SBI新生銀行(8303)IPOの買い時は?大型上場後のセカンダリー戦略

SBI新生銀行(8303)IPOの買い時は?大型上場後のセカンダリー戦略

SBI新生銀行は2025年12月17日東証プライム市場に上場の超大型のIPOです。

同行は、SBIホールディングス傘下で「第4のメガバンク構想」の中核を担う銀行で、銀行とノンバンク、そしてネット金融の強みをあわせ持つ存在です。

時価総額はなんと、1兆2984億円と今年最大級の規模となっており、2025年12月のIPO銘柄の中でも市場関係者から注目されている銘柄です。

しかも今回は、

・ネット銀行色の強いリテール金融ビジネス
・SBI証券などとのグループ連携
・公的資金を完済したうえでの「再上場」

という複数のストーリーが重なっているため、中長期視点でも資金が継続的に流入しやすい土台が整っている状況と言えます。

本記事では、SBI新生銀行のIPOについて、セカンダリー投資を検討している読者向けに、事業内容や業績、そして上場後に利益を狙うための具体的な戦略を徹底的に解説します。

目次

ネット銀行と「第4のメガバンク構想」というテーマ性

まず最初に押さえておきたいのが、市場環境とテーマ性です。日本の家計金融資産は2,000兆円規模と言われ、その多くが現預金に偏っています。

一方で、NISA拡充や金利環境の変化、キャッシュレス化やネットバンキングの普及など、お金の置き場所・動かし方が大きく変わりつつあります。

こうした中で、支店網に依存せず、ネット中心でサービスを展開する銀行はコスト競争力と商品ラインナップの自由度が高く、株式市場でも「成長する銀行」「デジタル金融」の代表格として、テーマ買いの対象になりやすいセクターです。

同業の事例から見えること

実際に、近年上場した楽天銀行や住信SBIネット銀行といったネット銀行は、いずれも大型案件でありながら、公募価格を上回る初値を付け、その後も大きく株価を伸ばしたケースが確認されています。

例として楽天銀行の上場から約1カ月の株価推移を確認します。

楽天銀行(5838)の週足チャート

【5838】楽天銀行
上場日:2023年4月21日
公募価格:1,400円
初値:1,856円
初値は公開価格を32.6%上回る1,856円。

上場後の高値は2023年4月24日の2,016円と公募価格から44%程上昇しました。

この例から見るに、SBI新生銀行も初値は公開価格を上回ると考えてよいでしょう。

SBI新生銀行の概要とテーマ性

SBI新生銀行のルーツは、1952年設立の日本長期信用銀行です。1990年代の金融危機の中で経営破綻・国有化を経験し、その後民間に売却され、2000年に「新生銀行」として再スタートしました。

その後、2021年にSBIホールディングスによるTOBでSBIグループ入りし、2023年1月に現在の「SBI新生銀行」へ行名変更

一度は非公開化により上場廃止となったものの、公的資金の完済など再建を進めたうえで、今回東証プライム市場への再上場に踏み切る形となっています。

SBIグループは、地方銀行との提携を進めながら「第4のメガバンク構想」を掲げています。

SBI新生銀行はその中核として、リテール金融・ネット銀行機能を担う存在であり、株式市場においても強いテーマ性を持つと言えるでしょう。

SBI新生銀行の売上高規模は?決算を確認

2026年3月期の業績は、純利益が前期比18.3%増の1,000億円と増益の見通しとなっています。

同行グループでは、営業性資産・預金量・連結自己資本比率を主要KPIとして位置づけ、収益力・資金調達力・財務健全性のバランスを重視した経営を行っているとしています。

2025年9月末時点において、営業性資産は16兆1,894億円、預金量は16兆3,463億円と、いずれも2025年3月末比で増加しています。

特に営業性資産は、法人営業・ストラクチャードファイナンス・住宅ローン・証券投資の各重点領域の拡充により、下期も堅調な伸びが見込まれます。

純利益は2022年を底に右肩上がりとなっており、着実な成長が窺えます。

SBI新生銀行ビジネスモデルの特徴

同行のビジネスモデルの特徴は、大きく分けて3つあります。

1.ネット中心の銀行ビジネス

店舗網はコンパクトに抑えつつ、ネットバンキングを軸に預金・ローン・外貨・投信などをワンストップで提供しています。

ATM手数料無料や優遇ステージなどの施策により、個人向け預金口座数は2022年3月期から2025年3月期までの3年間で80万口座超増加し、25年3月期には約387万口座、2025年8月には400万口座を突破するなど、着実に利用者基盤を拡大しています。

2.ノンバンク事業とのシナジー

消費者金融「レイク」を展開する新生フィナンシャルや、クレジット・ショッピングクレジットのアプラスなどをグループに持ち、銀行とノンバンクの両輪でリテール金融ビジネスを展開している点が大きな特徴です。

3.SBI証券などグループとの連携

SBI証券との自動入出金・同時口座開設、2025年9月開始の「SBIハイパー預金」など、銀行と証券の垣根を低くするサービスを矢継ぎ早に投入しており、ハイパー預金は開始から約1カ月で残高3,000億円を突破するペースで伸びています。

これら3つのビジネスモデルが組み合わさることで、SBI新生銀行は「ネット銀行の成長性」と「ノンバンクの収益性」、そして「SBIグループ連携によるクロスセル効果」を同時に取り込める、リテール金融に強みを持つ独自ポジションの銀行と言えます。

上場後に株価上昇のチャンスはあるか?

