メタバースは「次世代インターネットの主戦場」と呼ばれ、ゲームやSNSを越えた巨大経済圏になると期待されています。
2024年は生成AIブームに隠れがちでしたが、5G普及とデバイス進化で仮想空間ビジネスの実装フェーズが迫りつつあります。
本稿では“メタバース関連銘柄”が注目される背景を整理し、過去に急騰した日本株の例と最新有望株リスト、投資時の注意点、そして将来展望までを駆け足で解説します。
■メタバース関連株は「仮想空間インフラ」に乗る成長テーマ

VRや仮想空間と聞くとゲームを連想しがちですが、現在では広告・販売・教育・都市開発など、幅広い実社会に広がっています。
●メタバースとは「もうひとつの社会」
メタバースとは、インターネット上に広がる“仮想空間”のことです。アバターを通じて人と会話したり、展示会に参加したり、買い物をしたりと、実社会に近い活動がオンラインでできる新しい空間として注目されています。
最近ではスマホやPCでも利用できる軽量メタバースも登場し、より多くの人にとって身近な存在となりつつあります。ゲームの枠を超え、教育やビジネス、行政など幅広い分野への応用が始まっています。
●関連銘柄は「仮想空間を動かす企業」
メタバース関連株には、仮想空間そのものを提供する企業だけでなく、それを支える機器やエンジン、広告や決済サービスを展開する企業も含まれます。
たとえば、VRゴーグルを開発するハード企業、仮想展示会を運営するプラットフォーマー、3D空間を描画するソフトウェア企業などが該当します。
●国内でも「実需」が動き始めている
NTTドコモが法人向けメタバース展示会システムを商用化するなど、企業マーケティングへの実装が進んでいます。広告の単価も従来SNSより1.5〜2倍の水準とされ、現実的な収益モデルが整い始めています。
このような流れにより、「メタバースはもう夢物語ではない」「実際にお金が動いている市場」だと捉えられるようになり、関連企業の業績や株価にも注目が集まっています。
■メタバースは「デバイスの低価格化」と政府支援で投資チャンスが到来

これまでメタバースは「一部の先進層が使うもの」「高価で手が出しづらい」といったイメージがありました。しかし最近では、機材の値下がりと、国の支援策が重なったことで、より多くの人や企業が参加しやすい環境が整ってきています。
これによって市場規模が広がりやすくなり、関連企業の業績向上=株価上昇の期待も高まっているのです。
●VR・MRヘッドセットがついに「10万円以下」に
Meta社が販売する「Meta Quest 3」は現在7万円台で入手できるようになりました。
さらに、アップルが発表した高性能機種「Vision Pro」の登場で、業界全体の技術競争が加速。
この競争によって今後は他メーカーの価格も下がっていくと見られており、ユーザーの母数(利用者数)が一気に増える条件が整いつつあります。
ユーザーが増えれば、メタバース上での広告・アイテム販売・イベント開催などの収益機会も比例して拡大します。これはプラットフォーム運営企業にとって大きな追い風です。
●国が推進する「メタバース×地方創生」政策がはじまる
2024年12月に改訂された「デジタル田園都市構想」では、地方自治体が観光PRなどにメタバース空間を活用するための補助金制度が新たに設けられました。
これにより、地方自治体がバーチャル空間で特産品や名所を紹介する取り組みが広がり、仮想空間の制作・運用を行う企業にとって新たな受注機会となっています。
メタバースといえば「大企業の話」と思われがちですが、このように国や地方の取り組みが加わることで、より現実的で継続性のある需要が生まれてきているのです。
■メタバース関連は思惑で株価が跳ねやすい

メタバース関連株は、新しい技術や有名企業との提携報道など、ちょっとしたきっかけで株価が大きく動く可能性があります。「まだ成長途上のテーマ」だからこそ、注目が集まりやすく、短期間でチャンスを狙いやすいのが特徴です。
●monoAI technology〈5240〉は上場直後に4倍超

2022年、メタバース開発エンジンを手がけるmonoAI technology〈5240〉は、上場直後に「メタバース」というキーワードが材料視され、株価は公開価格の3倍以上に急騰しました。話題の中心にいたことで個人投資家の注目を集め、大きな値幅が出た事例です。うまく流れに乗れば短期でもリターンが狙えるという好例ともいえます。
●スマートバリュー〈9417〉も提携報道で急騰

