AI・半導体に次ぐ次世代技術として、近年急速に注目を集めているのが「量子コンピュータ」です。
従来のコンピュータでは計算が不可能だった複雑な問題を、わずかな時間で解決できるポテンシャルがあり、金融・製薬・材料開発・気象予測など幅広い分野での応用が期待されています。
日本でも政府支援のもと、NTT・NEC・日立などの大手企業が研究を加速しており、投資テーマとしての存在感も年々増しています。
本記事では、量子コンピュータが注目される理由、関連企業、注意点、将来展望まで、株式投資に役立つ情報を徹底解説します。
「量子コンピュータ」は成長テーマの代表格

将来に期待して投資をするなら「量子コンピュータ」関連銘柄は外せない存在です。今後10年で社会実装が進むと見込まれ、株式市場でも注目が集まっています。
国家戦略と世界の投資加速が追い風
量子コンピュータは、通常のコンピュータが「0と1」で行う処理とは異なり、量子力学の性質を利用して膨大な組み合わせ計算を一度に処理できる技術です。
創薬や材料開発、金融取引の最適化など、多くの分野で従来では数年かかる計算を数秒で終える可能性が期待されています。
米国ではGoogleやIBM、中国ではアリババや百度、日本でもNTTやNECが研究を進めており、各国政府が巨額の予算を投じる“技術覇権争い”が加速中です。
●量子コンピュータが変える産業構造
量子コンピュータは、創薬や新素材開発、物流・金融の最適化、人工知能の強化など、複数の産業を同時に変革する可能性を持っています。
特定分野に限らず、幅広い業界に波及効果が及ぶため、「技術テーマ株」ではなく「社会インフラ株」として長期視点で評価されやすいのが特徴です。
こうした全方位的な応用可能性が、政府や大手企業による巨額投資を正当化しています。
量子コンピュータ関連銘柄が注目される理由

量子コンピュータは単なる「次世代コンピュータ」ではなく、国や企業の競争力そのものを左右する基盤技術です。
従来のコンピュータが苦手とする膨大な組み合わせ計算や最適化処理を短時間で解けるため、これまで数年単位かかっていた開発や解析が、わずか数分〜数時間で完了する可能性があります。
応用範囲の広さと「技術的覇権」の争奪戦
量子コンピュータは創薬、材料設計、金融取引最適化、人工知能の強化など、産業横断的な応用が見込まれています。
このため各国政府・大手IT企業が“次の産業覇権”を賭けて投資を加速中。米中欧の競争に日本も参入しつつあり、日本企業の技術蓄積に注目が集まっています。
日本政府の「量子技術イノベーション戦略」支援
日本では内閣府が「量子技術イノベーション戦略」を策定し、2030年までの量子分野の国家プロジェクトを推進中。
NTT、NEC、富士通、日立などが連携する形で、量子通信・量子暗号・量子アニーリングなど多領域にわたり研究が進んでいます。
過去の急騰事例から見える投資パターン

【6501】日立製作所 —国家プロジェクト絡みは強い買い材料

2020年から現在にかけて株価はおよそ4倍超へ上昇。背景には、国内外の大型案件やインフラ需要に加え、国家予算が投じられる先端分野への参画があります。
特に2023年、理化学研究所と共同で「光量子コンピュータ」研究に参画。これは政府が重点支援する量子分野で、報道後は機関投資家の資金が集中し、株価上昇に拍車がかかりました。
【6702】富士通 — 同じく国家プロジェクト牽引の量子コンピュータ株

理化学研究所と共同で国産64量子ビット量子コンピュータを開発し、2025年には256量子ビット版を公開。さらにNEDO支援の国家プロジェクトで1万量子ビット超の実用機開発を進めています。ハードとソフトの両面から量子分野を牽引する存在として、テーマ買いが集まりやすい代表銘柄です。
量子コンピュータ株はテーマ性だけで飛びつかない

量子コンピュータは未来性が非常に高いテーマですが、全ての「量子コンピュータ関連銘柄」が短期的に成果を出せるわけではありません。
研究段階にある企業や、事業のごく一部しか量子分野に関わっていない企業も多く存在します。テーマの話題性だけで買ってしまうと、材料が一巡したあとに株価が大きく下がるリスクがあるため、冷静な選別が必要です。
テーマ性が先行し、実績が乏しい企業も存在
量子コンピュータ関連とされる企業の中には、まだ売上や利益に直結していないケースが少なくありません。
たとえば「研究開発を開始した」という発表だけで株価が上がることもありますが、実際の収益化までは数年かかる可能性があります。
初心者のうちは、すでに事業化や実証段階に入っている企業かどうかを確認してから投資判断をするのがおすすめです。
「量子関連」とされる領域が広く、取捨選択が重要
量子技術は「量子通信」「量子暗号」「量子センサー」「量子ソフト」など多岐にわたります。同じ「量子関連」といっても、通信インフラや材料開発、ソフトウェアアルゴリズムなど、関わる分野によって収益化のタイミングも違います。
自分が狙いたい分野がどの成長フェーズにあるのかを把握することが、利益を得るための第一歩です。
注目したい量子コンピュータ関連銘柄

