環境規制や脱炭素の流れの中で「次世代太陽電池技術」が注目を集めています。その中で、ペロブスカイト太陽電池は高効率・低コストの可能性を秘めた技術として業界関係者から熱視線を浴びています。
とはいえ「聞いたことはあるけど何がすごいのか分からない」「投資対象になるのか?」という初心者の疑問も多いはず。本記事では、技術の仕組みから課題、既存技術との比較、さらに投資視点までをわかりやすく整理します。
ペロブスカイト太陽電池はコストを抑えつつ高効率化を狙える技術

ペロブスカイト太陽電池が「次世代の本命」と注目される理由は、今の主流であるシリコン太陽電池に比べて安いコストで作れて、しかも発電効率が高い可能性があるからです。
薄く作れるからコスト削減につながる
ペロブスカイトは「薄膜」と呼ばれる非常に薄い層で太陽電池を構成できるのが特徴です。必要な材料の量を大幅に減らせるため、原材料費を抑えられるだけでなく、製造工程も比較的シンプルにできます。これにより、従来のシリコン系より低コストで生産できる可能性が高いと期待されています。
光を効率よく吸収して電気に変換できる
この素材は光を吸収する力が強く、光を受けて生じる電子や正孔(プラスの電荷)が移動しやすい性質を持っています。そのため、薄い膜でも効率的に電気に変換できるのが大きな強みです。つまり「材料を節約しても十分な発電ができる」仕組みを実現できるのです。
ペロブスカイト太陽電池の技術的課題として「安定性」と「耐久性」が克服すべき壁

ペロブスカイト太陽電池は夢のある技術ですが、実際に広く普及させるには長期間屋外で使える耐久性や安定性をどう確保するかが大きな課題です。
湿気・熱・紫外線に弱いのが弱点
この素材は水分や酸素、強い紫外線や高温環境にさらされると分解や劣化が進みやすい特徴を持っています。研究室での小型セルでは高い効率を示しても、屋外に長く設置した場合には性能が急激に落ちてしまうケースが報告されています。
実用化には「守る技術」が不可欠
そこで注目されるのが「モジュール化」や「封止技術」です。小さなセルを集めて大きなパネルにしたり、特殊なフィルムや樹脂で密封して湿気や熱から守る研究が進められています。これらの技術が十分に成熟すれば、商業利用に耐えうる寿命を実現できると考えられています。
シリコン太陽電池との比較で将来性が際立つ

今の太陽光発電は、ほとんどがシリコンを材料にした太陽電池です。すでに性能は成熟していますが、その一方で「重い」「設置できる場所が限られる」「コストが高止まりしている」という課題も残っています。ペロブスカイト型は、これらの弱点をカバーできる新しい存在として期待されています。
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重量・設置性の優位性
シリコン太陽電池はガラス基板を使うため重く、屋根の強度や設置スペースに制約があります。一方でペロブスカイトは薄くて軽く、柔らかいフィルム状にできるため、壁や窓ガラスなど「今まで太陽光を設置できなかった場所」にも応用が広がる可能性があります。
変換効率の伸びしろ
発電効率を示す「変換効率」でも違いがあります。シリコンは単独セルで25%前後が限界に近いのに対し、ペロブスカイトはすでに25%以上を達成。さらにシリコンと組み合わせたタンデム型では30%超の実験結果も報告されており、「より効率よく電気を生み出せる材料」として研究が進められています。
ペロブスカイト太陽電池は世界各国で実証が進み商用化が視野に

ペロブスカイト太陽電池は、研究室だけの話ではなく、すでに「実際に使えるか」を試す段階に入っています。特に日本・中国・ヨーロッパでは、実証試験や量産の準備が一気に進んでおり、商用化が現実味を帯びてきました。
日本の大手企業も参入
日本では積水化学やパナソニックが先頭に立ち、屋外での実証実験を進めています。住宅の壁や窓に組み込むタイプを想定しており、日常生活に自然に取り入れられる形を模索中です。経済産業省も「次世代エネルギー」として支援制度を設け、企業の開発を後押ししています。
中国・欧州は量産体制を加速
中国では再生エネルギー大手のGCLなどが、すでに工場レベルでの量産ラインを整え始めています。ヨーロッパではイギリス発のOxford PVがタンデム型(シリコン+ペロブスカイト)の実用化を目指し、ドイツで工場を稼働。こうした動きは「世界的に実用化が近い」というシグナルといえます。
過去に急騰したペロブスカイト関連銘柄

ペロブスカイト太陽電池は商用化前から大きなテーマ性を持ち、材料発表や実証実験のニュースが株価を動かしてきました。特に2017年以降、積水化学やマクセルは報道をきっかけに短期的な急騰を経験し、投資家の注目を集めました。
積水化学工業(4204)

