株式取引の注文画面で「SOR」という表示を目にしたことはないでしょうか。チェックが入ったまま放置している人も多いはずですが、これは投資家がより有利な価格で株を売買できる可能性を高めるための仕組みです。
SORは「スマート・オーダー・ルーティング」の略。東京証券取引所(東証)だけでなく、PTS(私設取引システム)やダークプールも含む複数の市場から、その時点で最も有利な価格を自動で選んで注文を執行します。
仕組みそのものは単純です。ただし、対象銘柄の調べ方や、SORが効かない注文・時間帯を知らないまま使うと「なぜ東証で約定したのか」と首をかしげることになります。基本から注意点まで順に見ていきましょう。
SOR(スマート・オーダー・ルーティング)注文とは?自動で最良価格を選ぶ仕組みを解説

SOR(スマート・オーダー・ルーティング)注文とは、複数の市場から最も有利な条件を自動的に探し出し、注文を執行する仕組みです。
投資家が株の売買注文を出す際、通常は東証に注文が送られます。SOR注文を使うと、証券会社のシステムが東証の気配値だけでなく、後述するPTSやダークプールの価格も同時に比較します。
その結果、注文を出した瞬間に最も高く売れる、あるいは最も安く買える市場を自動で選択し、注文を振り分けてくれます。投資家が自分で板を見比べる必要はありません。
東証だけではない?PTS(私設取引システム)から最適な価格を自動選択
SOR注文が参照するのは、東証だけではありません。
大きな特徴は、PTS(Proprietary Trading System:私設取引システム)やダークプールの価格も比較対象に含める点です。
PTSは取引所とは別に運営されている株式の取引市場で、個人投資家も広く利用しています。証券会社によって参照先は異なり、たとえばSBI証券のSOR注文は、優先市場(東証など)、ジャパンネクストPTSのJ-MarketとX-Market、大阪デジタルエクスチェンジPTS(ODX)、そして自社のダークプールであるSBIクロスの計5市場の気配を監視します。楽天証券も東証に加えてPTSとダークプールを比較対象にしています。
PTSやダークプールでは東証より細かい呼び値が使えるため、東証で100円買い・101円売りの気配でも、その間の100.5円といった価格で約定できることがあります。SORはこうした市場をリアルタイムで監視し、東証の最良気配と同値かそれより有利な価格があった場合に、自動でそちらへ注文を執行します。
気配値や板の読み方があいまいなままだと、SORの恩恵も実感しにくいはずです。板の基本はこちらで解説しています。
[関連]株の板情報の見方完全版|プロのアナリストが初心者向けにわかりやすく解説
SOR注文を活用する最大のメリットはより有利な価格での約定
SOR注文を使う最大の利点は、価格改善です。
ある銘柄を買う場面で、東証の最良売り気配が1,001円、PTSでは1,000円だったとします。SOR注文なら、システムが1円安いPTSを検知してそちらで約定させます。1株あたり1円でも、1,000株なら1,000円。塵も積もれば、というやつです。
どれだけ得をしたかは後から確認できます。SBI証券なら約定価格の改善効果を日付指定で照会でき、楽天証券も「SOR価格改善」や「SOR改善レポート」で削減できた金額を開示しています。感覚ではなく数字で効果を追える点は、地味ですが大きい。
お使いの証券会社でのSOR対象銘柄の確認方法

SOR注文は全ての銘柄で使えるわけではありません。取引したい銘柄が対象かどうかは、証券会社の公式サイトで確認します。
ただし確認の仕方は各社でかなり違い、「対象銘柄の一覧」ではなく「対象外銘柄の一覧」を公開している証券会社もあります。ここを取り違えると探しても見つかりません。
主要ネット証券の公式サイトで対象銘柄をチェック
SBI証券は、SOR対象銘柄を自社で選定したうえで、最新の取扱銘柄についてはジャパンネクスト証券のサイトで検索するよう案内しています。同社サイトでは、PTS上で取引できる銘柄と売買停止銘柄を検索でき、マスターファイルも公開されています。
楽天証券は逆方向です。「お取引注意銘柄ファイル」の「国内株式」>「PTS・SOR非取扱銘柄」で、その日にSOR注文が使えない銘柄を公開しています。つまり、リストに載っていなければ使える、という読み方になります。
どちらも内容は毎営業日のように変わります。注文画面の市場欄が「SOR」になっているかを発注前に見る習慣をつけておけば、まず取りこぼしません。なお、SBI証券・楽天証券とも初期設定はSOR有効です。
そもそも証券口座ごとの仕様の違いが気になる方は、こちらもあわせてどうぞ。
[関連]証券口座とは?初心者でもわかる仕組み、株取引に必須となる証券口座の開設方法や選び方を解説
SOR注文の対象から外れやすい銘柄の傾向とは?
対象になるのは、基本的に東証に上場している流動性の高い普通株式です。逆に、外れやすい銘柄には傾向があります。
代表格が新規上場(IPO)直後の銘柄。PTS側は初値が決まるまで基準値段や制限値幅を設定できないため、初値がつくまでは取扱いが停止されます。上場日にPTSで買おうとして弾かれるのは、この仕様が理由です。
[関連]IPOの買い方完全ガイド|初心者でも抽選に参加できる証券戦略
このほか、整理銘柄や取引停止・特別気配の銘柄、東証以外の市場(名証・福証・札証など)に単独上場している銘柄、ETF(上場投資信託)やREIT(不動産投資信託)の一部も対象外になることがあります。PTS側で独自に規制がかかっているケースもあるため、東証で売買できる=SORも使える、とは限りません。
SOR注文を利用する際の注意点|知っておきたいデメリットと制限

