ヤマハ発動機の株価は今後どうなる?半年で76%上昇、急騰後に残る400億円赤字

峯岸 恭一

日本投資機構株式会社 証券アナリスト(CMA) テクニカルアナリスト(CMTA®)

ヤマハ発動機の株価は今後どうなる?半年で76%上昇、急騰後に残る400億円赤字

ヤマハ発動機の株価は、2026年2月4日の終値1047.5円から8月7日の1842.5円まで約76%上昇しました。2025年の減益と減配で売られた後、二輪車の販売増と円安を追い風に業績が急回復しています。

一方、米国のOLV事業は赤字が続き、株価も5年チャートの上限圏まで上昇しました。本記事では最新決算と株価指標を基に、今後も上昇が続く条件と下落要因を分析します。

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ヤマハ発動機の株価は2月安値から約76%上昇

ヤマハ発動機の株価は2月安値から約76%上昇

ヤマハ発動機の株価は、2025年に米国関税の負担や繰延税金資産の取り崩しが重なり、2026年2月まで下落しました。しかし、5月の第1四半期決算で増益が確認され、8月の上方修正を受けて上昇が加速しています。

株価の評価は、業績悪化を警戒する段階から営業最高益を織り込む段階へ変わりました。ただし、短期間で大幅に上昇したため、決算が良いだけでは一段高につながりにくくなっています。業績予想の変化が株価へ直接表れた半年です。

2月4日終値1047.5円から8月7日終値1842.5円へ

2026年2月4日の終値1047.5円に対し、8月7日の終値は1842.5円でした。上昇率は終値ベースで約75.9%です。2月4日の取引時間中には1033円まで下げましたが、その後は安値を切り上げました。

5月15日に年初来高値を更新し、8月6日には取引時間中に1926.5円まで上昇しています。2月の安値付近で買った投資家には大きな含み益が生じており、今後は利益確定売りをこなしながら高値を維持できるかが試されます。

ヤマハ発動機の株価推移。2026年2月4日1047.5円から8月7日1842.5円へ約76%上昇

8月4日の業績上方修正後に年初来高値を更新

株価上昇を決定づけた材料は、2026年8月4日に発表された通期予想の上方修正です。会社は営業利益予想を1800億円から2600億円へ引き上げ、市場が警戒していた関税負担も想定を下回ると説明しました。

上方修正後の営業利益は過去最高を更新する計画です。減益が続くとの見方が崩れ、発表翌日にも買いが続きました。今の株価には、回復ではなく最高益の実現まで織り込まれ始めています。発表済みの好材料を上回る数字が次に必要です。

2025年の下方修正と減配で進んだ株安から評価が反転

2025年は米国の追加関税や販売不振が利益を圧迫し、通期営業利益は前期比30.4%減の1263億円でした。親会社の所有者に帰属する利益も161億円まで減り、年間配当は当初計画の50円から35円へ減額されました。

当時の株安は一時的な会計損失だけでなく、将来の収益力低下を反映した動きでした。2026年は本業の利益が回復し、前年に売られた理由そのものが薄れています。これが半年で約76%上昇した背景です。反転は鮮明です。

2026年上期は売上高と営業利益が過去最高

2026年上期は売上高と営業利益が過去最高

2026年上期は、売上高が前年同期比17.2%増の1兆4979億円、営業利益が88.6%増の1585億円となりました。親会社の所有者に帰属する利益も1139億円へ増え、前年同期の2倍を超えています。

売上高と営業利益は上期として過去最高です。前年は関税と販売不振への警戒が先行しましたが、今回は販売数量の増加が利益を押し上げました。会計上の戻し益だけに頼らない回復だと確認できます。市場の想定を大きく上回る回復速度でした。前年との差は明確です。

2026年上期は売上高と営業利益が過去最高
出典:ヤマハ発動機「2026年12月期 第2四半期 決算説明会資料」4ページ

売上高は17%増、営業利益は89%増

上期の営業利益率は約10.6%となり、前年同期の約6.6%から大きく改善しました。販売台数の増加に加え、円安と販管費削減が寄与しています。売上高の伸びを営業利益の伸びが上回り、採算も回復しました。

