SaaSは死ぬのか?新AIツール発表を受けて暴落のソフトウェア関連株の今後

SaaSは死ぬのか?新AIツール発表を受けて暴落のソフトウェア関連株の今後

2026年2月初頭、世界の株式市場をアンソロピック・ショックが襲いました。
米AIスタートアップのアンソロピックが発表した新ツールをきっかけに、SaaS(Software as a Service:サービスとしてのソフトウェア)関連株が急落したのです。

アメリカでは、トムソン・ロイターやセールスフォースといった大手ソフトウェア企業の株価が急落。
日本株市場でも2月4日の下落率上位には、ラクス(前日比13.50%安)やSansan(同12.45%安)、弁護士ドットコム(同9.29%安)、フリー(同9.00%安)などのSaaS株が名を連ねました。

本記事では、なぜこれほどまでに市場に衝撃が走っているのかを解説し、SaaSビジネスモデルは本当に崩壊してしまうのかを考えていきます

目次

アンソロピックのエージェントAI「Cowork」は何がすごいのか

今回の暴落の直接的な引き金となったのは、アンソロピックが発表したCowork(コワーク)およびその中の法務特化型AIツールです。

Coworkは、人間の代わりにPC内のファイルや外部ツールに直接アクセスして作業を完結させる能力を持つ、いわゆる自律型エージェントAIです。
「自律型」ですから、ユーザーが結果(ゴール)を伝えるだけで、自ら実行計画を立て、分身を作って効率的に作業を進めてくれます。

さらに、開発者向けの高度な自動化ツールと同じ仕組みを、自然言語の入力によって扱えるようにした点が画期的と言われています。
これにより、エンジニアにしかできなかった自動化が、営業、経理などの一般業務で可能になりました。

こうしたCoworkに、2026年2月には「法務特化型」の機能が追加されました。
契約書レビューやコンプライアンス管理、法的ブリーフィングの作成など、これまで高額な専門ソフトウェアが行っていた専門性の高い業務も自動化できるようになったのです。

「SaaSの終焉」「SaaSの死」と言われる理由

生成AI登場以前には、様々な業務に特化したSaaSを手掛ける企業が収益を伸ばし、株式市場でも評価されてきました。
2020年の新型コロナウイルスの感染拡大初期に、日本でもSaaSの導入が爆発的に進み、関連銘柄の急騰が相次いだのは記憶に新しいです。
しかし、高度なAIエージェントの登場で環境が一変し、「SaaSの終焉」とまで言われる事態になっています。

ここまで厳しい見方がされているのは、SaaSの収益構造そのものが破壊される懸念があるからです。

これまで、多くのSaaS企業は「利用人数(ID数)×月額料金」で稼いできました。
しかし、AIエージェントが100人分の仕事を1人でこなせるようになれば、企業が契約するID数は激減し、SaaS企業の売上減少に直結します。

それでも「専門領域にまでは、まだAIエージェントは進出してこない」といった楽観的な見方をしていた投資家もいました。
しかし、今回のCoworkへの法務特化型機能の追加によって、そうした楽観論は打ち崩されつつあります。

AIツール普及が打撃になると判断された日本株一覧

世界的なSaaS売りの流れを受けて、2026年2月4日の日本株市場で反応が大きく売られた銘柄をまとめておきます。
※全市場下落率順で掲載し、決算発表など他の材料があった銘柄は除外しています。

コード銘柄名下落率事業内容
446Aノースサンド-14.58%IT・DXコンサルティング、SaaS導入支援を手掛けており、コンサルタントの介在価値が低下するとの懸念が広がる。
277Aグロービング-14.18%戦略・DXコンサルティング、データ利活用支援を手掛けており、コンサルティング需要が縮小するとの連想売り。
2492インフォマート-14.13%BtoB電子商取引(請求書・受発注)の国内最大手。プラットフォームの優位性を失うリスクが意識されたか。
4443Sansan-13.50%名刺管理・営業DX「Sansan」、請求書受領「Bill One」を手掛ける。正確なデータ化という同社の参入障壁が相対的に下がるとの懸念。
3923ラクス-12.92%交通費・経費精算「楽楽精算」、電子請求書「楽楽明細」を手掛ける。AIによる業務効率化による利用人数減少が警戒される。
4478フリー-12.53%個人・中小企業向けクラウド会計、人事労務ソフト。仕訳や申告書作成がAIエージェントによって「全自動化」されるとの警戒が広がる。
6027弁護士ドットコム-11.97%アンソロピックが「法務特化AIツール」を発表したため、リーガルテック領域の代替リスクが鮮明に。
6701NEC-11.79%ITサービスや社会インフラを手掛ける。自律型AIの国内リーダーであり、SaaS関連というよりは、競合の成功によって売られた形か。
4413ボードルア-11.55%クラウド・ネットワーク等のITインフラ構築・運用。ITインフラ構築のAIによる需要代替が警戒されたか。
4019スタメン-10.83%エンゲージメント「TUNAG」、組織DXを手掛ける。社内のコミュニケーションや福利厚生の管理ツールも、AIに代替されるとの警戒感。
6098リクルート-10.10%HR(Indeed)のほか、販促(AirペイなどのSaaS)も。SaaS部門(Airシリーズ)の将来不安に加え、採用ビジネスが広告モデルからAI代理モデルへ移行する過渡期の不透明感。

