防衛関連銘柄への物色が、2026年に入っても途切れません。高市早苗政権が防衛費のGDP比2%を前倒しで達成し、年内には安保3文書の改定も控えているためです。
ロシア・ウクライナ戦争、中東情勢、台湾海峡の緊張。世界の地政学リスクは高止まりしたままで、安全保障は完全に国家の最優先課題になりました。国が予算を積むほど、受注が回る防衛企業には追い風が吹き続けます。
この記事では、2026年度予算で何がどう変わったのかという最新の数字から、有事のたびに急騰する筆頭株、そして初心者でも狙いやすい本命銘柄までを、ランキング形式の9選一覧つきで整理しました。
防衛関連銘柄とは

防衛関連銘柄とは、防衛省や自衛隊向けに兵器・装備品・関連システムを製造・納入している企業の株式です。
戦闘機や潜水艦を手がける重工メーカー、ミサイル部品や電子機器を供給する精密機器メーカー、通信インフラや特殊素材を提供する企業まで、その裾野は意外に広い。
日本政府が防衛費の大幅増額に踏み切ったことで関連企業の受注拡大が見込まれ、投資テーマとしての注目度は年々高まっています。
防衛関連銘柄に今、資金が集まっている理由

地政学リスクの高まりと、日本の政策転換。この2つが重なって、防衛関連銘柄は中長期の成長期待を集めています。
2025年10月に発足した高市早苗内閣は、防衛費のGDP比2%達成を前倒しで実現し、サナエノミクスの重点戦略として防衛産業を明確に位置づけました。この後押しを背景に、関連銘柄への資金流入が続いています。
地政学リスクの高まりで国家的命題となった「安全保障」
ロシア・中国・中東。不安定要因が同時多発する中で、防衛需要は世界的に拡大しています。
各国が軍備増強へ舵を切り、日本も例外ではありません。GDP比2%を目標に掲げた防衛費の大幅増額は、その象徴です。
2026年度(令和8年度)防衛費は9兆円超|GDP比2%を前倒し達成
2026年4月7日に成立した令和8年度予算で、防衛省の予算は過去最大の9兆353億円(前年度比+3.8%)となりました。公共インフラ整備や海上保安など安全保障に資する関連経費を合わせると、防衛関連費は総額およそ10兆6,000億円規模に達します。
注目すべきは達成の早さです。政府はもともとGDP比2%を2027年度に実現する計画でしたが、高市政権は2025年度に当初予算と補正を合わせて前倒しで達成しました。防衛費が11年連続で過去最高を更新する流れは、2026年度も途切れていません。
さらに政府は、2026年中に安保3文書(国家安全保障戦略ほか)を前倒しで改定する方針です。改定後の計画ではGDP比2%を上回る新目標が議論されており、装備更新・国産ミサイル開発・自衛隊増強に伴う受注拡大は、当面続く公算が大きい。
5年間で約43兆円──「国家安全保障戦略」で明示
岸田政権が2022年に打ち出した戦略3文書により、日本の防衛費は2023〜2027年度の5年で43兆円規模に拡大しました。三菱重工、IHI、川崎重工といった大手が主要受注先です。2026年中の3文書改定では、この総額がさらに上積みされる可能性があります。
2026年4月「5類型」撤廃|防衛装備品の輸出が本格解禁
2026年に入って、防衛株にもう一つ大きな追い風が加わりました。輸出の解禁です。
政府は2026年4月21日、防衛装備品の輸出ルールである「防衛装備移転三原則」の運用指針を改定し、これまで完成品の輸出を「救難・輸送・警戒・監視・掃海」の5分野に縛ってきた「5類型」を撤廃しました。
これにより、戦闘機や護衛艦、潜水艦といった完成品も、防衛装備品・技術移転協定を結んだ国に対しては原則として輸出できるようになりました。紛争当事国への移転は原則禁止とする歯止めも同時に設けられています。
狙いは、国内需要だけでは支えきれない生産ラインの維持です。輸出で量産効果が働けば、防衛企業の採算は改善します。すでにインドネシア向けの護衛艦や、フィリピンとの協議など具体的な案件も動き始めました。国内予算の拡大に「海外への販路」が重なったことで、関連銘柄の収益機会は一段と広がっています。
国の成長戦略に組み込まれた防衛産業
防衛費の拡大は、そのまま関連企業の業績を押し上げます。かつては敬遠されがちだった軍需投資が、今では堂々たる成長分野です。
防衛関連銘柄は「政策テーマ株」の代表格

