子どもの金融教育は何歳から?|現役アナリストのパパ・ママが伝えたいお金の知識

西村 万友奈

AFP・NISA取引アドバイザー

子どもの金融教育は何歳から? 現役アナリストのパパ・ママが我が子に伝えたいお金の知識

子どもにお金についてどう教えればいいのか分からない」。
そう感じる親御さんは、決して少なくありません。

キャッシュレス化でお金は見えにくくなり、2027年には0歳から始められる「こどもNISA」もスタートします。
学校での金融教育は2022年に高校で必修化されましたが、それだけで十分でしょうか。

そこで今回は、日々運用の現場に立つ日本投資機構株式会社のアナリスト2人にお話を聞きました。
個人投資家に「どの銘柄を、いつ買って、いつ売るか」まで助言する、いわばお金のプロフェッショナルです。
そんな2人は、いま0歳児を育てる子育て真っ最中の親でもあります。

家庭でできるお金の教え方、キャッシュレス時代のお金との付き合い方、こどもNISAの考え方、そして株式投資への向き合い方
気になるけれど人には聞きにくいお金の話を、たっぷり本音で語っていただきました。

目次

話し手のご紹介|0歳児を育てる現役アナリスト2人

プロフィール
石塚 由奈景気や金利など、経済全体の大きな流れから相場を読み解くマクロ志向のアナリスト。11か月の子どもを育てる母親。
吉田企業取材を重ねて関係性を深め、取材で得た生の情報と分析力を武器に、個別企業のアルファを取る戦略を得意とするアナリスト。生後半年の子どもを育てる父親。

なぜ今、子どもに金融教育が必要なのか

かつて、金融教育は家庭でなんとなく身につけるのが当たり前でした。
ところが今、その前提が大きく変わってきています。
キャッシュレス化でお金は見えにくくなり、現金以外の支払い方法も増えて金銭管理は複雑になりました。
世の中はデフレからインフレへと移り、お金の常識も塗り替わっています。

こうした時代に、「親がお金について子どもに教える」には、どうすればよいのでしょうか
まずは、学校教育の今を確認しておきましょう。

2022年から高校で必修化|学校では何を教えているのか

新しい高等学校学習指導要領が2018年に告示され、2022年4月から実施されています。
これにより、家庭科の授業のなかで「資産形成」の観点が正式に扱われるようになりました。

具体的には、預貯金・民間保険・株式・債券・投資信託といった基本的な金融商品の特徴(メリット・デメリット)や、生涯を見通した家計管理・生活設計などを学びます。
お金を貯める・備えるだけでなく、増やすところまで踏み込んだのが大きな特徴です。

きっかけは、2022年4月の成年年齢18歳への引き下げでした。
18歳になれば、親の同意なくクレジットカードやローンの契約ができてしまいます。
だからこそ、社会に出る前にお金の基礎を身につける必要があるとの問題意識が、必修化を後押ししました。

とはいえ、独立した科目ができたわけではありません。
あくまで家庭科や公民科の一分野に組み込まれた形で、授業時間にも限りがあります。

学校で学べても家庭でのお金の勉強が欠かせない理由

学校でひと通り習えるようになったのだから、お金の教育はもう任せてよいのでしょうか。
この点を、アナリストの2人に率直にぶつけてみました。

吉田さんは、まず学校で学べること自体を前向きにとらえます。

マネーリテラシーは、家庭によって差があります
ご両親がお金の話に馴染みがなく、『NISAって何?』という家庭もある。
お金に関しての基礎的な部分を学校が教えてくれるのは、とてもありがたいと思いますよ」

一方で石塚さんは、高校からというタイミングに引っかかりを覚えると言います。

「高校でいきなりカリキュラムを見せられると、自分の人生がその型にはめられていくような感じがして、反発を覚える子もいるんじゃないかと思うんです。
それより、もっと小さいうちに『YouTuberになりたい』『アイドルになりたい』でもいいので、将来なりたいものになるためには、何歳のときに何をしておけばいいかを親子で一緒に考えていく
そういう段階を重ねてお金の勉強をしていく方が自然です」

