NEC(日本電気)の株価急落が市場の注目を集めています。
発端は、米アンソロピック社が対話型AI「Claude(クロード)」の新技術「Cowork(コワーク)」に法務や財務、マーケティングなど専門的な業務の自動化に対応する新機能を追加すると発表したことです。
これを受けて、生成AIによるコーディングが主流となり、NECの主要収益源であるシステム開発・運用における受託開発の単価下落や売上減少を招くとの警戒感が高まりました。
その後、自社株買いの発表で株価が持ち直す場面が見られましたが、再度売りに押されてしまっています。
そこで本記事では、NECの株価が回復する余地があるのか、今後の見通しを展望したいと思います。
NEC(6701)の株価が暴落!?現状を確認

まずはNECの事業内容やこれまでの株価の推移、足元の業績などを確認しておきましょう。
NECは日本を代表するIT・ネットワーク企業
NEC(日本電気)は、日本を代表する大手IT・ネットワーク企業です。
主軸は社会公共・社会基盤・エンタープライズの3つのITサービス事業となっています。
特に生体認証技術、AI、5Gなどのネットワーク技術に強みを持ち、デジタル変革(DX)を通じた社会課題の解決を経営の核に据えています。
また、足元では防衛事業の拡大にも力を入れており、27年3月期以降に防衛関連の生産設備を2万平方メートル増床する計画です。
[関連]AI関連銘柄がアツい!過去の急騰銘柄と今注目の有望企業を紹介
株価は2025年にITバブル高値付近まで上昇

※TradingViewより引用
NECの株価は、2023年5月から上昇基調を強めました。
上昇の起点となったのは、2023年4月28日に行われた2023年3月期の本決算の発表です。
この際に足元の好調な業績に加え、2024年3月期の増益および増配の見通しが示され、市場に好感されました。
その後も、官民双方における活発なデジタルトランスフォーメーション(DX)需要を取り込み、国内IT事業を中心に業績拡大を継続。
加えて、政府による防衛予算の増額方針を受けた防衛装備品の工場新設といった施策が注目を集めました。
防衛関連の有力銘柄として株価の上昇に拍車がかかり、2025年11月にはITバブル期の高値に迫る水準にまで上昇しています。
NECの2026年3月期第3四半期の業績は?
2026年1月29日に発表されたNECの2026年3月期第3四半期累計(4-12月)の売上収益は、前年同期比4.3%増の2兆4,223億円、Non-GAAP営業利益は同29.3%増の2,099億円となりました。
国内ITと航空宇宙・防衛が好調に推移し、増収増益となっています。
ただし、第3四半期単体ではテレコムサービスで将来の収益構造改善に向けた費用を計上したため、営業利益が前年同期比で18.3%減少しています。
これが市場では嫌気されましたが、将来の収益構造改善に必要な一過性の費用計上は、長期的にはさほどネガティブではないとの見方もできます。
NECの大幅下落の理由を整理!

※TradingViewより引用
しかし、株価は決算発表後に下落し、その後も下値を模索する動きとなっています。
いったい何が株価下落を引き起こしたのか、ここからは要因を整理していきます。
そもそもNECの株価にはやや割高感があった
NECの株価は決算発表前の2026年1月の時点で、過去のPERなどから比較すると割高感が否めない水準まで上昇していました。
NECの過去3年における最高値でのPERの平均値は19.4倍となっていますが、2026年1月にはPER35倍水準まで株価が上昇していました。
つまり、市場で評価が高まった状態で、2026年3月期第3四半期の決算発表を迎えていたわけです。
そもそも、市場の期待に応えるような好決算を発表できない限りは、利益を確定する売りが広がりやすい環境にあったと言えます。
アンソロピックショックが下落に拍車をかけた
さらに、2026年2月初頭に、米新興企業のアンソロピックが最新モデル「Claude 4.6」および実務特化型の「AIエージェント・プラグイン群」を発表し、株価の下落に拍車がかかります。
NECはシステム開発を主力事業としていますが、最新AIが数万行に及ぶコードを瞬時に理解・生成できるようになったため、収益源である「人月単価(エンジニアの稼働時間)」ベースのビジネスモデルが崩壊するとの見方が強まりました。
また、企業が巨額を投じて独自のシステムを構築・保守するのではなく、AIエージェントが既存の汎用ツールを組み合わせて即座にソリューションを構築する「ノーコード/AI主導開発」が主流になると、大手システム開発会社の存在意義が揺らぐと判断されました。
[関連]SaaSは死ぬのか?新AIツール発表を受けて暴落のソフトウェア関連株の今後
NECの大幅安は市場の「過剰反応」なのか?

市場ではAIによる既存事業の代替リスクが悲観的に捉えられていますが、NECにとって今回の変化は必ずしもマイナスばかりではありません。
まず注目すべきは、業務の一部のAIへの代替によって発生する利益構造の変化です。
開発プロセスの自動化が進めば、物理的な工数が大幅に削減されるため、短期的には売上の減少を招く懸念があります。
しかし、同時に人件費や外注費といった費用が劇的に圧縮される余地もあります。
売上高が減少しても、AIによる効率化によって一案件あたりの利益率が引き上がれば、最終的な純利益では増益を実現するシナリオもあり得るでしょう。
また、NECが強みを持つ通信インフラ領域において、AIは不可欠な成長エンジンとなります。
特にOpen RAN(無線アクセスネットワーク)の自動最適化技術などは、通信トラフィックが複雑化し、産業用機械の自動化が進展するAI時代において、その重要性が一層高まります。
インフラの自律制御が求められるほど、NECが培ってきた高度な技術への需要は、むしろ拡大が見込まれます。
今からNEC株を買うべきか?

