株価チャートを見て売買判断をしているものの、「なぜ上がったのか」「なぜ下がったのか」が腑に落ちないと感じたことはありませんか。
その原因の多くは、株価だけを見て出来高を軽視している点にあります。
出来高は、その価格帯でどれだけ多くの市場参加者が売買に参加したかを示す指標であり、相場の“本音”や“エネルギー量”を読み解く手がかりとなります。
本記事では、出来高の基本的な見方から、株価との関係性、実際の売買戦略への落とし込み方までを体系的に解説していきます。
チャート分析の精度を一段引き上げたい投資家にとって、出来高分析は避けて通れない武器となるはずです。
出来高分析はなぜ重要?株価だけを見てはいけない理由

出来高分析は、チャート分析の中でも軽視されがちですが、実は株価の動きを裏側から支配している非常に重要な要素です。
出来高とは、一定期間にどれだけの株数が売買されたかを示す数値であり、その本質は市場にどれだけの参加者と資金が集まっているかを可視化する点にあります。
株価が上昇するためには、必ず「買いたい人」が「売りたい人」を上回らなければなりませんその需給のぶつかり合いの総量が出来高であり、出来高が伴わない値動きは非常に脆いと判断できます。
出来高は「市場のエネルギー」や「投資家心理」を映す指標
出来高が多い局面は、多くの投資家がその価格帯に納得して売買している状態であり、トレンドが発生・継続しやすい状況と言えます。
一方で、出来高が細っている局面は、参加者が少なく、ちょっとした売りや買いで価格が大きく動きやすい不安定な状態とも言えます。
株価だけを見て売買判断すると騙されやすい
株価だけを見ていると、「上がっている=強い」「下がっている=弱い」と短絡的に判断しがちですが、出来高を伴わない上昇は、単に売り手が少ないだけのケースも多い。
例えば、出来高が急減した状態での株価上昇は、実需の買いではなく、売りが枯れているだけの“見せかけの強さ”であることがあります
このような局面では、少しまとまった売りが出ただけで急落するリスクが高く、出来高を確認せずにエントリーすると、「なぜか急に下がった」という納得感のない損失につながりやすいです。
出来高とは?意味・見方をわかりやすく解説

ここでは、出来高を実際にチャート上でどう捉えればよいのか、基本的な見方を整理していきます。出来高は、ほとんどの株価チャートでローソク足の下部に棒グラフとして表示されます。
1本1本の棒が、その時間軸(日足・週足など)における売買株数を示しています。
基本的な考え方はシンプルで、
・棒が長い=多くの売買が成立
・棒が短い=参加者が少ない
という理解で問題ありません。
出来高と売買代金の違い
出来高が「株数」を表すのに対し、売買代金は「金額」を表す指標です。例えば、低位株で出来高が多くても、売買代金はそれほど大きくないケースがあります。
一方で、高位株では出来高が少なくても、売買代金は非常に大きくなります。
短期の需給や勢いを見るうえでは出来高が有効であり、どれだけ多くの参加者が動いたかを把握するのに適しています。売買代金は、資金規模の大きさを見る補助指標として使うのが一般的です。
出来高と株価の関係|投資家心理と需給を読む

出来高と株価を組み合わせて見ることで、表面的な値動きの裏にある投資家心理を読み取ることができます。
出来高が増加する局面、減少する局面
出来高が増加する典型的な局面は以下の通り。
・材料や決算をきっかけに注目が集まったとき。
・トレンド転換点(高値・安値付近)。
・ブレイクアウト(抵抗線・支持線突破)。
一方で、トレンド途中で出来高が減少していく局面は、「様子見」の投資家が増えている状態であり、次の大きな動きの前兆であることも多い。
セリングクライマックス(売り物出尽くし)とは
セリングクライマックスとは、下落局面の最終盤で出来高が急増しながら株価が大きく下落する現象を指します。
恐怖や投げ売りが一気に噴き出し、売りたい人がほぼ出尽くした状態であり、その後に反発が起きやすい状態。
出来高を伴った急落の後、
・下ヒゲが出る
・翌日以降に下げ渋る
といった動きが見られれば、短期的な底打ちサインとして機能することもあります。
小商いから突然の大商いは何を示すか
長期間、出来高が低水準で推移していた銘柄が、ある日を境に突然大きな出来高を伴って動き出す場合、新たな参加者の流入を示している可能性が高いと判断できます。
機関投資家やテーマ資金が入り始めた初動であることも多く、トレンド発生の起点となりやすい。
出来高を用いたテクニカル指標