2人は学校で金融教育が始まったのは大きな進歩としつつも、「学校任せでは足りない部分が確かにある」と指摘します。
ここに、親の出番が見えてきます。

お金の話へのタブー意識をどう乗り越えるか

子どもにお金の話をするのは抵抗がある方もいるかもしれません。
日本には長く、お金の話を口にするのはどこか気が引けるという空気がありました。
この意識は、これから変わっていくのでしょうか。

吉田さんの見立てには迷いがありませんでした。

お金の話に対してのタブー意識は、もう抜けていっていると思いますよ。
SNSのおかげで、いろんな人が収入をオープンにするようになった。

昔は『誰がどう稼いでいるか』なんて、知りようがなかった。
でも今は、稼ぎ方や働き方の選択肢が、誰の目にも見えるようになっています。
その世代がこれから大人になっていくんです」

これからの時代、お金と正面から向き合えるかどうかは、子どもの将来の選択肢そのものを左右していくはずです。

アナリスト自身が親から受けたお金の教育

では、お金のプロとなった石塚さんや吉田さんは、どのような金融教育を受けてきたのでしょうか。
2人の原点は、対照的でした。

石塚さんは、決して裕福な家庭ではなく、子どもの頃にお金の教育を受けた記憶もないと言います。

「学校でもそういう教育は当時なかった。
だから、大人になってから逆に自分で勉強しようと思って、アナリストになったんです。
もしある程度のベースが最初からあったら、わざわざアナリストにはなっていなかったかもしれません」

一方の吉田さんは、お金に困らない家庭で育ちました。
それでも、生まれ育ちと今の姿はあまり関係がないと考えています。

「出かけるときに都度お小遣いをもらう、感じでした。
お金に困らずに生きてきたけれど、この仕事を選んだのは、そういう生まれのせいよりも、知的好奇心じゃないですかね」

出発点は違っても、2人とも自分で学びにいった点は共通しています。
金融教育とは結局、与えられて身につくのではなく、自ら学びにいって身につくのだと、2人の来歴が物語っていました

子どものお金の勉強は何歳から始めるのか

学校任せにせず、家庭でもきちんと教えていきたい。

そう考えたとき、次に浮かぶ疑問が「では、いつから始めればいいのか」です。
早ければ早いほどよいのか、それとも子どもの成長を待つべきか。

ここでは、幼児期から中高生まで、段階ごとの教え方を2人に聞きました。

0歳児にもできる「種まき」とは

0歳からの金融教育なんて、普通に考えると不可能に思えます。
しかし、お金のプロの2人ならば普通の人が思いつかない何か特別なことをしているのではないか。
そう思って「0歳からできる金融教育ってありますか?」と質問してみると、2人から飛び出した答えは、とても清々しいものでした。

「ないです」(石塚)
「ないですね、そもそも3歳くらいまでの記憶って、残らないですから」(吉田)

では0歳児の親にできることは何もないのかというと、そうではありません。

「しっかり愛情を注いであげる。愛着を形成して、セルフイメージを高めてあげる。
お金の教育は、その先の話だと思います」(石塚)

さらに2人が口をそろえたのは、3歳までの間に種まきをするのは親自身という点でした。

「まだNISAをやっていなければ、親が始めてみる。
本屋さんでさらっと見てみて、『これならば読める』と思えるお金の入門書を1冊、自分の中に入れておく。
0歳児のうちは、そういう教える側の準備の時間にするといいかもしれません」(石塚)

何を隠そう、聞き手である私自身も、ファイナンシャルプランナーの勉強からお金の学び直しを始めた一人です。
ファイナンシャルプランナー資格では、3級レベルでも、ライフプランの立て方から、年金・保険・税金・金融・不動産・相続まで、暮らしに関わるお金の基礎を広く浅く学べます。
日々の生活に直結する内容なので、何から手をつければよいか分からない方の最初の一歩におすすめです。