今回の株価下落は、こうしたポジティブな側面よりも、AIがもたらすリスクを市場が早期に、かつ過剰に織り込んだ結果との見方もできます。
それでは、安くなったところでNECの株を買う戦略は有効なのでしょうか?
ここからは今後のポイントを整理していきます。
経営陣は自社株買いを行い、株価は割安だとアピール
NECは株価の下落を受けて、2026年2月9日に「最大300億円の自社株買いを実施する」と発表しました。
同日のアナリスト向け説明会では、藤川修最高財務責任者(CFO)が「AIは(ビジネス)機会もあればリスクもあるが、差し引きでみれば我々にはプラスだ」と発言。
自社株買いについても、「足元の株価水準に満足していない経営陣の意思を示すのが目的」としています。
現在の価格帯は安いと会社側が判断し、それを市場に知らせるために自社株買いに踏み切ったとみられます。
実は、NECは過去にも300億円規模の自社株買いを行っています。
2022年8月29日に発表しており、この自社株買いは同年の12月14日に終了。
この時期はコロナ特需の剥落などで、株価が伸び悩んでいました。
そして、自社株買いが終わった2023年には、前述したように株価が上昇トレンドに突入しています。
この時と同等の規模の自社株買いを発表していますので、経営陣は今後の業績拡大に依然として自信があるとの見方もできます。
NECの今後の成長性を見極める上での注目点

経営陣が今後の業績拡大に自信を示しているとはいえ、生成AIの進化で事業環境が急速に変化していますから、まだまだ不透明感は残ります。
そこで今後のNECの成長性を見極める上で、注目すべきポイントを整理しておきます。
ポイント①|AI時代における収益構造の変化
もっとも注視すべきは、NECのITサービスの収益構造にAIが与える影響です。
市場が懸念するように、AIによる代替が進み、シェアの縮小や価格競争による単価下落で売上高が減少するリスクは否定できません。
一方で、自社の開発プロセスへのAI導入が生産性を劇的に高め、利益率を押し上げるシナリオも十分に考えられます。
自社株買い発表時における経営陣の前向きなコメントを信頼するならば、収益性の抜本的な改善すら期待できるでしょう。
今後の投資判断では、営業利益率や売上高総利益率の推移を追い、AIがコスト構造にどう寄与しているかを精査する必要があります。
なお、システムの保守運用や障害時の最終責任の所在、さらには厳格な規制や監査への対応を考慮すれば、AIへの完全移行には相応の時間を要します。
したがって、短期間で既存サービスが丸ごと代替されるという極端な見方は、現実的ではないと言えるでしょう。
ポイント②|代替されにくい領域の業績もチェック
防衛や安全保障といった領域において、AI導入の障壁となっているのは技術的な可否ではなく、説明責任や監査、厳格な機密管理などの制約の厳しさです。
設計補助で効率化が進む一方、プロセスがブラックボックス化した状態での採用は困難であり、今後は検証可能性と運用設計が導入の鍵を握ります。
たとえAIが成果物を生成しても、最終的な動作保証や監査証跡の整備、安全性検証は不可欠です。
これらを実行するには、従来以上に高度な品質管理能力と強固な運用体制が求められます。
したがって、この領域では業務がAIに単純代替されるのではなく、AIを高度に組み込んだ高信頼システムとしての付加価値競争が加速するでしょう。
投資の観点からは、こうした領域での受注動向や収益性が安定しているか、AI活用が品質と効率の両面で他社に対する優位性につながっているかを、決算や事業報告を通じて精査する必要があります。
まとめ|今後は利益率の推移に注目!

NEC(6701)の株価下落は、業績悪化によるものではなく、生成AIによる構造変化への懸念と、高値圏にあったバリュエーションの調整が重なった結果といえます。
会社側は自社株買いで株価が安すぎると訴えていますが、市場は利益率の推移を慎重に見極めたい状況です。
まずは、防衛・安全保障といったAIによる代替が難しい強固な基盤を守りつつ、ITサービスの収益性を改善できるかを決算説明会などで確認していきましょう。
今後こうした部分の裏付けが取れれば、再上昇の期待は十分に持てるでしょう。
アナリストが選定した銘柄が知りたい!
今なら急騰期待の“有力3銘柄”を
無料で配信いたします
買いと売りのタイミングから銘柄選びまで全て弊社にお任せください。
投資に精通したアナリストの手腕を惜しげもなくお伝えします。
弊社がご提供する銘柄の良さをまずはご実感ください。
▼プロが選んだ3銘柄を無料でご提案▼
執筆者情報
日本投資機構株式会社 証券アナリスト(CMA) テクニカルアナリスト(CMTA®)
総合鉄鋼メーカーに勤務していた経験を活かした、鉄鋼・自動車市場の分析及び情報収集を得意とし、データの集計・分析に基づいた統計学により銘柄の選定を行う希少なデータアナリスト。AIに関する資格も有しておりデータサイエンティストとしても活躍の場を拡げている。

![Invest Leaders[インベストリーダーズ]](https://jioinc.jp/investleaders/wp-content/uploads/2025/07/logo_01.png)