それではここから、実際に上場後の株価がどう動きそうか、アナリスト目線でポイントを整理していきます。

SBI新生銀行の市場での評価を考える上で、注目すべきポイントは2つあります。

ポイント①:ネット銀行×再上場というテーマと、収益成長の組み合わせ

SBI新生銀行は、預金・融資といった伝統的な銀行ビジネスに加え、カードローンやクレジットといった収益性の高いノンバンク事業、さらにSBI証券などグループとのクロスセルを組み合わせることで、利ザヤ、手数料、グループシナジーの3本柱で収益を上積みできる構造になっています。

ネット銀行系の大型IPOとしては、楽天銀行や住信SBIネット銀行が直近の比較対象となりますが、いずれも公募価格を上回る初値でスタートし、その後も株価を大きく伸ばした実績があります。

SBI新生銀行も、収益構造としてはネット銀行寄りの要素が強く、「ネット銀行の成功パターン」と「再上場での知名度の高さ」を兼ね備えている点は、プラス要因として意識されやすいでしょう。

ポイント②:需給とバリュエーション

今回のIPOは、想定吸収金額で約3,700億円クラスという、今年でも屈指の超大型案件です。

一方で、今年の超大型IPOとして注目されたJX金属やテクセンドフォトマスクなど、いずれも公募割れを回避しており、規模が大きいことが公募割れにつながるというわけではないことも確認されています。

SBI新生銀行の公募価格は1,450円に決定しており、2026年3月期予想PERは13倍程度となっています。

同業として比較される楽天銀行の予想PERは19倍程度、他大手銀行でも平均PERは13~14倍程度となっており、割高感は意識されていないとの見方もあります。

SBI新生銀行の投資戦略と注意点

SBI新生銀行に投資する際には、IPOの基本情報だけではなく、需給構造を見極めて、セカンダリー投資におけるタイミングとスタンスをどう取るかが重要となります。

ここでは、IPOの基本情報とリスク、そして実際に投資する場合の戦略について整理します。

SBI新生銀行の初値&基本情報

SBI新生銀行に投資する上で、まずは基本的な情報を押さえておきましょう。

【8303】SBI新生銀行
公開価格:1,450円
時価総額:1兆2,984億円(公開価格ベース)
主幹事:野村証券、SBI証券

上場後の株価はどうなる?セカンダリー投資のポイント

上場後の株価の動きを予想する上で、「誰が株を持っているか」「今後株を売る可能性があるか」という需給バランスの見極めが重要です。

大株主にベンチャーキャピタルは確認されず、既存株主へのロックアップは180日と、上場日から半年は大口の売りはないと推察されます。

セカンダリーを狙うならまずは、初値がついてから上値追いとなるかを見極めましょう。また、初値が公開価格1,450円を超えるかには注目です。

今回の場合、知名度や市場注目度の高さ、時価総額の大きさから機関投資家の参入も考えられるため、初値が公開価格を下回るいわゆる「公募割れ」になる可能性は低いとみています。

まとめ

総合的に見ると、SBI新生銀行は

・ネット銀行・リテール金融の成長領域
・第4のメガバンク構想の中核というストーリー
・公的資金完済後の再上場
・直近のネット銀行や大型IPOの実績

といったプラス材料が多く、初値水準次第では、セカンダリーでも十分に妙味のある銘柄になると考えられます。

一方で、公開規模が非常に大きい点や、再上場案件であることによる見方の分かれやすさなど、リスク要因も存在します。

上場当日は、

・初値が公募価格1,450円からどの程度上振れするか
・寄り付き後に出来高を伴って上値を追えるか
・市場全体の地合いがリスクオンかどうか

このあたりを丁寧にチェックしながら、セカンダリーで狙う場合は、需給とテーマ性のバランスを見極めてエントリーのタイミングを図る形も良いでしょう。

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執筆者情報

nari

遠藤 悠市

日本投資機構株式会社 投資戦略部 室長

大学時代に投資家である祖母の影響で日本株のトレーディングを始める。大学時代、アベノミクスの恩恵も受けて資金を増やすことに成功する。卒業後、証券会社、投資顧問会社を経て2019年2月より日本投資機構株式会社の分析者に就任。モメンタム分析を最も得意としており、IPO(新規上場株)やセクター分析にも長けたアナリスト。

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