私たちの暮らしに欠かせないガソリンや化学素材は、24時間止まらずに動き続ける巨大なプラントから供給されています。
しかし、国内の石油精製・石油化学プラントには、高度経済成長期に建設され、すでに40年、50年が経過した設備も少なくありません。
安定供給を守るには、設備の点検・補修・改造が欠かせないのです。
この見えない仕事で産業インフラを支えているのが、レイズネクスト株式会社(6379)です。
同社は全国100カ所以上の拠点と4,000社以上の協力会社を束ね、プラントの設計・建設から日常保全、定期修理、改造までを一気通貫で担っています。
26年3月期の営業利益は前期比35.5%増の147億1,300万円。
27年3月期は営業減益を見込みつつも、年間配当117円を下限とする還元強化に踏み切り、足元の予想配当利回りは約3.8%(2026年8月25日時点)と高水準です。
石油需要の先細りが語られるなかで、なぜ同社は安定した収益と手厚い還元を両立できるのでしょうか。
その答えを探るべく、経営企画部副部長(兼)経営企画部広報・IRグループマネージャーの大久保孝志氏にお話をうかがいました。
2019年の経営統合で、プラントの一生を支える会社へ
現在のレイズネクスト社は、2019年7月に新興プランテック社とJXエンジニアリング社が経営統合して誕生しました。
新興プランテック社は、顧客の工場内に常駐しながら設備を守るメンテナンスを得意としていました。
一方、JXエンジニアリング社は、大手石油会社の工務部門を出自とし、プラントの設計・建設や大規模な改造工事に強みを持つ企業です。
両社の強みを融合させて、「お客様のプラントのライフサイクルを建設からメンテナンスまで、一気通貫で支える」ために、この統合に至りました。

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しかし、統合直後の2020年には新型コロナウイルスの感染が拡大し、苦労もあったと大久保氏は話します。
「やはり異なる企業文化や業務プロセスを統合するのが、一番苦労したところです。
それを乗り越えるために、どういう部門があって、どういう仕事をしているかが見えるようにする取り組みを行いました。
また、共通の教育プログラムなども設けて、社員同士のつながりや交流の機会を増やしてきました。
しかし、2020年は新型コロナウイルスの感染拡大もありましたので、交流の機会という面では相当大変でしたね。
徐々にコロナウイルスの感染拡大が落ち着いて、2023年あたりからまとまりが出てきたという感じです。
現在は融和をおおむね達成できたかなと思います」
災害時には全国から人と物資を集め、産業インフラを復旧

レイズネクスト社の仕事が、日常生活を送る私たちの目に触れることはほとんどありません。
しかし、同社が守っているのは、暮らしや産業に欠かせない製品を生み出す、社会の土台となる設備です。
「単なる工事会社ではなく、エネルギーや素材を安定的に供給する社会インフラの下支えになっている会社だと、ぜひ知ってほしい」と大久保氏は話します。
日常の当たり前を守るのはもちろんのこと、大規模災害時などの復旧も同社の重大な任務です。
例えば、2011年の東日本大震災。仙台地区のプラントが甚大な被害を受けました。
給油を待つ車がガソリンスタンドに長い行列をつくる光景をニュースで目にした方も多いはずです。
人々の生活も、復旧作業そのものも、燃料がなければ前に進みません。
一刻も早くガソリンを送り出してほしい。そんな切実な要請が、同社に寄せられました。
これを受けて同社は、全国のネットワークを一斉に動かしました。
「他の地域から物資や人を集めて、復旧作業にあたりました。
当社は全国ネットワーク、拠点もありますし、協力会社さんのネットワークもありますので、それらの連携によってインフラの早期復旧に貢献できたと思っています」
現場を知り尽くしていることが、簡単には代替されない強み

