サイバー攻撃が個人や企業の悩みから経営リスクへと広がる今、セキュリティ関連銘柄への注目が急上昇中です。
日本政府が多要素認証を証券口座で義務化検討しているため、市場の関心も一層高まっています。投資初心者でも理解できるよう、注目の背景と具体銘柄、歩みを丁寧に解説します。
サイバーセキュリティとは「情報社会を守る盾」の役割を担う技術

現代の社会は、あらゆる場面でインターネットとデジタル技術に支えられています。個人の生活から企業の業務、行政サービスに至るまで、情報はすべてオンライン上でやり取りされ、保存されるようになりました。
その情報を盗み見られたり、壊されたりしないよう守る技術と仕組みの総称がサイバーセキュリティです。
攻撃の手口は多様化し、対象はすべての人に広がっている
かつては大企業や国家機関が主な標的とされていましたが、現在では個人のスマートフォンや家庭用Wi-Fiルーターまでもが攻撃対象となっています。
パスワードの流出、クレジットカード情報の窃取、SNSアカウントの乗っ取り、なりすまし詐欺など、誰にでも起こり得る被害が日常化しています。こうした脅威からユーザーを守るために、企業・個人問わずサイバーセキュリティ対策は必要不可欠です。
守るための主な技術は5つのカテゴリーに分類できる
サイバーセキュリティの対策技術は、次のようなカテゴリに分けられます。
予防:ファイアウォールやアクセス制御で侵入を防ぐ
検知:異常な通信やアクセスをリアルタイムで発見
対応:攻撃の発生後に迅速な遮断・封じ込めを実施
回復:データのバックアップと復旧で業務を継続
教育:従業員や個人に正しい知識を提供し、ヒューマンエラーを防ぐ
これらは企業や組織におけるセキュリティ体制の柱となっており、単なるシステム導入だけでなく、運用の習慣化も重要です。
ゼロトラストの考え方が主流に
最近では「ゼロトラスト」と呼ばれる新しいセキュリティモデルが注目されています。これは“すべての通信やユーザーを信頼しない”ことを前提に、常に検証・監視を行う構造であり、従来の「社内は安全、外は危険」という考え方を完全に刷新したものです。
クラウド化やリモートワークの進展により、社内と社外の境界が曖昧になるなか、ゼロトラストは新時代のサイバーセキュリティの基盤として浸透しています。
景気に左右されず成長を続ける「守りのテーマ」として注目

サイバーセキュリティ関連株は、経済変動の影響を受けにくく、構造的な需要増加が見込まれる分野として投資家から注目されています。
DXとクラウドの普及がセキュリティ需要を後押し
デジタル化が急速に進む中、企業のIT環境は社外・クラウドへと広がっています。これにより、従来の社内ネットワーク防御だけでは不十分になり、新たなセキュリティ投資が不可避な経営課題となっています。
特にSaaSやテレワーク拡大に伴い、外部からの不正アクセスや情報漏洩への備えが急務となり、認証強化・通信の暗号化・クラウド対応のセキュリティ製品へのニーズが急拡大しています。
政策や事件報道が株価を押し上げる材料に
サイバー攻撃が社会的関心を集めるたびに、セキュリティ関連株への注目が高まります。特定企業やインフラが被害に遭ったという報道は、テーマ株としての瞬発力を引き出すきっかけになります。
例えば、2022年以降、政府機関への攻撃や大手企業の情報流出事件を背景に、政府のサイバー防衛費が拡充される政策方針が示され、関連企業の株価が上昇した例があります。
収益の安定性と成長余地の両面が魅力
セキュリティ対策は「必需品」として扱われ、好況・不況にかかわらず継続的な支出が求められる分野です。同時に、クラウド・IoT・AIといった新技術の普及により、対応領域が広がる=新たな収益機会が生まれるという成長性も併せ持っています。
サイバーセキュリティ銘柄で過去に急騰した注目企業
テーマや政策の報道をきっかけに、大幅な株価上昇を見せた銘柄が実際に複数存在します。
【153A】カウリス(東証グロース)

多要素認証のテーマに乗り、短期急騰した中小型注目株。
金融機関向けの不正アクセス検知技術で評価されており、証券口座のセキュリティ強化とタイミングが重なったことで、2025年4~8月に急騰を記録しました。テーマ物色の流れに素直に反応しやすい銘柄です。
【2326】デジタルアーツ(東証プライム)

法人・官公庁向けの情報漏洩対策ソフトで安定した評価。
「i-FILTER」や「m-FILTER」などの製品群が信頼性を支え、政策対応や情報漏洩事件報道などのたびに投資家から注目されやすい傾向があります。2024年4月から2025年8月までの間に株価は2倍超えとなりました。
サイバーセキュリティ銘柄に投資する際の注意点

