原油高のメリット・デメリットとは?株価への影響と投資先の見極め方を徹底解説

「原油価格」の上昇は、私たちの日常生活や経済全体に広く、そして深く影響を及ぼす重要な経済指標のひとつです。

原油高になると、ガソリン代や電気・ガス料金の上昇に加え、食料品や日用品の値上げなど、生活コストの上昇を実感する場面が増えます。では原油高は株式市場や個別銘柄にどのような影響をもたらすのでしょうか?

本記事では、原油高のメリット・デメリットを整理しながら、株価への影響と投資先を見極めるポイントをわかりやすく解説していきます。

目次

原油高と日本経済の関係

日本はエネルギー資源の多くを海外に依存しており、原油価格の変動は経済全体や国民生活に大きな影響を及ぼします。
ガソリン代や電気料金、輸送コストの上昇は物価にも波及し、インフレを加速させる要因となります。
一方、円安が進行すれば輸出企業にとっては追い風となる場合もあり、原油高の影響がすべての企業にとってマイナスとは限りません。

原油価格の上昇で、株は上がる?下がる?

まず原油価格の上昇が、株式市場全体にとって買い材料となるか、売り材料となるかを考えてみましょう。
原油価格の上昇が続けば、以下の2つのシナリオのどちらかに帰結するとみられます。

シナリオ①:消費が落ち込み、いずれ株安局面に

まず1つめは、消費が落ち込み、景気が悪化することで、最終的には原油価格が調整するシナリオです。

原油価格の上昇は、ガソリン価格や電気代の上昇につながります。
生活する上で必ず出ていくお金が増えてしまいますから、消費者は、その分他の物を買い控えるようになると考えられます。

すると、物が売れなくなり、徐々に景気悪化の兆候が広がることで、原油価格は調整局面を迎えることとなりそうです。
この景気悪化の程度が深刻であれば、原油価格とともに、株式市場も大きく調整しやすいです。

シナリオ②:消費が底堅さを保ち、高インフレが定着

2つめは、消費がさほど落ち込まず、やや高い水準の物価上昇率が定着するシナリオです。

ガソリン価格や電気代が上昇しても、そのペースが急すぎず、賃金上昇が追い付いていくのであれば、消費の落ち込みは限定されると考えられます。

こうした状況下では景気が底堅さを保つ一方で、インフレ率は高止まりすると考えられます。
その際に金利をインフレ率以下の水準に設定してしまうと、景気が加熱してしまいますので、ある程度高い水準に金利を据え置く必要が出てきます。

このシナリオが実現した場合、物価上昇の恩恵を受ける銘柄が強く推移しやすい一方、借入が多い企業などは業績面への懸念から厳しい値動きになりやすいと考えられます。

原油高で上がる銘柄、下がる銘柄を紹介!

原油価格の上昇は、すべての企業に同じ影響を与えるわけではありません。
ここからは、原油高局面で株価が上がりやすい銘柄・下がりやすい銘柄の特徴をそれぞれ紹介します。

原油高メリット銘柄群①:エネルギーの開発や販売を手掛ける企業

国内・海外で原油や天然ガスの探査・開発・生産・販売を手掛ける企業は、価格高騰時に利益拡大の恩恵を受けやすい傾向にあります。
投資初心者が「原油高=味方になる銘柄」を探す際は、まずこのタイプを着目対象にすると良いでしょう。

INPEX(1605)

INPEXは原油・天然ガスの探査から開発、採掘、販売までを一貫して手掛ける国内最大級の企業です。
国内外に多数の油田・ガス田を保有しており、原油高局面では販売価格の上昇や採算改善による利益拡大が期待できます。
さらに、探査・開発プロジェクトの進行や新規契約の増加も、中長期的な収益力の向上につながります。

原油高メリット銘柄群②:エネルギー関連の生産設備を手掛ける企業

エネルギー関連の生産設備を手がける企業は、原油・天然ガスの開発が活発になると受注が増え、業績拡大の恩恵を受けやすくなります。
原油価格が上昇すると、油田やガス田の掘削、プラント建設・拡張、関連設備のメンテナンス需要などが高まります。
こうした設備投資の増加は、企業の収益改善につながりやすく、株価にもプラスの影響が及ぶ傾向があります。

三菱商事(8058)

三菱商事は総合商社として、資源・エネルギー事業に幅広く関与しています。
原油や天然ガス(LNG)の取引に加え、関連設備の建設・保守、資源開発プロジェクトへの参画なども収益源です。
原油価格が上昇すると、資源取引での収益改善や設備関連事業の受注増が見込まれ、原油高局面では恩恵を受けやすい企業です。

原油高デメリット銘柄群①:原油価格の上昇がコスト高に直結する企業

原油・燃料・物流費・電力料などの上昇が直接コスト増につながりやすく、価格転嫁が難しい業種では原油高が利益圧迫の要因となります。こうした業種は株価にマイナスの影響が出やすいため、原油高局面では注意が必要です。

ANAホールディングス(9202)

ANAホールディングスは航空業界を代表する企業です。原油価格が上昇すると運航コストや整備費用の増加により、利益率が圧迫されます。
また航空運賃の値上げには限界があるため、コスト増をそのまま価格に転嫁するのは難しいのが現状。原油高局面では逆風となりやすく、投資判断では経営戦略や燃料費ヘッジの状況が重要なポイントとなります。

