移動平均線とは?仕組みや計算方法、活用時の注意点をプロが徹底解説

移動平均線とは?仕組みや計算方法、活用時の注意点をプロが徹底解説

テクニカル分析の基礎として、はじめにマスターしたいのが移動平均線です。
移動平均線はトレンドを見極める上での基本となり、他のテクニカル指標とも深く関係しているからです。

そこで本記事では、「移動平均線とは何なのか」「何本表示させれば良いのか」といった基本的な知識をテクニカルアナリスト資格を持つプロが解説します。
移動平均線の使い方をマスターすれば、根拠を持った売買判断ができるようになるでしょう。

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目次

移動平均線(MA)とは?チャート上の「線」の正体と役割

移動平均線(MA:Moving Average)とは、過去の一定期間における終値の平均値を繋いだテクニカル指標です。
平均値を使うことで、細かい値動きをならして、大局的なトレンドを明確にする役割を果たします。

日経平均株価 2025年3月3日~10月9日の日足チャート TradingViewより引用

移動平均線(MA)はいつから使われていた?歴史を紹介

移動平均の起源は古く、1901年にイギリスの経済学者アーサー・L・ポーレーが、代表値として中央値よりも平均値を使う優位性を示した著書まで遡ります。

しかし、移動平均が相場分析のツールとして認識されるきっかけを作ったのは、アメリカのジョセフ・グランビルです。
彼は1960年の著書で、200日移動平均線を相場と比較する独自の投資法則(グランビルの法則)を紹介しました。
以降、移動平均線が多くの投資家に知られることになります。

ただし、グランビル以前にも移動平均線の活用例は存在しています。
1935年にはすでにアメリカのリチャード・ワイコフが移動平均線を使ってNYダウ工業株30種平均のチャート分析を行っていました。

移動平均線(MA)の計算方法を具体例から解説

理解を深めるために、移動平均線の具体的な計算例も見ておきましょう。

移動平均線を描くにあたっては、まず一定期間における終値を平均します。
「5日移動平均線」であれば、直近5営業日の終値を合計し、それを5で割ります。

こうした算出された平均値を日々計算して、線で繋いだものが移動平均線(MA)です。

▼日経平均株価が以下のように動いた場合、10月8日の移動平均線の位置は、
(44,936円+45,769円+47,944円+47,950円+47,734円)÷5=46,866.6円
となります。

移動平均線の計算方法

日経平均株価 2025年7月1日~10月8日の日足チャート TradingViewより引用

移動平均線からわかること|心理的節目やトレンドの方向性

株価を平均すると、その期間中に株を売買した市場参加者全体の平均取得単価(平均的な買い値)に近くなります。
そして、市場参加者全体の平均取得単価は、多くの市場参加者が重視している価格に一致する可能性が高いです。
なぜなら、買い値よりも株価が上昇しているかどうかを気にして、売買判断をする投資家が多いからです。

つまり移動平均線は、多くの市場参加者が重視している重要な価格帯に位置していると考えられます。

また、終値の平均値は、株価が動けば当然変化します。
よって日々変化する平均値を繋いだ移動平均線も、上向きになったり、下向きになったりするのです。
ただし平均値を取っている分、株価と比べて緩やかに動くため、短期的なブレを排除して株価のトレンドを捉えるのに役立ちます。
平均する期間が長いほど短期的なブレの影響が取り除かれ、移動平均線はより緩やかな動きとなります。

移動平均線は多くのテクニカル分析の基本

移動平均線をベースに、様々な工夫を加えて開発されたテクニカル指標は非常に多いです。

たとえば、トレンドの勢いを測るMACD(Moving Average Convergence Divergence:移動平均収束拡散法)は、短期と長期の移動平均線の差を用いたテクニカル指標です。

また、ボリンジャーバンドも、価格が移動平均線からどれだけ離れているかを統計学的に示したテクニカル指標です。

移動平均線の理解は、これらの分析手法を理解するための入口でもあり、テクニカル分析全般の精度を高めるために不可欠と言えます。

表示させる移動平均線は1本でいい?短期・中期・長期の各線の考え方

移動平均線は、1つのチャートに1本ではなく複数本表示させるのが一般的です。
異なる期間の移動平均線を複数表示させることで、トレンドが続いているかどうかを、より正確に把握できるからです。

たとえば、短い期間の移動平均線が上向きに転じても、より長い期間の移動平均線がなかなか追随しない場合があります。
この場合には、株価の上昇は短期的なものに留まっており、中長期的なトレンド転換には至っていないと判断できます。

▼株価が上昇しても、トレンドにならない場合には、短期の移動平均線(画像では5日移動平均線)が上向いても、長期の移動平均線(同75日移動平均線)は横ばいのままで推移する傾向があります。

【2156】セーラー広告 2025年7月25日~10月9日の日足チャート TradingViewより引用

また、表示させるローソク足が示す期間(日足、週足、月足など)によって、よく使われる移動平均線の期間も異なります。
投資スタイルやローソク足に合わせて、移動平均線の期間を設定するようにしましょう。

移動平均線を使った売買判断のポイント

移動平均線は、エントリーや利益確定など、売買判断のシグナルとしても活用できます。
ここからは、移動平均線を用いて売買判断する際に見るべきポイントを解説していきます。

ポイント①:移動平均線の方向性に注目

移動平均線がどちらに傾いているかを見ることで、トレンドの方向を判断できます。

もし移動平均線が右上がりであれば、上昇トレンドにあると判断されます。
逆に、移動平均線が右下がりであれば、下降トレンドにあると言えるでしょう。
移動平均線が水平であれば、価格があまり動いていない横ばい(レンジ)トレンドだと分かります。

また、移動平均線の傾きが大きいほど、そのトレンドの勢いは強いと判断され、傾きが小さいほど勢いは弱いと考えられます。

【4661】オリエンタルランド 2022年10月31日~2024年11月25日の週足チャート TradingViewより引用
※26週移動平均線を表示

ポイント②:移動平均線と株価との位置関係は?