出来高は単体でも有効だが、指標として加工することで、より客観的な判断が可能になる。
出来高移動平均線|トレンドの勢いを判断
出来高移動平均線は、出来高の平均値を線で表したもので、「現在の出来高が平常時と比べて多いのか少ないのか」を判断するために使います。
出来高が移動平均線を上回って推移している局面は、市場の関心が高まり、トレンドが加速しやすい状態です。
価格帯別出来高(ボリューム・アット・プライス)とは
価格帯別出来高は、「どの価格帯で多くの売買が成立したか」を示す指標です。
出来高が集中している価格帯(ボリュームゾーン)は、多くの投資家の平均取得コストが存在するゾーンであり、強い支持線や抵抗線になりやすい。
・株価がボリュームゾーンより上 → 押し目になりやすい
・株価がボリュームゾーンより下 → 戻り売りが出やすい
高値圏での出来高増加は天井警戒、底値圏での出来高増加は反転サインとして意識されます。
ボリュームレシオ(VR)とは
ボリュームレシオは、一定期間の上昇日の出来高と下落日の出来高を比較し、市場の過熱感を測る指標です。
数値が高すぎる場合は買われ過ぎ、低すぎる場合は売られ過ぎの目安として使われます。
OBV(オンバランスボリューム)とは
OBVは、株価の上昇日に出来高を加算し、下落日に減算して累積していく指標です。
株価に先行してOBVが上昇し始めた場合、水面下で資金流入が進んでいるサインと解釈されます。
MFI(マネーフローインデックス)とは
MFIは、価格と出来高を組み合わせたオシレーター系指標で、RSIに出来高の概念を加えたものと考えると分かりやすい。
過熱感や反転ポイントの補助判断として用いられます。
逆ウォッチ曲線とは
逆ウォッチ曲線は、出来高と株価の乖離に注目し、相場の転換点を探る考え方です。
出来高が増えているのに株価が上がらない、あるいは下がらない場合、トレンド転換の兆しとなることがあります。
出来高オシレーターとは
出来高オシレーターは、短期と長期の出来高移動平均の差を可視化し、出来高の勢いの変化を捉える指標です。
出来高の加速・減速を直感的に把握できる点が特徴。
出来高分析をチャートパターンで実践

出来高分析は単体でも有効ですが、チャートパターンと組み合わせることで、売買判断の精度はさらに高まります。
形だけを見るのではなく、「その形がどれだけの参加者を巻き込んで形成されたか」を出来高で確認することが重要。
ローソク足と出来高を併せて分析しよう
チャートパターンは投資家心理の“結果”として現れますが、その信頼度は出来高によって大きく左右されます。
同じ形のチャートでも、出来高が伴っている場合と伴っていない場合では、意味合いがまったく異なります。
出来高を併せて見ることで、
そのパターンが市場参加者にどれだけ意識されているか。
一部の売買なのか、広範な合意形成なのか。
を判断でき、ダマシのシグナルを回避しやすくなります。
ローソク足は価格の動きを視覚的に示す指標であり、出来高はその裏付けとなる“量”の情報。
基本的なローソク足の解説自体は別記事にも記載がありますが、ここでは出来高と組み合わせた見方に絞ります。
例えば、
・下ヒゲが長い陽線 + 出来高増加
→ 安値圏で強い買いが入った可能性が高い。
・上ヒゲが長い陰線 + 出来高増加
→ 高値圏での売り圧力が強く、天井形成の兆候。
ローソク足単体では判断が難しい局面でも、出来高を確認することで「本気の売買だったのか」が見えてきます。
三角持ち合い・ヘッド&ショルダーと出来高の動き
三角持ち合い、ヘッド&ショルダー、ダブルトップ/ダブルボトムといった代表的なフォーメーションも、出来高分析と非常に相性が良いと言われています。
一般的な傾向として、
・持ち合い形成中:出来高は徐々に減少
・ブレイク時:出来高が急増
この流れが理想形となります。
例えば三角持ち合い上放れの際に出来高が伴っていれば、多くの投資家がその突破を認識し、トレンドが継続しやすいと判断できます。
一方で、出来高を伴わないブレイクは失敗に終わるケースが多い。
ヘッド&ショルダーでは、右肩形成時に出来高が減少するかどうかが重要なチェックポイントとなります。
これらフォーメーション自体の詳細解説は別記事に委ねつつ、出来高は「信頼度の確認装置」として使う意識を持つとよいとされています。
出来高を用いた売買戦略・タイミング

