ティアフォーの株価は今後どうなる?IPO後の見通しと自動運転事業の将来性を分析

遠藤 悠市

日本投資機構株式会社 アナリスト

ティアフォーの株価は今後どうなる?IPO後の見通しと自動運転事業の将来性を分析

自動運転システムを開発するティアフォー(593A)が、2026年7月22日に東証グロース市場へ上場しました。自動運転専業という希少性に加え、国内外の機関投資家も取得に関心を示しており、テーマ性は十分にあります。

一方、2026年9月期は84.8億円の売上高に対して112.4億円の営業損失を見込むなど、収益化はまだ先です。

本記事では、IPO条件、事業の強み、業績、初値を動かす材料、上場後のリスクや今後の株価見通しを整理します。

目次

ティアフォーが7月22日に上場|公開価格は1,085円

ティアフォーが7月22日に上場|公開価格は1,085円

ティアフォーは2026年7月22日、証券コード593Aとして東証グロース市場に上場しました。公開価格は仮条件1,015~1,085円の上限で決まりました。自動運転という人気テーマを持つ一方、公開株数が多く、IPOとしては規模が大きい点を見落とせません。

初値を見る際は、事業への期待だけでなく、市場に出回る株数と吸収金額も合わせて判断する必要があります。公募参加と上場後の購入では、リスクの性質も異なります。

上場時の時価総額は約689億円

上場時の発行済株式数は6,352万4,090株で、公開価格1,085円を掛けた時価総額は約689億円です。公募は1,744万9,600株、売出しは396万8,400株、オーバーアロットメントによる売出しは最大321万2,700株となります。公開株数に公開価格を掛けた吸収金額は最大約267億円です。

資金流入が限られるグロース市場では、軽いIPOとは呼べない規模です。100株の購入に必要な資金は10万8,500円となります。

機関投資家の関心表明は需要面の支え

りそなアセットマネジメントが運用するファンドは総額15億円相当、ニューバーガー・バーマンが運用するファンドは78万5,000株の取得に関心を表明しました。海外募集も予定されており、個人投資家だけに依存しない需要が期待できます。

ただし、関心表明に法的拘束力はなく、購入や継続保有を約束する契約でもありません。初値を保証する材料として扱うのは早計です。ブックビルディング全体の需要を示す一要素として見るべきです。

初値は1,009円|公開価格を7.0%下回る公募割れ

2026年7月22日の上場初日、ティアフォーは公開価格1,085円を7.0%下回る1,009円で初値を付けました。初値形成時の出来高は328万800株です。自動運転のテーマ性は一定の評価を受けましたが、赤字が続く業績と大型の需給が重荷となり、公開価格を割り込む公募割れスタートとなりました。

初日は始値1,009円を付けたあと、いったん安値896円まで下げ、その後は買い戻しで高値1,081円まで戻す荒い値動きでした。終値は1,015円、出来高は1,955万8,000株、売買代金は約196億円に達しました。時間外のPTS(夜間取引)では1,045円と東証終値を2.96%上回り、初日の下げからの反発を試す動きも出ています。

翌7月23日は公開価格と同じ1,085円で寄り付き、前日終値1,015円から買いが優勢となりました。午前10時22分時点では前日比108円高の1,123円(+10.64%)まで上昇し、一時1,172円の高値を付けています。初値1,009円と公開価格1,085円をいずれも上回る水準まで戻し、公募割れした初日から流れが変わりつつあります。ただし上場直後の値動きは荒く、需給で振れやすい点には引き続き注意が必要です。

2026年7月22日から7月23日午前10時半までの時間足チャート TradingViewより引用

ティアフォーとは|Autowareで自動運転を商用化

ティアフォーとは|Autowareで自動運転を商用化

ティアフォーは2015年に設立され、「自動運転の民主化」を掲げる名古屋大学発のスタートアップです。中核となるAutowareは、誰でも利用・改良できる自動運転向けオープンソースソフトウェアです。

同社はソフトを公開するだけでなく、安全性や品質を商用水準へ引き上げ、車両への搭載から運行後の保守まで提供しています。ここが一般的なソフトウェア会社との違いです。収益源は無償ソフトそのものではなく、商用化に必要な製品と支援です。

Autowareは自動運転の共通基盤

Autowareには、カメラやセンサーによる周辺認識、自車位置の推定、経路の計画、アクセルやハンドルの制御など、自動運転に必要な基本機能が組み込まれています。2026年4月時点で、社外を含むコード開発への貢献者は716人に達しました。

