TradingViewは、細かなチャート分析機能とPineScriptによる戦略開発環境を提供していますが、開発した戦略(ストラテジー)でそのまま日本株の自動売買を行うことはできません。
日本株の自動売買を行うには、専用ツールの利用とそれに合わせたコードの修正が必要です。
そこで本記事では、ChatGPTをコードの修正ツールとして活用し、TradingViewのストラテジーを日本株の自動売買ができるプラットフォーム「TradeStand(トレスタ)」で実行可能な仕様に変換する方法を解説します。

日本株の自動売買構築に必要なツールは?
OpenAIが開発した対話型AI「ChatGPT(チャットジーピーティー)」は、文章だけではなく、プログラムコードも理解できます。
自動売買の開発に使われるPineScriptやPythonのような言語も構造的に理解しており、「このコードをこう直して」と依頼すると、正しい構文で修正版を生成してくれます。
では具体的に、TradingViewのストラテジーを使って日本株の自動売買を構築するに当たって、どのようなツールを使い、どのような手順を踏めば良いのかを解説していきます。
TradingViewとは?世界標準のチャート分析ツール
TradingView(トレーディングビュー)は、世界で1億人以上が利用するチャート分析プラットフォームです。
ブラウザ上で株式やFX、暗号資産などのチャートを表示して、テクニカル分析・バックテスト・自動売買シミュレーションを行えます。
特徴的なのは、独自言語「PineScript」を使って売買戦略(ストラテジー)を作成できること。
ユーザー自身が売買ロジックを作成し、過去データで検証することで、感情に左右されない機械的なトレードを実現するための手助けが可能です。
しかし、TradingView単体では売買のタイミングなどを表示する「アラート通知」までしか行えず、実際の注文までは対応していません。
自動で売買まで行えるようにするには、「TradeStand(トレスタ)」との連携が必要になります。
TradeStand(トレスタ)とは?TradingViewと日本株をつなぐ橋渡し
TradeStand(トレスタ)は、TradingViewのアラート機能を使って、日本株の自動売買を実行できる国内初のプラットフォームです。
TradingViewで作成したストラテジーのアラートをWebhook経由で受け取り、証券会社(例:立花証券e支店など)のAPIと連携して自動発注を行います。
つまり、TradingViewが「頭脳(売買判断)」、トレスタが「手(発注)」という関係です。
この連携により、TradingViewで作った戦略を実際の株取引に落とし込むことが可能になります。
ただし、トレスタで売買の発注をできるようにするには、TradingViewのコードの一部をトレスタ対応仕様に修正することが必要です。
ここでChatGPTの出番です。
ChatGPTでTradingViewストラテジーをトレスタ対応仕様に
プログラミングに慣れていない人にとって、コード修正は難しそうに感じるかもしれません。
しかし、ChatGPTを使えば数行の指示文を送るだけで自動的に書き換えてくれます。
ChatGPTに次のような指示文を入力してみましょう。
ChatGPTはこのルールを理解し、以後は日本語で入力されたストラテジーの条件や、既存のストラテジーのコードをトレスタに対応する仕様に変更、新規作成してくれます。
しかも、コードの説明付きで出力されるため、初心者でも理解しやすいのが特徴です。
ChatGPTが生成したコードの例
実際にChatGPTが出力したコードの一部を見てみましょう。
試しに「2本の移動平均線のゴールデンクロスで買いエントリー、デッドクロスで決済のストラテジーを作って。」と命令したところ、下記のコードが作成されました。
——————————————————————
//@version=5
// 既に //@version=5 と strategy() がある場合は、重複しないように input と関数だけを追記してください。
// 必須インプット(最初に置く)
i_strategy_code = input(“”, title=”ストラテジーコード”)
// ドテン採用の有無と、エントリー方向の制限
i_use_flip = input.bool(true, title=”ドテン売買を採用する”)
i_entry_mode = input.string(“両方”, title=”エントリー許可”, options=[“両方”, “買いのみ”, “空売りのみ”])
// 方向許可フラグ
can_long() =>
i_entry_mode != “空売りのみ”
can_short() =>
i_entry_mode != “買いのみ”
// ラッパー関数(必要に応じて使ってください)
enter_long(id, qty, when) =>
if when and can_long()
strategy.entry(id, strategy.long, qty, comment=”:新規買い”, alert_message=i_strategy_code)
enter_short(id, qty, when) =>
if when and can_short()
strategy.entry(id, strategy.short, qty, comment=”:新規売り”, alert_message=i_strategy_code)
// クローズ(from_entry のIDで指定:例 “L” や “S”)
close_long(from_entry_id, when) =>
if when
strategy.close(from_entry_id, comment=”:返済売り”, alert_message=i_strategy_code)
close_short(from_entry_id, when) =>
if when
strategy.close(from_entry_id, comment=”:返済買い”, alert_message=i_strategy_code)
// ドテン説明:i_use_flip=true のとき、反対側の entry を出すだけで自動反転(クローズ+新規)
// 方向制限は can_long()/can_short() で制御。
——————————————————————
上記のように、トレスタで必要なコメントやアラートメッセージが自動的に追加されています。
しかも、ドテン(買い⇄売りの切り替え)設定も選択できるように調整済みです。
実際に動かしてみた結果(バックテスト)
このサンプルコードをTradingViewにそのまま貼り付けてバックテストしたところ、正常に動作しました。
バックテストも問題なく行え、ChatGPTが生成したシンプルな条件にもかかわらず、一定の利益を示す結果となりました。
また、TradingViewで公開されている他の無料ストラテジーをChatGPTに貼り付けても、自動的にトレスタ対応版へ変換されます。
コードの知識がなくても、自動売買の仕組みを簡単に構築できるのは大きな魅力です。
(※本記事の内容はあくまで教育・技術的な情報提供を目的としたものであり、特定の投資判断や売買行動を推奨するものではありません。)
ChatGPTをうまく活用するコツ
ChatGPTは、「指示が明確であるほど正確に応える」AIです。
たとえば「alert_messageを追加してください」ではなく、「返済売り時にcomment=’:返済売り’とalert_message=i_strategy_codeを追加してください」といった具体的な依頼をすることで、より完璧なコードを出力します。
また、「PineScriptのバージョンを5に変更して」「移動平均をEMAにして」といった細かい調整も一度に指示できます。
このように、ChatGPTを“コードアシスタント”として活用することで、コーディング作業を大幅に効率化できます。
注意点と今後の展望