レイズネクスト社だからこそ担える工事や強みをたずねると、大久保氏は「現場をよく知っていること」、そして「動員力」「元請遂行力」を挙げました。
「当社は、お客様の構内に常駐していたりしますので、現場の特性を熟知しています。
例えば、稼働中のプラント内で能力増強工事を行う場合、最適な設計、緻密な事前計画及び安全・品質最優先での施工管理が必要です。
そうした設計・管理によって、プラントを止める期間を最小限に抑え、無事故で完成させる点を評価いただいています」
プラントは、一つひとつ構造や仕様が異なります。
だからこそ、日々の点検や補修を行うなかで蓄えた設備の特性や工事の履歴といった情報が、稼働を守りながら工事をやり遂げる力になるのです。
さらに同社は、全国100カ所以上の拠点と4,000社以上の協力会社ネットワークを活かし、大規模工事はもちろん、災害による設備トラブルなど急を要する工事にも対応してきました。
そして、元請として安全・品質・工程を管理し、工事を完成まで導く「元請遂行力」も備えています。

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プラント工事では、価格以上に、安全に、予定どおり工事を終えられるかが重視されます。
長年の常駐業務で培った現場の知見と顧客との信頼、全国規模の施工体制が、同社が選ばれ続ける理由です。
メンテナンス需要を取り込みつつ、成長分野も開拓
レイズネクスト社の仕事が社会的な重要性を持つ一方で、同社の主要顧客は石油精製・石油化学プラント。
日本では、石油製品の需要が中長期的に減っていく見通しです。
需要が細れば、レイズネクスト社の仕事も減っていくのではないか…。
投資家として、まず気になるのはこの点でしょう。
足元の市場環境と、将来の需要減少に向けてどう布石を打っているのかをまずはうかがいました。
40年、50年を経たプラントが、底堅い需要を生んでいる
同社も、石油業界向けの工事需要が長期的に減少する方向性は否定していません。
しかし、安定供給責任と設備の老朽化を背景に、足元のメンテナンス需要はむしろ底堅く推移しています。

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「メンテナンス需要は非常に底堅い状況です。
特に高度経済成長期に建設された、40~50年といった年数が経過したプラントが現在も稼働しており、その補修や改造のニーズが生まれています。
経済安全保障の観点から、国内設備を安定的に稼働させる重要性も高まっています」
そのプラントを長持ちさせているのが、同社の仕事とも言い換えられます。
「日本では、何年かおきに装置を止めて、設備を開放して点検することが、法律で決まっています。
だからこそ長持ちしているのかなと思います」
プラントのメンテナンスは、景気が悪いからと先送りできる設備投資とは性格が異なります。
高圧ガス設備やボイラー、危険物タンクなどには法令で定期検査が義務付けられているからです。
稼働を続ける限り、設備の種類や状態に応じて、運転を停止し、内部を開放して点検・補修する必要があります。
この簡単にはなくならない需要が、レイズネクストの安定収益を支えています。
脱炭素分野への布石|LNG・液化水素タンクの受注体制を構築
足元の底堅いメンテナンス需要を土台に、同社は長期的な需要の変化を見込んだ布石も打っています。
2025年4月には、川崎重工業と協業覚書を締結。
LNGや液化水素を貯蔵する低温タンクの受注体制構築を進めています。

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「当社の現場力や全国の拠点網と川崎重工殿の技術や知見を融合させようとしています。
現在は受注体制を構築している段階で、本格受注は脱炭素関連の大型投資がどれだけ具体化するかに左右されます。
それに遅れないよう、準備を進めています」
近年、脱炭素の流れは一方向に進んでいるわけではありません。
第2次トランプ政権発足後の米国では、脱炭素プロジェクトの見直しが進み、企業の投資判断も慎重になっています。
とはいえ、この分野は政策や補助金次第で、再び動き出す可能性もあります。
そこで同社がとるのは、二段構えの戦略。
足元では既存タンクの保全やプラントの省エネルギー化・高効率化といった改造需要を着実に取り込み、将来の大型投資に備えて低温タンクの技術と受注体制を整えています。
26年3月期からは、タンク事業の業績を独立して開示。
同年度のタンク事業売上高は既存タンクの保全工事にけん引され、前期比20.4%増の280億6,100万円となりました。
脱炭素投資がどのようなペースで進んでも、受注機会を逃さないように、同社は準備を重ねています。
石油・化学で培った安全・品質管理を半導体関連に横展開

