ロックアップとは?IPOセカンダリー投資で必ず知っておきたい株価への影響を解説

ロックアップとは? IPOセカンダリー投資で必ず知っておきたい 株価への影響を解説

IPO(新規株式公開)銘柄に投資する際に必ず知っておきたいのが、「ロックアップ(売却制限)」という仕組みです。
本記事では、ロックアップが株価に与える影響や、賢い投資家が実践する解除後の立ち回り戦略を、具体的事例を交えてわかりやすく解説します。

目次

ロックアップとは?基本をわかりやすく解説

ロックアップとは、会社が株式を上場(IPO)するときに、社長や役員、大株主などが「しばらく自分の株は売りません」と約束する仕組みを指します。
上場してすぐにたくさん株が売られてしまうと、株価が大きく下がるおそれがあるため、一定期間は売らないルールが定められるのです。

「ロックアップ解除」とは何を意味するのか

ロックアップ解除とは、「売ってはいけない期間の終了」を意味します。
ロックアップが解除されると、大株主やベンチャーキャピタル(VC)などがいつでも株を売れる状態になります。

そのため、ロックアップ解除のタイミングでは、大株主による売りが出る可能性が警戒されます。
また、大株主が売ってくるかもしれないという不安から、他の投資家も売りを出しやすくなり、短期的に株価が下落しやすくなります。

ロックアップが設定される目的

ロックアップ制度の一番の目的は、上場してすぐに株価が大きく崩れないようにすることです。

上場直後は注目も集まり、多くの投資家が売買するので値動きが激しくなりがちです。
そのタイミングで、大株主に売却を我慢してもらい、需給のバランスを保ちやすくします。

また、経営陣や大株主がすぐに株を手放さなければ、「この会社の将来に本気で取り組むつもりがある」と投資家に伝わり、会社への信頼感を高める効果もあります。

ロックアップの種類

ロックアップには、ざっくり分けて「制度ロックアップ」と「任意ロックアップ」の2種類があります。

制度ロックアップは、取引所のルールで決まっているもので、「この種類の株は一定期間売ってはいけません」といった決まりごととしてのロックアップです。

任意ロックアップは、主幹事証券会社と大株主などが契約として結ぶロックアップです。
IPOの目論見書に「主要株主は上場後○日間は売却しないことに同意しています」などと書かれているものがこれにあたります。

ロックアップはいつ解除される?

ロックアップ期間としてよく使われるのは、90日(約3カ月)と180日(約6カ月)の2パターンです。

「だいたい3カ月〜半年くらいは大株主が売れない」とイメージしておくと分かりやすいです。
銘柄によっては、株主ごとに期間を変えているケースもあります。

期間以外のロックアップ解除条件

ロックアップは、期間だけではなく、条件を満たすと途中で解除されるパターンもあります。

代表的なのは、以下の2つです。

1つ目は、株価が一定水準に到達したら解除となる価格ロックアップです。
例として「株価が公募価格の1.5倍以上になったらロックアップ解除」のような条件です。
株価が十分に上がり、市場での人気が定着したと判断されたときに、売却を認める考え方です。
銘柄によっては、株主ごとに価格を変えているケースもあります。

もう1つは、主幹事証券の同意という条件です。
特別な事情がある場合に、主幹事証券会社が「この範囲なら売却してもよい」と認めるケースです。
頻度は高くありませんが、その可否は目論見書などにルールとして書かれています。

ロックアップ解除日の確認方法

ロックアップの内容や解除日は、IPOの目論見書に必ず書かれています
「ロックアップ」「株主の売却制限」といった項目を探すと、どの株主が、いつまで、どういう条件で売れないのかが確認できます。

また、証券会社のIPO情報ページや会社の上場時IR資料(上場に関するお知らせなど)でも、ロックアップ期間が一覧になっているケースが多いので、初心者はこうした一覧資料から確認するのがおすすめです。

ロックアップ解除後の株価は下がる?

ロックアップ解除の直後は、以下の3つの理由から、株価が下がりやすいタイミングとして意識されます。

  1. 売りたい人が一気に売れるようになる
    これまで売れなかった大株主が、必要に応じて売却できるようになるため、売り注文が増えやすくなります。
  2. 需給バランスが崩れやすい
    売り注文に対して買い注文が追いつかないと、株価は下がりやすくなります。
  3. 「売られるかも」という不安心理
    実際に大株主が売らなくても、「大株主が売るかもしれない」と考える投資家が先回りして売却し、株価が弱くなりやすいです。

