よく、「年末は株価が上がりやすい」と耳にしますよね。
これは、株式投資の世界で「掉尾の一振(とうびのいっしん)」と呼ばれる有名な現象です。
12月の終わりにかけて日経平均株価がグッと上昇するこのアノマリー(経験則)。
本当に毎年起きているのでしょうか?
この記事では、過去のデータを使って、「掉尾の一振」が本当に再現性のある傾向なのかを徹底検証します。
そして、なぜ年末に株価が上がるのか、その理由を初心者の方にもわかりやすく解説していきます。
掉尾の一振(とうびのいっしん)とは?|意味や由来を解説

「掉尾の一振」とは、年末の最終取引日(大納会)に向かって株式市場が上昇する現象を指します。
明治頃から使われるようになったとみられる言葉です。
「掉尾」とは、もともと「尾を振る」という意味です。
捕まえた魚が最後の力を絞り出して尾を振ることから転じて、「物事の勢いが最後に盛んになる・立派に最後を締めくくる」という意味を持つようになりました。
掉尾の一振とは具体的にいつの期間を指す?
掉尾の一振は、12月後半、特にクリスマス休暇が明けた頃から大納会までの約1週間を指すケースが多いです。
ちょうど欧米の機関投資家がクリスマス前に取引を終えて休暇に入り、市場の流動性が低下するタイミングと重なります。
とはいえ、明確に定義されているわけではありませんので、投資家によってどの期間を指すか、認識はバラバラかと思います。
過去データで見る「掉尾の一振」の勝率と傾向
ここからは、実際に掉尾の一振と呼ぶにふさわしい大納会に向けた株価上昇が起きているのか、過去のデータを検証してみましょう。
過去の年末の日経平均株価の騰落率
各年の大納会までの5営業日間、10営業日間、15営業日間における日経平均株価の騰落率を調べました。
具体的には、大納会から5、10、15営業日前の終値から大納会の終値までの騰落率を算出しています。
①1949年~2024年、②インターネット取引が増加し始めた2000年~2024年、③2015年~2024年までの10年間の3つの期間を取り上げて、集計を行いました。
▼まず、それぞれの期間における日経平均株価の平均騰落率は以下の通りです。

いずれの期間も、年末5営業日の平均騰落率が高くなっています。
▼また、各期間の勝率(0.01%でも日経平均株価が上昇した割合)は以下のようになっています。

こちらも年末5営業日の勝率がもっとも高くなっています。
長期的に株価が右肩上がりで推移してきたことを考慮すると、通常は期間を長くとった方が勝率や騰落率は高くなるはずです。
しかし、年末に関しては、大納会までの15営業日のパフォーマンスよりも、5営業日のパフォーマンスの方が好調でした。
「大納会直前」は株価が上がりやすい!?
もう少し詳しく見ていきましょう。
▼以下は、2015年~2024年までのそれぞれの年について、大納会までの20営業日間の日経平均株価の動きをグラフ化したものです。

大きく下落している年もあり、掉尾の一振という言葉のイメージに合うような力強い印象は受けないかもしれません。
▼しかし、このうち2019年、2020年、2021年、2023年、2024年では、18営業日目(大納会の2営業日前)にかけて株価がぐっと上昇する場面が見られています。

▼また、12月のパフォーマンスが悪かった年も、大納会直前で株価が下げ渋ったり、リバウンドしたりする傾向が見られます。

大納会当日はさすがに手仕舞い売りが出やすいものの、その直前の数営業日は株価が堅調に推移しやすい傾向が確かにあるようです。
なぜ年末に株価が上がりやすいのか?

では、なぜ大納会前の数営業日に株価が上がりやすいのでしょうか?
ここからは、考えられる上昇要因について、解説していきます。
損出しの売りやIPOが一巡し、需給が改善
大納会の2営業日前までに含み損銘柄を売却して損失を確定させれば、その年の利益や配当にかかる税金を相殺できます。
証券会社が源泉徴収していた税金の一部が戻ってくる場合もあるため、個人投資家は年末に損切を進める傾向があります。
特に、その年に人気化し、含み損を抱えている投資家が多い銘柄は、この傾向が顕著に表れます。
また、12月は1年でもっともIPO(新規公開株式)が多い月です。
IPOは、公募価格よりも高く初値がつきやすいため、抽選に当たればリスクを限定して利益を狙えます。
この抽選へ応募するには、当たった時に株を買えるだけの資金を証券口座に入れておく必要があります。
そのため12月前半は、IPOへの応募資金を確保するために、保有している株を売る個人投資家が増えると考えられるのです。
こうした節税目的の売りや、IPO応募のための売りが一巡し、12月終盤の株式市場は売りが出づらくなると考えられます。
実質新年相場と新NISAによる買い
前述の損出しの売りやIPOの抽選が終わると、多くの個人投資家の手元には資金が残ります。
この資金の一部が、翌年の株式市場の上昇に期待した新たな買い付けに回されると考えられます。
特に証券会社・調査機関による年明けの市場予測が楽観的である場合、年明けに期待される「ご祝儀相場」を待たず、年末のうちに株を仕込んでおこうという先回り買いを誘発します。
また、大納会の1営業日前から実質新年相場入りとなり、翌年の分のNISA枠が使えるようになります。
そのため、この時期にはNISAによる長期保有を念頭に置いた買いも入りやすくなっています。
機関投資家による「ドレッシング買い」
「ドレッシング買い」とは、主に投資信託などの機関投資家が、会計期末(多くの場合12月末)を前に、保有する株の見た目を良くするために、銘柄を意図的に買い増す行為を指します。
これは、投資家向けの運用報告書や第三者機関によるパフォーマンス評価において、ファンドの運用成績を実際よりも良く見せるための買いです。
この見栄えを良くするための買い付けは、「お化粧買い」とも呼ばれ、年末の株価上昇をサポートします。
年末特有の流動性低下がボラティリティを高める
年末は、欧米の市場参加者だけでなく、日本の市場関係者も休暇に入るため、市場で取引される株式の量が極端に少なくなる特徴があります。
流動性が低下すると、普段なら吸収されてしまう程度の少額の買い注文であっても、株価を大きく押し上げる効果が生じます。
流動性の低下は、相場のボラティリティ(変動率)を一時的に高め、掉尾の一振を実現させる上で重要な環境的要因となります。
2025年「掉尾の一振」は起きるか?