もう一つの成長領域として、レイズネクスト社は半導体分野でも着実に実績を重ねています。
手がけるのは半導体工場そのものではなく、半導体づくりを支える材料や化学原料の生産設備。
ごくわずかな汚れも許されないクリーンルームなど、高度な品質管理と厳格な工程管理が求められる世界です。
完成済みの事例としては、JX金属の磯原工場における半導体材料工場があります。
延床面積約3,700㎡のクリーンルームを備えた工場を、企画から建設、障害建物の解体、外構整備まで一括工事として施工。
コロナ禍で建設資材の納期が極端に延びるなか、部材を標準化する「システム建築」を早期に採用し、工期の短縮とコスト変動の抑制を両立させました。
さらに26年3月期には、国内化学材料メーカーから半導体関連化学原料の生産設備を受注。
▼基本設計をまとめたBDP(Basic Design Package)の作成から設計、調達、建設まで一貫して担い、2028年4月の完成を目指しています。

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「石油や化学プラントで培った高度な安全・品質管理能力と、一貫した元請遂行力が評価されていると思います。
特に厳しい工程管理やクリーンルーム建設などの特殊な要求に対して、当社の総合力を評価いただいたと考えています」
半導体関連の高機能材は、品質管理と機密保持の観点から国内生産が続く見通しです。
石油・化学で培った技術を、隣り合う成長市場にも応用し、実績を一つずつ積み上げることで、受注拡大を狙っています。
人手不足が、レイズネクスト社の「元請遂行力」を希少に
レイズネクスト社が属する建設・プラント業界には、「人手不足」という課題もあります。
しかし、同社の場合、その人手不足が競争優位性を一段と高める側面もあります。
「業界全体で人手不足が進行するなか、元請として一定規模の仕事をやり遂げられる会社は限られています。
信頼できるパートナー企業に、工事を一括して任せたいというニーズも強まっていますので、以前より案件の範囲を広げやすくなっています」
大規模なプラント工事では、単に作業員を集めればよいわけではありません。
必要な人員と協力会社を確保し、安全、品質、工程を一元管理して、工事を最後までやり遂げる力が求められます。
そこで同社の持つ全国100カ所以上の拠点と4,000社以上の協力会社ネットワークの希少性が増しているのです。

レイズネクスト株式会社 2026年3月期 通期決算説明資料 P14
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人手不足をボトルネックにしないための取り組み
もっとも、人手不足はレイズネクスト社にとっても、他人事ではありません。
引き合いが旺盛となるなか、工事の時期が重なり、受注機会を逃すケースもあるといいます。
だからこそ同社は、人材の確保を経営の優先課題としています。
「人手不足は成長のボトルネックになり得るので、最優先で対策を強化しています。
採用面では、会社のブランディングを強化して、優秀な人材を採り、ベテランと若手をペアにして、早期の育成・戦力化に注力しています。
加えて、現場の機械化や自動化も進め、生産性の向上も同時に図っています」
その機械化の一例が、ENEOS川崎製油所で導入した、熱交換器チューブの内面自動洗浄機です。
リモコンによる遠隔操作で、作業者が高圧水に触れる危険を大きく減らしながら、従来の手作業に比べて作業時間を最大20%短縮でき、安全性及び作業効率も向上しているといいます。
安全性と効率を同時に高める取り組みです。