2022年3月、自治体とメタバースを組み合わせた実証実験の報道が出た際、スマートバリュー〈9417〉は連続ストップ高。メタバース空間を提供するcluster社との連携が材料視され、「地方創生×メタバース」文脈で一気に買いが集まりました。
公共分野や地方自治体の関与は信頼感も大きく、投資家に安心感を与えるテーマとして注目され、思惑先行でも背景が明確であれば値動きにつながりやすい例です。
■【メタバース関連株】上昇の波に乗るために“落とし穴”も知っておくべき

メタバース関連株は話題に乗れば大きく上がるチャンスがありますが、そのぶん値動きも激しく、注意点を知らずに飛び込むと痛い目を見ることもあります。ここでは「知っておけば安心できるポイント」を事前に押さえておきましょう。
●急騰の裏には急落のリスクもある
メタバース関連は、展示会や連携ニュースなどちょっとした材料で急騰することがありますが、同じように「材料が一段落しただけ」で一気に下がるケースもあります。
たとえば発表翌日に買いが殺到し、その翌週には売りが優勢になるなど、短期的な値動きの振れ幅が大きいのが特徴です。エントリー時には「どこまでなら損しても大丈夫か」を決めておき、**逆指値(自動売却の注文)**を活用しておくと安全性が高まります。
●まだ発展途中の企業が多く業績が安定しづらい
メタバース事業を手がける企業の多くは、いままさに「受託開発からストック型ビジネスへ」と移行している途中です。そのため、四半期ごとの利益が安定せず、決算ごとに上がったり下がったりしやすい傾向があります。
数字を見るときは営業利益だけでなく、営業キャッシュフローや受注残(すでに契約済の案件)もチェックしましょう。数字に裏付けがあるかを見ておくと、安心感のある企業を選びやすくなります。
●大手プラットフォームへの“依存度”もチェックを
メタバース空間の多くは、GoogleやMeta、Appleなどの大手プラットフォームに乗って動いています。そのため、小さな企業はプラットフォームの仕様変更や手数料改定などの影響を受けやすい側面があります。
取引先が一社に偏っていないか、自社で開発しているIP(ゲームや空間など)を持っているかなども、中長期で安心して保有するための重要なポイントです。特に中小型株はこのチェックが差を生むこともあります。
このように、事前に「どんなところに気をつければいいか」を理解しておくだけで、メタバース関連株との向き合い方がずっと変わります。次のブロックでは、いよいよ注目の銘柄リストをご紹介します。話題性だけでなく、実績や将来性にも注目していきましょう。
■今注目のメタバース関連銘柄8社

●グリー〈3632〉

グリーは、メタバース事業「REALITY World」を中心に、VTuberライブ配信アプリ「REALITY」をグローバルに展開しています。特に東南アジアや北米を中心に海外ユーザーが増加しており、2024年度には法人向けの空間制作案件が急伸しました。
企業イベントやアバター広告、バーチャル展示会などで導入が進んでいます。
これにより、BtoCモデル中心だった収益構造がBtoBへと移行しつつあり、営業利益率は前年同期比で3ポイント改善しています。今後はWeb3やNFTとの連携によって、さらなる収益機会の拡大が期待されています。
●コナミグループ〈9766〉

保有する人気IP(遊戯王、桃太郎電鉄、パワプロなど)を軸に、eスポーツやデジタルエンタメ事業を拡大中。バーチャル空間でのゲームイベントや映像配信、オンライン対戦環境の強化など、リアルとデジタルを融合させたユーザー体験の向上を図っています。
また、Web3領域への取り組みとして、NFTやブロックチェーン技術を活用したゲームコンテンツの開発に言及しており、今後はIPと新技術を掛け合わせた新たな収益モデルの創出が期待されています。現時点ではNFTマーケットプレイスの開設は未定ながら、Web3分野への注力方針は継続中です。
●カヤック〈3904〉

「地域×メタバース」という独自の分野に注力している企業。独自の「メタバース事業部」を有し、VR空間の企画・制作・運営まで一貫して手がけるクリエイティブ企業です。自治体や企業と連携したバーチャルイベントや空間演出などを多数展開しており、地域活性・教育・採用・観光など多様なテーマで社会実装を進めています。
2024年度には、地域メタバースや行政イベント向け仮想空間の受託案件が増加しており、現実の社会課題に対して“バーチャルで解決策を提案できる企業”としての立ち位置を強化。エンタメだけでなく、実需のある公共分野でのメタバース活用実績が注目されています。
●その他のメタバース関連注目銘柄
銘柄名 | 市場 | 企業概要 |
【5240】monoAI | 東証グロース | 法人向けメタバース開発エンジン「XR CLOUD」提供。 |
【9417】スマートバリュー | 東証スタンダート | 自治体 DX × 仮想空間展示会システムを販売。 |
【6736】サン電子 | 東証スタンダート | 子会社が北米で VR/AR ソリューション事業を展開。 |
【6758】ソニーグループ | 東証プライム | 純正 VR デバイスと IP コンテンツの融合で優位。 |
【3678】メディアドゥ | 東証プライム | 電子書籍に関連して3DCGや仮想空間コンテンツ展開の余地あり |
■メタバース経済圏は2030年に100兆円規模に成長へ