サイバーセキュリティ関連株は、時流をとらえやすく値動きの大きいテーマ株として人気があります。しかし、注目されるテーマだからといって無条件に安心というわけではありません。
短期的な過熱相場や、ビジネスモデルの不透明さなど、初心者が陥りやすい落とし穴がいくつか存在します。これから投資を検討する際は、価格の勢いに流されるのではなく、あらかじめ注意点を押さえておくことが肝心です。
テーマ先行で過熱しやすく、短期乱高下に注意
サイバー攻撃や不正アクセスといった事件が報じられると、関連銘柄が一斉に買われる場面が増えています。
材料が出たタイミングで高値掴みすると、期待外れの決算や材料出尽くしをきっかけに大きく値を下げることも珍しくありません。
ニュースに敏感なテーマ株であるからこそ、冷静なエントリー判断が重要です。
収益構造の見極めが難しい企業も多い
SaaS型のセキュリティサービスやコンサルティングなど、サイバーセキュリティ事業の収益源は多岐にわたります。
しかし、どの事業が主力で、どれくらい継続的な売上を生んでいるのかが分かりにくい企業も存在します。利益率や契約形態、顧客基盤などをしっかり分析して選別しましょう。
今注目のサイバーセキュリティ関連銘柄とその投資ポイント
サイバーセキュリティ関連株は、長期的な成長が期待される一方で、銘柄ごとの事業モデルや注目テーマとの一致度を見極めることが重要です。
ここでは、現時点で注目度が高い3銘柄を丁寧に解説し、加えて有望な関連銘柄5社を表形式で整理しました。いずれも「業績」「市場テーマ」「実績」に基づいて厳選しています。
【4259】エクサウィザーズ(東証グロース) AI融合セキュリティの本命格

AIによる異常検知やセキュリティ最適化支援を進める新興株。政府・大手金融機関との協業により社会的信頼も獲得しており、セキュリティ×AIという次世代テーマの象徴的存在です。 DX・自治体連携の報道時などに短期注目を集めやすい傾向があります。
【3042】セキュアヴェイル(東証グロース) SOC運用の裏方として再評価

法人向けセキュリティ監視・分析サービスで業績回復中の中堅株。中小企業のサイバー対策アウトソース需要が増すなか、クラウド監視・SOC運用の外注先として支持が拡大しています。直近では複数の大型案件を背景に株価も底打ち反転傾向。
【2326】デジタルアーツ(東証プライム) 安定と成長を両立する王道株

情報漏洩防止ソフト「i-FILTER」など法人導入が続くセキュリティ大手。自治体や学校・企業と幅広く契約実績を持ち、財務体質も健全。直近の四半期決算でも売上・営業利益ともに安定推移を示しており、長期目線でも評価されやすい存在です。
その他のサイバーセキュリティ関連注目銘柄
銘柄名 | 市場 | 企業概要 |
【153A】 カウリス | 東証グロース | 多要素認証と不正ログイン検知に特化。証券会社などとの実績が強み。 |
【3906】 ALBERT | 東証スタンダード | AI解析に強み。セキュリティ分野への応用が拡大中。 |
【4493】サイバーセキュリティクラウド | 東証グロース | Webアプリ保護SaaS「攻撃遮断くん」を国内外に展開。 |
【3857】ラック | 東証プライム | 官公庁・金融機関を主要顧客とする老舗セキュリティベンダー。 |
【2321】ソフトフロントHD | 東証スタンダード | 通信技術とセキュリティを組み合わせたサービスに注力。 |
サイバーセキュリティ市場は世界的に拡大が続く見通し

サイバーセキュリティは一過性のブームではなく、今後も長期的に成長が期待される分野です。新技術の普及や国際的な法規制の強化が進む中で、投資テーマとしての継続性にも注目が集まっています。
セキュリティ脅威の高度化により、対策ニーズが増大
標的型攻撃やゼロデイ攻撃など、従来の防御では対応しきれない高度な攻撃が増加しており、企業側の防衛コストは今後も増加傾向にあります。IoTや5G普及によって攻撃対象も広がっており、「備えなければならない分野」として定着しつつあります。
政策とグローバル市場の拡大が、国内企業にも波及
国内では「サイバーセキュリティ基本法」などの整備が進み、国策としての側面も強まっています。加えて、米国を中心にセキュリティベンダーへの資金流入が加速しており、日本企業との提携やソリューション展開が活発になりつつあります。これらの流れは中小型銘柄にも恩恵をもたらす可能性があります。
サイバーセキュリティ関連株は長期で注目したい成長テーマ

サイバーセキュリティは社会的ニーズとテクノロジー進化の両面で成長が続く分野であり、投資先としても魅力的なポジションを確立しつつあります。特に今後はAIやIoTの普及とともに新たな需要が生まれ、テーマとしての注目度も維持される見通しです。
投資初心者でも比較的とっつきやすいテーマ株
「ウイルス対策」「情報漏洩防止」など、生活に直結する話題性のある分野であるため、専門知識が少なくても理解しやすいのが特徴です。報道と値動きが連動しやすい傾向もあり、トレンドを読みやすいという利点もあります。
長期目線でも継続的な成長が期待できる分野
社会インフラの一部として不可欠な存在であるため、一過性では終わらず、法制度や企業の取り組みによって堅実に需要が拡大していくと見込まれます。中長期保有の視点からも、サイバーセキュリティ関連株は有力な選択肢と言えるでしょう。
今後の投資テーマを探すうえでも、サイバーセキュリティ分野は外せない存在です。時流や政策動向を注視しながら、自分に合った銘柄選定を心がけましょう。
執筆者情報
編集部
INVEST LEADERSを運営する顧問投資会社「日本投資機構株式会社」の代表取締役を含めたスタッフ及びサポートアナリストの記事を掲載しています。株式投資や金融に纏わる話題は勿論のこと、読者の暮らしや生活を豊かにするトピックスや情報を共有していきます。