株式投資における板情報とは、その株の注文状況を一覧にしたものです。
現在はアルゴリズム取引が増え、板の動きが複雑化しているため、板読みは上級者向けのスキルと思われがちです。
しかし、売買注文を出す上で板情報の確認は必須ですので、きちんと理解しておく必要があります。
この記事では、板情報と指値・成行注文との関係や特殊な板状況の意味といった基本から、「板読みのコツ」までを初心者向けにわかりやすく解説します。
株の「板(板情報)」とは?基本を優しく解説

板情報とは、その株を「いくらで、何株買いたいか」という買い注文と「いくらで、何株売りたいか」という売り注文の状況を、価格帯ごとにリアルタイムで一覧にしたものです。
証券会社の取引ツールを通じて、誰でも簡単に確認ができます。
板を見れば、単に現在の取引価格を知るだけでなく、売りたい人と買いたい人のどちらが多いのかや、いくらで注文を出せば約定しそうかといった注文状況を把握できます。
売買成立までの流れ|時間優先/価格優先の原則

板に並んだ無数の注文は、「価格優先の原則」と「時間優先の原則」という株価を決めるための2つのルールに基づいて処理されています。
簡単な原則ですが、板を理解する上では必要な知識となりますので、押さえておきましょう。
価格優先の原則とは?|高い買い注文が優先される
価格優先の原則とは、「売り注文はもっとも価格の低いものから、買い注文はもっとも価格の高いものから優先的に約定させる」ルールです。
もっとも高い値段を提示した人が優先的に買い付けられ、もっとも安い値段を提示した人が優先的に売却できる、当然の仕組みです。
まず価格で優先順位が決まり、同価格の場合は後述する時間優先の原則が適用されます。
この原則の結果として、板上では常に「最も安い売り注文」が売り板の一番下(中央に最も近い位置)に、「最も高い買い注文」が買い板の一番上(中央に最も近い位置)に表示されます。
時間優先の原則とは?|早い者勝ちのルール
時間優先の原則とは、「同じ価格の注文であれば、先に出された注文から優先的に約定させる」ルールです。
簡単に言えば、早い者勝ちの原則です。
時間優先の原則によって、板にすでに注文が並んでいる場合、それらの注文が約定した後でなければ、新しい注文は通りません。
呼値(ティックサイズ)と板注文の関係
株式を売買する際に提示できる価格の最小単位(値刻み)を呼び値(ティックサイズ)と呼びます。
取引所では、株価の公平な形成と流動性を保つために、銘柄の現在の価格水準に応じて、呼び値の幅が厳密に定められています。
板に表示される価格は、株価水準ごとに定められたこの呼び値(ティックサイズ)に従って並んでいます。
呼び値の幅が広い銘柄は、板の価格間隔が粗くなります。
注文の種類と板の関係|成行・指値・逆指値とは?

さらに、注文方法もセットで覚えておきましょう。
代表的な注文方法は「指値注文」と「成行注文」です。
指値注文は、「1,000円で100株買いたい」のように価格を指定する注文方法です。
板情報に表示されているのは、この指値での注文株数です。
一方、「成行注文」は価格を指定せず「いくらでもいいから今すぐ買いたい(売りたい)」という注文です。
価格優先の原則でもっとも優先され、即座に売買が成立するため、板には表示されません。
この他に、指定価格をトリガーに注文を出す「逆指値注文」といった注文方法があります。
板の見方を初心者にもわかりやすく解説
ここからは実際に板に何が表示されているかを見ていきましょう。
板の中央には現在の株価が表示されており、その上が「売り板」、下が「買い板」です。
「売り板」には売りたい人の希望価格と株数が安い順に、「買い板」には買いたい人の希望価格と株数が高い順に表示されます。
この希望価格を「気配値(けはいね)」と呼びます。
▼以下の画像の場合、100円で14,700株の売り注文、99円で3,000株の買い注文が出ています。

もっとも低い売り注文価格(この画像では100円)を最良売気配値(さいりょううりけはいね)、もっとも高い買い注文価格(この画像では99円)を最良買気配値(さいりょうかいけはいね)と呼びます。
この板状況にある銘柄を今すぐ買いたい場合、指値注文であれば最良売気配である100円で注文を入れるのが良いでしょう。
成行注文をした場合には、同じタイミングで他の注文がなければ、14,700株までは100円で買い付けられます。
14,700株を超えた分は、その上の101円や102円で約定すると考えられます。
また、板の一番上の「OVER」の部分には、板に表示しきれていない、さらに高い価格の売り注文の合計株数が表示されます。
逆に一番下の「UNDER」の部分には、さらに安い価格の買い注文の合計株数が表示されています。
ストップ高・安、特別買い気配など特殊な板を解説

