高市氏の総裁選での勝利を受けて、「核融合発電」がにわかに注目を浴びています。
株式市場でも関連銘柄が急騰する場面が見られていますが、そもそも核融合発電とはどのような発電方法なのでしょうか?
投資家なら理解しておきたい核融合発電の仕組みと、関連する銘柄、そして投資を行う際のポイントまでをわかりやすく解説します。
核融合(核融合発電)関連銘柄とは?

核融合関連銘柄とは、次世代のエネルギー源として期待される「核融合発電」の実用化に向けた、研究開発や製造などを手掛ける企業のことです。
具体的には、真空容器や超電導コイルを製造する重工業メーカー、プラズマに耐える素材を開発する企業、計測・制御機器を提供するメーカーなどが該当します。
これらの企業は、今後の研究開発の進展や国家プロジェクトの本格化によって、大きな事業機会を得る期待ができるとして注目を集めています。
核融合の仕組みと核分裂との違い
核融合発電と原子力発電で利用されている核分裂は、原子核からエネルギーを取り出す点では同じです。
しかし、原理と安全性に大きな違いがあります。
原子力発電では、ウランのような重い原子核を分裂させてエネルギーを得ます。
この反応は連鎖的に起こるため、止まらなくなってしまうリスクがあります。
また、重い原子核を分裂させるため、放射能レベルの高い廃棄物が発生します。
一方、核融合は、重水素などの軽い原子核同士を融合させ、エネルギーを取り出します。
燃料がなくなったり、反応を起こすための状態が維持されなくなったりすると反応はすぐに止まるため、暴走するリスクはありません。
また、核分裂と比べると、廃棄物の量が少なく、放射能レベルが下がる速度も早いです。
そのため核融合は、安全性と環境面ともに優れた未来のエネルギーとして期待されています。
早期の実用化に向けて、高市首相も注力
2050年のカーボンニュートラル達成に向け、天候に左右されない安定的なクリーンエネルギーが不可欠です。
さらに、AIやデータセンターの普及により増加する電力需要をまかなう必要が出てきています。
これらを解決する手段として、核融合への期待はかつてないほど高まっています。
また、2025年10月に首相に就任した高市氏は、安全保障の観点でも、国産エネルギーの重要性について言及。
核融合発電についても早期の社会実装を目指すとしています。
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核融合発電の実用化はいつ?|2040~50年代の見込み

核融合発電の実用化は、2040~50年代になるとみられています。
まだ先の長い道のりですが、着実に進展はしており、将来への期待が市場を動かしています。
現在は核融合の原理が本当に成り立つかという基本的な研究から、発電所の試作品をつくるフェーズへと移行しつつあります。
国際プロジェクトが行われているほか、革新的な技術を持つスタートアップも誕生し、競争が加速している状況です。
日本政府主導での研究開発が進む
核融合発電の実用化に向けては、日本政府主導での研究開発が行われています。
2023年に策定された「フュージョンエネルギー・イノベーション戦略」では、官民連携が柱に据えられました。
その中核を担うのが、QST(量子科学技術研究開発機構)です。
茨城県にある研究所では、核融合実験装置「JT-60SA」が稼働し、実証炉開発に向けたデータを収集しています。
また、スタートアップ企業「京都フュージョニアリング」のように、独自技術で核融合炉の開発を目指す企業も登場しています。
日本の技術力を活かした「核融合産業」の誕生に向けて、官民一体となった取り組みが加速しています。
国際熱核融合実験炉「ITER(イーター)」計画
核融合発電の開発は、一国だけでは成し遂げられない挑戦であり、世界的な協力体制で進められています。
その象徴が、国際熱核融合実験炉「ITER(イーター)」計画です。
日本、EU、米国、ロシアなど7つの国と地域が協力し、実験炉を建設するプロジェクトです。
日本はITER計画において、超電導コイルの製作など、高度な技術で中心的な役割を担っています。
このほか、世界では多くのスタートアップ企業が商用炉開発を競っており競争はますます激化しています。
核融合発電で商機を掴む日本企業が急騰

核融合炉の実現には、「極限環境」を制御する高度な技術が不可欠です。
ここに、日本のものづくり企業が長年培ってきた技術力を活かす大きな商機があるとして、市場の期待が集まっています。
例えば、高温プラズマに耐える金属材料、真空容器を作るための溶接技術などが挙げられます。
助川電気(7711)ITER協業企業として注目

核融合関連銘柄への注目度を象徴するのが、【7711】助川電気工業の株価急騰です。
同社は、「ITER」の協業企業の1つでもあり、ITER向けにヒーターや温度センサーなどを提供した実績もあります。
2025年10月4日の総裁選での高市氏の勝利を受けて、株価は10月3日の安値3,955円から21日の高値1万2,250円まで11営業日で3.09倍の上昇を見せました。
注目の核融合関連本命/出遅れ/周辺銘柄

