株式投資では「材料が出た直後は上がったのに、その後は続かなかった、元に戻ってしまった」と売り時を逃してしまう場面に出会う事が何度もあります。
過ぎた日のチャートを眺めれば「あそこで売るべきだった」と最適な売り時を確認できるものですが、本記事では、材料発表後の値動きをシステムトレードの観点から整理し、「どの段階まで利益を狙うのが合理的か」を、過去のチャートと数字をもとに検証していきます。

前提として「材料株」の賞味期限は短い

まず前提として、なぜ材料が出ても株価の上昇は続きにくいのでしょうか。 市場の構造変化とともに、実際のチャートでその「典型的な反応」を確認してみましょう。
情報拡散スピードと「初動」への集中
現在はSNSやニュースアプリにより、好材料が出た瞬間に世界中の投資家が同時に情報を知ることになります。 その結果、材料の精査をする前に「とりあえず買う」という初動の反応に資金が極端に集中します。
過去の多くのデータを分析すると、材料による上昇エネルギーの大半は、報道直後から翌日までの短時間に消費され尽くしてしまう傾向が見て取れます。
事例:材料直後だけ動き、続かなかったケース
実際に、材料報道後の典型的な値動きをチャートで確認してみましょう。

上記は、助川電気工業のチャートです。1/13前後に関連報道(高市早苗氏の核融合関連発言など)が出たことで短時間に資金が集中し、急騰しました。
しかし、チャートを見ると分かる通り、初動で大きく動いた後は高値を更新できず、方向感を失って下落しています。
「行って来い」が発生する心理変化
このチャートのように、初動の勢いが続かない背景には、以下の心理変化があります。
- 話題性の先行: 報道直後は「話題」として買われるため、需給が一気に傾く。
- 現実への回帰: 初動が一巡すると、「この材料は本当にすぐ業績に貢献するのか?」という冷静な見方が広がる。
- 手仕舞いの連鎖: 期待だけで買っていた層が、高値更新が止まったのを見て一斉に売りに回る。
このように、材料による株価の動意付きにおいては「初動の勢いがあるうち(=チャートが崩れる前)」こそが最大のエッジ(優位性)であり、時間が経過するほど勝率は低下していくのが現実です。
今後の株式投資では、値動きを条件で見極めるシステムトレード的視点が重要

材料が出ても株価の上昇が続かない局面では、単に株価が上がったかどうかだけで判断するのではなく、その動きが条件として継続しているかを見る視点が重要になります。
理由や背景を追い続けるほど判断は複雑になり、迷いが生まれやすくなりますが、株価に加えて出来高が継続しているかといった、目で確認できる要素を条件として確認することで、相場との向き合い方はよりシンプルになります。
過去の値動きを振り返ると、短期的な上昇で終わる動きと、伸びが続く動きでは、株価だけでなく出来高の推移にも違いが見られる場面が多くあります。
こうした条件を複数の銘柄で見比べていくことで、判断軸をシステムトレードやアルゴリズム取引に落とし込みやすくなり、長期的な上昇を見極める仕組みを作ることも可能になります。
この章では、そうした視点をもとに、今後の株式投資で意識したい考え方を整理します。
理由よりも、値動きの事実を確認する
材料の理由を考えるより、実際の値動きを確認する方が整理しやすくなります。価格がどの場面で動き、どこで落ち着いたのかを捉える視点です。
この考え方は、後から振り返りやすい特徴を持ち、結果として、感覚に頼らない判断へ繋がやすくなります。
株価と出来高を条件として事前に整理しておく
動いてから考えると、判断が揺れやすくなるため、あらかじめ基準を決めておくことで、迷いは抑えやすいと考えられます。
基準は、価格や取引の流れなど、目で確認できる要素で足りるでしょう。判断の回数を減らす工夫が、落ち着いた行動につながる形です。
当てにいかない姿勢が判断を安定させる
材料を当てにいく考え方は、結果に振り回されやすくなります。一方で、動きを確認してから判断するという選択も考えられるでしょう。
過去の値動きを参考にした判断であれば、感情の影響を受けにくい傾向が見られます。この姿勢は、今後の相場環境でも活かしやすいといえそうです。
検証内容|材料出現後の急騰で「どこまでを利益確定の目安とするのが適切か?」

ここまで見てきた通り、材料発表による動意付きは初動で反応が出やすい一方、その動きが長く続くケースは限られます。そこで重要になるのが、「どこで売るか」を感覚ではなく、条件として整理できるかという点です。
この章では、先述した助川電気工業の値動きを例に、材料への反応が一巡しやすいポイントを具体的な条件に分解して検証し、どこまでを狙うのが効率的だったのかを整理していきます。
検証①|初動2~3日間が値幅のピークではないか?

