任天堂(7974)の株価は今後どうなる?1Q決算後の買い時と下落理由

江口 裕臣

日本投資機構株式会社 テクニカルアナリスト(CMTA®)

任天堂(7974)の株価は今後どうなる?1Q決算後の買い時と下落理由

任天堂(7974)の株価は、2026年8月6日の1Q決算を受けて再び8,000円台へ戻りました。8月7日は前日比5.26%高、8月10日も2.76%高となり、終値は8,265円です。

売上高は減った一方、営業利益は前年同期の2.5倍に増えました。ただし、利益を押し上げた約3億USドルの関税還付は一度限りです。Switch 2の販売、利益率、株価指標を確認し、任天堂株がまだ買える水準かを解説します。

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目次

決算翌日に5.3%高|任天堂株は8,000円台を回復

決算翌日に5.3%高となり8,000円台を回復した任天堂株

任天堂株は7月末に急反発した後、8月5日までに7,428円へ押し戻されました。1Q発表翌日の8月7日は8,043円まで上がり、売買高も2,115万株へ膨らんでいます。

決算前の期待だけで上がった7月末とは違い、今回は1Qの利益が市場予想を上回った後の買いです。一方、6月安値からはすでに26%戻しており、安値圏の値ごろ感だけで買える株価ではありません。

日付終値前日比主な動き
6月26日6,544円年初来安値
7月24日6,969円-0.46%急反発前の終値
7月29日7,986円+4.27%3営業日で14.6%上昇
7月31日7,679円-5.72%急反発後に下落
8月6日7,641円+2.87%大引け後に1Q発表
8月7日8,043円+5.26%決算を受けて大幅高
8月10日8,265円+2.76%決算後も続伸
任天堂の株価推移 ※Investing.comの時系列データをもとに作成

8月7日は出来高2,115万株を伴って5.26%上昇

8月6日の終値は7,641円でした。大引け後に1Qが発表され、翌7日は402円高の8,043円で取引を終えています。高値は8,047円で、ほぼ高値引けでした。

売買高は前日の788万株から2.7倍へ増えました。8月10日も222円高の8,265円となり、決算後2営業日で8.2%上昇しています。決算を受けた買いが1日で終わらなかった点は、短期の株価に追い風です。8,000円台が決算直後だけの高値では終わっていません。

7月末の約15%上昇後に急落し、決算で切り返した

任天堂株は7月24日の6,969円から7月29日の7,986円まで、3営業日で14.6%上がりました。しかし、7月31日には5.72%下落し、8月5日には7,428円まで戻っています。

7月末の急騰だけでは底打ちを確定できませんでした。その後に1Qという業績の裏付けが加わり、8,000円台を回復した流れです。今回の反発が続くには、次の決算でも利益の伸びを示す必要があります。決算前の買いには、短期間で大きな含み損が生じた値動きでした。

任天堂7974の株価推移 2026年7月13日から8月10日
任天堂(7974)の日足チャート データ: Yahoo!ファイナンスの時系列データをもとに当サイト作成

営業利益の上振れとソフト販売が買いを呼んだ

1Q営業利益は1,425億円となり、LSEGが集計した市場予想703億円を大幅に上回りました。Switch 2とSwitchのソフト販売が伸び、売上高に占めるハードの割合も低下しています。

利益率の高いソフトが増えた変化は、株価が評価しやすい材料です。ただし、営業利益には関税還付と円安の押し上げも含まれます。決算翌日の上昇を、すべて本業の改善で説明するのは正確ではありません。もう一段の上昇には、還付を除く利益の増加が次回も必要です。

1Qは減収でも営業利益2.5倍|関税還付を除いても増益

任天堂の27年3月期1Qは減収でも営業利益が2.5倍

27年3月期1Qは売上高が前年同期比9.5%減の5,178億円、営業利益が150.5%増の1,425億円でした。売上総利益率は32.3%から54.3%へ上がっています。

もっとも、利益率の急改善には約3億USドルの関税還付が含まれます。還付を除いても増益ですが、1Qの27.5%という営業利益率を次の四半期へそのまま当てはめるのは危険です。

出典: 任天堂「27年3月期第1四半期 決算説明資料」3ページ
出典: 任天堂「27年3月期第1四半期 決算説明資料」3ページ

売上高5,178億円、営業利益1,425億円で着地

売上高は前年同期の5,723億円から545億円減りました。一方、営業利益は569億円から1,425億円、経常利益は958億円から2,061億円へ増えています。

四半期純利益も53.5%増の1,474億円でした。ハード販売の減少で減収となったものの、ソフトの構成比上昇、関税還付、円安が利益を押し上げています。売上高だけでは今回の決算を弱いと評価できません。営業利益率27.5%は前年同期を17.6pt上回りました。

約3億USドルの関税還付が利益を押し上げた

任天堂は米国のIEEPA関税の還付に伴い、約3億USドルを売上原価の減額として計上しました。期中平均の1USドル159.38円で単純換算すると、約478億円です。