ただし、すべての銘柄で必ず下がるわけではなく、業績やテーマ性が強い銘柄では、ロックアップ解除をこなして再度上昇するケースもあります。

ロックアップ解除後の実際の値動きを確認

ロックアップ解除後に株価がどう動くのか、実際の値動きを確認しておきましょう。

ロックアップ解除価格目前で反落したケース

【206A】PRISM BioLabは、独自の創薬基盤(PepMetics 技術)を用いた新薬の研究・開発を手掛ける企業です。
公開価格は450円で、2024年7月2日に上場しています。

PRISM BioLabのロックアップは、上場から90日が経過するか、株価が公開価格の1.5倍まで上昇したら解除される条件でした。
▼実際の株価チャートを見ると、公開価格450円を上回る489円で寄り付き、その後も大きく上昇しています。

しかし、公開価格の1.5倍となる675円(ロックアップが解除される価格)寸前で、株価が大きく下落しています。
その後も、ロックアップ解除が警戒されて、675円には到達せずに、下降トレンドに転じてしまいました。

この株価推移を見るに、明らかにロックアップ解除を警戒した売りが出ていたと考えられます。

ロックアップ解除でも株価が下落しなかったケース

【218A】Liberawareは、産業分野に特化した非GPS型小型ドローンの開発・運用を手掛けており、屋内・狭空間に強みを持つ企業です。
公開価格は310円で、2024年7月29日に上場しています。

Liberawareのロックアップは、上場から90日が経過するか、株価が公開価格の1.5倍まで上昇したら解除される条件でした。
▼実際の株価チャートを見ると、上場してからしばらくは公開価格310円の1.5倍となる465円(ロックアップが解除される価格)近辺で跳ね返される場面が見られていました

しかし、9月には同価格帯を超えて大きく上昇しています。
ドローン関連株として注目度が高まり、ロックアップラインを超えても買いが入る状態に、個人投資家が強気目線へと転換したと考えられます。

ロックアップを考慮したセカンダリー投資戦略

ロックアップを意識してセカンダリー(上場後の売買)を考えるときに、投資家がチェックしておきたいポイントをまとめます。

投資家が注目すべきポイント

まず、ロックアップ解除日は株価が動きやすい「イベント日」なので必ず確認しておきましょう。

また、どの株主がロックアップの対象かも確認しておきたいです。
創業者・役員なのか、VC(ベンチャーキャピタル)なのか、事業会社なのかによって、売る理由や売りやすさが変わるためです。
特に、VCが多い銘柄は、ファンドの都合で利益確定をしたいタイミングが重なりやすく、売りが出やすい傾向があります。

加えて、それぞれの保有比率も確認しましょう。
保有割合が大きい株主のロックアップが外れると、売り圧力も大きくなりやすいです。

これらをセットで確認すると、「解除後にどれくらい売りが出そうか」をざっくりイメージできるようになります。

ロックアップを意識した投資家の立ち回り方

ロックアップを意識した、よくある立ち回り方を初心者向けに整理すると、次のようになります。

まず、解除前にリスクを減らす戦略が考えられます。
ロックアップ解除が近づくと、警戒して売る投資家も増えます。
不安であれば、解除日の前に一部または全部を売っておくのもシンプルなリスク管理方法です。

また、解除直後の売り一巡を待って買いに入るのも有効です。
解除日やその前後で株価が一度大きく下がり、「売りたい人がだいたい売り終わった」と市場が判断したタイミングで株価が落ち着くことがあります。
その落ち着いたタイミングで買いを検討するのは、セカンダリーでよく使われる戦略の一つです。

さらに、VC比率が高い銘柄への買いは慎重に狙うのが良いでしょう。
VCがたくさん入っている銘柄は、ロックアップ解除後の売りが読みにくいため、チャートが落ち着き、出来高が減ってきたかなどを確認してから入るほうが安心感があります。

まとめ|ロックアップを正しく理解し、IPO投資に活かそう

ロックアップは、IPO銘柄の「いつ、誰が、どれくらい売れるようになるのか」を教えてくれる大事な情報です。

解除日や対象株主、保有比率をあらかじめ知っておけば、不要な下落局面に巻き込まれないようにする、売りが一巡したおいしいタイミングを狙うといった判断がしやすくなります。

IPO銘柄に投資するなら、株価チャートだけでなくロックアップの内容も必ずチェックする習慣をつけておくと、失敗しにくいセカンダリー投資につながります。

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執筆者情報

nari

遠藤 悠市

日本投資機構株式会社 投資戦略部 室長

大学時代に投資家である祖母の影響で日本株のトレーディングを始める。大学時代、アベノミクスの恩恵も受けて資金を増やすことに成功する。卒業後、証券会社、投資顧問会社を経て2019年2月より日本投資機構株式会社の分析者に就任。モメンタム分析を最も得意としており、IPO(新規上場株)やセクター分析にも長けたアナリスト。

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