レイズネクスト株式会社 2026年3月期 通期決算説明資料 P27
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もちろん、プラントは一つひとつ設備や条件が異なるため、すべてを自動化できるわけではありません。
それでも、取り外した部品の洗浄や検査など、標準化できる工程を一つずつ機械に置き換える余地はまだあるといいます。
こうした地道な積み重ねに加えて、M&Aによる供給力の底上げも狙います。
「普段から取引があり、信頼関係のある会社をグループに迎え入れて、協力会社の供給力・施工能力を着実に維持・向上させることで、取りこぼしをなくしていきます」
2026年5月に中期経営計画の目標数値を引き上げ
ここからはレイズネクスト社の業績を見ていきましょう。
同社は2026年5月に第3次中期経営計画を見直しました。
▼最終年度である29年3月期の売上高を従来の1,710億円から1,950億円へ、営業利益は136億円から163億円へ引き上げています。

レイズネクスト株式会社 2026年3月期 通期決算説明資料 P34
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目標の引き上げは好感できる一方、26年3月期の営業利益はすでに147億1,300万円に達しています。
そこから29年3月期までの増益率は約11%。3年かけての伸びとしては、やや控えめにも見えます。
また、中期経営計画を公表からわずか1年で見直した背景には、どのような変化があったのでしょうか。
中期経営計画見直しの意味や、目標達成までの道筋を詳しくうかがいました。
中期経営計画の見直しは、単なる数値目標の引き上げではない
中期経営計画を見直した背景には、同社を取り巻く事業環境の変化がありました。
当初の計画では、カーボンニュートラル関連投資の拡大も成長機会の一つとして想定していました。
ところが、その後は世界的に脱炭素投資が停滞し、中東情勢も不安定化。
エネルギー政策の先行きは、一気に見通しにくくなりました。
その一方で、縮小が予想されていた石油精製・石油化学の分野で、既存設備を安全に使い続けたいという需要が、想定以上に強まりました。
そこで同社は、方針を明確にしました。
脱炭素分野への準備は続けつつ、まずは足元で確かに存在するメンテナンスや更新・改造の需要を、しっかり取り込んでいきます。
すでに担当している拠点で工事の範囲を広げ、同じ顧客の別の地域や、拠点周辺の新規顧客へと受注を広げていく方針です。
既存案件を起点とした受注領域の拡大と、その受注機会を取り込むための人的資本、M&A、DX・機械化への投資を、より具体的に打ち出したのです。

レイズネクスト株式会社 2026年3月期 通期決算説明資料 P35
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レイズネクスト社の長期業績を左右する4年サイクル
こうした戦略のもと、29年3月期に営業利益163億円を目標として見据えるレイズネクスト社。
この中期経営計画最終年度は、「定期修理サイクル」のピークの年でもあります。
同社の長期業績を読み解くうえでは、この定期修理のサイクルを意識しておきたいです。
石油精製・石油化学プラントでは、装置を止めて行う大規模な定期修理が、1年から4年ごとに実施されます。
工事は短期間に集中し、大規模な案件では多数の作業員を一斉に動員することも。
その結果、同社全体の業績も、おおむね4年ごとに工事量が増える波を描きます。
直近では、25年3月期が定期修理の集中年でした。
本来なら、その翌年の26年3月期は工事量が減る「谷」の年になるはずでした。
ところが、26年3月期の売上高は前期比10.9%増の1,745億円、営業利益は同35.5%増の147億円に。
定期修理の追加工事や保全工事に加え、設計から建設までを一括して請け負う大規模工事などが、収益を押し上げました。
谷にあたる年でも、増収増益を達成したのです。

レイズネクスト株式会社 2026年3月期 通期決算説明資料 P22
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そして中期経営計画最終年度の29年3月期は、次の定期修理の集中年、つまりサイクルのピークにあたります。
営業利益目標163億円には、受注領域の拡大や採算改善だけでなく、この修理サイクルによる押し上げも含まれているのです。
「定期修理のピークによる寄与に加えて、受注領域の拡大や採算改善といった利益の積み上げもあり、両面を組み合わせた目標です」と大久保氏も話します。
利益率だけを重視しない「選別受注」で長期的な成長を狙う

