東洋エンジニアリング(6330)は、南鳥島沖のレアアース泥開発への期待から2026年1月16日に8,760円まで急騰しました。しかし、26年3月期の大幅下方修正を受けて反落し、7月17日には1,712円まで下落しています。
7月24日には水深5,569mからの連続揚泥成功が正式発表され、株価は再び動き始めました。テーマの根拠は強まりましたが、持続上昇にはレアアースの実証成果だけでなく、本業の黒字回復が必要です。2026年7月31日時点の最新材料から今後を分析します。
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東洋エンジニアリングはレアアース開発の一部を担うEPC企業

東洋エンジニアリングの主力は、プラントの設計・調達・建設を一括で担うEPC事業です。レアアースの鉱山を保有し、自社で採掘・販売する資源会社ではありません。
ただし、レアアースとの関係を単なる市場の連想と片付けるのも不正確です。同社は深海資源回収システムの技術開発に実際に参加し、製錬・精製分野でも海外案件の実績を持っています。正確な立ち位置は「レアアース生産の一工程を技術で支えるエンジニアリング会社」です。
収益の中心は石油化学・肥料・FPSOなどの大型案件
東洋エンジニアリングは、石油化学、石油・ガス、化学・肥料、発電、医薬・産業施設などを幅広く手掛けます。26年3月期の売上高1,829億円のうち、石油化学は651億円、化学・肥料は442億円、石油・ガスは404億円でした。
さらに、三井海洋開発と設立した合弁会社OFSを通じて、FPSO関連案件も取り込んでいます。案件単価が大きい反面、設計変更、工期遅延、資材・人件費の上昇が採算を崩しやすい点がEPC企業の弱点です。受注額だけでなく、契約条件と粗利率まで見なければ業績を読み違えます。
南鳥島では解泥・採泥機器の設計と製作を担当した
同社はJAMSTECの委託を受け、海底6,000m級からレアアース泥を回収するシステム開発の一部に携わってきました。担当したのは、粘性の高い泥を海水と混ぜてスラリー化し、船上へ送るサブシープロダクションシステムのうち、解泥・採泥機器の基本設計、詳細設計、製作です。
採鉱システム全体を東洋エンジニアリングが単独開発したわけではありません。内閣府SIPとJAMSTECが進める国家プロジェクトに、専門技術を持つ一社として参加しています。関与は実在しますが、成果のすべてを同社の売上へ直結させる見方は行き過ぎです。
7月24日の試験結果でレアアース期待の根拠は一段強まった

JAMSTECは2026年7月24日、1月から2月に南鳥島周辺で実施した採鉱システム接続試験の詳細結果を公表しました。速報段階で判明していた揚泥成功に加え、回収量、稼働状況、レアアース組成、今後の日程まで明らかになっています。
この発表により、国産レアアース構想は「深海から本当に引き上げられるのか」を試す段階から、処理量と採算性を検証する段階へ進みました。東洋エンジニアリング株にとっては、消えかけていたテーマを再点火する具体的な成果です。
水深5,569mから約50トンのレアアース泥を回収した
試験では、1月30日に解泥機が海底へ着底し、2月1日未明にレアアース泥の連続揚泥を確認しました。3日間で3か所のレアアース層から回収し、海水を除いた泥の重量は約50トンです。水深5,569m相当から船上へ連続揚泥したのは世界初とされています。
回収したレアアースの約54%は、イットリウム、ガドリニウム、ジスプロシウムなどの中重レアアースでした。有害物質と放射性物質は有意な数値が検出されず、船上分析では鉱物由来の環境汚染リスクも低いと判断されています。技術面と環境面の両方で前進した発表です。
次の焦点は2027年の本格採鉱と2028年の経済性評価
次の本格試験は2027年2月から約1か月間の予定です。揚泥したスラリーを南鳥島へ運び、脱水したマッドケーキを本土で分離・精製・製錬する一連の工程まで検証します。産業規模を見据えた操業へ進むため、今回より収益化との距離が近い試験になります。
ただし、国内での産業化に向けた総合評価は2028年3月までの予定で、経済性の判定はこれからです。深海での安定操業、処理量、輸送、製錬コスト、環境影響が商業化の条件となります。技術成功と利益貢献の間には、まだ数年単位の時間差があります。
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株価は8,760円から約8割下落後、1,700円台で反発した

