2026年6月30日から7月24日にかけて、水星が逆行しています。SNSや一部の市場関係者のあいだでは、水星が逆行する期間は相場が荒れやすいと以前から語られてきました。
星の動きで株価が決まるはずはない、と感じる方がほとんどだと思います。
実際、水星逆行と株価に科学的な因果関係は確認されていません。ただ、本当に迷信なのか、データには何かが表れているのか。今回は日経平均の56年分のデータで検証してみました。
水星逆行で相場は本当に荒れるのか|56年データで検証

水星逆行とは、水星が実際に逆回転する動きではありません。地球から見たときに、水星が逆向きに進んで見える見かけ上の現象です。
占星術では水星が情報や通信、移動、判断を司るとされ、逆行の期間は連絡ミスや交通の乱れが起きやすいと言われてきました。相場も、情報の流れとお金の流れ、モノの流れで動いています。
だからこそ荒れやすいという言い伝えが投資家のあいだで残ってきたのだと思います。ここでは日経平均の1970年から2026年まで、約1万4千営業日分を使い、逆行中と順行中で値動きにちがいがあるのかを調べました。
水星逆行は地球から見た「見かけ上」の動きです
水星逆行は、天体に異常が起きる現象ではありません。地球から見たときに水星が逆向きに動いて見えるだけで、物理的には何も起きていません。占星術の世界では、水星は情報や通信、移動、判断、調整を司るとされます。
そのため逆行の期間は、連絡ミスや行きちがい、データの消失、交通機関の乱れ、スケジュール変更、デジタル機器の不調が起きやすいと言われてきました。
これを相場に置き換えると、意外と示唆的です。相場は情報の流れ、資金の流れ、モノの流れという3つで動いているからです。どれかが詰まれば値は荒れる、という理屈は成り立たなくもありません。
あくまで理屈の上の話ですが、投資家の警戒心を刺激するには十分だったのだと思います。
56年データでは値動きが約1割大きくなりました
結論から言うと、下がりやすさははっきりせず、荒れやすさははっきり出ました。まずリターンです。順行のときは1日平均でプラス0.04%、逆行のときはマイナス0.01%でした。
勝率も逆行中がわずかに低く、方向は俗説と一致します。ただし、この差が偶然でないと言えるか検定すると、基準にギリギリ届きませんでした。弱く見えても偶然のブレかもしれない、というグレーゾーンです。
一方ではっきり差が出たのが値動きの荒さです。逆行中のボラティリティ(値動きの大きさ)は順行中より約1割大きく、統計的にも有意な差でした。
とはいえ、これまでがそうだったという過去の話にすぎません。理屈のない傾向はなおさらで、必ず当たる法則ではなく、念のため備える材料と見ておくのが正しい向き合い方だと思います。
| 項目 | 順行時 | 逆行時 |
|---|---|---|
| 1日平均リターン | +0.04% | -0.01% |
| 勝率 | やや高い | やや低い |
| ボラティリティ(値動きの荒さ) | 小さめ | 約1割大きい |
| 統計的な有意性 | リターンの差=なし | ボラティリティの差=あり |
株より為替(ドル円)のほうが相性がよいと言われます
荒れやすさが目立つのは、日本株よりも為替、とくにドル円だと言われています。為替市場は株式より規模が大きく、世界中の資金が昼夜を問わず行き交います。情報の乱れが価格に出やすいぶん、水星逆行のアノマリーとの相性がよいと見る向きがあります。
実際、ドル円は相場の天井や底をつける時期が、水星逆行の期間の近くになりやすいと指摘されます。ただし、ぴったり一致するわけではありません。逆行の期間中はジグザグの「いってこい」になり、天底は逆行明けにずれ込む場合も多いです。
株の荒れだけでなく為替の振れにも同時に目を配ると、地合いの変化に早く気づけます。水星逆行も、季節ごとに現れる相場のクセの1つです。
相場が荒れる理由|因果より「みんなの警戒」が効きます

仮に水星逆行が株価へ影響しているなら、その理由づけでよく持ち出されるのが、ヘッジファンドがこのタイミングに合わせて仕掛けているのでは、という説です。話は面白いのですが、明確な証拠はなく、断定して語るのは雑だと思います。
もっと現実的な説明は群集心理です。この時期は荒れやすいという経験則が広まれば、投資家はリスクを落とす方向に動きます。その動き自体が値動きを大きくしている可能性があります。ここでは、なぜ荒れて見えるのかを2つの角度から整理します。
ヘッジファンド説には確たる証拠がありません
水星逆行に合わせて大口が仕掛けている、という説には裏づけがありません。逆行の時期をねらって売買を集中させている証拠は示されておらず、うわさの域を出ないのが実際のところです。逆行の日付は誰でも事前にわかります。
もし本当に有効な仕掛けなら、他の参加者もすぐ気づき、先回りされて効果は消えてしまいます。特定の主体が毎回もうけ続けられる、という説明には無理があります。
仮に大口の動きが値を揺らす場面があっても、それは決算や金利、地政学など別の材料に反応した結果と考えるほうが自然です。水星の日付に合わせて相場が動く、という筋書きは、証拠の面でも仕組みの面でも支えが弱いと私は見ています。
群集心理が「だまし」を増やします
荒れやすさの正体は、参加者の警戒それ自体だと思います。この時期は荒れやすいという話が広まると、投資家はポジションを軽くし、ヘッジを厚くします。売買が偏り、値動きは実際に大きくなります。とくに増えるのがだまし(ウィップソー)です。
上放れに見せかけてすぐ反落する、指標後の初動が全否定される、といった振れが目立ちます。参加者の確信度が下がるため、テクニカル分析のサインもふだんより効きにくくなります。
ブレイク狙いが一番はまりやすい地合いで、レンジ(往来)相場では無駄な損切りがかさみます。背景には、損を確定したくないという投資家心理もあります。だからこそ、因果があるかより、市場がその時期を警戒しているかが効いてきます。
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2026年の逆行スケジュール|残る警戒ゾーンは2回です