増収だけでなく利益率も上がった点が、今回の決算で最も強い部分です。通期営業利益率も9.0%まで戻る計画で、2025年の5.0%から改善が進みます。利益率の回復で、値上げとコスト削減の効果も確認できました。

通期営業利益予想を1800億円から2600億円へ上方修正

会社は2026年通期の売上高予想を2兆7000億円から2兆9000億円へ引き上げました。営業利益は1800億円から2600億円、親会社の所有者に帰属する利益は1000億円から1700億円へ上方修正しています。

営業利益は2023年の2439億円を上回り、過去最高となる計画です。一方、最終利益は2022年の1744億円に届かないため、最高益予想と表現できるのは営業利益です。利益段階を分けて見る必要があります。

年間配当予想は2025年の35円から50円へ回復

2025年の年間配当は35円でしたが、2026年は中間25円、期末25円の年間50円を予定しています。8月の上方修正でも配当予想は据え置かれ、現時点では業績改善を理由とした追加増配までは示されていません。

50円配当は2024年と同じ水準です。前年の減配分は取り戻しますが、過去最高の営業利益予想と比べると還元には余地があります。会社は機動的な自社株買いも検討するとしており、実施の有無が次の材料になります。株価を支える余地も残ります。

インドとASEANの二輪販売、円安が利益回復をけん引

インドとASEANの二輪販売、円安が利益回復をけん引

業績回復の中心は、売上高の約6割を占めるランドモビリティ事業です。特にインドとASEANで二輪車販売が増え、欧米の大型二輪も堅調でした。販売数量の増加が工場の稼働率を高め、利益率改善につながっています。

2026年の増益は、二輪車需要、円安、経費削減の3つが重なった結果です。1つの要因が弱まっても利益を保てるかを見るため、事業別の数字を確認します。成長と収益性を同時に支える柱が増えています。

事業上期売上高上期営業利益
二輪車9643億円1160億円
マリン3007億円460億円
OLV803億円-120億円
ロボティクス601億円37億円
ヤマハ発動機の2026年上期決算資料を基に作成
2026年の増益は、二輪車需要、円安、経費削減の3つが重なった結果
出典:ヤマハ発動機「2026年12月期 第2四半期 決算説明会資料」14ページ

二輪車事業は上期営業利益1160億円を確保

二輪車事業の上期売上高は9643億円、営業利益は1160億円でした。営業利益率は約12.0%です。インドでは中高価格帯の商品が伸び、ASEANでも販売が増えました。市場拡大と商品構成の改善が同時に進んでいます。

全社の通期営業利益予想2600億円に対し、二輪車は1930億円を稼ぐ計画です。構成比は約74%で、利益回復の主役は二輪車です。インドとASEANの需要が鈍れば、全社予想への影響も大きくなります。販売地域の分散も効いています。

二輪車事業は上期営業利益1160億円を確保
出典:ヤマハ発動機「2026年12月期 第2四半期 決算説明会資料」16ページ

マリン事業も460億円の営業利益を稼ぐ

マリン事業の上期売上高は3007億円、営業利益は460億円でした。営業利益率は約15.3%で、二輪車を上回っています。船外機の需要は底堅く、ウォータービークルの販売も業績を支えました。

マリンは売上規模以上に利益への貢献が大きい事業です。一方、北米販売の比率が高く、関税や景気減速の影響を受けやすい面もあります。二輪車と同時に失速すれば、事業分散の効果は弱まります。北米で高採算商品を安定して売れるかが通期利益を左右します。

円安と販管費削減が米国関税などの負担を吸収

2026年上期の平均為替レートは1ドル158円、1ユーロ185円でした。前年同期よりドルは10円、ユーロは23円の円安です。海外売上高が大きいヤマハ発動機には、外貨建て利益を円換算する際の押し上げ効果が生じました。

販管費削減も増益へ寄与し、関税や調達費の増加を吸収しています。ただし、販売増による回復へ円安が上乗せされた決算です。円高へ戻った場合に利益率を保てるかは、販売価格と原価削減の進み方に左右されます。

営業最高益予想でもOLV事業は400億円の赤字見通し

営業最高益予想でもOLV事業は400億円の赤字見通し

全社業績は急回復しましたが、北米のアウトドア・ランド・ビークル、略称OLVは赤字が続いています。OLVには四輪バギー、レクリエーショナル・オフハイウェイ・ビークル、ゴルフカーなどが含まれます。