東洋エンジニアリング株は、レアアース期待が最高潮に達した2026年1月16日に8,760円を付けました。その後は業績下方修正を契機に急落し、7月17日の年初来安値1,712円まで約80.5%下落しています。
7月24日の試験結果を受け、翌営業日の27日には終値2,095円まで11.2%上昇しました。ただし、30日終値は1,891円へ押し戻されています。底値圏からの反発は始まったものの、中長期の上昇トレンドへ転じたと断定できる形ではありません。
1月の急騰と2月の急落は期待と業績の衝突だった
1月相場では、南鳥島沖の試験開始、中国依存からの脱却、国産レアアースへの政策期待が重なり、業績から離れた速度で株価が上昇しました。ところが2月12日、会社は26年3月期の純利益予想を50億円の黒字から150億円の赤字へ引き下げ、年間25円の配当予想も無配へ修正しました。
試験の技術的成功が公表された直後でも、ブラジル案件の損失が株価を押し下げています。これは、同社株がレアアース材料だけで上がり続けるわけではない証拠です。国策テーマへの期待とEPC事業の採算悪化が同時に存在し、強い材料が出ても業績不安が上値を抑える構図となっています。
2,100円前後を定着して初めて戻りの強さを確認できる
7月27日の上昇では高値2,138円まで買われましたが、翌日以降は売りに押されました。2,000~2,100円台は7月上旬にも売買が重なり、短期の戻り売りが出やすい価格帯です。まずはこの水準を終値で上回り、出来高を保てるかが反発継続の判定材料になります。
下値では7月17日の1,712円が直近の基準です。再び1,700円台前半へ沈むなら、7月24日の好材料を消化しても買いが続かなかったと判断できます。今は高値更新を狙う局面ではなく、1,700円台の底固めと2,100円台の突破を見極める局面です。
26年3月期の149億円赤字が株価の重石になっている

26年3月期は売上高1,829億円、営業損失190億円、経常損失113億円、最終損失149億円となりました。売上高は前期比34.2%減少し、自己資本比率も20.9%から16.7%へ低下しています。
赤字の主因はレアアース事業への先行投資ではなく、ブラジル向けガス火力発電案件の収支悪化です。株価が本格回復するには、同じ案件で追加損失が発生しないと市場へ示す必要があります。本業のリスク管理が最大の評価ポイントです。
ブラジル案件では工期遅延と債権回収リスクが重なった
ブラジル向けガス火力発電案件では、契約対価と工期の見直しで顧客と合意できず、東洋エンジニアリング側は2025年7月に仲裁を申し立てました。一方、顧客は工期遅延に伴う損害賠償を主張し、同年10月以降は一部の対価支払いを停止しています。
会社は債権の回収可能性と完成までの費用を保守的に見直し、工事損失を追加計上しました。仲裁によって損失が回復する余地は残りますが、時期と金額は読めません。今後の決算では、当該案件の工事進捗、追加引当、支払留保額、仲裁の進展を継続して確認する必要があります。
営業キャッシュフローは黒字でも財務余力は縮小した
26年3月期の営業キャッシュフローは93億円の黒字へ改善し、現金及び現金同等物は869億円となりました。赤字決算でも直ちに資金が尽きる状態ではありません。一方、純資産は602億円から437億円へ減少し、短期有利子負債は174億円から368億円へ増えています。
期末には借入契約の財務制限条項へ抵触しましたが、決算発表までに金融機関から条件見直しの承認を得て、抵触は解消しています。資金繰り危機と見る段階ではないものの、追加損失に耐える財務余力は前年より弱くなりました。
27年3月期は黒字回復計画だが8月7日決算が最初の関門

