります。

SBI証券のIPOチャレンジポイントも、投入すれば必ず当選する制度ではありません。落選時にポイントが戻る条件や、銘柄ごとの配分数を確認し、利益が見込めるという理由だけで大量投入しない方が安全です。

初値売りは成行注文ではなく指値注文で行う

IPO株の初値売りは指値注文で行う

初値売りとは、公開価格で取得したIPO株へ上場前から売り注文を出し、最初に成立する価格で売却する方法です。上場後の値上がりを取り逃す可能性はありますが、保有期間を短くし、上場直後の急落に巻き込まれる時間を減らせます。

東証は2023年6月26日から、新規上場日の初値決定前に成行の売買注文を禁止しています。古い解説にある「上場日の朝に成行売り」は現在使えないため、証券会社の受付範囲内で指値を入力します。

初値で売りたい場合は約定可能な低い指値を入れる

初値での売却を優先するなら、初値が下がった場合でも注文が残るように、公開価格より低い売り指値を入れます。実際の初値が指値より高く決まれば、指値の安い価格ではなく、売りと買いが均衡した初値で約定します。

注文できる価格の下限や受付開始時刻は銘柄と証券会社で異なるため、具体的な指値は注文画面の範囲に従ってください。初日に初値がつかなければ、注文の有効期限と翌営業日の規制を再確認します。

出所:日本取引所グループ「新規上場日の売買における成行呼値の禁止について」

公募割れしたら保有ではなく購入前の基準で売却を決める

初値が公開価格を下回ったときに「損を確定したくないから保有する」と決めるのは危険です。公募割れには、赤字、割高な公開価格、大きな売出規模、相場悪化などの理由があります。下がった事実だけで割安になったとは言えません。

長期保有を選ぶなら、上場前から売上成長率、黒字化の時期、資金使途、想定時価総額を調べておきます。初値売りか保有かは損益を見て変えるのではなく、購入前に決めた企業価値と保有期限に沿って決めます。

IPOへ申し込む前に業績・公開規模・既存株主を確認する

IPOへ申し込む前に業績と公開規模を確認する

IPOの抽選は無料で参加できる場合が多くても、当選後に購入すれば元本割れのリスクを負います。目論見書には、売上高と利益、調達資金の使い道、既存株主、売出株数、ロックアップなど、初値を左右する情報が載っています。数字は目論見書で確認できます。

当選確率を上げる工夫より先に、公開価格で本当に買いたい企業かを調べます。見送れば損失は出ません。IPOの件数が少ない年でも、申し込める全銘柄へ参加する必要はありません。

赤字額と調達資金の使い道から成長の持続性を見る

赤字企業のIPOでは、売上高の伸びだけでなく、営業損失、現預金、営業キャッシュフローを確認します。研究開発や顧客獲得への投資で赤字なのか、売上が伸びても損失が広がる構造なのかで、上場後の評価は変わります。

新株発行で得た資金が成長投資に回るなら将来の売上につながりますが、借入返済や既存株主の売出しが中心なら会社へ入る資金は限られます。資金使途と黒字化までの期間をセットで読みます。追加増資の可能性も見ます。

吸収金額と売出比率が大きいIPOは需給が重くなりやすい

公開価格に公募株、売出株、オーバーアロットメントを含む公開株数を掛けた金額が、IPOの吸収金額です。吸収金額が大きいほど多くの買い需要が必要になり、同じ人気テーマでも初値が伸びにくくなる場合があります。

売出比率が高い案件では、上場が企業の資金調達より既存株主の換金に使われていないか確認します。ベンチャーキャピタルの保有比率とロックアップ解除条件も、初値後の売り圧力を読む材料です。需給は上場後も株価へ響きます。

上場日の相場とIPOの集中も初値を左右する

目論見書の内容が良くても、上場直前に日経平均やグロース市場が急落すると、投資家は新しい銘柄へ資金を出しにくくなります。同じ週に複数のIPOが重なる場合も、買い資金が分散し、単独上場より初値が伸びない場合があります。

2026年の年初7社連続公募割れも、個別企業だけでなく不安定な株式市場とIPOへの警戒が重なった結果です。購入申込の期限までは、公開価格決定後の相場と直前IPOの初値を見て、当選後でも辞退できるか各社のルールを確かめます。

まとめ|IPO株は買い方より申し込む銘柄の選別が大切

IPO株を公開価格で買うには、幹事証券の口座を準備し、ブックビルディング、抽選結果の確認、購入申込まで完了させます。上場後は誰でも買えますが、初値に人気が織り込まれているため、公募での当選より高い価格を負う可能性があります。

2026年は8月4日までに22社中9社が公募割れとなり、IPOだから上がるという見方は崩れています。主幹事への申込や複数口座で抽選機会は増やせても、銘柄そのものの損失リスクは減りません。

申し込む前に、赤字額、吸収金額、売出比率、ロックアップ、想定時価総額を確認します。初値売りを選ぶ場合は、成行注文ではなく、証券会社が受け付ける範囲内の指値注文を使ってください。

抽選に当たるかどうかは選べませんが、割高だと思うIPOを見送るかどうかは自分で選べます。当選を増やすより、当選しても買わない基準を先に持つ方が、長く続けやすいIPO投資になります。

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執筆者情報

nari

遠藤 悠市

日本投資機構株式会社 アナリスト

大学時代に投資家である祖母の影響で日本株のトレーディングを始める。大学時代、アベノミクスの恩恵も受けて資金を増やすことに成功する。卒業後、証券会社、投資顧問会社を経て2019年2月より日本投資機構株式会社の分析者に就任。モメンタム分析を最も得意としており、IPO(新規上場株)やセクター分析にも長けたアナリスト。

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