2026年1月9日金曜日夜に突如として飛び込んできた読売新聞の「衆議院解散・総選挙」の観測報道を受け、その夜の金融市場は素早く反応しました。
政治イベントは、株式市場にとって不確実性の代表である一方、短期的には極めて強力なカタリスト(変動要因)となることが歴史的に見てもあります。
本記事では、まず先週末に確認された市場の初期反応を整理し、過去のデータが示す「解散相場」の特徴、そして今回の局面でトレーダーが特に警戒すべき固有のリスクについて解説します。
先週金曜日夜のアルゴリズム取引による初動

先週金曜夜間先物に見られた値動きは、まさに
「解散(観測)=買い」
という経験則に、アルゴリズム取引が瞬時に反応した典型的な例でした。
所謂テキストマイニング型ディレクショナルアルゴ戦略
このHFTの代表とも言われる戦略は0.5ミリ秒(0.0005秒)で市場に発注可能です。
通常ネット証券などでは注文量にもよりますが通常0.7秒と言われていますから、その速さ(レイテンシー)の物凄さが理解できると思います。
人間では無理な領域です。
報道直後、シカゴ日経平均先物は5万2200円近辺から一時5万3700円台へと急伸。
同時に為替市場でも反応が見られ、ドル円相場は157円台半ばから158円台へと円安方向に動きました。
株高と円安が同時に進行するこの動きは、先物主導でショートカバー(売り方の買い戻し)が入りやすい、教科書通りのパターンです。
金曜夜の値動きは、ファンダメンタルズを反映した結果というよりも、ヘッドラインにマイクロセカンドの速さで反応するアルゴが初めに市場を押し上げ、それにボラティリティに反応するアルゴ、出来高に反応するアルゴ、さらに為替との相関で動く裁定型アルゴが連動する遠隔アルゴ戦の色合いが強いといえるでしょう。
「解散は買い」が機能する3つの構造的理由

では、なぜ「解散」という政治的な不透明要因が、株式市場ではポジティブに受け取られやすいのでしょうか。
このアノマリーが機能しやすい背景には、主に3つの構造的な理由があります。
不確実性の前倒し解消
「いつ解散するか分からない」という状態は、投資家にとって最も対応しづらい不確実性です。一方で、解散が明確になり「いつ投開票が行われるか」というスケジュールが見えてくると、イベントリスクを織り込みやすくなり、ポジションを取りやすくなります。
政策期待の高まり
選挙戦に入ると、与野党を問わず景気対策や財政拡張を前面に出しやすくなります。今回は立憲民主党と公明党の連立がすでに発表されています。
解散だけを考えると株式市場にとって、短期的には分かりやすいプラス材料として解釈される傾向があります。
円安との連動
今回もそうでしたが、解散観測と同時に円安が進むケースは少なくありません。
日経平均株価は輸出関連企業の比率が高いため、構造的に円安が指数を押し上げやすい点も、「解散=買い」が成立しやすい要因となっています。
過去データが示す強力な解散アノマリー

「解散から投票日までは株価が上がりやすい」という定説は、データ面でも非常に強いアノマリーとして確認できます。
ニッセイ基礎研究所の分析によれば、2000年以降に行われた8回の衆議院選挙すべてにおいて、「解散日前営業日から投票日前営業日」までの日経平均騰落率はプラスとなっています。
この分析には2024年10月の石破内閣時の解散が抜けているので、これを足してみます。
日経平均騰落率(解散~投票直前)
2000年 +2%
2003年 +1%
2005年 +8%
2009年 +12%
2012年 +10%
2014年 +0.4%
2017年 +6%
2021年 +3%
2024年 ‐2.63%
9回の平均上昇率は約+4.4%、中央値は+3%。
また、1990年以降に期間を広げても、Reutersの記事には「7勝1敗、平均+3.6%」と記載されており、高い勝率が報じられています。
短期イベントとしては、統計的に無視できない優位性があることは紛れもない事実です。
投票後は「別ゲーム」だと理解する

ただし、最も重要なのは
「解散~投票までのアノマリー」と「投票後の相場」は、まったくの別物
だということです。
ニッセイ基礎研究所の分析では、投票から約3カ月後まで株価水準を維持できたのは、過去8回中わずか3回にとどまっています。
2005年(郵政選挙)や2012年(アベノミクス始動)のように、投票後も強く上昇したケースがある一方、2000年、2009年、2021年は、投票後に軟調な展開が目立ちました。
特に2009年は、解散から投票までは+12%と上昇したものの、投票後は下落基調に転じています。「選挙前は期待で買われ、選挙後は現実で売られる」という典型例と言えるでしょう。
結局のところ、リーマンショック級のマクロ要因が存在する局面では、国内政治のアノマリーよりも、世界景気・金融政策・信用環境が最終的なトレンドを決めます。
今後の解散観測で注意すべき4つのポイント

今回の値動きは、あくまで「確定」ではなく「観測」によって先行している点が重要です。
そのため、以下の4点は特に注意が必要です。
観測気球か、本気か(否定リスク)
先週時点で今回の報道は「観測気球」に過ぎない可能性がありました。
もし解散が見送られたならば、期待先行で上昇した分が一気に剥落するリスクがありました。
今回は高市総理が早々に解散を明言したのであてはまりませんが、アルゴリズムは「解散なら買い」だけでなく、「否定なら即売り」も同時に組み込んでいると考えるのが自然です。
日程具体化と織り込みスピード
1月23日解散、2月8日または15日投開票といった日程案が報じられています。(どうやら確定)
日程が固まるにつれ、短期筋と中長期投資家の動きが分かれ、織り込みスピードの見極めが重要になります。
また立憲民主党と公明党の連立や消費税を巡る選挙戦をめぐる思惑が交錯したことでスピード感が調整されたのがこの1週間だったともいえます。
円安の「質」の変化
現状の円安は株高を支える材料ですが、
これが「株にプラスの円安」から「財政不安やインフレ懸念による悪い円安」へと解釈が変わる可能性もあります。
高値圏でのバリュエーション
今回はこの報道がされる前に日経平均株価指数がすでに史上高値圏にありました。
2012年のような割安局面とは異なり、「解散買い」があっても上値余地は限られているのではとの考えも頭の片隅に置くべきです。
戦う時間軸を決めることの重要性
今回の急騰を冷静に整理すると、短期(解散観測~投票まで)では、上がりやすいバイアスが存在することは確かです。
2000年以降の「ほぼ全勝」データは、無視できない強気材料と言えます。
一方で、中期(投票後)では上昇が保証されているわけではなく、世界経済や金融環境次第では大きな調整も十分に想定されます。
加えて今後に生かすならば正式表明前という段階ならではの「梯子を外されるリスク」も考えなければなりません。
火曜日の寄り付きのギャップを狙う短期戦略が正解だったのか、2月の投票日までを見据えたスイングなのか、それとも投票後まで含めたスタンスなのか。
自分がどの時間軸で戦っているのかを明確にすることが何より重要で、次回以降の解散相場で初動から上手く立ち回れるように今回の解散相場で学んでおきたいものです。
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執筆者情報
元外資系証券株式本部長マネジングディレクター
日系証券個人営業から証券人生をスタート。その後ロンドンと東京を拠点に20年以上に渡って外資系証券会社の主にトレーディングデスク及び各マネジメント職を歴任。2019年退職。得意分野はフローの裏側分析及び市場構造分析。現在はXやnoteなどで個人投資家向け株式投資の知識提供中心に悠々自適生活を送る。趣味は食とクルマ。
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