医薬品の開発を手がける「創薬株」や、バイオテクノロジーを活用する「バイオ株」は、ハイリスク・ハイリターンの代表格として知られています。
特に2024年〜2025年にかけて、次世代医薬や再生医療に関する進展で注目度が再び高まっています。
本記事では、創薬・バイオ株とは何か、株価が動く材料や銘柄選びのポイント、投資で注意すべき点までを初心者にもわかりやすく解説します。
創薬・バイオ株は“材料”で株価が大幅に動く独特なテーマ株

創薬・バイオ株は、「新しい薬の開発に関するニュース(=材料)」が出ただけで、株価が大きく上がったり下がったりするのが特徴です。
たとえば、「新薬の治験で良い結果が出た」といったニュースが発表されると、業績がまだ出ていない段階でも、将来の売上や利益が期待されて、株価が短期間で2倍以上に急騰することもあります。
一方で、「治験が中止になった」「想定よりも効果が薄かった」といったネガティブなニュースが出た場合は、たった1日で株価が半分以下に下がることも珍しくありません。
医薬品開発のニュースが株価を大きく動かす
創薬株の多くは、新薬の「研究」「治験」「承認」という段階的なプロセスをたどります。そして、それぞれの段階で発表されるニュース(例:治験結果が良好、海外で承認など)が株価に大きな影響を与えます。
成功すれば株価急騰、失敗すれば暴落という“二極化”
治験成功の報道が出れば一気に株価が2倍以上になることもあります。一方で、治験中止や承認見送りといった悪材料が出た場合は、1日で-30〜-50%下落するケースも珍しくありません。
この“ジェットコースターのような値動き”が、創薬・バイオ株の最大の特徴と言えるでしょう。
創薬・バイオ株は“業績”よりも“将来性”で買われやすい

創薬・バイオ株は、他の業種とは大きく異なる投資の見方が必要です。一般的な企業では、売上や利益などの「現在の業績」が重視されますが、創薬・バイオ企業の場合はそうではありません。
多くの企業が開発のために多額の費用を先に投じる「先行投資型」のビジネスモデルとなっているため、赤字が当たり前という状況が多く見られます。
黒字かどうかよりも“パイプライン”が重視される
創薬株を評価する上では、「いま売れている薬があるか」よりも「今後売れそうな薬をどれだけ持っているか」が重視されます。この“候補薬の一覧”をパイプラインと呼び、パイプラインの内容や進捗が株価に直結します。
臨床段階の数や提携先の有無が判断材料になる
たとえば、パイプラインに「フェーズ2まで進んでいる抗がん剤が3つある」といった場合、将来の大型承認に向けて市場が期待を膨らませます。
また、武田薬品など大手製薬企業との提携がある場合は「信頼性が高い」と判断され、株価の支えになることもあります。
このように、創薬・バイオ株は「夢を買う」側面が強いため、決算書の数字だけでは良し悪しが判断しづらいジャンルです。初心者の方は、まずはパイプラインの進捗状況や、将来的な収益化の可能性に注目する視点を持つことが大切です。
創薬・バイオ株を選ぶ際の3つのチェックポイント

投資初心者でも取り組みやすい銘柄を選ぶには、以下の3つを確認することが効果的です。
“パイプラインが進んでいる”企業を優先
すでに治験のフェーズ2~3に進んでいるパイプラインを持つ企業は、薬事承認の可能性が高まり、現実的な売上貢献が見込めます。フェーズ1以下の早期段階しかない企業は、成功確率も低くリスクが高いため注意が必要です。
“外部提携”や“助成金”の有無を確認
国立研究開発法人(AMED)や厚労省などから助成を受けている企業は、一定の信用力を持ちます。また、武田薬品、アステラス製薬など大手製薬会社との共同開発を行っている場合も好材料とされやすいです。
“赤字幅”と“現預金残高”をチェック
創薬企業は研究開発費が膨らみやすく、慢性的な赤字体質が続くケースもあります。決算短信などで「現預金がどれくらいあるか」「1年以内に資金が尽きないか」を確認することで、増資リスクを避ける判断材料になります。
過去注目を集めた創薬・バイオ株の成功と失敗例
創薬・バイオ銘柄は、かつて大型材料で市場を席巻した事例も多数あります。期待先行で急騰からの失速というパターンを知っておくことで、今後の投資戦略にも役立ちます。
サンバイオ〈4592〉SB623の脳機能回復薬で一時4000億円の時価総額