管理団体のThe Autoware Foundationには100を超える組織が参加しています。開発者と企業が増えるほど、技術改良が進みやすい構造です。特定企業だけで開発を抱え込まない点が普及を後押しします。

車両実装から保守まで3サービスで支援

事業はMobility、Development、Solutionの3サービスで構成されます。Mobilityは自治体や交通事業者向けの車両導入・運行支援、Developmentは自動車メーカーの量産開発、Solutionはライセンスや機器、コンサルティングを提供します。

2025年9月期の売上構成は、それぞれ35.4%、20.8%、43.9%でした。現状は実証や開発収入が中心で、量産時のライセンス収入はこれからです。

39都道府県・127地域で実証と実装を経験

2026年3月までに39都道府県、累計127地域で実証実験や社会実装に携わりました。創業から2026年3月までのテスト走行距離は約46万9,000kmで、2026年5月までの公道での人身事故は0件としています。協業するOEM・Tier1などは18社です。

研究室内の技術開発にとどまらず、公道や実際の車両で運用経験を積んでいる点は、同社を評価する土台になります。次の焦点は実証地域数ではなく、商用車の量産台数です。

自動運転市場は拡大へ|レベル4の社会実装が追い風

自動運転市場は拡大へ|レベル4の社会実装が追い風

完全自動運転のレベル5がすぐに全国へ広がるわけではありません。ただし、走行する地域や道路、速度などを限定し、システムが運転を担うレベル4は実用段階へ入りました。駅と病院を結ぶバス、工場内の搬送車、鉱山や港湾の特殊車両など、用途を絞れば導入の難易度を下げられます。

ティアフォーが当面狙うのも、こうした条件を限定した商用車市場です。運転手不足が深刻な地域ほど、導入効果は大きくなります。潜在需要は明確です。

政府は2030年度にサービス車両1万台を目標

2023年4月に改正道路交通法が施行され、許可を受けた特定の地域では、運転者を置かないレベル4の運行が制度上可能になりました。さらに政府は、2026年1月に閣議決定した第3次交通政策基本計画で、2030年度の自動運転サービス車両数を1万台とする目標を設定しています。

対象はバス、タクシー、幹線輸送トラックなどです。自治体案件の拡大はティアフォーに追い風となります。2027年度までには無人移動サービス100カ所以上も目指します。

世界では商用化と安全規制が同時に進む

海外では、中国や米国を中心にロボタクシーの商用展開が拡大しています。中国のPony.aiは2026年に3,000台超へ車両を増やす計画を示しました。一方、百度のロボタクシーが一斉停止した後、中国当局が新規許可を一時停止したとロイターは報じています。

自動運転は成長市場ですが、事故やシステム障害が起きれば、許認可や導入計画が急に止まる業界でもあります。安全対策の費用増加も利益率を圧迫します。この両面を見ます。

ティアフォーの業績|売上84.8億円でも営業赤字は112.4億円

ティアフォーの業績|売上84.8億円でも営業赤字は112.4億円

売上高は伸びていますが、研究開発を優先しているため赤字が続いています。2025年9月期は売上高64.1億円、経常損失55.0億円、最終損失48.0億円でした。2026年9月期は増収を見込む一方、損失はさらに膨らむ予想です。

売上成長率だけを見て高成長企業と判断せず、研究開発費と資金流出を支えられる財務基盤まで確認しなければなりません。赤字の中身と現金残高をセットで見る必要があります。数字は重いです。

2026年9月期は32.4%増収を予想

会社は2026年9月期の売上高を前期比32.4%増の84.8億円と予想しています。上期は43.7億円で前年同期比32.5%増でした。実証実験・実装地域の増加に加え、自動車メーカー向け開発、ソフトウェアライセンス、コンサルティングの積み上げを見込みます。

ただし、営業損失は112.4億円、経常損失は65.9億円、最終損失は67.4億円へ拡大する計画です。売上は官公庁予算の影響で第2・第4四半期に偏りやすい点にも注意が必要です。

研究開発費と営業キャッシュ・フローが焦点

2025年9月期の研究開発費は85.5億円で、売上高64.1億円を上回りました。営業活動によるキャッシュ・フローも72.8億円のマイナスとなり、期末の現金同等物は69.3億円まで減少しています。AIベースの自動運転、大規模データ収集基盤、量産技術への投資は将来の競争力につながります。