核融合は「ひとつの巨大産業」ではなく、サプライチェーンで成り立ちます。
そのため、研究・実証の装置を担う本命株、テーマが広がる過程で受注が追いつく出遅れ株、核融合以外の需要でも収益が立つ周辺有望株に分けて見ると、ボラティリティに振らされにくくなります。
ここからは本命株、出遅れ株、周辺有望株から、それぞれ注目の銘柄を紹介します。
三菱重工業(7011)核融合関連の本命株
三菱重工業は、日本の核融合技術開発を牽引する中心企業です。
ITERに参画しており、主要機器であるトロイダル磁場コイルやダイバータ部品などを製造しています。
ITER向けトロイダルコイル19機のうち、日本は9基の製作を担当しており、このうち同社は5基を製作しました。
ダイバータ部品の「外側垂直ターゲット」は発注済みの38機全てを同社が担っており、25年10月に実機を完成させています。
今後のITERの部品受注も同社が担当する可能性が高いでしょう。
また、ITERで向け部品などで得た知見をもとに日本国内での核融合原型炉にも取り組んでいます。
ITERや国内原型炉などの進展などがあれば大きく注目を集める、中心的銘柄です。
東洋炭素(5310)核融合関連の注目出遅れ株
東洋炭素は、等方性黒鉛・C/Cコンポジットなどの高温・高強度カーボン材料を手掛ける素材メーカーです。
極限環境下で使用可能なカーボン材料を提供しています。
ITERにおいては、炉壁に使用されるダイバータ用 C/C コンポジット材の製造の実績があります。
ITER関連部材の納入実績を持つ国内メーカーとして、サプライチェーン全体がクローズアップされる局面で物色の波が及ぶ可能性があるでしょう。
浜松ホトニクス(6965)核融合関連の周辺有望株
光電子増倍管や半導体レーザー、イメージセンサーなど光技術の世界的リーディングカンパニーです。
核融合分野ではプラズマ計測・診断の中核企業として位置づけられています。
計測装置用レーザーの調整作業や、検出器の納入などを行っており、2025年7月31日にが核融合発電に必要なレーザー技術の長時間稼働に成功したと発表しています。
同社の製品は医療向けや半導体向けでも需要があり、核融合以外の分野での収益拡大にも期待できる周辺有望株です。
その他の注目核融合関連銘柄

| コード | 銘柄名 | 事業内容 | 
| 3446 | ジェイテックコーポレーション | 大阪大学発のスタートアップ系電子部品メーカー。レーザー核融合のベンチャー企業と技術提携しています。 | 
| 6378 | 木村化工機 | 化学プラントが主力の企業で、核融合実験装置の真空断熱するための関連機器を納入した実績が在ります。 | 
| 5801 | 古河電気工業 | 国内電線の大手企業で、英国の原型炉向けに高温超電導材を供給しています。 | 
| 4026 | 神島化学工業 | 建材・工業薬品の製造メーカー。慣性核融合発電システムに同社の大型接合セラミックスを提供しています。 | 
| 7701 | 島津製作所 | 分析・計測機器の大手企業。ITER協力企業のひとつで、機械材料試験機の納入や点検を行っています | 
| 5471 | 大同特殊鋼 | 世界最大級の特殊鋼専業企業です。核融合炉の内部で発生する高温のプラズマを受け止める部品や、材料を製作しています。 | 
核融合関連銘柄に投資する際のポイント

核融合関連銘柄は大きな夢を秘めていますが、投資するにあたってには注意すべき点もあります。
もっとも重要なのは、実用化が数十年先という長期的なテーマであることです。
そのため、株価は業績よりも「期待」で動き、価格の変動が大きくなりやすいです。
政策変更や研究開発の遅れといったニュース1つで、株価が大きく動くリスクを考える必要があります。
投資をする際は、短期的な値動きに一喜一憂せず、企業の優位性や研究開発プロジェクトへの参画実績などを評価することが大切です。
また、開発が長期にわたるため、財務健全性も確認しておくべきポイントです。
まとめ|核融合分野での日本企業の活躍に期待!

核融合発電は、脱炭素社会の実現と、増大する世界の電力需要を賄う「夢のエネルギー」として、今まさに国策を追い風に株式市場のテーマの1つとなりつつあります。
その開発には、日本のものづくり技術の粋が集結するため、多くの企業にビジネスチャンスが回ってくるでしょう。
投資の際は、「本命株」から、「出遅れ株」、「周辺有望株」まで、多角的に検討を行ってください。
実用化までは長い道のりですが、その過程で生まれる技術革新や需要は、企業の成長を後押しするとみられます。
壮大なテーマとして、長期的な視点で注目していく価値は非常に大きいでしょう。
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執筆者情報
日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)/日本テクニカルアナリスト協会認定テクニカルアナリスト(CMTA®)
総合鉄鋼メーカーに勤務していた経験を活かした、鉄鋼・自動車市場の分析及び情報収集を得意とし、データの集計・分析に基づいた統計学により銘柄の選定を行う希少なデータアナリスト。AIに関する資格も有しておりデータサイエンティストとしても活躍の場を拡げている。
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