還付額を営業利益から単純に差し引くと約947億円となり、前年同期比では約66%増です。本業も改善していますが、発表値の150.5%増を次回も期待するのは無理があります。差し引き後の利益額も市場予想703億円を上回る単純計算です。本業の利益も大きく伸びています。

出典: 任天堂「27年3月期第1四半期 決算説明資料」7ページ
出典: 任天堂「27年3月期第1四半期 決算説明資料」7ページ

Switch 2本体382万台に対しソフト販売は増えた

Switch 2本体は前年同期比34.4%減の382万台でした。発売直後の前年同期と比べた減少であり、任天堂は発売2年目として順調な販売水準だと説明しています。

Switch 2ソフトは9.2%増の946万本、Switchソフトは38.6%増の3,381万本です。デジタル売上高も90.0%増の1,327億円となりました。ハード依存が下がり、ソフトで稼ぐ形へ近づいています。IP関連収入等も107.4%増の348億円へ伸びました。

出典: 任天堂「27年3月期第1四半期 決算説明資料」5ページ
出典: 任天堂「27年3月期第1四半期 決算説明資料」5ページ

通期予想据え置きで上振れ余地は残るが、部材高は消えていない

任天堂は27年3月期の通期予想を据え置き

任天堂は1Qの利益が大きく伸びても、27年3月期の通期予想を変えませんでした。売上高2兆500億円、営業利益3,700億円、純利益3,100億円を見込んでいます。

営業利益の進捗率は38.5%ですが、関税還付を含む数字です。会社計画にはメモリを中心とする部材高や関税支払いの影響が約1,000億円含まれており、1Qだけで通期上振れを決めつけられません。

出典: 任天堂「27年3月期第1四半期 決算説明資料」10ページ
出典: 任天堂「27年3月期第1四半期 決算説明資料」10ページ

1Qの好発進と慎重な通期計画を分け、上振れに必要な数字と下振れにつながる費用を確認します。

営業利益の進捗率38.5%でも上方修正は見送った

1Q営業利益1,425億円は、通期予想3,700億円の38.5%に達しました。純利益も通期予想3,100億円に対して47.6%まで進んでいます。

数字だけなら上振れ期待が生まれやすい進捗です。ただし、関税還付は1Qに集中し、年末商戦へ向けた広告費や開発費も増える可能性があります。会社は上方修正を見送った理由を明示していません。1Q進捗だけでは通期を読み切れない内容です。Q2の通常利益を待つ余地があります。

Switch 2販売は年間計画1,650万台の23.2%まで進んだ

1QのSwitch 2販売382万台は、年間計画1,650万台の23.2%に当たります。一般にゲーム機は年末商戦の比重が高いため、4〜6月で2割を超えた進捗は悪くありません。

国内では5月25日の1万円値上げ後も販売が底堅く推移したと会社は説明しています。次は9月の米欧値上げ後も台数を維持できるかを見ます。値上げ後の年末商戦が年間計画を左右します。残り9か月で1,268万台の販売が必要です。数量のハードルは残ります。

約1,000億円の原価影響と円高が下期の利益を左右する

通期予想には、部材価格の高騰と関税支払いによる原価影響が約1,000億円織り込まれています。関税の還付を受けても、メモリ価格の上昇まで解消したわけではありません。

会社の前提為替は1USドル150円、1ユーロ175円です。1Qの期中平均は159.38円、185.27円と円安でした。円高へ戻れば、海外売上の円換算額と営業利益への押し上げが縮みます。原価と為替が同時に悪化すれば、ソフトの伸びだけでは補いきれません。

8,265円では予想PER30.7倍|安値から戻っても割安株ではない

任天堂株は8,265円で予想PER30.7倍

2026年8月10日終値8,265円と会社予想EPS約269円から計算した予想PERは30.7倍です。実績PBRは約3.3倍、予想配当利回りは約1.96%となります。

6月安値から26%上がった現在は、安値からの反発余地より利益成長を織り込む価格です。強いIPと現預金は評価できますが、株価指標だけなら割安株とは呼べません。

指標2026年8月10日時点見方
株価8,265円年初来安値から26.3%上昇
予想PER30.7倍利益成長への期待が残る
実績PBR約3.3倍IPと収益力を純資産以上に評価
予想配当利回り約1.96%高配当株の水準ではない
時価総額約10.6兆円大型株として高い評価額
任天堂の株価指標 ※株価、会社予想、発行済株式数をもとに算出

時価総額10.6兆円、配当利回りは約1.96%

8月10日終値を基準にすると、任天堂の時価総額は約10.6兆円です。予想PER30.7倍、実績PBR約3.3倍となり、今期の純利益26.9%減を織り込みつつも成長期待が残っています。

年間配当予想162円に対する利回りは約1.96%です。配当だけで下値を支える水準ではありません。任天堂株を買う理由は高配当ではなく、Switch 2の普及後にソフトとIP収入が伸びるとの見通しです。決算後の5%超の値幅は、配当利回りを上回ります。