OLVの通期営業損失400億円は、二輪車が稼ぐ利益の約2割に相当します。会社は米国事業へ大きく手を入れますが、2026年下期には構造改革費用も発生します。赤字削減の進み方で、全社利益の伸びしろも変わります。負担は深刻です。

OLVは120億円を投じて米国事業を構造改革

OLV事業は上期に120億円の営業損失を計上し、通期では400億円の赤字を見込みます。会社は在庫の適正化、製品構成の見直し、固定費削減を進め、構造改革に伴う一時費用として120億円を計上する計画です。

通期予想から逆算すると、下期のOLV赤字は約280億円です。全社では上方修正でも、この事業は下期に損失が広がります。株価がさらに上昇するには、一時費用後の採算改善が数字で見える必要があります。損失削減の速度が評価へ直結します。

OLVは120億円を投じて米国事業を構造改革
出典:ヤマハ発動機「2026年12月期 第2四半期 決算説明会資料」8ページ

ROVの自社生産終了と人員約300人の調整を実施

ヤマハ発動機は米ジョージア州で行うROVの自社生産を終え、外部調達へ切り替えます。ROVは悪路走行やレジャーに使う多目的オフロード車です。今後は四輪バギーとゴルフカーへ経営資源を寄せます。

ロイターによると、正社員約200人を含む約300人の人員調整も予定しています。不採算製品の自社生産をやめる踏み込んだ改革です。短期的には費用が増えますが、固定費の削減が2027年以降の利益を押し上げます。供給体制も変わります。

米国関税は239億円の減益要因、還付127億円で一部相殺

会社が2026年通期予想へ織り込んだ関税の減益影響は239億円です。一方、過払い分などの還付を127億円見込み、差し引きの負担は約112億円となります。当初想定より負担が小さくなり、上方修正を支えました。

関税の影響が消えたわけではありません。税率や対象品目が変われば、価格転嫁や調達先の見直しが必要です。北米で二輪車、マリン、OLVを販売する同社には、政策変更が複数事業へ同時に及ぶリスクがあります。

米国関税は239億円の減益要因、還付127億円で一部相殺
出典:ヤマハ発動機「2026年12月期 第2四半期 決算説明会資料」11ページ

予想PER10.5倍でも急騰後の割安感は慎重に見る

予想PER10.5倍でも急騰後の割安感は慎重に見る

2026年8月7日の終値1842.5円と会社予想EPS175.16円から計算した予想PERは約10.5倍です。PERだけなら割高感は強くありませんが、純資産に対する株価を示すPBRは約1.43倍まで上昇しました。

低いPERには、最高益予想の達成と円安継続への期待が含まれています。株価は5年チャートの上限圏にあり、過去の株価だけを基準に割安とは言い切れません。

指標2026年8月7日時点
終値1842.5円
時価総額約1兆8760億円
予想PER約10.5倍
実績PBR約1.43倍
予想配当利回り約2.71%
株価と2026年上期決算の株式数、純資産、会社予想を基に算出

8月7日時点のPBRは約1.43倍、予想配当利回りは2.71%

6月末の親会社の所有者に帰属する持分は1兆2513億円です。自己株式を除く株式数から算出した1株純資産は約1289円となり、8月7日終値に対するPBRは約1.43倍です。解散価値の1倍を明確に上回っています。

年間50円の配当予想から計算した利回りは約2.71%です。配当利回りは減配前の水準へ戻りましたが、高配当株として突出した数字ではありません。株価上昇後は、配当より利益成長への期待が評価の中心です。

5年チャートでは上限圏まで上昇

株式分割を調整した週足では、過去5年の安値は2022年3月の707.75円、高値は2026年8月6日の1926.5円です。2024年7月の高値1617.5円も上回り、直近の上昇は過去5年で最も高い水準へ達しました。

長期の上昇トレンドは強い一方、安値から約2.6倍へ上昇しています。高値圏では好材料への反応が鈍くなりやすく、業績が会社予想に届かない場合は下落幅も大きくなります。指標面の余裕は小さくなりました。