会社は27年3月期に売上高1,900億円、営業利益30億円、経常利益75億円、純利益60億円を計画しています。年間配当は25円で、2期ぶりの復配予想です。黒字転換を実現できれば、株価の評価軸は赤字処理から利益回復へ移ります。
ただし、営業利益率は1.6%にとどまり、純利益の一部は持分法適用会社の利益に支えられる見通しです。8月7日に予定される第1四半期決算では、売上進捗だけでなく粗利率、ブラジル案件、受注内容を確認しなければなりません。
黒字化の前提は売上総利益率14.7%への急回復
会社計画では、売上総利益が26年3月期の64億円から27年3月期は280億円へ増え、売上総利益率は3.5%から14.7%へ急回復します。高採算の手持ち非EPC案件が利益へ寄与する点を主因としており、販管費は250億円とほぼ横ばいの想定です。
計画達成には、新規の大型受注を急いで増やすより、既存案件を想定採算で進める精度が問われます。第1四半期で粗利率が改善し、追加損失がなければ、60億円の純利益計画に現実味が出ます。逆なら再び利益予想への疑いが強まります。
受注残5,024億円は利益の量より質を確認したい
26年3月期末の受注残高は、持分法適用会社の当社持分を含めて5,024億円です。連結分は2,693億円、持分法分は2,330億円で、FPSO案件が大きな比重を占めます。売上高1,900億円計画に対して十分な案件量を確保している点は安心材料です。
一方、EPCでは受注残が多くても赤字案件を抱えれば企業価値は下がります。確認すべきは、2023年以降に受注した大型案件の採算、新規受注の契約方式、非EPC案件の粗利です。受注高2,000億円の目標達成より、損失を出さない案件選別が進んでいるかを優先します。
新中計でレアアースは連想から成長ドライバーへ格上げされた

2026年6月に公表した新中期経営計画では、重要鉱物が次世代型地熱、O&M、ファインケミカル、バイオ医薬と並ぶ成長ドライバーに位置付けられました。これは現行記事の公開後に加わった重要な変化です。
南鳥島の採鉱支援だけでなく、レアアースの分離・精製、リサイクル製錬、バイオマイニングまで事業機会を広げる方針が示されています。今後は「テーマに関連する企業」から「重要鉱物で収益を作れる企業」へ進めるかが評価の分岐点です。
ネオジムのリサイクル製錬で事業創出を目指す
新中計では、高性能磁石材料に使われるネオジムへ着目し、鉱山会社や磁石メーカーと連携して資源循環型サプライチェーンを構築する方針です。2011~2012年にはマレーシアでLynas向けの分離・精製、抽出・製品化設備をEPCで手掛けるなど、過去実績も示されました。
2023~2025年にも国内で分離・精製案件へ関与しており、低濃度レアアースを微生物で回収するバイオマイニング技術の研究開発も進めています。まだ売上目標や受注額は開示されていませんが、採鉱装置だけを根拠にした期待より、製錬・リサイクルは同社の化学プロセス技術と結び付きやすい領域です。
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2030年度純利益100億円はレアアースだけで達成する計画ではない
新中計は2030年度の純利益100億円、ROE12%以上、ストック型粗利構成比10%を掲げています。共創型EP・EPCの受注件数比率は50%以上、先端素材・ファインケミカル、バイオ医薬、O&Mの粗利構成比は30%以上が目標です。
重要鉱物は成長ドライバーの一つですが、利益目標を単独で担う前提ではありません。肥料・石油化学・FPSOを収益エンジンとし、O&Mやライセンスなどの継続収益を増やす全社計画です。レアアースの進展だけで中計達成を判断せず、本業の安定化と新領域の収益化を同時に追う必要があります。
1,891円は安値から反発しても割安とは言い切れない