国の予算と密接に連動するため、需給が政策主導で読みやすいのが特徴です。
国家を顧客とする構造が高利益・高安定をもたらす
防衛産業は価格競争が起きにくく、顧客がほぼ国に限られる特殊な市場です。長期契約と高い利益率に支えられ、収益基盤は極めて安定しています。
かつて防衛事業は「採算が薄い」と見られがちでした。ところが政府は、防衛装備品を発注する際に企業へ認める想定営業利益率を、従来の8%目安から最大15%へ引き上げています。
弾薬や航空機、艦船、通信機器などが対象で、資材高騰や人件費の上昇分も契約に応じて価格へ反映できる仕組みが整いました。「国を顧客にする薄利のビジネス」から「利益を伴う成長産業」へ。防衛株が見直された背景には、この制度変更があります。
[関連]高市関連銘柄2026年版|重点17分野・予算122兆円で狙う本命テーマ株を徹底解説
防衛装備庁の調達制度が事業の予見性を高める
企業は防衛装備庁の長期調達計画に沿って入札します。スペックも価格も安定した契約が見込めるため、売上の見通しが立てやすく、投資家からは読みやすい業績トレンドと映ります。
防衛関連銘柄こそ短期急騰の大本命

有事や緊張の高まりと連動し、短期で急騰しやすい。ここが防衛株のもう一つの顔です。
2017年に激化した北朝鮮のミサイル実験
2017年、北朝鮮による度重なる弾道ミサイル発射が世界の懸念材料となりました。日本列島上空を通過するミサイルまで撃たれ、米朝の緊張は一気に高まります。防衛関連銘柄への注目度が急上昇し、株価が急騰する場面も相次ぎました。
2019年の米中貿易摩擦と北朝鮮の短距離ミサイル再開
2019年、トランプ政権と中国の貿易摩擦が本格化。関税の応酬が世界経済に不透明感をもたらしました。
同年、北朝鮮が短距離ミサイルの発射を再開し、地政学リスクが再燃。防衛関連銘柄や一部の安全資産に短期資金が流入しました。
もっとも、米中摩擦による景気減速懸念でマーケット全体はリスク回避に傾き、株価は不安定な動きも見せています。
2020年の中東情勢悪化による地政学リスク
2020年初頭、米国によるイラン司令官の空爆を発端に報復の応酬が続き、中東情勢が一気に不安定化しました。
リスク回避ムードで主要株価指数は軒並み急落。一方で、金・原油・防衛関連銘柄には資金が集中し、いずれも大きく値を上げました。
2022年のロシア・ウクライナ戦争の勃発
2022年、ロシアがウクライナへの全面侵攻を開始。首都キーウを含む各地への攻撃が続き、世界に衝撃が走りました。
国家間の全面戦争は想定外だっただけに、市場にはネガティブサプライズとなり、株式は全面安。開戦直後はリスク回避が強まり、各国指数が急落します。
そのなかで、防衛関連銘柄や資源株には資金が集まり、有事を織り込む動きがはっきり表れました。
2024年のイスラエルを巡る中東情勢の有事リスク
2024年は、ガザ侵攻やイスラエル・イラン間の緊張で中東が再び不安定化。「日本も無関係ではいられない」という空気が強まり、安全保障への注目度が急上昇しました。
結果として防衛・軍需関連株への物色が活発化し、関連銘柄の株価が上昇する場面が続きました。
有事のたびに急騰する筆頭株|石川製作所〈6208〉
こうして振り返ると、防衛関連銘柄が物色される局面は1〜2年に一度は必ず訪れています。そして、有事のたびに高い確率で急騰する定番銘柄がある。その筆頭が石川製作所〈6208〉です。