2019年、慢性脳梗塞治療薬「SB623」の開発進展が期待され株価は数倍化。しかし、その後の治験結果が市場期待を下回り株価は急落。創薬バイオ特有のリスクを象徴する銘柄となりました。
ネクセラファーマ〈4565〉欧州提携で注目されるも収益化に課題

旧そーせいグループ時代の英Heptares買収によりグローバルな創薬プラットフォームを獲得。ノバルティスやアストラゼネカなどとの提携が話題に。しかし、黒字化の壁が厚く、テーマ株的に物色される局面が中心となっています。
ジーエヌアイグループ〈2160〉中国承認で大化けも決算とIRで乱高下

中国での慢性疾患治療薬承認により一時はテンバガー化したが、会計面の不透明さや子会社問題などで株価は荒れ模様に。短期の材料株として見られる傾向が強い。
注目される創薬・バイオ株の“3つの成長テーマ”

創薬・バイオ分野にも“注目されやすいジャンル”があります。テーマの波を知っておくことも、銘柄選定のヒントになります。
遺伝子治療・RNA医薬などの次世代バイオ技術
ゲノム編集やmRNA技術などは、従来の治療法を超える可能性を持ち、世界的な注目を集めています。日本でもこの分野に挑むスタートアップや大学発の企業が増えつつあり、中長期での成長余地は大きいと考えられます。
希少疾患・難病に特化したパイプライン
患者数は少なくとも、既存薬が乏しい領域では“オーファンドラッグ”として承認が進みやすい傾向があります。収益性の高さや独占的な市場環境が見込めるため、投資家から注目されやすい分野です。
AI創薬やデジタルヘルス連携企業
AIを用いた分子設計や治験データ解析など、DXとの融合も進んでいます。今後は「創薬×AI」「創薬×ビッグデータ」というようなテーマ性の高い企業にも資金が向かう可能性があり、銘柄選定の幅が広がっています。
初心者でも検討しやすい創薬・バイオ関連の上場企業例

創薬・バイオ株はリスクが高い分、選定眼が重要。まずは“情報開示が丁寧で流動性がある企業”から入るのがおすすめです。
時価総額100〜300億円の中堅バイオは情報も豊富
この規模帯の企業は、個人投資家向けにIRが積極的で、研究進捗の開示も比較的明瞭です。大型株ほど保守的でなく、小型株ほど不安定でもないため、“最初の一歩”として検討に値します。
【例】オンコリスバイオファーマ〈4588〉:がん治療薬で話題性あり
腫瘍溶解ウイルス「テロメライシン」の開発で注目された企業。日米欧での展開や治験進捗が材料視されやすく、値動きも豊富です。
創薬・バイオ株でやってはいけない投資行動とは

バイオ株は大きな夢を秘めたジャンルですが、感情的な投資行動は思わぬ損失を招く原因になります。
IR・掲示板・SNSだけを頼りに“材料飛びつき”するのはNG
創薬・バイオ株は“IRの言い回し一つ”で大きく動くため、感情での売買は致命的です。治験の成功確率や承認時期には不確定要素が多く、材料視される情報が誤解を招くこともあります。
「上がってるから乗る」「話題だから買う」は高値掴みの温床
テーマ株特有の“高値でつかみ、悪材料で投げ売り”パターンは避けたいところ。他人の意見より、自分で「何が進捗なのか」を見極める力が大切です。
“保有銘柄が悪材料を出したとき”の対処を決めておく
治験中止や開発停止は珍しくありません。想定されたリスクであれば“事前に損切りラインを設ける”など、マイルールが生死を分けます。初心者ほど「買い方」だけでなく「撤退の判断」も明確にしておきましょう。
【注目の創薬・バイオ関連銘柄一覧】再生医療・AI創薬など
再生医療やAI創薬といった先端テーマを軸に、注目を集めている創薬・バイオ銘柄をリストアップします。臨床進展や提携IRを契機に株価が動きやすい点が特徴で、テーマ性・材料性の両面から注目されています。
ステムリム〈4599〉大阪大学発の再生誘導医薬ベンチャー