メタバースは単なるトレンドではなく、今後の社会インフラになり得る“次世代の経済圏”として注目されています。世界全体では2030年までにメタバース関連の支出が1兆ドル(約100兆円)を超えるという予測もあり、投資家にとっては中長期での成長テーマとなりつつあります。
●5G×AIによる“シームレスな仮想体験”が現実に
次世代通信(5Gや6G)とAI技術の進化が、仮想空間の体験レベルを飛躍的に高めています。「通信遅延1ミリ秒」が実現すれば、仮想空間と現実の間に違和感がなくなり、会話や操作もリアルタイムで行えるようになります。
2027年には6Gの本格導入も予定されており、これが“イベントドリブン”となって、再びメタバース関連銘柄に注目が集まる可能性も。ネットワーク環境の整備は、まさに仮想空間の“道路整備”のような役割を果たします。
●ユーザー数の増加で経済圏が広がっていく
近年では、低価格なMRグラス(複合現実ゴーグル)やスマホ連携型の軽量デバイスが登場し、一般ユーザーにもメタバースが身近になりつつあります。「誰でも簡単にログインできる」環境が整えば、ユーザー数(母数)は一気に増加します。
ユーザーが増えると、その分だけ広告収入、デジタルアイテムの販売、バーチャル空間での決済なども活性化。このように、人の流れがあるところに“経済”が生まれるという原則が、メタバースの中でも成立し始めているのです。
●産業メタバースでBtoBの需要も拡大中
エンタメやSNSだけでなく、工場や建設現場などでもメタバースの技術が活用され始めています。大手メーカーは、製品設計や施工シミュレーションに3D CADとAIを組み合わせた仮想空間(デジタルツイン)を導入し、生産性を高めています。
これにより、設計や試作のコスト削減・スピード向上が実現できるため、今後も多くの業種でメタバース導入が進むと予想。実際に、こうした開発を支援するSIer(システムインテグレーター)企業への受託案件も増加傾向にあり、BtoB関連銘柄にも追い風が吹き始めています。
このように、メタバースはエンタメ分野にとどまらず、インフラ・産業・行政など社会全体を巻き込んだ“巨大経済圏”として形成されつつあり、成長スピードの速いテーマだけに、早い段階で関連銘柄を押さえておくことが、将来の投資成果に大きくつながる可能性があります。
■まとめ
メタバース関連株とは「仮想空間の世界を裏側から支えている企業に投資する」という、比較的わかりやすいテーマです。
VRゴーグルのようなハードウェアを作っている企業、仮想空間そのものを提供するプラットフォーマー、アバターやゲームなどのコンテンツを展開する企業など、幅広いジャンルが関わっています。
こうしたテーマ株は、将来性の高さから資金が集まりやすく、話題になれば一気に株価が跳ねることもあります。ただしその反面、「思惑」だけで動く場面も多く、材料が出尽くすと急落するケースも少なくありません。
メタバース関連株に投資をする際は、次のような視点を意識しておくと安心です。
①その企業は、仮想空間のどの部分で収益をあげているのか?
(ハードなのか、空間提供なのか、コンテンツ制作なのか)
②実際に売上や利益が出ているのか?
将来的に伸びそうな受注残や営業キャッシュフローがあるか?
③大手プラットフォームに依存しすぎていないか?
(GoogleやMetaなどの規約変更で影響を受けやすい構造になっていないか)
これらを冷静に見極めることで、将来的に成長が期待できる企業と、一時的なブームで終わってしまう銘柄とを見分けやすくなります。
メタバースは「次世代インターネットの主戦場」とも言われる注目分野です。流行に乗る前に、まずは自分なりの投資戦略やルールを持っておくことが、ブレない投資判断につながります。
本記事をきっかけに、仮想空間という新しい経済圏への理解を深め、将来の有望企業を見つけるヒントにしていただければ幸いです。
執筆者情報
編集部
INVEST LEADERSを運営する顧問投資会社「日本投資機構株式会社」の代表取締役を含めたスタッフ及びサポートアナリストの記事を掲載しています。株式投資や金融に纏わる話題は勿論のこと、読者の暮らしや生活を豊かにするトピックスや情報を共有していきます。