【相次ぐ不正・品質問題】どうなる?トヨタグループ

株式情報 投資戦略 相場展望 2024.02.14

遠藤 悠市 遠藤 悠市

直近トヨタグループによる、エンジンの認証試験に関する不正が相次いで発覚しています。

 

2022年に日野自動車、2023年にダイハツ工業で検査不正が発覚し、ダイハツ工業は国内4工場の生産停止に追い込まれてしまい、まさに!一大事となっているんです。

 

さらに2024年1月には、豊田自動織機が不正の報告書を公表。

 

すでに判明していたフォークリフト用だけではなく、自動車用のエンジンでも複数の不正が確認されています。

 

これを受けて、トヨタ自動車は国内の車両組み立て4工場6ラインについて、豊田自動織機のエンジン認証取得不正に伴う稼働停止を2月9日まで延長すると発表しています。

 

トヨタグループにおける一連の不祥事は、関連企業や消費者にも影響を及ぼしています。

 

特に、生産ラインの稼働停止は製品の部品などを製造して供給、納入するサプライヤーや、完成車の販売台数が減少することで販売店にとっても、甚大な悪影響を与える可能性があります!

 

そこで今回は、トヨタグループの不祥事がトヨタ自動車並びに関連企業の株価に今後どういった影響を与えるのか?

 

詳しく深堀り解説していきたいと思います!

 

実は頻発している不正や品質問題

 

昨今、報道が多くなされているトヨタグループの不正ですが、実は、日本の自動車関連企業で不正や品質問題は後を絶たずに起こっています。

 

2020年にはデンソーが燃料ポンプの欠陥、2021年には曙ブレーキが部品の検査不正、トヨタ・レクサス販売店は車検不正を行っていました。

 

さらに、2022年には日野自動車がエンジンの燃費・排ガス試験不正、2023年に豊田自動織機が排ガス試験不正、ダイハツ工業は衝突試験で不正、トヨタグループの一員である愛知製鋼(あいちせいこう)の特殊鋼における公差外れなど、2020年以降でもこれほどの不正や品質問題が明らかとなっています。

 

不正の対象としては、エンジン関連が目立っており、日野自動車とダイハツ工業、豊田自動織機はいずれも開発するエンジンの認証試験において不正を行っていました。

 

一時的なものも含め、多くの搭載車種が出荷停止に追い込まれ、関連企業への悪影響は免れない状況です。

 

実際にどの程度の悪影響があるのか

 

トヨタグループは、今回不正で問題となった豊田自動織機、ダイハツ工業、日野自動車などを抱える巨大グループであり、関連する会社で働く人は世界で約37万人とされています。

 

不正発覚を受けて、稼働が停止している工場もあり、今後の生産に悪影響を及ぼすと考えられます。

 

トヨタ自動車の公表によると、生産台数はグローバルで月産3万6000台、国内での販売台数に対する影響は7000台になり、仮に1年間生産が止まった場合、43万台強の影響となります。

 

これがトヨタ自動車にとってどの程度の悪影響をもたらすのかを、同社の年間生産台数から見ていきます。

 

同社の2023年グローバル生産台数は1151万8303台となっています。

 

現時点で公表されている1年間生産が止まった場合に影響を受ける台数は43万台強とされており、これは2023年実績の約3.7%にあたる台数です。

 

もちろん、不正や品質問題は利用者の安全を脅かすこともあるため、許される事態ではありませんが、実は!!このようにしてみると、今回の不正がトヨタ自動車の売上に与える影響はさほど大きくないということがわかります。

 

また、2月6日に発表された第3四半期累計決算では、連結最終利益は前年同期比2.1倍の3兆9472億円に拡大しています。

 

連結業績予想の増額修正を行っており、営業収益は、従来予想の4兆5000億円から4兆9000億円に見直されています。

 

今回の見通しにはダイハツ工業、豊田自動織機の出荷停止を受け、現時点で把握できる影響を織り込んでいるとしており、グループ内の不正を受けてなお、2年ぶりに最高益を更新する見込みとなっています。

 

株価から見る、不正の影響

 

2023年12月20日の取引時間中に、トヨタ自動車の傘下であるダイハツ工業において安全性確認の試験で不正があったと報道されています。

 

これを受けて、2023年12月21日の株価は前日比4.6%安の2520円で取引開始となっています。

 

その後、数日間保ち合いが続きましたが、徐々に値を戻し2月6日の決算発表を受けて株価は高値3148円を付けています。

 

一連の株価推移を見ると、不正発覚後は今後の生産状況に関わるためネガティブな反応が先行しましたが、市場は悪影響をすぐに織り込んだと考えられます。

 

不正発覚時にはメディア報道も活発に行われ、相次ぐ不祥事にトヨタグループへの不安や不信感を抱いた方は多いと思われます。

 

しかしながら、株価推移を確認すると、「同社への影響は限定的である」ということが株式市場の評価となっています。

 

不正発覚を受けて、工場の稼働停止や生産・販売への悪影響が懸念されていましたが、1年間生産が止まった場合の生産台数影響が軽微であることと、2月6日に発表された決算において、不正の影響を織り込んでも2年ぶりに最高益を更新する見込みとなっているため、逆に悪材料が消化されて、もう一段高が期待される局面となっています。

 

株式情報 投資戦略 相場展望 2024.02.14

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遠藤 悠市

この記事を書いた人

遠藤 悠市

日本投資機構株式会社 アナリスト日本投資機構株式会社 アナリスト
大学時代に投資家である祖母の影響で日本株のトレーディングを始める。大学時代、アベノミクスの恩恵も受けて、株式投資を投資金30万円で始め4年間で990万円まで資金を増やすことに成功する。卒業後、証券会社、投資顧問会社を経て2019年2月より日本投資機構株式会社の分析者に就任。モメンタム分析を最も得意としており、IPO(新規上場株)やセクター分析にも長けたアナリスト

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