ChatGPTを使えば自動売買の構築が簡単になりますが、過信は禁物です。
AIが生成するコードは正確性が高いものの、相場状況や環境によっては動作が異なる場合があります。
生成されたものをそのままTradingViewに入れても、エラーが出る場合もあります。
その場合は、表示されたエラーの原因を示すメッセージを貼り付けると、修正してくれたりもするので、エラーが全て解消されるまで根気よく貼り続けると良いでしょう。
また、自動売買は市場のリスクを伴います。
実際の運用では必ずデモ取引やバックテストで動作確認を行い、自己責任で判断してください。
今後、ChatGPTの精度はさらに高まり、音声指示や自動最適化も可能になると期待されています。
TradingView・トレスタ・AIが一体化することで、個人投資家でも本格的なアルゴリズム取引が可能な時代がすぐそこまで来ています。
まとめ|ChatGPT×トレスタであなたもAIトレーダーに!

ChatGPTを活用すれば、これまで専門知識が必要だったTradingViewのストラテジー修正を、数分で自動化できます。
TradingViewで戦略を作り、ChatGPTでコード変換し、トレスタで日本株の自動売買を実行する。
この流れを身につければ、あなたもAIトレーダーの仲間入りです。
AIと自動売買の融合は、もはや未来の話ではありません。
今日から一歩踏み出し、ChatGPTとともに新しい投資体験を始めてみてはいかがでしょうか。

執筆者情報
株式会社ナレッジクリエイション 代表取締役
個人投資家向けアルゴリズム取引の識者として各種メディアに掲載される。 金融業界に携わることを目標に法政大学に入学するも「金融とITの融合」の必要性を痛感しプログラム開発を独学で学びエンジニアとして活躍。 その後、大手BtoC投資顧問会社に入社しデータアナリストを経て、トレードシステム開発部門責任者として「金融とITの融合」に取り組む。2019年に独立し、現在は現役のエンジニアや個人投資家向けのアルゴリズム取引の識者として活躍中。
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