工事量が減るはずの年でも増収増益を達成したレイズネクスト社。
この調子が続けば、定期修理の次なるピークとなる中期経営計画最終年度は、計画以上の収益拡大余地があるのではないかとの期待も高まります。
この点について、大久保氏はこう話します。
「決して中期経営計画を意図的に低く見積もっているわけではありません。
とはいえ、定期修理需要などが堅調に推移し、脱炭素関連の動きも想定以上に上回って重なった場合には、上振れる可能性もあるとは思います」
ただ、同社が見据えているのは、4年に一度の山を高くすることだけではありません。
足元の利益率だけを追うのではなく、数年先を見据えて、一件一件の仕事を選んでいます。
「単純に利益率が高い案件を選んで受注をしているわけではありません。
例えば、建設工事であれば、その後のメンテナンスにもつながりそうな案件を優先します。
また、今後力を入れようとしている、成長性の高い未来につながる仕事も取っていく必要があります」
一つの案件でどれだけ利益を得るかではなく、その案件を起点に、どれだけ長く仕事を広げられるか。
こうした選別受注の積み重ねは、4年ごとの波を乗りこなしながらも中期経営計画期間を超えて伸びていく、安定した収益基盤につながることでしょう。
27年3月期は減益計画、上振れ余地は?
続いて、今期(27年3月期)の見通しを詳しく見ていきましょう。
27年3月期は、売上高が前期比0.3%増の1,750億円、営業利益が同11.6%減の130億円となる見通しです。
中東情勢の不安定化に伴う資機材の調達遅れなど、外部環境の不透明感を踏まえ、「現時点で見通せる案件を中心に計画へ織り込んだ」としています。

レイズネクスト株式会社 2026年3月期 通期決算説明資料 P32
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ここで注目したいのが、あえて計画に含めていない需要があることです。
中東情勢を受けた原油タンクの計画外の払い出しによって、新たなタンクメンテナンスが発生する可能性がありますが、こうした需要は計画に織り込まれていません。
裏を返せば、計画に織り込んでいない需要をうまく取り込めれば、上振れの余地は残されていると言えます。

レイズネクスト株式会社 2026年3月期 通期決算説明資料 P30
https://pdf.irpocket.com/C6379/uOn6/B6g1/H1Mt.pdf
27年3月期の業績は下期偏重である点にも注意
ただし、27年3月期の業績計画が下期偏重である点には注意が必要です。
上期の営業利益計画は前年同期比42.4%減の45億5,000万円であるのに対し、下期は同23.9%増の84億5,000万円と、大きく差があります。
これは、大型工事の完成が下期に集中するためです。
つまり、上期の利益が弱く見えても、それだけで悲観する必要はなく、下期にかけての収益拡大が期待できます。
一方で、資機材の調達や工事の進捗が遅れれば、売上・利益の計上が後ろへずれ込み、通期計画が下振れるリスクがある点は、頭に入れておきたいところです。
もう一つのリスクとして、建設業界で広く懸念されているのが、資材価格や人件費の上昇です。
同社はこの影響について、「資材や人件費の高騰が、利益を大きく押し下げることは少ない」と説明します。
その理由は、価格の決め方にあります。
同社では、協力会社から資材費や人件費を含む見積もりを受け、その内容を踏まえて顧客へ価格を提示する案件が多いといいます。
上昇したコストを比較的価格へ反映しやすく、値上がり分を一方的に抱え込みにくい仕組みです。
この点は、投資家にとって安心材料と言えるでしょう。
高配当と安定性を武器に長期保有株主を増やす
レイズネクスト社の株価を確認すると、2026年2月13日に上場来高値である2,769円をつけた後、調整局面を迎えつつも底堅い値動きを継続しています。