繊維機械や段ボール製函印刷機を手がける産業機械メーカーですが、機雷・地雷・航空機用電子機器といった防衛機器にも高い技術を持ちます。地政学リスクが高まると、真っ先に物色される一社です。
実際、2017年の北朝鮮ミサイル問題では、株価が500円台から一気に3,500円台へ急騰。およそ6倍超という異例の上昇を記録しました。
有事を先読みして仕込む戦略はハマれば大きい。ただし値動きの振れ幅が激しく、タイミングを外せば損失も膨らみます。初心者には扱いの難しい銘柄です。
そこで次章では、もう少し腰を据えて狙える本命を、ランキング形式で並べておきます。
防衛関連銘柄の本命ランキング【2026年最新・厳選9選】
有事に強い短期の急騰株から、国家予算で中長期に伸びる本命まで、防衛関連銘柄を9つに絞ってランキングにしました。まずはこの一覧で全体像をつかんでください。個別の解説は次の章から続けます。
| 順位 | 銘柄(コード) | 市場 | タイプ | 注目ポイント |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 三菱重工業〈7011〉 | 東証プライム | 大本命 | 潜水艦・護衛艦・ミサイルまで守備範囲が最も広い総合首位。受注残が厚い。 |
| 2 | IHI〈7013〉 | 東証プライム | 本命 | 戦闘機エンジンが看板。宇宙・原子力にも広がり国家予算と連動。 |
| 3 | 川崎重工業〈7012〉 | 東証プライム | 本命 | 三大重工の一角。輸送機・ヘリ・潜水艦の製造技術に強み。 |
| 4 | 東京計器〈7721〉 | 東証プライム | 精密 | 慣性航法装置・魚雷管制など、装備近代化ニーズを取り込む精密機器。 |
| 5 | 細谷火工〈4274〉 | 東証スタンダード | 純度高 | 照明弾・点火装置など防衛色が濃く、テーマ株として値動きが分かりやすい。 |
| 6 | 石川製作所〈6208〉 | 東証スタンダード | 急騰の穴 | 機雷の代表格。有事のたびに急騰する短期物色の筆頭。値動きは荒い。 |
| 7 | 豊和工業〈6203〉 | 東証スタンダード | 小型の穴 | 国内では数少ない小火器メーカー。防衛部門の存在感で物色されやすい。 |
| 8 | 日本電気硝子〈5214〉 | 東証プライム | 素材 | F-35のコクピットにも使われる高機能ガラス。素材面から防衛を支える。 |
| 9 | 藤倉コンポジット〈5121〉 | 東証プライム | 部材 | 艦艇の防振装置や航空機燃料タンク向け特殊ゴム。ニッチだが専門性が高い。 |
上位の三菱重工・IHI・川崎重工は、いわば防衛の本丸。予算拡大の恩恵をもっとも安定して受けます。一方、石川製作所や豊和工業のような小型株は、有事の初動で跳ねやすい代わりに反動も大きい。狙いどころが正反対なので、ご自身のスタンスで選び分けるのが正解です。
初心者でも注目しやすい国内防衛関連銘柄をピックアップ

防衛関連銘柄の中核をなすのが、三菱重工業・川崎重工業・IHIの3社です。市場では「軍事銘柄御三家」とも呼ばれ、防衛の本丸として真っ先に名前が挙がります。ここでは、この御三家を中心に、初心者でも動向を追いやすい銘柄を個別に見ていきます。
三菱重工業〈7011〉

三菱重工業は、防衛装備の開発・製造で日本を代表する企業です。海上自衛隊向けの潜水艦・護衛艦、陸自向けのミサイルシステムや戦車関連、空自向けのミサイルや航空機整備まで、守備範囲の広さが群を抜きます。
GDP比2%の増額方針で受注増が見込まれ、業績への寄与は大きい。民間航空機やエネルギー事業も抱えるため、分散の効いた安定感も持ち合わせています。
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川崎重工業〈7012〉

川崎重工業は、三菱重工と並んで防衛の中核を担う「御三家」の一角です。航空機やヘリコプター、ミサイルに加え、潜水艦では三菱重工と2社でほぼ独占する国内の要となっています。
2024年度の防衛装備品の契約額は6,383億円で、三菱重工に次ぐ2番手。前年比では6割超の伸びを見せ、受注の勢いは御三家の中でも際立ちます。船舶・車両・航空宇宙・ガスタービンと事業の裾野が広く、三大重工の中では配当利回りの高さも持ち味です。輸出解禁で護衛艦や潜水艦の販路が広がれば、恩恵を受けやすい一社といえます。
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IHI〈7013〉

IHIは、航空エンジン・防衛装備・宇宙機器まで幅広く手がける重工メーカーです。空自向けの戦闘機エンジンやミサイル部品を製造し、日本の安全保障を技術で支えています。
宇宙・原子力・エネルギーといった国家戦略領域にも強く、中長期の国家予算と連動する安定感が魅力。防衛費拡大の追い風を受けやすい一社です。
防衛関連銘柄は中長期で安定成長が見込める

