世界的に創出されるIP(知的財産)とスマホゲームの成長に支えられ、ゲーム業界は株式市場でも注目のセクターです。
ゲーム関連銘柄は、業績の波が大きい一方で、ヒット作や新ハード登場で急騰することも多く、テーマ投資の魅力が詰まっています。
本記事では、ゲーム関連銘柄の特徴と業界構造、テーマ別の注目株、初心者がチェックすべきポイントまで、具体例をまじえて丁寧に解説します。
■ゲーム株は“テーマ株の王道” 中長期的な成長セクター

ゲーム市場は成熟しているように見えて、依然として世界的な拡大が続いています。新たなプラットフォームやマネタイズ手法の進化が、継続的な成長を支えています。
●世界的ヒット作とIPの影響力が株価を動かす
スマホゲームの普及により、誰もが日常的にゲームに触れるようになりました。それにより、ユーザーの層が大きく広がり、一つの人気タイトルが世界中で同時にブームになることも珍しくありません。
中国のmiHoYoが開発した「原神」は、スマホ・PC・PS5など複数のプラットフォームで展開され、世界中のユーザーから人気を集めました。また、日本発の「モンスターハンター」シリーズも、長年にわたって世界中で愛されており、販売本数は累計1億本を超えると言われています。
こうした強力なIPを持つ企業は、それだけで市場から高く評価されやすく、株価にも敏感に反映される傾向があります。IPを複数の国・複数の機種に展開できる体制が整っている企業は、投資対象として中長期的な魅力を備えているといえるでしょう。
●海外展開やeスポーツが収益の上限を押し上げる
近年、ゲーム業界の多くの企業が日本国内にとどまらず、北米・欧州・アジア圏といった海外市場での展開を加速させています。さらに、YouTubeやTwitchなどのゲーム配信プラットフォームでは、大会や実況中継が行われ、eスポーツという新しいビジネスが生まれました。
とくに若年層の間では、「観るゲーム」が当たり前になっており、スポンサー契約や広告収入を得るなど、収益化の手段が多様化しています。これにより、ヒット作の影響範囲がかつてよりも大きくなり、企業の売上や利益の“上限”が引き上がっているのです。
■ゲーム業界は世界中で“第2の成長期”に突入している

今、生成AIやクラウド技術、Web3といった“次の波”が産業構造を大きく変え始めており、ゲーム業界全体が再び成長フェーズに入っていると注目されています。
●プレイ人口の増加と技術革新が成長を後押し
現在、世界中でゲームを楽しむ人の数が再び急増。背景にあるのは、新興国でのスマートフォン普及や、5G通信の発達によるゲーム環境の整備です。誰でもスマホ一台あれば本格的なゲームを遊べる時代となり、ライトユーザーからコアゲーマーまで層が厚くなってきています。
さらに、AIの導入によりゲーム開発のハードルが大幅に下がっている点も見逃せません。これまで大企業しか手が出せなかった複雑なゲーム制作も、翻訳やキャラクターデザインなどが自動化され、少人数でも短期間で開発できるようになりつつあります。このように「プレイヤー」「開発者」の両面で市場の広がりが進んでいるのが現在の状況です。
●世界市場は25兆円規模に拡大、今後も右肩上がりの見通し
市場調査会社Newzooのデータによると、2024年の世界ゲーム市場は約25兆円に到達。前年比+5%と着実な成長を続けており、これは単なる一過性のブームではなく、構造的な拡大が進んでいることを示しています。
「スマホ」「コンソール」「PC」といった従来の市場に加え、AI・クラウド・メタバース(仮想空間)という新領域が融合しながらゲーム産業の成長を加速させていることが、今後のゲーム株市場最大の注目ポイントです。
■過去に急騰を見せた“ゲーム関連銘柄”の代表例
過去において、ゲーム業界からは数々のテンバガー候補や急騰銘柄が生まれています。大型タイトルの成功や新技術の導入、eスポーツ市場の拡大など、特定のテーマに乗ることで株価が一時的に大きく上昇したケースが多く見られます。
●任天堂〈7974〉:Switch大ヒットで時価総額が倍増