旧稿のPBR0.75倍・約970円を今の下値目処にしない理由

現在の1株純資産へPBR0.75倍を掛けると株価は約967円です。旧稿の約970円とほぼ一致します。ただし、8月7日終値から約48%低く、営業最高益を見込む現在の株価を測る直近の下値目処としては距離があります。

PBR0.75倍は金融危機や業績再悪化を想定した厳しい水準として残ります。通常の調整では、まず2024年高値の1600円台を保てるかが先です。970円を基準に押し目買いを待つだけでは、現在の利益回復を無視してしまいます。

営業利益2600億円の達成とOLV立て直しが次の値動きを分ける

営業利益2600億円の達成とOLV立て直しが次の値動きを分ける

基本的には、二輪車販売が伸び、円相場が会社想定から大きく円高へ動かなければ、2026年の業績回復は続くと見ています。ただし、株価は上方修正を先に織り込み、好決算だけでは買いが続きにくい価格まで上昇しました。

次の上昇には、通期予想の達成に加え、OLV赤字の縮小か追加還元が必要です。反対に、円高と販売減が重なり、利益率が下がれば急騰分を戻す可能性があります。高値更新には、次の決算でも利益予想を上回る勢いが求められます。

通期計画の達成には下期約1015億円の営業利益が必要

通期営業利益2600億円に対し、上期実績は1585億円でした。差し引きで下期に必要な営業利益は約1015億円です。上期より約36%少ないため、数字だけを見れば達成の余裕はあります。

ただし、下期にはOLVの構造改革費用が入り、通期予想は1ドル159円、1ユーロ182円を想定しています。四半期ごとの二輪車販売と営業利益率が会社計画を上回るかが、追加の上方修正を占う数字になります。上期実績だけなら達成可能性は高めです。

OLV事業が2028年の黒字化へ進めるか

会社はOLV事業について、2026年に構造改革を実行し、2028年の黒字化を目指しています。ROVの外部調達や人員調整で固定費は下がりますが、在庫削減と販売回復が遅れれば赤字が長引きます。

2027年にOLVの損失が縮小すれば、二輪車が稼いだ利益を全社へ残しやすくなります。反対に追加費用が生じれば、営業最高益を達成しても評価は上がりにくくなります。損失額の四半期推移を追えば、改革の効果を早く確認できます。

年間50円配当の維持と機動的な自社株買いに注目

2026年の配当予想50円は、利益回復に対して控えめです。会社は株主還元方針として、安定配当に加え、業績や財務を見ながら機動的な自社株買いを検討すると説明しています。

自社株買いが実施されれば、急騰後の株価を支える需給要因になります。発行済み株式数の減少は1株利益の押し上げにもつながります。一方、OLV改革に資金を優先して還元が増えなければ、投資家の期待に届かない可能性もあります。今後の決算では配当方針と取得枠を確認したいところです。

まとめ|業績回復は鮮明だが急騰後は下期の進捗を確認

ヤマハ発動機は、2025年の減益と減配から一転し、2026年上期に過去最高の売上高と営業利益を記録しました。二輪車販売の増加と円安が続く限り、業績回復の流れは崩れにくいと見ています。

ただし、株価は2月安値から大幅に上昇し、5年チャートの上限圏です。予想PERは10倍台でも、営業最高益の達成をかなり織り込んでおり、以前ほど割安ではありません。

今後は下期約1015億円の営業利益を確保できるか、OLVの赤字が2027年から縮小するかが中心になります。円高や米国関税の追加負担も、利益率を押し下げる要因です。

今から買うなら上方修正だけを追わず、次の決算で利益率とOLV損失を確かめてからでも遅くありません。利益予想の再引き上げか自社株買いが示されれば、株価は一段高を試しやすくなります。

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執筆者情報

nari

峯岸 恭一

日本投資機構株式会社 証券アナリスト(CMA) テクニカルアナリスト(CMTA®)

総合鉄鋼メーカーに勤務していた経験を活かした、鉄鋼・自動車市場の分析及び情報収集を得意とし、データの集計・分析に基づいた統計学により銘柄の選定を行う希少なデータアナリスト。AIに関する資格も有しておりデータサイエンティストとしても活躍の場を拡げている。

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