ただ、量産収入が遅れれば、追加の資金調達が必要になる可能性があります。IPOで得る資金が成長までの時間をどこまで延ばせるかが焦点です。

IPO資金をAI開発と量産体制へ投入

IPO資金をAI開発と量産体制へ投入

今回のIPOは、既存株主が株式を換金するためだけの上場ではありません。公募で得る資金は、AI技術、自動運転用半導体、量産サプライチェーン、人材採用へ振り向ける計画です。会社は数千台、数万台規模の供給を見据えています。

調達資金が狙いどおり売上成長へ結び付けば企業価値は高まりますが、先行投資期間が長引けば赤字と資金消費が続きます。資金の使用状況は上場後の開示で追う必要があります。資金使途は具体的です。

研究開発87億円・量産体制72億円を計画

目論見書では、2026年9月期から2028年9月期にかけて、研究開発へ87億円、量産・事業拡張へ72億円、組織拡張へ34.0億円を充てる方針です。研究開発はAI技術と自動運転専用半導体が中心となります。量産費用はサプライチェーンの構築、車載ユニットのコスト低減、調達体制の強化に使われます。

技術実証から製造業に近い量産フェーズへ移るための投資です。総額は約193億円に達し、調達資金の大半を成長投資へ回します。

継続収入への転換が利益率を左右する

現在は車両販売、システム構築、受託開発など、一度きりになりやすい収入が多くを占めます。自動車メーカーのプロジェクトが量産へ進めば、ADK販売に加え、ソフトウェアライセンスや車両単位の継続収入が期待できます。開発プロジェクト顧客数は2024年9月期の7社から、2026年3月時点で13社まで増えました。

株価の中期上昇には、顧客数より量産開始の発表が効くと考えられます。継続収入比率の開示が始まれば、収益転換を判断しやすくなります。

株価の推移とバリュエーション|割安か割高かを判定

株価の推移とバリュエーション|割安か割高かを判定

ティアフォーは2026年7月22日に上場したばかりで、株価チャートや上場来高値などの本格的な履歴はこれから積み上がる段階です。赤字のため予想PERは算出できず、配当予想は0円です。そこで評価は、公開価格1,085円と初値1,009円から求めた時価総額を、売上高倍率と合わせて判断します。

結論からいえば、自動運転の成長期待を先に織り込んだ価格であり、足元の業績だけを見れば割安ではありません。初値決定後は同じ基準で倍率を更新できます。比較軸を固定します。

公開価格ベースのPSRは約10.8倍

公開価格ベースの時価総額約689億円を、2025年9月期売上高64.1億円で割ったPSRは約10.8倍です。PSRは時価総額が売上高の何倍まで買われているかを示す指標です。2026年9月期予想売上高84.8億円を使っても約8.1倍となります。初値1,009円ベースでは時価総額が約641億円となり、2025年9月期売上高64.1億円で割ったPSRは約10.0倍へわずかに低下します。

黒字化の時期が示されていない企業としては高い水準で、初値が公開価格を大きく上回れば割高感も強まります。PERが使えないため、PSRだけで割安と断定しない姿勢が必要です。

約267億円の公開規模は初値の上値を抑えやすい

自動運転専業の希少性は買い材料ですが、最大約267億円の吸収金額は需給面で重荷です。公開株数が少ない小型IPOは買い注文が集中すると初値が跳ねやすい一方、ティアフォーは売買可能な株数が多くなります。

キオクシアの株価上昇も、上場直後ではなく、メモリー市況や業績改善を市場が評価した結果でした。ティアフォーにも量産化や赤字縮小という次の材料が必要です。テーマ性だけで両社を同列には扱えません。条件が違います。

ティアフォーの将来性は?今後の株価シナリオ

今後の株価シナリオ|強気・中立・弱気で見通す

上場後の株価は、自動運転というテーマだけでなく、量産契約、継続収入、赤字の縮小速度で分かれます。初値が高騰しても、業績が追いつかなければ調整は避けにくくなります。反対に、初値が伸びなくても、大手自動車メーカーとの量産案件が具体化すれば見直し買いが入る余地があります。

ここでは目標株価を断定せず、株価が上向く条件と崩れる条件を3つに分けます。決算ごとに該当シナリオを見直してください。条件で判断します。

強気シナリオ|OEM案件が量産へ移る

強気シナリオは、開発中のOEM案件が量産段階へ進み、ADK販売とソフトウェアライセンスが同時に伸びる展開です。車両1台ごとの継続収入が積み上がれば、売上高だけでなく粗利益率も改善しやすくなります。