年齢別・お金の教え方ステップ|幼児期から中学生まで

では、子どもが成長するにつれて、教え方はどう変わっていくのでしょうか。
2人に段階ごとのポイントを挙げてもらいました。

  • 幼児期(小学校入学まで)
    この時期はまだ計算ができないため、数字ではなく概念を知るタイミングです。
    「欲しいものを全部は手に入れられない」「持っているシールをお友達に1枚あげたら、お友達のシールと1枚交換してもらえた」といったモノを手に入れるために必要な感覚を、遊びの中で少しずつ育てていきます
  • 小学生期
    足し算・引き算ができるようになるため、お手伝いやお年玉を入り口に、お金を実際に扱わせてみる時期です。
    ここで2人は、実践的な提案をします。
    お年玉の余った分を、ただ現金で置いておくのではなく、株や投資信託を少額で買ってみる
    現金・株・ゴールドなど、いくつかに分けて『どう変わるか』を一緒に見比べるのも面白いですね」(石塚)
    実際、吉田さんは自身の子どものために、すでに0歳から投資を始めているそうです。
  • 中学生期
    「お金の教育は、中学くらいまでにひと通り終えておきたい」と吉田さん。
    高校はいよいよ受験や専門的な学びに集中する時期だからです。
    裏を返せば、高校でようやく金融教育が始まる今の制度は、2人の実感からするとやや遅めです。
    「高校をどこにするか」を考える段階で、その先の選択肢が見えていなければ、決められたレールの上でしか進路を選べなくなってしまう、と話していました。

焦って早く始める必要はありません。
お金は日常生活に深くかかわるからこそ、子どもの成長段階に寄り添いながら、日々の暮らしの中で少しずつ積み重ねていく
それが、2人に共通する金融教育の姿勢でした。

家庭でできるお金の教え方|日常の中にヒントがある

「うちの子には、どう教えればいいんだろう」
そんな悩みに応えるヒントは、日々の暮らしの中にあります。
働くことと投資することの違いから、お小遣いの渡し方、金融教育への考え方まで、2人のアナリストが家庭でできる具体的な工夫を教えてくれました。

「働いて得る」と「投資で増やす」どちらから教えるか

お金を得る方法は、突き詰めれば二つしかないというのが吉田さんの持論です。

「労働して稼ぐか、投資して資本を投下して稼ぐか。社長でいるか、労働者でいるか、とも言えます。
この二つを、両方いっぺんに、遊びながら伝えていくのがいいと思います」

吉田さんが描くのは、こんなストーリーです。

「お皿洗いをしたら100円。
そうやって少しずつ貯めたお金を、おもちゃで使ってしまえば、そこでおしまいです。

でも、たとえば食洗機を買うために使えばどうなるか。
食洗機があれば、洗い物は自動でやってくれます。
空いた時間で別のお手伝い、たとえばお風呂掃除をすれば、また100円が入ってきます。

おもちゃはお金を生まないけれど、食洗機はお金を生む
これって立派な『投資』の話なんです。
しかも『買うためにお金を借りる』なら、それは借金の話にもなる。
全部、ストーリーで考えさせたいですね」

働くことも、投資することも、根っこは同じです。
価値を生み出しているものに、自分の時間やお金を提供して、リターンが返ってくる。
その上で、自分はどんな価値を世の中に提供したいかを考えさせていくのが重要だといいます。

お小遣いで「お金の使い方」を実体験させる

お金の使い方は、お小遣いなどをもらって、実際に使ってみて初めて身につきます。
お小遣いの渡し方について、キャッシュレスと現金を併用するのが良いと2人は話します。

「現金しか使えないお店もまだあるし、逆に現金が使えないお店も増えています。
だから両方の使い方を教えたいですね」(吉田さん)

都心ではキャッシュレスが一気に進みましたが、地方や一部のスーパーでは現金のみのお店も残っています。
両方を場面に応じて使い分ける力こそ、これからの子どもに必要な金銭感覚です。