7月30日終値1,891円は、1月高値8,760円を78.4%下回り、7月安値1,712円を10.5%上回る水準です。値幅だけを見れば安く映りますが、現在の株価には27年3月期の黒字回復と、国策テーマへの期待がすでに含まれています。
会社予想EPS102.39円を基準にした予想PERは約18.5倍、26年3月期末BPS742.79円に対するPBRは約2.5倍、予想配当利回りは約1.3%です。赤字から回復途上のEPC企業としては、明確な割安水準とは言えません。
利益60億円を達成して初めて現在の評価を支えられる
予想PER約18.5倍は、27年3月期に純利益60億円を達成する前提の数字です。粗利率14.7%への回復やブラジル案件の追加損失回避が崩れれば、実際のPERは上がり、株価の割高感が強まります。反対に、受注残を高採算で消化できれば、業績予想の上振れ余地が生まれます。
2030年度の純利益100億円を達成した場合、7月30日時点の時価総額約1,112億円は単純計算で利益の約11倍です。ただし、4年先の目標を現在価値へそのまま置き換えるのは危険です。中計へ向けて利益が毎年積み上がり、ストック型収益が増えるかを四半期ごとに確認する必要があります。
再上昇には本業回復とレアアース収益化の両輪が必要
株価が中長期で上向く条件は、27年3月期の黒字化、ブラジル案件の追加損失回避、共創型EPCによる粗利改善、FPSO・肥料案件の安定貢献です。その上で、レアアースの製錬・リサイクル分野から有償案件や受注額が開示されれば、テーマ評価が業績評価へ変わります。
反対に、技術実証のニュースだけが続き、契約先、売上、利益率が見えなければ、株価は材料発表のたびに急騰と反落を繰り返しやすくなります。次の上昇余地を決めるのはレアアースの話題性ではなく、利益へ変わるまでの速度です。
8月7日決算までは高値追いより確認を優先したい

7月24日の試験結果は強い材料ですが、7月27日の急騰後に株価は1,800円台まで押し戻されました。さらに、次の第1四半期決算は8月7日に予定されており、短期で大きな値動きが発生しやすい日程です。
現時点では、レアアース材料だけを理由に追いかけるより、会社計画の前提が崩れていないかを確認する方が合理的です。決算で粗利率の改善と追加損失の不在が確認できれば、その後の押し目は1月とは異なる業績根拠を持ちます。
短期売買では1,712円と2,138円を判断基準にする
短期では、7月17日安値1,712円が下値の基準、7月27日高値2,138円が上値の基準です。2,138円を出来高増加とともに上回れば、7月安値からの反発が一段進んだと判断できます。一方、1,712円を割り込めば、好材料発表後も下落基調を止められなかった形です。
値幅が大きいため、決算前に一度で買い切る方法は損失管理が難しくなります。材料発表直後の上昇を追わず、終値での価格定着と出来高の継続を確認してから判断する方が適しています。テーマ株ほど日中高値より引け方を重視します。
中長期では4項目を決算ごとに追えばよい
中長期で確認する項目は、ブラジル案件の追加損失、売上総利益率、持分法を含む受注残の採算、重要鉱物分野の有償案件です。レアアースの実証ニュースが増えても、この4項目が改善しなければ企業価値の上昇にはつながりません。
8月7日決算では通期予想の据え置きだけで安心せず、粗利率と案件別リスクの説明を確認します。その後は2027年2月の本格採鉱試験、2028年3月までの経済性評価が国策テーマの節目です。本業の回復を土台に、レアアースが上乗せされる順番が理想です。
まとめ|東洋エンジニアリングは上昇余地があるが決算確認が先
東洋エンジニアリングはレアアースの採掘・販売会社ではありませんが、南鳥島沖の回収システム開発に実際に参加し、新中計では重要鉱物リサイクル製錬を成長ドライバーへ位置付けました。現行記事の「連想だけ」という評価は、現在の事業方針に合いません。
7月24日に公表された連続揚泥成功はテーマ再評価の根拠になります。一方、26年3月期はブラジル案件で149億円の最終赤字となり、7月30日終値1,891円も会社予想EPSベースで約18.5倍です。高値から約8割下落しても、業績回復前の株価が無条件に割安になったわけではありません。
株価がまだ上がる余地はあります。ただし、持続上昇の条件は8月7日決算で粗利率の改善と追加損失の不在を確認し、重要鉱物分野で有償案件が積み上がる流れです。今はレアアースの夢だけを買うより、黒字回復の証拠を待つ局面と判断します。

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執筆者情報
日本投資機構株式会社 テクニカルアナリスト(CMTA®)
著名な元機関投資家や経験豊富なアナリスト・ファンドマネージャーより培った知識と経験を基に、数多くの市場動向の予測や個別銘柄の動向をピンポイントで分析。銘柄の推奨実績において社内の月間最高勝率記録を持つテクニカルアナリスト。

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