初心者の方が板を見て戸惑いがちなのが、「S」や「特」など通常の注文とは異なる表示がされた時です。
これらは市場の過熱や混乱を防ぐための仕組みです。
表示された時に戸惑わないように、意味をきちんと理解しておきましょう。
株の板に出ている「S」の意味|ストップ高・安
板に表示される「S」の文字は、「ストップ高」または「ストップ安」を意味します。
東京証券取引所では、前日の終値を基準として株価の1日の変動幅が制限されています。
この上限価格に株価が到達することをストップ高、下限価格に到達することをストップ安と呼びます。
株価の過度な高騰や暴落を防ぎ、投資家を保護するための措置です。
板に出ている「特」「連」の意味は?
板には他にも「特」や「連」といった漢字が表示される場合があります。
「特」は「特別気配」、「連」は「連続約定気配」を意味します。
これらは、買い注文または売り注文が一方向に大きく偏り、今のまま売買を成立させると株価が急激に変動してしまう場合に、投資家に注意を促すために表示します。
注文が一方向に偏ると、取引所は一時的に売買の成立を止め、需給が均衡しそうな価格(気配値)とともに「特」と表示します。
それでも状況が変わらない場合、気配値を更新しながら「連」を表示し、徐々に適正な株価を探っていくのです。
市場の混乱を避けるための重要な仕組みです。
実践編|板情報をどのように投資判断に活かすべき?

ここからは、株式投資を行う上で板情報をどう活かすべきか、具体的な板の見方を解説していきます。
板が薄いとは?「値が飛ぶ」可能性に注意が必要!
まず押さえておいて欲しいのが、板が薄い銘柄と厚い銘柄が存在することです。
「板が薄い」とは、並んでいる注文株数が少なく、場合によっては注文の入っていない価格もある状態を指します。
▼たとえば、以下のような板を「板が薄い」と表現します。

この場合、成行で買いを500株入れると、3,005円で200株、3,015円で100株、3,020円で100株、3,030円で100株約定すると考えられます。
成行で売りを500株入れた場合には、3,000円で100株、2,985円で300株、2,980円で100株約定します。
さらに同時に他の人が注文を出した場合、思った以上に高く買ったり、安く売ったりしてしまう可能性もあります。
そのため、板が薄い銘柄を売買する際には指値注文を基本とするほか、大量に買い付けて売れなくならないように、注意して投資金額を決めるのが良いでしょう。
板が厚いとは?出来高とのバランスで確認
▼逆に以下のような板状況を、「板が厚い」と表現します。

この場合には、32,700株までは成行で買い注文を出しても3,005円で約定し、56,000株までは成行で売り注文を出しても3,000円で売却できます。
板が厚い場合には、ある程度大きな資金を入れても、売りたい時に売れないといった状況に陥りにくいです。
ただし、出来高(1日に売買された株数)に対して板が厚すぎると、なかなか値段が動かない場合があります。
配当を目的に買っている銘柄であれば値が動かなくても問題はないと思いますが、値上がりで利益を狙いたい場合には注意したいポイントです。
板読みのコツを初心者にもわかりやすく解説