上場来高値14,795円からは44%下でも底値ではない

任天堂株は2025年8月に株式分割調整後の上場来高値14,795円をつけ、2026年6月26日には6,544円まで下がりました。高値から安値までの下落率は55.8%です。

8,265円は上場来高値より44.1%安い一方、年初来安値より26.3%高い水準です。過去高値との距離だけなら上昇余地は大きく見えます。しかし、現在の利益予想に対するPERは30倍を超えています。年初来高値10,890円と比べても24.1%下です。

純利益が1割動けばPERは27.9〜34.1倍へ変わる

株価8,265円が同じでも、純利益が会社予想から1割上振れすれば予想PERは約27.9倍へ下がります。反対に1割下振れすると、約34.1倍まで上がる計算です。

任天堂株の割安感は、株価より通期利益の修正方向で大きく変わります。次の決算で関税還付を除く利益が伸びれば、現在の30倍台にも説明がつきます。利益率が再び低下すれば割高感は強まります。利益予想が据え置かれたまま株価だけ上がれば、上値を追うほど割高感が増します。

任天堂株は一括買いを避け、Q2で増益の再現性を確かめたい

任天堂株は一括買いを避けQ2で増益の再現性を確認

任天堂株は1Qの数字だけで売る銘柄ではありませんが、決算後に追いかけて一括購入する価格でもありません。営業利益の約3分の1は、関税還付の単純換算額に相当します。

新規購入なら資金を分け、Q2でソフト構成と粗利率を確かめる買い方が合います。評価が上向く条件と買いを止める条件を、株価ではなく業績の数字で決めておきます。

買う日だけでなく、何を確認して次の購入へ進むかを先に決めれば、急騰後の値動きだけで売買せずに済みます。

新規購入は決算後、Q2確認後、年末商戦後に分ける

長期で任天堂のIP価値を評価するなら、予定資金を3回に分ける方法があります。1回目は1Q後の押し目、2回目はQ2、3回目は米欧値上げ後の年末商戦を確認してからです。

現在は6月安値より26%高く、最初から全額を入れる利点は小さくなっています。株価が上がり続ければ平均購入価格は高くなりますが、1Qの一時利益を恒常的な増益と誤認するリスクを抑えられます。各決算で通期予想が維持されているかも確認します。次の数字を待てる余地があります。

Q2で粗利率とデジタル売上高の伸びを確認する

次の決算では、関税還付がなくても売上総利益率を維持できるかを確認します。1Qの54.3%から下がっても、前年同期を上回り、ソフト構成の改善が続けば評価できます。

デジタル売上高1,327億円とソフト販売の伸びが続くかも外せません。ハード台数だけが増えても利益率が下がれば、株価を押し上げる力は弱まります。ソフトで稼げる形が続くかが分岐点です。IP関連収入等348億円の伸びが映画公開後も続くかも見ます。

販売未達と原価悪化が重なれば買い増しを止める

買いを止める条件は、Switch 2販売の年間計画未達が濃くなり、部材高で粗利率も悪化する状態です。値上げ後の米欧販売が落ち、ソフト販売も鈍れば利益回復は遠のきます。

通期営業利益3,700億円の下方修正が出た場合は、買値に関係なく投資理由を見直します。反対に、本体1,650万台とソフト6,000万本の計画達成が見えれば、PER30倍台を支える根拠が強まります。販売台数と粗利率がそろって悪化した時は、安値でも買い増しを急ぎません。

まとめ|任天堂株は押し目を分けて買い、利益の再現性を確かめたい

任天堂株は押し目を分けて買い利益の再現性を確認

任天堂の1Qは売上高5,178億円、営業利益1,425億円でした。Switch 2本体は382万台に減りましたが、ソフトとデジタル売上高が伸び、ハード中心だった売上構成は改善しています。

一方、営業利益には約3億USドルの関税還付が含まれます。1Qの利益率をそのまま通期へ延ばさず、Q2で還付を除く増益が続くかを確かめる必要があります。

8月10日終値8,265円は予想PER30.7倍で、割安株の水準ではありません。ただし、Switch 2の年間販売計画は1Qで23.2%まで進み、ソフトで稼ぐ形も見え始めました。

結論は「長期なら分割買い、短期なら決算後の急騰を追わない」です。Q2、米欧の値上げ後、年末商戦の3段階で利益率と販売台数を確認すれば、高値づかみを避けながら上振れにも備えられます。

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執筆者情報

nari

江口 裕臣

日本投資機構株式会社 テクニカルアナリスト(CMTA®)

著名な元機関投資家や経験豊富なアナリスト・ファンドマネージャーより培った知識と経験を基に、数多くの市場動向の予測や個別銘柄の動向をピンポイントで分析。銘柄の推奨実績において社内の月間最高勝率記録を持つテクニカルアナリスト。

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