政府の1万台目標に沿って自治体導入が加速し、海外展開も進めば、自動運転の中心銘柄として評価される可能性があります。キオクシア型の上昇を狙うなら、この業績変化が必要です。大型の量産契約が強気転換の合図になります。

中立シナリオ|売上は伸びても赤字が続く

中立シナリオは、実証実験や受託開発で30%前後の増収を維持する一方、研究開発費も増え、営業赤字が縮まらない展開です。この場合、ニュースが出た場面では買われても、決算発表後に利益確定売りが出やすくなります。公開価格を基準にしたPSRがすでに高いため、売上成長だけでは評価を切り上げにくいからです。

量産時期と黒字化への道筋が示されるまで、株価は材料に振られやすい展開です。上場後しばらくは、この状態が基本線となります。

弱気シナリオ|量産の遅れと追加調達が重なる

弱気シナリオは、OEM案件の量産が遅れ、営業キャッシュ・フローの大幅なマイナスが続く展開です。公募資金を使っても収益化が進まなければ、増資や新株予約権など追加調達への警戒が高まります。事故やシステム障害による規制強化、海外企業との競争激化も下押し要因です。

上場から180日後に主要株主のロックアップが終了するため、業績不安と売却需給が重なる局面にも注意が必要です。現金残高の急減は弱気転換の早期サインです。

ティアフォーへ投資する際の注意点

ティアフォーへ投資する際の注意点

最大の注意点は、優れた技術や社会的な必要性が、そのまま利益になるとは限らない点です。政府支援が市場を立ち上げる一方、官公庁の予算や補助制度へ依存すれば、案件の時期と売上計上が不安定になります。2025年9月期にはNEDO向け売上が11.4億円、経済産業省向けが8億円に達しました。

投資家は実証地域数だけでなく、民間の量産収入へ移れているかを見る必要があります。売上先の分散も確認したい項目です。依存度が焦点です。

上場後は3つの数字を確認する

上場後の決算では、開発プロジェクト顧客数、車両運用台数、営業キャッシュ・フローを確認します。顧客数が増えても試作段階にとどまれば、継続収入は伸びません。車両台数の増加とライセンス収入が連動しているかがポイントです。

さらに営業赤字と資金流出が縮小していれば、量産効果が表れ始めたと判断できます。実証件数だけ増え、現金が減り続ける状態は評価できません。3指標を四半期ごとに並べると変化をつかみやすくなります。

技術競争・規制・株式需給も無視できない

競合は国内の自動車メーカーだけではありません。Waymo、Baidu、Pony.ai、Wayveなど海外勢に加え、NVIDIAのような半導体・AI企業も自動運転基盤を広げています。オープンソースは仲間を増やせる半面、無償の基盤だけでは利益を確保できません。

また主要株主には原則180日間のロックアップがありますが、主幹事会社の判断で解除できる条項もあります。解除時期の売却動向は確認が必要です。競争力と株式需給を別々に追う必要があります。

まとめ|ティアフォーは量産化が株価上昇の分岐点

まとめ|ティアフォーは量産化が株価上昇の分岐点

ティアフォーは、Autowareを軸に自動運転の開発、車両実装、運行支援まで手掛ける希少な上場企業です。39都道府県・127地域での実績や、OEM・Tier1との協業は、単なる研究開発企業ではない強みを示しています。

一方、公開価格ベースのPSRは約10.8倍です。2026年9月期は84.8億円の売上高に対し、112.4億円の営業損失を見込みます。初値が公開価格を大きく上回るほど、期待先行による反動も大きくなりやすいでしょう。

短期では自動運転のテーマ性と機関投資家需要、中期ではOEM案件の量産化、ライセンス収入、営業キャッシュ・フローの改善が焦点です。キオクシアのように相場をけん引するには、話題性だけでなく、量産と収益化を決算数字で示す必要があります。

投資を検討する際は、初値の勢いだけで飛び乗らず、公開価格からの上昇率とPSRを確認してください。上場後の最初の決算から、量産化に向けた進捗を追う姿勢が欠かせません。

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執筆者情報

nari

遠藤 悠市

日本投資機構株式会社 アナリスト

大学時代に投資家である祖母の影響で日本株のトレーディングを始める。大学時代、アベノミクスの恩恵も受けて資金を増やすことに成功する。卒業後、証券会社、投資顧問会社を経て2019年2月より日本投資機構株式会社の分析者に就任。モメンタム分析を最も得意としており、IPO(新規上場株)やセクター分析にも長けたアナリスト。

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