板読みとは、株式の板情報(注文板)に表示されているリアルタイムの買い注文と売り注文の状況を分析し、現在の需給のバランスや、これから株価がどの方向に動くか(勢い)を予測することを指します。
デイトレードやスキャルピングを行う投資家には必須の技術とされますが、現在はアルゴリズム取引が増加し、板読みが難しくなっています。
ここからは、そうした状況下でも判断の助けになる板読みのコツを解説します。
見せ板(フェイク注文)とは?|相場操縦の一種で違法
板読みに挑戦するなら、まず見せ板の存在を知っておきましょう。
見せ板とは、約定させる意図がないにもかかわらず、大量の注文を出してすぐにキャンセルする行為を指します。
他の投資家に対して「この価格帯には大きな買い手(または売り手)がいる」と誤認させる目的で行われ、株価を意図した方向に誘導しようとする不正な相場操縦の一種です。
金融商品取引法で禁止されており、個人の場合には10年以下の懲役もしくは3,000万円以下の罰金、法人では7億円以下の罰金が科せられる可能性があります。
アルゴリズム取引が見せ板のように見える
しかし、実際の市場では、見せ板のような動きが頻繁に見られています。
これは、注文を細かく分けて出したり、市場の流動性に合わせて自動で取り消し・再発注を繰り返したりするアルゴリズム取引が増加しているからだと考えられます。
これらの機械的な動きが、意図的な見せ板のように見えるのです。
また、取り消しを前提としないものの、執行される可能性の低い注文を一時的に提示するなどのグレーゾーンの取引も行われています。
こうした注文が入り乱れるなかで、板を読んで株価の方向感を判断するのはかなり難しくなっています。
節目突破でトレンドが出るとは限らない
たとえば、節目と呼ばれるキリの良い価格帯や、過去に何度も意識された高値・安値などを、株価が突破するとトレンドが出やすいという考え方があります。
こうした節目の価格帯では、板が厚くなりやすく、厚く出されている注文がすべて約定するか注目が集まります。
この厚い板が、株価の上昇や下落を阻む抵抗帯(壁)として機能するためです。
壁を突破すれば、市場参加者の心理が一方向に傾き、新しいトレンドが発生するきっかけになると期待されます。
しかし、節目を突破しても、それが「だまし」となる場合も少なくありません。
たとえば、プロのトレーダーや大口投資家が、あえて節目を少しだけ超えた水準に利益確定の売り注文や空売り注文を集中させる場合があります。
節目の突破によるトレンド発生に期待した買いにぶつける形で、大きな売り注文が出てくる場合があるのです。
また、節目を突破するために、それまで溜まっていた成行注文や強い買い注文が一気に消化され、その後の推進力(次の注文)が枯渇してしまうケースもあるでしょう。
歩み値も必ずセットで見よう
「歩み値」とは、売買が成立した価格、株数、時刻を時系列で記録した取引履歴です。
板情報がこれから売買される可能性のある注文であるのに対し、歩み値は実際に売買された取引を示します。
注文がキャンセルされずに、実際に売買がなされたかどうかが歩み値で確認できるのです。
たとえば買い板が厚ければ買い優勢に見えますが、それはあくまで待機中の注文です。
しかし、歩み値で連続的に大口の買い約定が記録されていれば、見せ板や注文の取消しはなく、実際に強い買いが入っている裏付けとなります。
また、大口の投資家が、株価を急変させないよう、または自らの注文意図を隠すために、注文を細かく分割して出す場合があります。
この注文は板では目立ちませんが、歩み値を見れば、短い間隔で同じ価格または近い価格で約定した小口の取引が連続していることが分かります。
この場合、裏で大口の買いまたは売りが入っている可能性が高いです。
寄り付き前の板の見方

取引が始まる前の時間帯(日本では午前8時~9時)にも、その時に出されている注文状況を板情報で確認できます。
これを「寄り前気配」と呼びます。
この時間帯の板を見れば、その日の取引がどのくらいの価格で始まりそうか、買いと売りのどちらの勢いが優勢かをある程度予測できます。
買い注文が売り注文を大幅に上回っていれば、当日の株価が高く始まる可能性があります。
ただし、寄り付き前後に注文がキャンセルされて、寄り前気配とは大きく乖離した価格で実際の株価が約定する場合も頻繁にあります。
またSQ算出日においては、SQ値で現物株を清算する目的での大量の成行売りや成行買いが出され、寄り前気配が極端な価格になる場合もあります。
こうした傾向も加味して、寄り前気配は参考程度に見るようにしましょう。
フル板とは?|すべての注文情報が表示される
「フル板」とは、証券取引所に出されている全ての注文情報を、ストップ高からストップ安までの全ての価格帯にわたって表示するサービスです。
フル板を利用すると、どの価格帯に大きな買い注文や売り注文が控えているかを全て把握できるため、より広範囲な需給動向を分析できます。
フル板は、楽天証券やSBI証券などの証券会社が提供するツールでも確認できます。
PTS(私設取引システム)で板を見る際の注意点
PTS(Proprietary Trading System:私設取引システム)は、東京証券取引所などの正規の取引所を介さずに、証券会社などが独自に開設・運営する取引システムです。
PTSは主に夜間取引を提供するなど利便性がありますが、東証の板情報とは異なる特性を持つため、利用する際には注意が必要です。
PTSの取引量は、東証に比べて圧倒的に少なくなっています。
そのため、意図的に少量の注文で株価を操作しようとする価格操作の影響を受けやすい側面もあります。
また、板が薄いため、わずかな成行注文が入っただけでも、複数の価格帯を一気に消化し、株価が大きく急変するリスクが非常に高くなります。
想定外に不利な価格で約定してしまうリスクが高いため、PTSで銘柄を売買する際には板を見ながら指値注文を行うのが良いでしょう。
まとめ|板の見方がわかれば売買の不安が一気に減る

この記事では、株の板情報の基本原理から、実践的な読み解き方までを解説しました。
板情報の見方がわかれば、有利な価格で注文を出せるようになります。
まずは基本的な見方をマスターして、短期目線の売買に挑戦したい場合には、板の注文の動き方などを観察してみると良いでしょう。
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執筆者情報
日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)/日本テクニカルアナリスト協会認定テクニカルアナリスト(CMTA®)
総合鉄鋼メーカーに勤務していた経験を活かした、鉄鋼・自動車市場の分析及び情報収集を得意とし、データの集計・分析に基づいた統計学により銘柄の選定を行う希少なデータアナリスト。AIに関する資格も有しておりデータサイエンティストとしても活躍の場を拡げている。
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