「RSIが30を割ったから買い、70を超えたから売り」
RSIの説明はたいていここで終わります。
ところが実際にやってみると、30割れからさらに下げ、70超えからさらに上げる。
教科書どおりにやったのに、なぜか負ける。よくある話です。
この記事では、RSIが何を計算しているのかというところから始めて、70と30が効く場面と効かない場面の見分け方、そして期間14という数字の意味までを整理します。
読み終わる頃には、「70だから売り」と機械的に判断することの危うさが分かるはずです。
RSIの基本と知っておきたい計算方法|これで売買の基準が明確になる

RSIの数字に振り回されないためには、その数字が何を測っているのかを知るしかありません。計算式は驚くほど単純です。そして単純だからこそ、限界もはっきりしています。
RSIとは何か?相対力指数の基礎と特徴
RSIは Relative Strength Index の略で、日本語では相対力指数。0〜100の範囲を行き来する1本の線で、値上がりと値下がりのどちらに勢いがあるかを表します。
考案したのはJ.W.ワイルダー。1978年の著書『New Concepts in Technical Trading Systems』で発表されました。ちなみにワイルダーは、ADXもATRもパラボリックもDMIも作った人です。テクニカル分析の世界では、ほとんど一人で棚を埋めているような存在ですね。
RSIが高いほど買われすぎ、低いほど売られすぎ。そう説明されますが、より正確には「直近の値動きのうち、上げ方向が何%を占めていたか」を示す数字です。この違いは後で効いてきます。
RSIの計算方法をやさしく図解
計算式はこうです。値上がり幅の合計 ÷(値上がり幅の合計 + 値下がり幅の合計)× 100。たとえば直近14日間で、値上がり幅の合計が90円、値下がり幅の合計が30円だったとします。90 ÷(90 + 30)× 100 で、RSIは75。この14日間の値動きのうち、75%が上げ方向だったという意味になります。

ここから分かることがあります。RSIが100なら14日間すべて上昇、0なら全日下落。どちらも現実にはまず起きないので、RSIが端に張りつくことは滅多にありません。そして50は、上げと下げがちょうど互角。50が売り買いの分水嶺だと覚えておくと、70や30だけを見るより相場が立体的に見えてきます。
同じ銘柄でも数値が違う?ワイルダー式とカトラー式
あまり知られていませんが、RSIの計算式は2種類あります。上で紹介したのは、値幅を単純に合計する「カトラー式」。もう1つが、ワイルダー本人が考案した「ワイルダー式」で、こちらは直近の値動きに比重を置いた修正移動平均を使います。同じ期間14でも、出てくる数字は一致しません。
厄介なのは、ツールによって採用している式が違うことです。TradingViewの標準はワイルダー式。楽天証券のマーケットスピードは「RSI1」「RSI2」として2種類を用意しています。RSI1が平均を使うワイルダー式系、RSI2が期間内の合計を使うカトラー式系です。
同じ銘柄を2つの画面で開いて、RSIの数字が食い違っていても、どちらも壊れていません。式が違うだけです。SNSで見かけた「RSI28で買い場」が自分の画面では33、といったズレはここから生まれます。まず、自分のツールがどちらの式を使っているのかを確かめてください。選べるなら、話題にする相手と揃えておくと余計な混乱がありません。
RSIの売買シグナルとダマシ対策|初心者でも躊躇しないポイント

基準値そのものは単純です。問題は、その基準値がいつ効いて、いつ効かないのか。ここを飛ばすと、ダマシ(だまし)に何度でも刈られます。
RSIの売買シグナル基準値を具体的に解説
広く使われている目安は「70以上で買われすぎ、30以下で売られすぎ」。70を超えてから下向きに転じたら売り、30を割ってから切り返したら買い、という逆張りの発想です。ポイントは、到達した瞬間ではなく、そこから折り返したのを見てから動くこと。70に触れただけで売ると、大抵は早すぎます。