※TradingViewより引用
プラントメンテナンス需要の強さを背景とした業績面の堅調さと高い水準の株主還元が、同社の株価を支えていると考えられます。
利益変動に左右されない安定配当を掲げる
2026年5月13日に同社は、「60%以上の連結配当性向を目標」としていた配当方針を、「2026年3月期配当実績117円を下限とし、連結配当性向60%と株主資本配当率(DOE)7%のうちいずれか高い方を選択する」方針に変更しました。

レイズネクスト株式会社 2026年3月期 通期決算説明資料 P40
https://pdf.irpocket.com/C6379/uOn6/B6g1/H1Mt.pdf
同社は安定した収益基盤を有しているものの、定期修理工事の波によって、ピーク年の翌年に収益が減少してしまうリスクがあります。
こうした局面で配当が大きく減少しないよう、利益に連動する配当性向に、株主資本を基準とするDOEと下限配当を組み合わせる設計にしたわけです。
こうした還元方針の変更は、安定配当を求める個人投資家にとって、素直に歓迎できるものでしょう。
26年3月期末の自己資本比率は75.5%と高く、キャッシュフローの創出力から考えても、還元余力が十分にある点も評価できます。
株主優待とIR強化で、長期保有株主を増やす

さらに、同社は2025年に株主優待制度も導入しました。
毎年3月末と9月末時点で400株以上を保有する株主に、保有株式数に応じて「レイズネクスト・プレミアム優待倶楽部」のポイントを付与する仕組みです。
長期保有によって付与ポイントが増える設計にもなっています。
高配当と優待の組み合わせからは、短期の売買を繰り返す株主よりも、事業を理解して長く持ち続けてくれる株主を増やしたい、という意図が読み取れます。
こうした取り組みの背景を、大久保氏はこう語ります。
「当社には安定収益と成長性の両方がありますが、それが現在の市場評価に十分に伝わっていないと考えています。
カーボンニュートラル関連や技術革新の取り組みなども積極的に発信し、長期で保有していただける株主を増やして、当社の事業価値を深く理解していただきたいと考えています」
その事業価値を深く理解するうえでは、目先の売上高だけでなく、この先の受注がどれだけ積み上がっているか、そしてそれを採算よく形にできているかを見ていくと、同社の実力がより立体的に見えてきます。
「当たり前」を守る力が、次の成長をつくる

顧客の構内に常駐して設備を知り尽くし、法定点検を着実にやり遂げ、災害時には全国から人を集める。
レイズネクスト社が長年積み上げてきた現場の知見と顧客の信頼、協力会社のネットワークは、簡単には代替されない競争力です。
石油需要の長期的な減少や人手不足といった逆風、脱炭素投資の遅れといった不確実性はあります。
それでも、国内設備を安全に使い続けたい需要がすぐに消えることは考えにくく、むしろ設備の高経年化と供給力不足のなかで、工事を確実にやり遂げられる会社の価値は高まっています。
同社はこの安定収益を土台に、タンクや半導体材料、脱炭素分野へと仕事を広げ、利益のベースラインを一段引き上げようとしています。
高い成長率を追う銘柄ではなく、社会に不可欠な需要と手厚い還元を受け取りながら、利益基盤の着実な拡大を待つ。
レイズネクスト社は、長期投資家にとって、そんな向き合い方のできる会社ではないでしょうか。
※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。
執筆者情報
日本投資機構株式会社 証券アナリスト(CMA) テクニカルアナリスト(CMTA®)
国内株式、海外株式、外国為替の領域で経験豊富なアナリスト・ファンドマネージャーのもと、金融市場の基礎・特徴、マクロ経済の捉え方、個別株式の分析、チャート分析、流動性分析などを学びながら、日本投資機構株式会社では唯一の女性アナリストとして登録。自身が専任するLINE公式など各コンテンツに累計7000名以上が参加。Twitterのフォロワー数も3万人を超える人気アナリスト。

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