2017年に発売されたNintendo Switchが世界的にヒット。ゲーム機本体とソフトの連動販売により、数年間にわたり業績・株価ともに右肩上がりを記録しました。コロナ禍での“巣ごもり需要”も追い風となり、決算ごとに上方修正を続けています。
●ドリコム〈3793〉:人気アニメIPとの協業で短期急騰

人気アニメなどのIP(知的財産)と協業し、スマートフォン向けゲームを展開している企業です。過去には『ONE PIECE』など話題性のある作品と連携し、ゲームリリース直後に株価が短期的に急騰した例もあります。
●ガンホー〈3765〉:株価100倍超の伝説を残したゲーム株

スマホゲーム『パズル&ドラゴンズ』の大ヒットを受け、2012年から2013年にかけて株価が一時100倍超まで急騰した実績を持つ伝説的銘柄です。ゲーム関連のテーマ株相場を語るうえで欠かせない存在となっています。
■【リリゴ警戒】ゲーム関連銘柄特有の値動きには注意

ゲーム関連銘柄は材料が豊富な一方で、仕込みと利確のタイミングを誤ると大きな損失にもつながります。特にリリース時などの【ゴール売り】には注意が必要です。
●ゲームの“リリース日”が近づくと利益確定売りが出やすい
新作ゲームの発売日が近づくと、「期待で買って、発表で売る」投資家の動きが強まります。材料が出尽くす前に先回りして利確され、リリース直後に株価が下落する“ゴール到達型の売り”、いわゆる「リリゴ」が頻繁に見られます。
特に時価総額が小さいゲーム関連株は、イベント通過後の値動きが急変しやすく、上昇トレンド中でも大陰線で流れが崩れるケースがありますので注意です。
●スマホアプリは“セルラン上昇”だけで飛び乗らない
スマホアプリはAppStoreやGoogle Playでの売上ランキングが注目されますが、一時的なブーストで上がっている場合もあります。継続的な売上推移や課金イベントの頻度をチェックすることが大切です。
また、広告費の増加で一時的に売上を押し上げている場合は、収益性が低下するリスクもあるため、営業利益率にも目を配る必要があります。
●“決算直前”の期待先行相場は慎重に
新作リリースやランキング好調が続いていると、決算での上方修正を期待して買われることがあります。しかし、業績が市場予想を下回れば急落のリスクも。
好決算でも「出尽くし」で下げることも多いため、過去の決算パターンを確認することが有効です。直前期のチャート形状や出来高の増加など、仕掛け的な動きにも注意を払いたいところです。
■【成長余地と材料性】で注目される“今”のゲーム株

ゲーム業界では大型IPの展開や新規リリース、海外戦略を軸に注目度の高い銘柄が多数存在します。そんな短期の材料性と中長期の成長性、双方を備えた銘柄を紹介します。
●カプコン〈9697〉:モンハン新作+安定業績で強い支持

「モンスターハンター」「ストリートファイター」など大型IPを軸に、安定した売上と利益を継続。新作投入による株価の循環的な物色が特徴です。ダウンロード売上比率の上昇で収益性が高まっており、為替影響にも強い構造です。
●コーエーテクモHD〈3635〉:IPとコラボ展開で安定感

「信長の野望」「三國無双」など自社IPに加え、任天堂など他社とのコラボ展開も積極的。収益変動が少なく、押し目で買われやすい銘柄です。海外売上比率も高く、為替・グローバル化との相性が良い企業です。
●アカツキ〈3932〉:テーマ性の強さで短期資金を集めやすい

「ドラゴンボールZ」などIPゲーム開発実績を背景に、2025年はメタバースやエンタメテック領域へも拡大中。話題性が高く、材料株として注目されやすいのが特徴です。業績はやや不安定ながら、テーマ性・材料性の両面で期待が持たれています。
●その他の注目ゲーム関連銘柄
銘柄名 | 市場 | 企業概要 |
【7844】マーベラス | 東証プライム | 「牧場物語」など女性・子供向けIPに強く、新作スマホゲームの開発も進行中。 |
【3662】エイチーム | 東証プライム | 音楽ゲームや女性向けアプリでヒット実績あり。広告との連携で収益化進展。 |
【3938】LINEヤフー | 東証プライム | ゲーム配信基盤を持ち、海外パブリッシャーとの連携によるタイトル増加に注力。 |
【4751】サイバーエージェント | 東証プライム | Cygamesによる大型IPゲームを多数展開、広告・メディアとのシナジーも強み。 |
【9468】KADOKAWA | 東証プライム | アニメ・ゲーム・書籍のメディアミックス展開を強化、海外比率拡大中。 |
■ゲーム株は引き続き生成AIや新技術が業界の構造を変える