基本的に価格が上昇している局面では、株価は移動平均線よりも上で推移することが多いです。
移動平均線が株価を下支えて、上昇を助けているイメージです。

逆に、価格が下落している局面では、価格は抵抗されるように移動平均線よりも下で推移します。

よって、価格が常に移動平均線の上で動いていれば上昇トレンド、常に移動平均線の下で動いていれば下降トレンドにあると判断できます。

また、上昇トレンドでは、短期的な株価の動きに左右されやすい短期の移動平均線が、動きの遅い長期移動平均線よりも上の位置で推移します。
下降トレンドでは、反対に短期移動平均線が長期移動平均線よりも下に位置します。

ポイント③:トレンド転換時には「クロス」が見られる

トレンドが変化する際には、株価と移動平均線の位置関係や、長期と短期の移動平均線の位置関係が変化します。

たとえば、それまで株価が移動平均線よりも上で動いていたのに、ある時点を境に移動平均線よりも下で推移するようになれば、下降トレンドへ転じた可能性が意識されます。
反対に、株価が移動平均線よりも下で動いていた状態から、移動平均線よりも上で推移することが増えれば、上昇トレンドへ転じた可能性があると考えられます。

また、トレンド転換が本格化すると、短期と長期の移動平均線が交差するタイミングが訪れます。
短期と長期の移動平均線が交差する現象は「ゴールデンクロス」や「デッドクロス」と呼ばれ、売買判断のシグナルとして利用されています。

▼短期、長期の移動平均線と株価との位置関係によって、それぞれ以下のようなトレンドにあると判断できます。

移動平均線と株価との位置関係によるトレンド判断

移動平均線には平均の計算方法が異なる複数の種類がある

一般的に移動平均線と言うと、一定期間の終値を単純平均して繋いだ単純移動平均線(SMA:Simple Moving Average)を指します。

しかし、実は直近の価格を重視した指数平滑移動平均線(EMA:Exponential Moving Average)や、取引量の多かった価格をより重視して計算した出来高移動平均線(VWMA:Volume Weighted Moving Average)など、移動平均線には平均の計算方法によって複数の種類があります。

とはいえ、無理に様々な移動平均線を使おうとせずに、まずは単純移動平均線を表示させて移動平均線の値動きに慣れるのが良いと思います。
単純移動平均線を使っていて、直近の価格に対する反応の遅れなどが気になった場合には、他の移動平均線の活用も検討するのが良いでしょう。

移動平均線はあてにならない?使いこなす上での注意点

移動平均線は、市場参加者の心理や株価のトレンドを考える上で非常に便利なテクニカル指標です。
しかし、欠点や移動平均線だけでは分からないことも勿論あります。

移動平均線を使いこなすためにも、欠点をきちんと把握しておきましょう。

注意点①:後追い指標ゆえ「タイムラグ」に注意

移動平均線は、常に過去の値に基づいて計算されるため、本質的に「後追い指標(遅行指標)」です。
つまり、株価が急変したときに、移動平均線はその変化に反応が遅れる可能性が高いのです。
これが移動平均線が「あてにならない」「意味がない」などと言われる一番の理由になっていると考えられます。

移動平均線は、トレンド転換を予測してくれる指標ではなく、トレンドが発生し、継続していることを示す指標であると認識しておく必要があります。

注意点②:レンジ相場では有効性が低下しやすい


移動平均線は、相場に明確なトレンドがあるときに機能しやすいテクニカル指標です
株価が一定の範囲内を行ったり来たりするレンジ相場では、移動平均線は横ばいとなってしまうからです。

移動平均線が横ばいとなった場合、トレンドが発生していないことは分かります。
しかし、新たなトレンドが発生するまでは移動平均線から売買の手掛かりを得づらくなります
そのため、他の指標を手掛かりにしたり、無理に売買せずに様子見したりする必要があるでしょう。


注意点③:移動平均線だけでは分からないことも多い


移動平均線は、相場の方向性を把握する上では有効ですが、売買の勢いや相場の加熱感は反映されづらい指標です。

そのため、ボリンジャーバンドや移動平均線乖離率など、相場の短期的な行き過ぎを示す他の指標も確認する必要があります。
また、商いを伴わないシグナルは有効性が限定されやすいため、出来高を確認するのも有効です。

まとめ|移動平均線の理解はテクニカル分析の第一歩


移動平均線は、複雑な株価の動きの中から本質的なトレンドを抽出してくれるテクニカル指標です。
平均値は市場参加者全体の平均取得単価を示し、その変化は株価のトレンドの変化を示します。

まずは移動平均線の原理をしっかり理解した上で、実際のチャートに表示させて、線の傾きや株価の動きとの関係を確認する習慣をつけてみましょう。
実際に売買をしながら、移動平均線の動きを追うことで、トレンドが続きやすいチャートの形状を掴めるようになると思います。

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執筆者情報

nari

石塚 由奈

日本投資機構株式会社 投資戦略部 主任代理/日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)/日本テクニカルアナリスト協会認定テクニカルアナリスト(CMTA®)

国内株式、海外株式、外国為替の領域で経験豊富なアナリスト・ファンドマネージャーのもと、金融市場の基礎・特徴、マクロ経済の捉え方、個別株式の分析、チャート分析、流動性分析などを学びながら、日本投資機構株式会社では唯一の女性アナリストとして登録。自身が専任するLINE公式など各コンテンツに累計7000名以上が参加。Twitterのフォロワー数も3万人を超える人気アナリスト。

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