原油高デメリット銘柄群②:「値上げ」できる強みを持たない企業

小売・外食・アパレルなど、商品やサービスの価格にコスト増を転嫁しづらい業種では、原油高による物流費や材料費、燃料費の上昇が直接利益を圧迫します。
株価下落のリスクが高まるため、原油高局面では慎重に見極める必要があります。

セリア(2782)

セリアは100円ショップを展開する小売企業です。
原油高により物流費や原材料費が増加しても、低価格商品の提供を維持するため価格に転嫁することが難しく、利益が圧迫されやすいビジネスモデルです。
原油高局面ではコスト増が企業収益に直結するため、慎重な投資判断が求められる銘柄です。

原油高局面における銘柄の見極め方と戦略

企業の収益構造を確認する

原油高で恩恵を受けるかどうかは、企業の収益構造によって大きく異なります。
資源開発やエネルギー関連企業は原油価格の上昇が直接利益につながる一方、燃料費や原材料費が多い企業はコスト上昇が収益を圧迫される傾向にあります。

投資を検討する際は企業がどのように原油を利用しているのか、コスト負担を販売価格に転嫁できるかを見極めることが大切です。

財務健全性と借入状況をチェックする

一般的に原油高はインフレ懸念を強めるため、金利も上昇しやすくなります。
その結果、借入の多い企業では利払い負担や原油価格の変動リスクの影響を受けやすくなります。

投資判断の際は自己資本比率や有利子負債比率、キャッシュフローの推移などを確認し、景気変動に耐えられる財務基盤を持っているかをチェックすることが重要です。

海外売上や輸入コストの影響を確認する

原油高局面では為替の動きも企業の収益に大きな影響を与えます。
海外売上が多い企業では、円安は追い風となり利益を増やす要因となる一方、原材料を海外から輸入する企業は、円安と原油高が重なるとコストが増え、採算が悪化するリスクがあります。

投資する際は、企業の海外売上比率や仕入れの構造を確認し、原油価格や為替変動の影響をどの程度受けるかを把握することが重要です。

分散投資と中長期保有を意識する

原油高局面では分散投資と中長期保有を意識した投資戦略が有効です。原油価格の変動は短期的に大きく、特定の業種や銘柄への集中投資は大きなリスクを伴うことも。

資源開発企業や設備関連企業、エネルギー商社など、恩恵を受けやすい複数分野に分散して投資することで、急な価格変動による損失を抑えられます。 

また、原油関連銘柄は景気や国際情勢に左右されやすいものの、長期的にはエネルギー需要の拡大や安定配当が株価を下支えします。
短期の値動きに反応して売買を繰り返すより、成長性と安定性を兼ね備えた企業を選び、腰を据えて保有することが成功への近道です。

原油高投資の注意点

原油価格の変動リスクに備える

原油価格は、中東情勢や石油の生産調整、世界経済の動きなど複数の要因で大きく変わります。
原油高で利益が伸びやすい企業であっても、価格が急落すれば株価が連動して下がるリスクがあるため注意が必要。
短期的な上昇局面だけを狙った投資では、反転時の損失を被る恐れがあるため、一定の変動を許容したうえで投資する姿勢が大切です。
ニュースや石油の需給動向を定期的にチェックして、価格の急変に備えながら投資することが大切です。

価格転嫁力の弱い企業に注意する

原油高はコスト増を引き起こすため、販売価格にコストを転嫁できるかどうかが業績を左右します。
価格転嫁力が弱い業種では、原材料費や光熱費の上昇を吸収できず、利益が圧迫されやすいです。
投資を検討する際は企業がどれだけ価格改定を実施できているか。また顧客離れを起こさずに値上げできるブランド力を持っているかを確認しましょう。

原油ETFの長期保有は避ける

原油価格に連動するETF(上場投資信託)は短期的な値動きで利益を狙うには便利ですが、長期保有には注意が必要です。
原油価格に連動するETFは、原油先物を使って値動きを追いかける仕組みになっています。
古い先物契約から新しい先物契約に切り替える「ロールオーバー」の際にコストがかかるため、長期で保有すると利益が減ることがあります。

原油ETFは、原油価格の短期変動を利用したトレードやヘッジ目的での活用に留めるのが無難です。

原油高を味方につけた投資をしよう!

原油価格の上昇は日本経済にとってコスト増という重しになる一方、特定の企業にとっては業績拡大のチャンスとなることもあります。
特にエネルギー関連や資源開発に強みを持つ企業、円安メリットを享受できる輸出企業などは、原油高局面でも相対的に強さを見せやすい傾向があります。

これから投資を検討する方は、原油価格の一時的な変動に振り回されるのではなく、「どの企業が環境変化に対応できるか」に注目することが大切。

世界情勢や為替の動きを意識しながら、エネルギーコストの影響を冷静に見極めることで、今後の相場変動にもブレない投資判断ができるはずです。

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執筆者情報

nari

INVEST LEADERSを運営する顧問投資会社「日本投資機構株式会社」の代表取締役を含めたスタッフ及びサポートアナリストの記事を掲載しています。株式投資や金融に纏わる話題は勿論のこと、読者の暮らしや生活を豊かにするトピックスや情報を共有していきます。

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