今後のゲーム業界では、AI活用・サブスク化・メタバース対応など新しいテクノロジーと収益モデルが加速すると見られ、収益構造そのものが変わる局面にあります。
●生成AIの実装で開発効率と自由度が飛躍的に向上
従来、ゲーム制作には大人数のクリエイターが必要でした。しかし近年、AIが画像・音声・テキストを自動生成する「生成AI」の登場により、ゲーム制作の現場が大きく変わりつつあります。
少人数で高品質なゲームを効率よく作れるようになると、開発コストが下がり、中堅企業やスタートアップにもチャンスが広がることになります。これは、投資家にとっても注目すべきトレンドです。
●サブスクリプション型の安定収益化モデルへシフト
ゲーム業界では「一度買って終わり」のパッケージ販売から、「毎月定額で遊び放題」のサブスクリプション型(サブスク)モデルへの移行が進んでいます。
ユーザーは月額料金を払えば、多くのゲームを好きなだけ楽しめるようになり、企業側は継続的に安定した収益を得る仕組みが整います。収益モデルがパッケージ販売から積み上げ型へと変化していることは、企業の利益構造を大きく安定化させる要因となり、株式市場でも評価されやすくなっています。
●ゲームは「遊ぶ」から「集う」へ──メタバースが広げる世界
さらに、ゲームは単なる“娯楽”にとどまらず、「人が集まり、交流し、経済活動が行われる仮想空間」としての価値も高まっています。いわゆるメタバースの流れです。
このような“遊び+交流+ビジネス”の要素を持つゲーム空間は、企業にとっても広告やイベント、バーチャル商品の販売など新しいビジネスの場となっています。
今後も、教育や医療、ファッションなど他業種との連携が進むことで、メタバース型のゲームは一つの「経済圏」として成長していく可能性があります。
■ゲーム株業界は変化と可能性を信じて向き合うテーマ株

ゲーム株への投資は、「単なるトレンドの追いかけ」ではなく、構造の理解と視点を持って向き合うことが成功のカギとなります。
●“変化の波”をチャンスに変えられる企業を選ぶ目線が重要
2025年以降のゲーム業界は、生成AIやサブスクリプション、メタバースといった新しい技術とビジネスモデルの導入が一気に進む時代に突入しています。これは一見すると難解なテーマにも思えますが、ポイントを押さえれば、株式投資の「大化けテーマ」として非常に魅力的な分野です。
だからこそ、“今、何が構造的に変わっているのか?”を自分の言葉で説明できるくらい理解しておくことが、テーマ株投資で成功する第一歩となります。
●ゲーム=ただの遊びなんてもう昔の話
ゲーム産業は娯楽という枠を超えて、人々の生活や社会のあり方そのものに関わる大きな存在になりつつあります。遊び・つながり・創造・経済が交差する場所として、これからも進化を続けていくでしょう。
■まとめ|ゲーム株は魅力溢れる投資対象である
本記事では、ゲーム関連株の成長性と注意点、具体的な注目銘柄までを丁寧に整理してきました。もしあなたが「ゲームには詳しくない」と感じていたとしても、構造を理解することから始めれば、十分に投資対象として検討できる分野です。
「話題だから買う」のではなく、「理解して待つ」「変化を見て動く」というスタンスを持つことで、テーマ株投資はもっと健全に、もっと楽しくなります。
変化を恐れず、自分なりのルールと視点を持ちながらゲーム業界の可能性に、あなたも一歩踏み出してみてください。
執筆者情報
編集部
INVEST LEADERSを運営する顧問投資会社「日本投資機構株式会社」の代表取締役を含めたスタッフ及びサポートアナリストの記事を掲載しています。株式投資や金融に纏わる話題は勿論のこと、読者の暮らしや生活を豊かにするトピックスや情報を共有していきます。