国家契約に基づく長期受注と、インフレに強い価格構造。この2つが防衛株の安定性を支えています。
2029年頃までの受注残で業績の見通しが明確
三菱重工やIHIといった主力は、すでに2029年ごろまでの大型契約を多数抱えています。国主導の装備更新計画に沿うため業績の先行きが読みやすく、成長と安定を両取りできる構造です。
価格改定余地によりインフレ耐性も高い
防衛関連の契約は、資材高騰や人件費上昇に対して価格交渉が可能です。政府調達という性質上、一定の利益率が保たれやすく、景気変動やインフレに強いビジネスモデルといえます。
海外防衛株の動向とも連動しやすい
ロッキード・マーティンやRTX(旧レイセオン)など米防衛大手の決算・受注が報じられると、日本株も連動して物色されがちです。グローバルな需給テーマとして見られている証拠でしょう。
ETF・投信経由での資金流入も追い風
iSharesやSPDRなど「国防・航空宇宙」に特化したETFが近年好調です。一部の日本企業も構成銘柄に入っており、海外マネーの循環ルートとしても効いています。
防衛関連銘柄に投資する際の注意点

防衛関連銘柄は短期思考や政治的なブレに振られやすいため、冷静な視点が欠かせません。
政策の方向性は政局で揺れる可能性も
中長期では防衛費拡大が国策として進みます。ただし予算は毎年の国会承認が必要で、政権交代や財政制約による方針転換はリスク要因です。
「国策だから安心」と過信せず、政治動向や予算審議の行方にも目を配りながら判断してください。突発的な政治イベントで市場が揺れる場面は、これからも起こります。
ニュースによる短期過熱に注意
国際情勢やメディア報道を受けて、一部銘柄が急騰から急落に転じるケースは珍しくありません。材料出尽くしや利確売りで反落する恐れがあり、中長期の成長性に軸足を置く姿勢が大切です。
地政学リスクが高まった直後は、業績と関係なく「話題性だけ」で買われることもあります。焦って飛びつかず、株価が落ち着いてから冷静に判断する。ここは初心者ほど徹底したいところです。
「防衛関連」でも売上比率が低い銘柄に注意
もう一つ、銘柄選びで見落としがちな点があります。「防衛関連」と呼ばれていても、その事業が会社の売上に占める割合は企業ごとに大きく違います。
実際、御三家の三菱重工・川崎重工・IHIでさえ、防衛省向けの売上比率は数%から十数%にとどまります。防衛以外の事業が大半を占める企業では、防衛部門がいくら伸びても全体の業績インパクトは限られます。逆に、防衛の売上比率が高い小型株は、テーマが物色されたときの反応が大きくなります。
「防衛関連だから買う」のではなく、その会社の売上や利益に防衛がどれだけ効いているのかを確認する。この一手間が、テーマ株で高値づかみを避けるコツです。
防衛関連銘柄への投資は分散とテーマ活用がカギ

防衛株とうまく付き合うコツは、分散と長期視点です。
ETF・投資信託の活用で業界全体へ投資
初心者なら、防衛・航空宇宙テーマのETFや関連銘柄を複数含む投信を使うのが手堅い。特定企業の値動きリスクを抑えつつ、中長期の成長テーマに乗れます。
個別株は値動きが大きくなりがちですが、ETFや投信なら複数銘柄に分散でき、1社の不振に引きずられにくくなります。
「防衛×インフラ」など複合テーマで分散する
防衛関連銘柄は通信・重工・電子機器など他産業とも重なります。テーマを組み合わせれば、バランスの良いポートフォリオを組めます。
三菱重工やIHIは防衛だけでなくエネルギーや航空機も手がけ、複数の収益源を持ちます。防衛一本に絞らず、宇宙・通信・インフラといった隣接テーマと組み合わせる。それがこの荒波との付き合い方です。
まとめ
防衛関連銘柄は、地政学リスクの時代に資産防衛と成長投資を同時に狙えるテーマです。2026年度も予算は過去最大を更新し、政策の後押しは一段と鮮明になりました。
短期の値動きに振り回されず、本命を軸に据えて分散する。この基本を外さなければ、堅実なリターンは十分に狙えます。

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執筆者情報
日本投資機構株式会社 アナリスト
準大手の証券会社にて資産運用のアドバイザーを務めた後、日本株主力の投資顧問会社の支店長となる。現在は日本投資機構株式会社の筆頭アナリストとして多くのお客様に株式投資の助言を行いつつ、YouTubeチャンネルにも積極的に出演しており、資産運用の重要さを発信している。

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