住宅建材で知られる積水化学は、2017年に京都大学と共同で世界最高効率のペロブスカイトセルを達成と発表し、市場から強く材料視されました。直近でも2024年12月に量産開始を発表した際、株価は前日比15%超急騰するなど、テーマニュースで過去何度も短期急伸しています。
マクセル(6810)

乾電池やメディアで知られるマクセルも、印刷技術を応用したペロブスカイト開発が報じられると株価が物色されました。2020年前後の試作成功報道では材料視され短期上昇を見せ、テーマ株特有の値動きを体現しました。その後は落ち着いた推移ですが、過去の急騰事例として注目されます。
今注目すべきペロブスカイト関連銘柄

2025年前後は、積水化学やマクセルに続き、素材やエネルギー分野で強みを持つ大手企業が商用化フェーズに関与し始めています。特に以下の2社は研究・実証面でリードしており、注目度が高まっています。
東レ(3402)

炭素繊維や高分子フィルムに強みを持ち、京都大学との共同研究を通じて世界最高クラスの変換効率を達成。耐久性を高める封止材やバリアフィルムの開発にも注力しています。素材分野の技術力から、商用化時にはサプライチェーンの中核を担う存在となる可能性が高いでしょう。
出光興産(5019)

有機薄膜や次世代エネルギー研究を手掛け、東京大学と共同でペロブスカイト・シリコンタンデムセルで変換効率28%を実証。石油化学だけでなく再エネ関連でも存在感を高めています。実証試験や国プロへの参画も多く、報道が出ればテーマ株として強く物色されやすい銘柄です。
その他のペロブスカイト太陽電池関連注目銘柄一覧
銘柄コード | 企業名 | 概要・関連性 |
5019 | 出光興産 | 有機薄膜の研究からペロブスカイトに応用。東大とタンデムセル28%達成。 |
4208 | UBE(旧宇部興産) | 樹脂や添加剤でセル耐久性向上に寄与。封止材など素材供給に期待。 |
4183 | 三井化学 | 高機能フィルムや接着剤分野で関与。NEDO実証にも参加実績あり。 |
4206 | アイカ工業 | 建材用樹脂・フィルムメーカー。建材一体型セルに素材提供の可能性。 |
4185 | JSR | 高分子材料の大手。電子材料分野から関連性が意識されやすい。 |
ペロブスカイト太陽電池関連は投資視点ではリスクとチャンスが共存

ペロブスカイト太陽電池は「次世代エネルギー」として大きな注目を集めています。新しい技術だからこそ株式市場では大きなチャンスがありますが、同時にリスクも伴うことを理解しておくことが大切です。
関連企業と株価の変動性
日本では積水化学やマクセル、三井化学などが材料や封止技術の分野で研究を進めています。海外ではイギリスのOxford PVや中国の大手企業が商業化に動き出しており、グローバルな競争が始まっています。こうした銘柄は「テーマ株」として一気に買われることもありますが、逆に研究の遅れや政策の変化で株価が急落することも少なくありません。
政策・規制が後押し
一方で、政府の再生可能エネルギー政策や「カーボンニュートラル(脱炭素)」の目標強化が進めば、普及に大きな追い風となります。つまり、国策や規制が味方につけば、関連企業の成長が一気に加速する可能性があるのです。投資家としては、ニュースや政府の方針、企業の実証実験の進み具合をしっかり追いかけることが重要です。
ペロブスカイト太陽電池の将来展望は「実用化スピード」と「市場規模」次第

ペロブスカイト太陽電池の未来がどうなるかを決める大きな要素は、どれだけ早く実用化できるか、そしてどれだけ大きな市場に広がるかです。
短期:実証段階から量産ラインへ
2025年から2027年頃にかけて、まずは住宅の屋根や窓、ビルの外壁といった「建材と一体化した使い方」で商用化が進むと予想されています。最初は小規模ですが、これがスタートの合図となり、株式市場でも「次世代エネルギーの初期投資テーマ」として注目される段階です。
中長期:既存シリコン市場の一部を置き換える
現在の太陽電池の主流はシリコン型で、世界全体の市場規模は年間200ギガワット(GW)を超えています。そのうちわずか10%でもペロブスカイトに置き換われば、数十GWという巨大市場が生まれる計算になります。このように市場規模が拡大すれば、関連企業の株価評価も大きく変化する可能性が高いでしょう。
まとめ
ペロブスカイト太陽電池は、「コストが安く効率も高い」という特徴を持ち、次世代の再生可能エネルギーとして世界中で注目されています。
一方で、湿気や熱に弱いといった「安定性・耐久性」の課題は残っており、これを解決できるかどうかが実用化のカギになります。
もし商用化が順調に進めば、住宅やビルの壁・窓に使える新しい市場が生まれ、投資の大きなチャンスになります。逆に遅れれば、株価が停滞する可能性もあるでしょう。
投資初心者の方は、今すぐ飛びつくのではなく「次世代エネルギーの代表格」として知識を持ち、関連銘柄を長期的なテーマ株としてウォッチするのが賢いスタンスです。
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編集部
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