キャッシュレスは学びのチャンスになる

しかし、キャッシュレスは現金のように使えば減る実感が持ちにくいようにも思えます。
見えないお金を、子どもにどう伝えればよいのでしょうか。

ここで石塚さんが着目するのは、キャッシュレスならではの可視化の力です。

「キャッシュレスは、収支が勝手に記録されるのがいいところですよね。
入ってきたお金がいくらで、何にどれくらい使ったのかを子どもと一緒に見て、定期点検みたいに振り返れたらいいですね。
まずは、チャージした分だけ使えるSuicaのようなものから始めると、財布を使う感覚とあまり変わらずに入っていけると思います」

一方の吉田さんは、キャッシュレスを金融教育の格好の教材だと言い切ります。

「上限を決められるのがいいんですよ。
『この5,000円で1か月やりくりしてね』とできる。
しかもポイントがつく。ポイントは現金だとつきません。
だから『なんでポイントがつくんだろう?』と考えてくれれば、それはお店側が手数料を払っているからだ、じゃあ、お店はなぜそうするんだろう…といった話まで広げられる」

さらに吉田さんは、クレジットカードからお金の現在価値まで教えられると続けます。

「カードで1,000円のおもちゃを買うと、モノは今すぐ手に入るのに、支払いは1か月後ですよね。
金利のある世界では、今の1,000円と1か月後の1,000円は価値が違う。
本来なら利息がついて、たとえば今日は1,000円、明日は1,001円、明後日は1,002円となっていくはずなのに、そのまま1,000円で引き落とされる。実はちょっとお得なんです。
そんな話まで一緒にできる。キャッシュレスを避けるのは、もったいないですよ」

キャッシュレスも、使い方次第で学びの入り口に変わるわけです。

2027年開始のこどもNISAをどう活用するか

子どもの金融教育といえば、2027年から未成年者を対象とした新しい「こどもNISA」が開始される予定です。
プロのアナリストは、この制度をどう見ているのでしょうか。まずは制度の基本から見ていきます。

こどもNISAとは|ジュニアNISAから何が変わったか

こどもNISAとジュニアNISAの主な違いを、次の表に整理しました。

項目こどもNISA(予定)ジュニアNISA(終了済み)
年間投資枠60万円80万円
非課税保有限度額600万円※1400万円
非課税期間無期限原則最長5年間
投資対象投資信託上場株式、ETF、投資信託など
払い出し一定の要件の下、12歳以降は払出しが可※218歳まで原則払出し不可だったが、2024年以降は払出し制限なし

※1 18歳以降はつみたて投資枠へ自動的に移行されます。
※2 資金の使途が子のためのものであり、子が払出しに同意したことを示す書面とともに、親権者等(口座管理者)が申出書を金融機関に提出します。


2023年末で終了したジュニアNISAでは個別株やETFも買えましたが、こどもNISAで買えるのは、原則、一定の投資信託に限られる見込みです。
対象は0〜17歳で、18歳になると大人のNISA(つみたて投資枠など)へ引き継がれていく仕組みとされています。

こどもNISAと個別株|役割を分けて考える

まずは、ジュニアNISAでは買えた個別株が買えなくなる点を2人がどう見ているのかを聞きました。

石塚さんは、投資信託中心の設計に少し寂しさを感じると言います。
「個別株でも、長期で分散投資ができるんです。
1単元買わなくても、ミニ株(単元未満株)でオリエンタルランドを少しだけ、任天堂を少しだけ、トヨタを少しだけ、と何銘柄か買ってポートフォリオを組んでおく
そうすると何年か後に『この会社は、こういう時代にこんな戦略で伸びたんだね』と、ひとつひとつ答え合わせができる。
その勉強が、小さい頃からできる。それがこどもNISAでできないのは、ちょっと寂しいなと思います」