量子コンピュータ分野は、まだ成長の初期段階にある一方で、すでに商用化や実証実験が進んでいる企業も存在します。ここでは、日本を代表する大手企業の中から、量子分野で確かな進展を見せている企業を紹介します。
【9432】NTT

IOWN構想(光電融合型ネットワーク)はNTTの中核テーマ。量子計算機“そのもの”ではなく、量子安全(量子耐性)通信や量子ネットワークを見据えた研究が公式に示されています。RIKENの「光量子コンピュータ」実証でNTT製LiNbO₃導波路モジュールが使われた事例もあります
【6701】NEC

量子誤り訂正技術、量子ソフトウェア開発、量子AIとの連携など、多面的な量子技術開発を展開。2024年には独自アーキテクチャの実証実験成功を発表し、世界的にも注目度が高まりつつあります。
政府・大学との共同研究体制も強固で、量子技術の商用化が現実味を帯びています。
【6503】三菱電機

量子AIおよび量子情報処理の研究を推進。量子デバイス間接続や量子ネットワーク実装に向けた共同研究にも参画し、製造・物流など実務領域の最適化適用を狙う。
既に製造工程の効率化で実証済みとなっており、サプライチェーン改革や交通システム最適化への応用が期待視されています。
その他の量子コンピュータ関連注目銘柄
銘柄名 | 市場 | 企業概要 |
【6723】ルネサスエレクトロニクス | 東証プライム | 量子安全(PQC)など、セキュリティ分野での量子関連取り組みあり。 |
【6963】ローム | 東証プライム | 量子技術を活用した半導体製造工程(EDS工程)の効率化を実証済。 |
【3854】アイル | 東証スタンダード | 量子計算アルゴリズム開発で大学と連携。独自の計算最適化ソリューションを展開。 |
【6857】アドバンテスト | 東証プライム | NEDOとの共同で、次世代量子コンピュータ向け部素材・評価技術開発に参画。 |
【6619】ダブル・スコープ | 東証プライム | 量子機器の冷却システムに使われる特殊フィルムで存在感。素材分野の量子関連株。 |
2030年に向けて量子コンピュータ市場は拡大する

量子コンピュータは2030年代には産業の一部で本格活用が始まると予測されています。特に創薬や素材開発、物流の最適化など「膨大な計算が必要な分野」での需要が先行すると見られます。これらの業務は量子技術の性能を最大限に活かせるため、各国企業や研究機関が今から開発競争にしのぎを削っています。
産業分野ごとに加速する実用化の動き
経済産業省の見通しでは、2030年代前半に特定分野での量子コンピュータ利用が広がるとされています。
中でも新薬開発では、化合物の膨大な組み合わせを短時間で計算できるため、試薬コストや開発期間を大幅に削減できる可能性があります。製薬・化学メーカーはこの技術を活用すべく、大学やIT企業との共同研究を加速中です。
日本企業の国際競争力が強まる背景
NEC、日立、NTTといった日本企業は、誤り訂正技術や独自アーキテクチャの分野で世界的に高い評価を受けています。
今後は米中欧のライバル企業との競争だけでなく、海外企業との共同開発や技術ライセンス供与を通じて、収益化の道も開かれる見込みです。将来的には「日本発の量子知財」を世界市場に輸出するビジネスモデルも期待されています。
まとめ|量子コンピュータ株は長期視点の資産形成に最適
量子コンピュータは、社会や産業の仕組みを根本から変える可能性を持つ革新的な技術です。2030年代以降には実用化が進み、さまざまな分野に広がっていくと予想され、10年単位での成長を見込む「超長期投資テーマ」として位置づけられます。
将来の社会インフラに近い存在
量子コンピュータは創薬、物流、素材開発、金融など幅広い分野で活用が期待されており、インターネットや電力網のように、将来的には社会インフラの一部となる可能性があります。テーマ株の中でも、このスケール感を持つ分野は多くありません。
銘柄選びは技術領域と開発段階を確認
「量子関連」と一括りにされる企業の中には、実際には周辺技術しか扱っていない場合もあります。投資する際は、その企業が「量子通信」「量子暗号」「量子アニーリング」など、どの分野に関わっているのか、そして研究段階・実証段階・商用段階のどこにいるのかを見極めることが重要です。こうした分析を行うことで、長期的に成長が見込める銘柄を選びやすくなります。
今回の量子コンピュータ株は、まだ未来の話だと思われがちですが、すでに世界中で開発競争が進み、株式市場でもテーマとして動き始めています。
短期的な値動きに一喜一憂するよりも、10年先を見据えた視点でじっくり育てる投資先として捉えることが、最終的な成果につながるはずです。
焦らず、情報を見極めながら、未来を先取りする一歩を踏み出してみてください。
執筆者情報
編集部
INVEST LEADERSを運営する顧問投資会社「日本投資機構株式会社」の代表取締役を含めたスタッフ及びサポートアナリストの記事を掲載しています。株式投資や金融に纏わる話題は勿論のこと、読者の暮らしや生活を豊かにするトピックスや情報を共有していきます。