材料直後にどの範囲まで上昇したのかを見ると、初動の反応がどこで出切っているかが分かりやすくなります。
助川電気工業のチャートを振り返っても、材料が意識された直後から数営業日の間に、その後の高値圏がほぼ形成されています。
この段階ですでに大きな値幅が出ている場合、その後は新たな買い材料が出にくくなり、上値が重くなりがちです。
初動でどれだけ動いたかを確認することは、「まだ狙う局面なのか、それとも反応が一巡した後なのか」を見極めるための、最初の判断材料となるでしょう。
検証②|出来高は継続しているのか、それとも減少しているのか?

価格上昇後に出来高がどのように推移しているかを見ると、売買の勢いが続いているかどうかが整理しやすくなります。
材料報道直後に出来高が急増し、翌日以降に明確な減少へ転じている場合、売買の勢いはすでに弱まり始めているサインと整理できます。株価が上昇していても出来高が伴わない場面では、その動きは一時的な反応にとどまるケースが多いでしょう。
一方で、価格の上昇とともに出来高が一定水準で推移している場合には、参加者の関心が維持されている可能性が考えられます。そのような局面では、反応がもう一段続く余地も残されていると言えそうです。
このように、出来高が「継続しているかどうか」は、初動が終了したかを見極めるうえで、株価以上に重視しやすい条件となります。
検証③|初動高値を更新できているか?

初動高値を越えきれなかった価格帯での動きを確認すると、流れが切り替わったポイントが捉えやすくなります。
初動でつけた高値をその後に安定して更新できているかどうかが、流れの継続性を見極める分岐点となります。
助川電気工業のケースを見ると、一時的に初動高値を試す場面は確認できるものの、その水準を維持できず、同じ価格帯で押し戻される動きが続いていました。
この推移からは、需給が一巡し、買いの勢いが徐々に弱まっている状況がうかがえます。
こうした局面では、「この材料は本当に業績につながるのか」といった疑問が意識されやすく、期待先行で入った資金が見直されやすい流れになるでしょう。
初動高値を越えたかどうかだけでなく、越えた状態が継続しているかを確認することが、売却を検討する際の分かりやすい判断条件と言えます。
システムトレードでは「どこで手仕舞いするか」を先に決める
システムトレードの考え方では、「どこまで上がるか」を当てにいくのではなく、「どの条件が崩れたら手仕舞うか」を事前に決めておきます。
たとえば、
- 初動2~3日以内に大きな値幅が出ている
- 出来高がピークアウトしている
- 初動高値を安定して更新できていない
こうした条件が重なった局面では、反応が一巡した状態と整理しやすくなります。
これらの条件を複数の銘柄で見比べ、共通するパターンを抽出していくことで、売却判断を再現性のあるルールとして構築しやすくなるでしょう。
まとめ

材料発表による株価急騰は、「材料がどこまで続くか」を追い続けるよりも、「どこまで反応を取りにいくか」を条件として整理する方が、判断は安定しやすくなります。
初動でどの程度の値幅が出たのか、出来高が継続しているのか、それともピークアウトしているのか、初動高値を安定して更新できているのかといった要素を組み合わせて確認することで、感覚や期待に左右されにくい売却判断が可能になります。
過去の値動きを振り返ると、反応が一巡する場面に一定の共通点が見られるケースも多く、こうした視点は検証とも相性が良い考え方です。
これらの動きを条件で整理していく姿勢は、システムトレードやアルゴリズム取引へ落とし込む際の基礎としても活かしやすいと言えるでしょう。

執筆者情報
株式会社ナレッジクリエイション 代表取締役
個人投資家向けアルゴリズム取引の識者として各種メディアに掲載される。 金融業界に携わることを目標に法政大学に入学するも「金融とITの融合」の必要性を痛感しプログラム開発を独学で学びエンジニアとして活躍。 その後、大手BtoC投資顧問会社に入社しデータアナリストを経て、トレードシステム開発部門責任者として「金融とITの融合」に取り組む。2019年に独立し、現在は現役のエンジニアや個人投資家向けのアルゴリズム取引の識者として活躍中。
![Invest Leaders[インベストリーダーズ]](https://jioinc.jp/investleaders/wp-content/uploads/2025/07/logo_01.png)