対して吉田さんは、国の制度なら投資信託中心で妥当だという立場です。
「国の政策は、マイノリティ(少数派)ではなくマジョリティ(多数派)に沿うものです。
個別株をちゃんと選べる人って、実は少数派。
だったら、多くの人にとっては投資信託でいいんじゃないかと思います。
『変なリスクを取るなよ』というメッセージでもある」

もっとも、これは教育目的の個別株投資を否定するものではありません。
長期の資産形成はこどもNISAで行い、教育のために一緒に育てる個別株は別の枠で持つ。
役割を分けて考えればよい、という結論に2人は着地しました。

実際、吉田さんが自分の子どものために行っている投資も、この別枠にあたります。
0歳の赤ちゃんでも、親権者が代理人になって手続きをすれば、こどもNISA口座以外に証券会社の未成年口座(こども口座)を開設できます

補足:
こどもNISA・未成年口座で親が子どもの代わりに株を買ってあげる場合は、贈与税の非課税枠(年110万円)の範囲を意識しておくと安心です。
相続時にさかのぼって加算されるルールもあるため、早い時期から少しずつが基本になります。
制度の詳細は変わるケースもあるので、実行前に最新情報を確認しましょう。

アナリストに学ぶ|子どもの株式投資の勉強法

ここまでは、子育て世代に共通するお金の教え方を見てきました。
ここからは一歩踏み込んで、プロが我が子に伝えたい株式投資との向き合い方に迫ります。

モノの値段が上がっていく時代には、お金の知識を身につけるだけでなく、お金を運用してお金に働いてもらう発想も大切です。その代表的な方法の一つが、株式投資です。

子どもが株に興味を持ったら親はどう向き合えばよいのか、投資信託だけでなく個別株にも触れる意味はあるのか、そして損をする経験とどう付き合うか
日々マーケットと向き合う2人に、家庭で活かせるヒントを聞きました。

子どもが「この会社の株を買いたい」と言ったら

いつか子どもが、自分でこの会社に投資したいと言い出す日が来るかもしれません。
そのとき、2人ならどう答えるかを聞いてみました。

石塚さんは、「まずプレゼンしてみて欲しい」と話します。

「『なぜその会社がいいと思ったのか』を聞きたいです。
ちゃんと考えて説明してくれたら、『じゃあ少しお金を出すから、買ってみようか』と。
買ったら一緒に株主総会に行くのも良いと思います。
そうやって自分で納得して買った銘柄なら、たとえ下がってしまっても、それは立派な学びになります」

「買っていい」と即答した吉田さんも、根っこは同じです。
頭ごなしに止めるのではなく、子どもの気持ちをまず受け止め、その上で一緒に考えたいと話します。

インデックスだけでいい?個別株を学ぶ意義

投資信託やインデックスで十分という声も根強い中で、あえて個別株に投資する意義はどこにあるのかについても、率直に聞いてみました。
これは、インデックス投資は始めたけれど個別株は怖いと考える多くの投資家にも通じるテーマです。

石塚さんは、個別株ならではの「攻める面白さ」を挙げます。

「個別株の魅力は、ある程度集中して投資すれば、その分だけ大きな利益が出る可能性があることです。
もちろんリスクも伴いますが、リスクを取れる人にとっては、挑戦する価値があると思います」

吉田さんは、個別株に投資をすれば、「より深く経済に参加できる」と話します。

「株は、会社の応援でもあります。無理にやる必要はなくて、投資信託だけでもいい。
でも、投資や経済をもっと身近に感じたいなら個別株はおすすめです。
投資信託では株主総会に行けないけれど、個別株なら議決権も行使できます。
『自分は日本経済を回す会社の一員なんだ』と実感できる。
より深く経済を知りたい人にとっては、自分の世界を広げる一歩になります」

ただし、投資では損をするケースもあります。
大きすぎる失敗(損をする経験)は、お金への恐怖心を植えつけてしまう可能性もあります。

そこで大事になるのは、どこまでなら挑戦していいかを、事前に親子ですり合わせておく点です。
納得したうえでの、許容できる範囲での失敗であれば、良い経験として次の一歩に繋げられるはずです。