70・30は万能ではありません。値動きの荒い銘柄なら20〜80、穏やかな銘柄なら25〜75。自分が扱う銘柄の過去チャートを見て、どのあたりで折り返しているかを確かめ、基準を作り直したほうが精度は上がります。数字は借り物でなく、自分で決めるものです。
50ラインで見るトレンドの持続性
70と30ばかり注目されますが、実戦でもっと使えるのは真ん中の50かもしれません。RSIが50より上で推移している間は上昇トレンド、50を下回っている間は下降トレンド。上げと下げが互角なら50なので、そこを超えているかどうかがそのまま優劣の判定になります。
この見方が効くのは、エントリーした後です。RSIが30を割って反発した。買いました。ここからが分かれ道で、50を超えられずに再び下げ始めたら、それは反転ではなく下降トレンドの中の小さな戻りだったということ。反発の勢いが本物かどうかは、50を超えられるかで判定できます。買った後もRSIから目を離さず、50をきちんと超えたかを確認する。これだけで、戻り局面で買ってしまう失敗がかなり減ります。
ダマシを回避するための複数シグナル併用法
RSI単独では、強いトレンドが出た瞬間に機能しなくなります。だから何かと重ねます。定番は25日移動平均線。株価が25日線の上にいるなら上昇基調なので、RSIの30割れは「押し目買い」として素直に取れます。
逆に25日線の下なら、30割れはただの下落途中かもしれない。移動平均線で向きを決め、RSIでタイミングを計る。この役割分担が、もっとも失敗しにくい組み合わせです。
[関連]移動平均線(MA)とは?仕組みや計算方法、活用時の注意点をプロが徹底解説
もう1つがダイバージェンス。株価は高値を更新したのに、その時のRSIは前回の高値時より低い。これが弱気のダイバージェンスで、上げの勢いが落ちているサインです。
安値更新なのにRSIが切り上がっていれば、その逆で強気のダイバージェンス。底値圏でのこの形は「コンバージェンス」と呼ばれることもあります(呼び分けは書き手によってまちまちで、まとめてダイバージェンスと言う場合も多い)。

ダイバージェンスは、出てから実際に転換するまで時間がかかります。これ1つで逆張りするのは危険。「そろそろ警戒」の合図であって、「今すぐ売り」の合図ではありません。
RSIで避けたい「逆張りの落とし穴」
ここがRSIの最大の弱点です。30割れを買い、70超えを売る。レンジ相場では気持ちいいほど効きます。ところが強いトレンドが出た途端、この手法は逆回転します。
上げ続ける相場では、RSIは70台に貼りついたまま動きません。当然です。RSIは「上げの割合」を測っている指標なので、上げ続けている限り高いのは当たり前。買われすぎを示しているのではなく、上げていることを示しているだけなんです。

この状態を「高止まり」と呼びます。下落トレンドでは30台での「低止まり」が起きる。ここで逆張りを繰り返すと、資金が溶けます。トレンドが出ている間、RSIの逆張りは休む。それが正解です。
RSIの実践手順とスクリーニング|迷わず銘柄を絞り込むコツ

数字を眺めるだけでは銘柄は選べません。RSIを「探す道具」として使う方法を見ていきます。
RSIを使った個別銘柄の売買タイミング例
手順はこうです。まず日足チャートに25日移動平均線とRSIを表示する。株価が25日線の上にあり、押し目でRSIが30〜40まで下げて反転したところ。ここが買いの候補です。逆に、株価が25日線を割り込んでいるなら、RSIが30を切っていても手を出さない。
大事なのは、この手順を自分の銘柄で検証することです。過去1年分を遡って、RSIが30を割った場面を全部数えてみてください。何回反発して、何回そのまま下げたか。勝率が5割を切る銘柄なら、その銘柄でRSIの逆張りをやる理由はありません。教科書の数字より、自分が数えた数字のほうが役に立ちます。
[関連]移動平均線を用いたエントリーポイント!アナリストが実際の売買例を元に解説
銘柄スクリーニングで使う際のポイント
スクリーナーの条件は単純で構いません。「RSI 30未満」で売られすぎ銘柄、「RSI 70超」で買われすぎ銘柄が並びます。ただ、この抽出結果をそのまま売買してはいけません。
RSI30割れリストには、反発寸前の銘柄と、下落トレンドの真っ最中の銘柄が混ざっています。見た目は同じ数字ですが、中身は正反対です。
ですから条件はもう1つ足します。「RSI 30未満」かつ「株価が25日線より上」。あるいは「RSI 30未満」かつ「出来高が急増」。トレンド系の条件を重ねた瞬間に、リストの質は変わります。抽出は出発点であって、答えではありません。
[関連]出来高分析で差をつける!初心者でも分かる出来高の見方・売買戦略を徹底解説
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RSI以外のテクニカル指標と組み合わせる|穴を埋める考え方