創傷治癒や神経再生を目的とした新薬を開発。住友ファーマと共同研究を進めており、脊髄損傷や潰瘍性皮膚疾患の治験進展が注目材料。2025年後半に複数のパイプライン進捗が期待される。
ペルセウスプロテオミクス〈4882〉がん免疫治療の抗体医薬を開発

東京大学発ベンチャー。抗がん抗体の研究開発に強みを持ち、武田薬品工業と提携。がん免疫療法領域で臨床フェーズに進んだことで思惑買いが強まっている。
キッズウェル・バイオ〈4584〉細胞医療分野の商業化支援に強み

再生医療関連の細胞製品開発や販売支援を行う。海外バイオとの提携が相次ぎ、ニッチながらインフラ的役割も担う。
その他の創薬・バイオ関連注目銘柄
銘柄名 | 市場 | 企業概要 |
【4888】ステラファーマ | 東証グロース | ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)を用いたがん治療薬を開発。第一三共と提携中。 |
【4598】デルタフライファーマ | 東証グロース | 副作用軽減を重視した抗がん剤開発に注力。複数パイプラインで国内治験進行中。 |
【2934】ジェイフロンティア | 東証グロース | 創薬支援のAI解析やデジタルヘルスとの連携でテーマ性を獲得。 |
将来性とリスクを見極めた創薬・バイオ投資の考え方

創薬・バイオ株の魅力は大きなリターンと社会的意義ですが、だからこそ「構造的なリスク」との向き合い方が問われます。
“未来を信じて待てる余力”を前提にすべきセクター
創薬バイオ企業の成功は年単位の長期戦。数年かかる臨床試験、変動する薬事規制──投資するなら「短期的な値動き」よりも、「資金を寝かせてもいい」と思える銘柄を選ぶべきです。
“一発狙い”ではなく“確率分散”を重視するスタンスが有効
特定の新薬に賭けるのではなく、複数のパイプラインを持つ企業や、提携戦略を採る企業に投資することでリスクを平準化できます。「全滅しにくいポートフォリオづくり」が、創薬・バイオ株で生き残る鍵になります。
医薬品承認プロセスの理解は“バイオ投資の土台”
治験(フェーズ1~フェーズ3)や承認申請プロセス、そしてPMDA(医薬品医療機器総合機構)の役割を知っておくこと。過去に何度も“好材料に見えたが実は前段階だった”というミスが繰り返されてきました。基礎知識があれば、誤解による高値買いを防げます。
まとめ
創薬・バイオ株は、大きな夢とリスクが共存するテーマ株です。本記事では、初心者にも理解しやすい視点から、創薬バイオの仕組みや投資するうえでの基本、見るべきポイント、NG行動までを整理してきました。
「話題だから買う」ではなく「仕組みを理解して選ぶ」ことが、テーマ株投資で後悔しないための第一歩です。 自分なりの投資ルールを持ち、無理のない範囲で創薬・バイオという可能性に挑戦してみてください。
執筆者情報
編集部
INVEST LEADERSを運営する顧問投資会社「日本投資機構株式会社」の代表取締役を含めたスタッフ及びサポートアナリストの記事を掲載しています。株式投資や金融に纏わる話題は勿論のこと、読者の暮らしや生活を豊かにするトピックスや情報を共有していきます。