2026年の水星逆行は3回あります。2月26日〜3月21日、6月30日〜7月24日、10月24日〜11月14日です。1回目はすでに終わり、いまは2回目の真っ最中です。
注意したいのは、逆行の前後にも影響が出やすいとされる期間がある点です。逆行入り前をプレシャドウ、明け後をポストシャドウと呼び、実務では前後1〜2週間も警戒ゾーンと見ておくと安全です。
7月は薄商いになりやすく、夏枯れ相場が重なると振れ幅が出やすくなります。ここでは3回それぞれの相場を確認し、残る警戒ゾーンをはっきりさせておきます。
| 回 | 逆行期間 | 重なる主な材料 | 状況 |
|---|---|---|---|
| 1回目 | 2月26日〜3月21日 | 中東情勢の緊迫・エネルギー価格急騰 | 終了 |
| 2回目 | 6月30日〜7月24日 | AI・半導体株の利益確定、夏枯れ相場 | 進行中 |
| 3回目 | 10月24日〜11月14日 | 米中間選挙(11月3日) | 最警戒 |
2026年2月〜3月の1回目は中東情勢と重なりました
1回目の逆行では、日経平均が大きく下げました。2026年2月26日の高値5万9,332円から下落し、2026年3月9日には5万1,407円をつける場面もありました。やはり水星逆行だ、と言いたくなる値動きです。ただ、この時期はちょうど中東情勢が一気に緊迫し、エネルギー価格が急騰したタイミングでもありました。
本当の主因は水星ではなく、こちらだと考えるのが自然です。とはいえ、荒れやすいと言われる時期に大きな材料が飛び込み、値動きが増幅された面はあると思います。逆行が下げを生んだのではなく、下げる材料が来たときに揺れ幅が広がりやすい。この1回目は、その典型だったと私は見ています。
2026年6月30日〜7月24日の2回目は現在進行中です
2回目の逆行は、いま私たちが立っている場面です。2026年6月30日に逆行入りし、7月24日まで続きます。7月13日時点までの動きを見ると、逆行入りの直前には7万円で値固めを進めるように見える場面もありました。ところが足元は6万7,000円近辺まで調整しています。
反発する日もありますが、上にも下にも振れやすい地合いが続いています。足元ではAI関連や半導体株に利益確定の売りが出ています。
高PER(利益に対して株価が割高な状態)の銘柄ほど、決算や金利しだいで見直されやすい地合いです。多くの投資家が水星逆行を意識するなか、7月後半にもう一段の振れが来る可能性は十分あります。いまは無理に取りにいくより、守りを固める時期だと私は考えています。
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2026年10月24日〜11月14日は米中間選挙と重なります
3回目の逆行で最も注意したいのが、選挙との重なりです。3回目は2026年10月24日から11月14日まで続き、ここに2026年11月3日の米中間選挙が入ります。偶然ですが、実務では重要です。選挙はそれ自体がボラティリティを高めるイベントだからです。
議会がねじれるかどうか、結果しだいで為替も金利も株も大きく動きます。そこへ、荒れやすいとデータでも裏づけられた逆行の時期が重なります。
実際のイベントリスクと統計的な傾向が同じ時期に来る、というだけで身構える理由には十分です。残る警戒ゾーンは7月24日までと、10月24日から11月14日の2つです。とくに後者はカレンダーに入れておいてください。
水星逆行を投資にどう活かすか|3つの心構え

ここまでを踏まえて、水星逆行をどう使えばよいのかを整理します。占いで売買の理由にするのではなく、警戒の合図に使うのが実践的だと思います。相場を動かす主役は、あくまで企業業績や金利、景気、為替です。
水星はそこへ割り込む立場ではありません。そのうえで、荒れやすい時期をどう乗り切るか。私が個人投資家のみなさんにお伝えしたい心構えは、次の3つです。
- 売買の唯一の理由にしない:リターンには有意な差が出ませんでした。買い売りの判断は業績や金利など主役の材料で決めてください。
- リスク管理の道具に使う:荒れやすい傾向は確認できました。この時期だけ取引量を落とす、損切りルールを厳しめにする、イベント前後は無理をしない、という使い方が理にかなっています。
- 日程を先に押さえる:残る警戒ゾーンは7月24日までと、10月24日から11月14日です。とくに次回は米中間選挙と重なるため、あらかじめ備えておきましょう。
まとめ|「当てる」より「大きく負けない」に活かす

今回は水星逆行と相場の関係を、日経平均の56年分のデータで検証しました。
逆行だから下がるという傾向は断定できませんでしたが、逆行の期間は値動きが荒くなりやすいという傾向は、データの上で確かに見られました。
大切なのは距離感です。迷信と笑い飛ばすのでも、信仰するのでもなく、荒れやすい時期というデータの事実を、リスク管理の合図に淡々と使う。
これが一番実践的だと思います。相場で一番大事なのは、当て続ける力ではなく、大きく負けない姿勢です。この手のカレンダーは当たり外れで見るのではなく、どう守るかで使ってください。

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執筆者情報
金融ライター
2016年大手証券会社に入社、2018年に最大手オンライン証券会社に入社し、機関投資家部門(ホールセール)を立ち上げ、翌年2019年には同社シンガポール拠点設立。2022年より日系証券会社の運用部にてポートフォリオマネジャーの経験を得て以降、一貫して運用業務に従事。

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