プロの親が子どもに願うお金との付き合い方

最後に、お子さんが大人になったとき、どんなふうにお金と付き合ってほしいかを聞きました。

吉田さんにとって、お金はあくまで「道具」です。
「お金は目的ではなく、手段です。お金を使って、どう生活を豊かにするか。
お金があれば、選択肢が増えるし、心の余裕も生まれます。コミュニケーションツールのような側面もあります。
だからこそ、しっかり稼いで、うまく手段として使ってほしいですね」

石塚さんは、お金そのものより、その先にある「自分の軸」を見つめていました。
「娘が大人になる頃には、社会の仕組みも大きく変わっているかもしれません。
その変化に対応できるように、お金に執着しすぎて他のことをおろそかにするのではなく、『自分はこれをやりたい』『これを知りたい』という軸を大事にしてほしい。
お金は、そのために使うものだと思うんです」

子どもには、お金を味方につけて、自分らしい人生を歩んでほしい。2人の言葉には、そんな願いが込められています。

大切なのは「なんで?」を一緒に考えること

2人の話は、金融教育の枠を少しずつ超えていきました。
吉田さんが最後に語ってくれたのは、電車の中で見かけた、ある親子の光景です。

「電車で、小さな女の子がお母さんに『あ、見て、女子大があるよ』と話しかけていたんです。
その後、『なんで女子だけなの?』って質問が飛び出しました。
でも、お母さんは何も答えなかった。これって、もったいないなと思ったんですよ」

一緒に『なんでだろうね』と考えてもいいし、歴史を教えてもいい。
答えを出せなくても、お子さんと『なんで?』について一緒に考えようとするだけでいいんです。

ChatGPTに聞けば、答えはすぐ分かる時代です。
でも、自分で疑問を持って、自分なりに考える力は、これからのAI時代にこそ必要になる。
金融に関係なく、すべてにおいて『なんで?』を大事にできる子に育ってほしいですね」

お金の教育も、結局はここに行き着きます。
銘柄の名前や制度の仕組みを覚えるよりも、なんでこの会社は伸びたんだろう、なんでお金は増えるんだろうと、子ども自身が問いを立て、一緒に考えることのほうが大切です。
その姿勢さえあれば、学びはお金の外へも、どこまでも広がっていきます。

まとめ|正解はない、だから親子で一緒に学べばいい

2人の話には、「一緒に」という言葉が繰り返し登場しました。

「子育てに正解がないように、金融教育にも正解はありません」と、吉田さんは言います。

「10人いれば10通りの金融教育があるし、資産運用のやり方もそれぞれ。
まずは、投資信託だけでもいい。
はじめてみて、自分に合ったやり方を模索していけばいい。
もし、そのやり方がまだ分からないなら、子どもと一緒に、金融教育を学んでいけばいいんじゃないですか

石塚さんも、深くうなずきます。

「日経平均が上がった、下がった。あの会社の株はなぜ動いたのか。
マーケットを日々追いかけていくだけで、社会や経済の仕組みについて学べることは本当に多いです。
子どもの『なんで?』と思う気持ちを大事にして、一緒に調べて、楽しく学んでいけたらいいなと思います」

子どもに完璧に教えなければと気負う必要はありません。
むしろ、分からないことは一緒に調べ、子どもの素朴な「なんで?」に一緒に向き合っていく。
その積み重ねこそが、何よりの金融教育になるのです。
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執筆者情報

nari

西村 万友奈

AFP・NISA取引アドバイザー

日本投資機構株式会社のカスタマーサクセスとして、日々お客様の資産運用に寄り添う。服飾系大学卒業後、15年間アパレル業に従事。コロナ禍を機に資産形成の重要性を再認識して金融業界へ転身。さらに大学へ3年次編入し、ファイナンシャルプランナーコースを修了。培った金融知識をもとに、金融リテラシーの大切さと資産運用の重要性を発信している。

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