上場間もないグロース市場に上場する銘柄だけではなく、NECやリクルートホールディングスなどの大手企業も大きく下落しており、アンソロピックショックのインパクトの大きさがうかがえます。

SaaS・ソフトウェア株の今後は?生き残る条件とは

SaaSは死んだと言われている一方で、市場は過剰に反応しているとの見方もあります。
特に、長年にわたって蓄積した独自のデータや専門性の高い人材などの資本を持っている企業には、依然として高い価値があると考えられます。

たとえば、長年の事業運営で蓄積した細やかな取引データなど、ネット上に出回っていないデータを保有している企業は、独自のデータとAIを融合させて新たな価値を生み出せるでしょう。

また、AIが出力した成果物について、本当にそれを使って良いのかを判断する責任者は必ず必要です。
高いレベルでのファクトチェックを可能にする専門性は、今後も価値を持ち続けると思います。

現在は、各企業ともに持っている資産を整理し、成長戦略の見直しを進めている最中でしょう。
M&Aや業界再編が進む余地もありますから、企業の保有する様々な資産に対して過度に株価が下落した場面は、投資家にとってのチャンスになるはずです。

2026年以降、弁護士の仕事はどう変わるのか?

少しだけ株式市場から離れて、未来を展望してみましょう。
自律型エージェントの台頭によって、弁護士の業務はどのように変化するでしょうか?

人間らしさが必要な領域が主軸に

結論から言えば、文書作成や調査などの作業時間は大きく減り、人の気持ちを考える力や倫理観がより重視されるようになるとみられます。

まずは、AIが作成した成果物のリーガルチェックが必要になるほか、AI対AIの紛争に勝つための戦略の立案といった新たなタスクも生まれそうです。

また、相手の心理を読んでの示談・和解交渉、M&Aにおける複雑な利害調整、炎上を避けるための倫理的なマネジメントなど、AIには難しい業務に注力する時間が増加しそうです。

新たな時間で人類が生み出す「新たな価値」

さらに余ったリソースは、新しいプロジェクトを完結させるために使用されるかもしれません。
たとえば、Web3、メタバース、宇宙開発、バイオテクノロジーなど、既存の法体系が追いついていない未開拓分野において、人間の倫理観に基づいて、新たなルールを策定していくといった仕事が考えられます。

現在、一部の企業には厳しい時代が到来していますが、エージェントAIの台頭で生まれる新たな時間で、人類はこれまでになかった新たな価値を生み出せるのではないでしょうか。

まとめ|激変の時代こそ冷静さを忘れずに

2026年2月のアンソロピック・ショックは、ソフトウェアが人間を助ける段階からAIが自律して完結させる段階への移行を象徴する出来事でした。

多くの組織が根本的な事業再構築を迫られる事態となっています。
一方で、AIを使いこなして不可能だったスピードで結果を出す企業や、AIには真似できない責任と信頼を担保する専門家は、これまで以上に輝きを増していくはずです。

どの企業が独自のデータを持ち、どの企業が代替不可能な価値を提供し続けているのか。
激変の時代だからこそ、表面的な数字に惑わされず、ビジネスモデルの本質を見極める冷静さが次なる成長を掴む鍵となるでしょう。

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執筆者情報

nari

石塚 由奈

日本投資機構株式会社 証券アナリスト(CMA) テクニカルアナリスト(CMTA®)

国内株式、海外株式、外国為替の領域で経験豊富なアナリスト・ファンドマネージャーのもと、金融市場の基礎・特徴、マクロ経済の捉え方、個別株式の分析、チャート分析、流動性分析などを学びながら、日本投資機構株式会社では唯一の女性アナリストとして登録。自身が専任するLINE公式など各コンテンツに累計7000名以上が参加。Twitterのフォロワー数も3万人を超える人気アナリスト。

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