便利な仕組みですが、制限もそれなりにあります。「SOR有効にチェックを入れたのに東証で約定した」という現象のほとんどは、この制限で説明がつきます。
注文方法、時間帯、そして成行注文の扱い。この3つを押さえておけば、想定外の挙動に驚くことはなくなります。
SOR注文が効かない注文方法は証券会社ごとに違う
まず共通しているのが、「寄付」「引け」といった執行条件付きの注文ではSORが使えないという点。楽天証券では、SOR注文で「寄付」「引け」を選択できません。
一方で、逆指値注文の扱いは各社で分かれます。SBI証券では、逆指値注文や執行条件付注文を選ぶと、注文画面の市場区分が「SOR」から上場市場(東証など)へ自動的に切り替わります。SORの価格比較は行われません。
これに対して楽天証券は、逆指値注文・逆指値付通常注文もSOR注文の対象。逆指値条件にヒットして市場へ発注するタイミングでSOR判定を行います。「逆指値はSORが効かない」と一括りにすると、楽天証券では損をする理解になってしまいます。
指値と成行の使い分けそのものに不安があるなら、まずこちらから。
[関連]指値注文と成行注文の違いとは?初心者でも迷わない使い分け・メリットと注意点を徹底解説
成行注文が指値注文に変わる理由|SOR注文の価格決定ルール
成行で発注したのに、注文照会画面には指値が表示されている。SOR注文でよくある「え?」の正体はこれです。
理由ははっきりしていて、PTSやダークプールは成行注文を受け付けていません。そのため成行注文をこれらの市場へ回送する際は、SOR判定時点の優先市場(東証)の最良気配を指値に置き換えて発注されます。PTSで一時的に価格が跳ねていても、高値づかみを避けられる設計です。
気になるのは「約定しなかったら?」でしょう。SBI証券の場合、PTS等へ回送した注文はIOC注文(即時に約定しなければ失効する注文)で発注され、約定しなかった数量は優先市場へ改めて成行で執行されます。注文が宙に浮いたままになるわけではありません。
また、注文を1つにまとめる必要もありません。一部数量だけPTSの気配が有利なら、その分をPTSへ、残りを東証へ分割して取り次ぐ処理も行われます。
時間帯によってSOR判定が行われないケース
SORの挙動は時間帯でがらりと変わります。ここが一番の落とし穴です。
大前提として、SOR判定は東証で取引が成立している時間帯にしか行われません。楽天証券は、東証の寄付前・昼休み・取引終了後、東証で特別気配になっているときなどはSOR判定を行わないと明示しています。
SBI証券はさらに具体的で、SOR判定の対象となる発注時間は「8:58:00〜11:29:59」と「12:28:00〜15:24:59」(前場・後場の寄付値段決定までを除く)。この時間外の注文は、SOR注文であっても優先市場へ発注されます。
そして誤解が多いのが夜間取引です。PTSにはナイトタイム・セッションがありますが、東証が閉まっている夜間はSOR判定そのものが行われません。夜間に売買したいなら、SORではなく市場に「PTS」を指定して発注する形になります。
SOR対象銘柄に関するよくある質問
ここからは、SOR対象銘柄について寄せられることの多い質問に答えていきます。
まとめ|SOR対象銘柄を正しく理解して有利な株式取引を
SOR対象銘柄とは、東証だけでなくPTSやダークプールを含む複数の市場から、最も有利な価格を自動で選んで売買できる銘柄のことです。初期設定で有効になっているため、意識せず恩恵を受けている人も多いはずです。
押さえるべきは3点。「寄付」「引け」など執行条件付きの注文では使えないこと、SOR判定は東証の取引時間中にしか行われないこと、そして逆指値の扱いは証券会社ごとに違うこと。この3つを知っているかどうかで、注文画面の見え方が変わります。
対象銘柄や適用ルールは各社の公式サイトで更新され続けています。使う前に一度、自分の口座の仕様を確かめておきましょう。

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執筆者情報
日本投資機構株式会社 証券アナリスト(CMA) テクニカルアナリスト(CMTA®)
総合鉄鋼メーカーに勤務していた経験を活かした、鉄鋼・自動車市場の分析及び情報収集を得意とし、データの集計・分析に基づいた統計学により銘柄の選定を行う希少なデータアナリスト。AIに関する資格も有しておりデータサイエンティストとしても活躍の場を拡げている。

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