RSIは万能ではなく、むしろ穴の位置がはっきりしている指標です。だからこそ、何で埋めるかが決まります。
RSIとMACDの組み合わせで確認する
RSIは過熱感を測り、MACDはトレンドの向きと勢いを測ります。測っているものが違うので、重ねる意味があります。RSIが30付近まで下げて反転し、同じタイミングでMACDがゴールデンクロス。
根拠が2つそろった場面です。片方だけなら見送り、両方そろったら入る。それだけでエントリー回数は減りますが、質は上がります。
逆に避けたいのは、似た指標を並べること。RSIとストキャスティクスはどちらもオシレーターで、同じような場面で同じようなサインを出します。2つ並べても、同じ間違いを2回するだけです。根拠が増えたように見えて、実は増えていません。
[関連]MACDとは?図解でわかる見方・使い方|設定とダマシの避け方も解説
ボリンジャーバンドやRCIとの違いと活用ポイント
3つとも似て見えますが、見ているものは別です。
| 指標 | 測っているもの | 数値の範囲 |
|---|---|---|
| RSI | 値幅のうち上げが占めた割合 | 0〜100 |
| RCI | 価格と時間の順位相関(上がり続けた期間の長さ) | −100〜+100 |
| ボリンジャーバンド | 価格のばらつき(標準偏差) | ±1σ〜±3σ |
RCIは「上がり続けた期間の長さ」に反応するので、値幅を見るRSIより早く天底を示すことがあります。同じオシレーターでも、反応するポイントがずれるわけです。
実戦で使いやすいのは、RSIとボリンジャーバンドの組み合わせでしょう。バンドの幅が狭い(スクイーズ)=レンジ相場なら、RSIの逆張りが効く場面。バンドが広がった(エクスパンション)=トレンド相場なら、RSIの逆張りは休む。ボリンジャーバンドで「今RSIを使っていい相場か」を判定する。使うかどうかを決める道具、という位置づけです。
[関連]ボリンジャーバンドの見方・設定方法、実際の売買手法をアナリストが解説!
RSIを活かすための注意点と失敗しやすいパターン|落とし穴を避ける

負けパターンは、だいたい3つに分類できます。順に見ていきます。
トレンドが強い相場で陥りやすい誤解
1つめは、先ほどの高止まり・低止まりです。「70超えは異常値だから、いずれ戻る」という思い込み。RSIの70は異常でも何でもなく、単に上げが続いているという事実の表示です。
強い上昇トレンドでは、RSIが70台のまま何週間も推移することがあります。そこで空売りを重ねるのは、走っている電車の前に立つようなもの。RSIの数字ではなく、トレンドが出ているかどうかを先に見てください。
パラメータ設定ミスの意外な落とし穴
2つめは期間の設定。標準は14で、これはワイルダーの推奨値です。なぜ14かというと、ワイルダーが相場には28日周期があると考え、その半分を取ったからだと言われています。理屈の是非はさておき、多くの投資家が14で見ている以上、共通言語として意味があります。
| 期間 | 性格 | 向いている使い方 |
|---|---|---|
| 9 | 反応が早い。ダマシも増える | 日本株では14と並ぶ定番 |
| 14(標準) | バランス型 | まずはここから |
| 21〜25 | 反応が鈍い。ダマシは減る | 週足、長期投資 |
日足なら9日・14日・22日・30日、週足なら9週・13週あたりが定番です。楽天証券のマーケットスピードは、初期設定が9日です。
9日は14日より振れ幅が大きくなるので、同じ銘柄でも70や30に届く頻度がまるで違います。計算式の話と同じで、ここでもまず「自分の画面は何日なのか」の確認から。数字を語る前に、前提を合わせる必要があります。
短くすればサインは増えますが、その多くはノイズです。長くすれば確実になりますが、動いた頃には終わっています。数字をいじる前に、14のまま100回チャートを見る。そのほうが早く上達します。
投資判断をRSIに全面依存しないことの重要性
3つめは、RSIを万能だと思うこと。決算発表の直後、株価が窓を開けて飛べば、RSIは一気に70を超えます。でもそれは買われすぎではなく、業績が織り込まれただけ。株式分割や権利落ちでも数字は歪みます。
RSIは過去の値幅を集計しているだけで、その値動きの理由は何も知りません。イベントの前後は、テクニカルの出番ではないと考えてください。
RSIのよくある質問

株式投資でRSIを使う際に寄せられることが多い質問をまとめました。
まとめ|RSIで迷わないために押さえておきたいポイント

RSIが測っているのは、直近の値動きのうち上げが占めた割合です。買われすぎでも売られすぎでもなく、上げの割合。ここが分かれば、強いトレンドでRSIが高止まりする理由も、そこで逆張りしてはいけない理由も、同じ話だと気づけるはずです。
使いどころははっきりしています。レンジ相場では逆張りの武器になり、トレンド相場では黙る。だから「今どちらの相場か」を先に判定する。移動平均線でもボリンジャーバンドでも構いません。その判定を飛ばして70・30だけを見るから、ダマシに当たります。
まずは自分のツールがワイルダー式かカトラー式かを確かめて、期間14のまま、自分の銘柄の過去1年を遡ってください。30割れが何回あって、何回反発したか。数えるだけで、その銘柄でのRSIの実力が分かります。半世紀近く使われてきた指標ですが、あなたの銘柄で効くかどうかは、あなたにしか確かめられません。

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執筆者情報
日本投資機構株式会社 アナリスト
準大手の証券会社にて資産運用のアドバイザーを務めた後、日本株主力の投資顧問会社の支店長となる。現在は日本投資機構株式会社の筆頭アナリストとして多くのお客様に株式投資の助言を行いつつ、YouTubeチャンネルにも積極的に出演しており、資産運用の重要さを発信している。

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