ここでは、出来高分析を実際の売買にどう落とし込むか、具体的な使い方を整理します。理論よりも「どう使うか」を意識することが重要。
出来高は、エントリーやエグジットの“単独トリガー”というよりも、判断を後押しする補助材料として使うのが基本となります。
価格が動いた理由を出来高で裏取りし、納得感のある売買を行うためのツールと考えると使いやすい。
出来高急増銘柄の買いを狙う
出来高が急増した銘柄は、市場の注目を一気に集めている状態であり、短期的な値動きが活発になりやすいと見ることができます。
特に以下の条件が重なると、買いチャンスとして機能しやすい。
- 長期間、出来高が低水準だった。
- ある日を境に出来高が数倍に跳ねた。
- 株価がレンジ上限や抵抗線を突破。
これは、新規資金の流入やテーマ化の初動である可能性が高く、トレンドが発生しやすい局面と見ることができます。
出来高が減少し始めたら利益確定も検討
上昇トレンド中であっても、出来高が徐々に減少し始めた場合は注意が必要です。
特に高値圏で、「株価は上がらない」「出来高だけが細っていく」という状態は、買いの勢いが弱まっているサイン。
この局面では、トレンド転換の初期段階であることも多く、一部利確や撤退判断を検討する余地があります。
出来高は「まだ上を買う人がいるか」を測る指標として非常に有効。
出来高移動平均線や価格帯別出来高と併用した戦略
出来高移動平均線と価格帯別出来高を組み合わせることで、より立体的な売買判断が可能になります。
・出来高が移動平均線を上回り続けている。
・株価が主要なボリュームゾーンを上抜けた。
この2点が揃えば、トレンド発生の信頼度は高いと判断できます。
逆に、ボリュームゾーンを割り込み、出来高が増加した場合は、下落トレンド入りの警戒が必要となります。
まとめ|出来高分析を武器にして相場の裏側を読み解こう
出来高分析は、株価チャートの“裏側”を読み解くための重要な手段です。
価格の動きだけでは見えない、投資家心理や需給の変化を把握することで、売買判断の精度は大きく向上します。
チャートパターン、ローソク足、テクニカル指標と出来高を組み合わせることで、
- ダマシを回避しやすくなる。
- トレンドの初動を捉えやすくなる。
- 利確や撤退の判断が明確になる。
出来高を「なんとなく見る指標」から「意図を持って使う指標」へ昇華させることが、安定したトレードへの第一歩となるでしょう。
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執筆者情報
日本テクニカルアナリスト協会認定テクニカルアナリスト(CMTA®)
著名な元機関投資家や経験豊富なアナリスト・ファンドマネージャーより培った知識と経験を基に、数多くの市場動向の予測や個別銘柄の動向をピンポイントで分析。銘柄の推奨実績において社内の月間最高勝率記録を持つテクニカルアナリスト。
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