損出しの売りやIPOに応募する資金を確保するための売りが一巡し、新年に向けて新たな資金が入ることで、2025年も掉尾の一振と呼ばれるような年末株高が見られる可能性は高いです。
2025年は日経平均株価が最高値を更新し、楽観的になっている投資家が多いため、来年に期待した買いも入りやすいでしょう。
ただし、日経平均株価が最高値圏に位置し、割高感が意識されている点には少し注意を払っておきたいです。
株価上昇によって日本株の持ち高が増えすぎたため、資産配分の調整(リバランス)を年内に行わなければならない投資家も一定数いるとみられます。
12月前半や中盤のタイミングでは、こうした持ち高整理のための売りが強まり、株式市場の重荷となる可能性も十分に想定されます。
掉尾の一振はあくまで大納会直前の傾向ですので、12月前半から中旬は焦らずに、投げ売りが出たところを拾うスタンスで臨みたいです。
年明けの相場はどうなる?年始アノマリーも合わせて確認!
掉尾の一振で力強い年末を迎えた場合、年明けの大発会も強いスタートになると期待されます。
しかし、実際にはそうした傾向は見られません。
▼以下は横軸に年末5営業日での日経平均株価の騰落率、縦軸に大発会の日経平均株価の騰落率をとったグラフです。

特に相関関係は見られず、年末の日経平均株価が上昇して終われば、大発会も上昇する傾向があるとは言えません。
たとえば、平成バブルの時には、1989年12月の大納会の日に日経平均株価が史上最高値をつけ、まさに掉尾の一振と呼ぶにふさわしい相場展開となりましたが、年明けの相場は一転して崩れ始めました。
もし年末の株式市場が極端に堅調に推移した場合には、少し冷静になって、持ち高の一部の利益を確定した上で、年を越すことも検討すべきでしょう。
年末の株高を指す「クリスマスラリー」とは?

掉尾の一振と同じように年末の株高を指す「クリスマスラリー」という言葉があります。
これは主に欧米の株式市場で使われる言葉で、クリスマス前から年末にかけて株価が上昇しやすい現象を指します。
一般的には、掉尾の一振が「日本市場の年末現象」として、クリスマスラリーが「欧米市場の年末現象」として区別されます。
しかし、グローバルで連動する現代の株式市場では、米国株市場のクリスマスラリーが、投資家心理を好転させ、日本市場の掉尾の一振を後押しする強力な外部要因となる場合が多くあります。
[関連]クリスマスラリーとは?過去のデータから本当に起きているかを検証!
まとめ|年末特有の傾向を理解して投資に活かそう!

掉尾の一振とは、年末特有の市場参加者の行動と需給の変化が作り出す、再現性の高いアノマリーです。
この傾向を理解しておけば、年末年始の株式市場でも戸惑わずに利益を狙えるでしょう。
まずは、損出し売りなどによる12月前半の株価の下落を押し目買いの機会と捉えて、年末の相場に向き合っていくのが良いと思います。
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執筆者情報
日本投資機構株式会社 投資戦略部 主任代理/日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)/日本テクニカルアナリスト協会認定テクニカルアナリスト(CMTA®)
国内株式、海外株式、外国為替の領域で経験豊富なアナリスト・ファンドマネージャーのもと、金融市場の基礎・特徴、マクロ経済の捉え方、個別株式の分析、チャート分析、流動性分析などを学びながら、日本投資機構株式会社では唯一の女性アナリストとして登録。自身が専任するLINE公式など各コンテンツに累計7000名以上が参加。Twitterのフォロワー数も3万人を超える人気アナリスト。
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