積水ハウス(1928)が2026年9月10日に発表した27年1月期中間決算は、営業利益が前年同期比16.0%増の最高益となりました。年間配当予想は145円を維持しています。
一方、米国戸建住宅の通期営業損益は赤字へ下方修正されました。株価の見通しには、国内で増えた利益の持続性と、米国の採算回復を分けた分析が必要です。本記事では9月10日終値を基準に、株価指標、配当の余力、次の決算で確かめたい改善条件を解説します。
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積水ハウスの株価見通しは配当維持と米国事業の採算改善がカギ

積水ハウスは国内の注文住宅に加え、賃貸住宅の建築・管理、都市再開発、海外の住宅開発を手がけています。各事業の収益源が異なるため、連結の最高益だけでは米国の不振が解消したとはいえません。
中間最高益を支えた国内利益は翌期も続くか
今回の最高益を押し上げたのは、国内の都市再開発や賃貸管理です。都市再開発では物件売却が寄与し、賃貸管理では家賃収入などが利益を支えました。同じ増益でも、大型物件の売却と毎月の管理収入では、翌期への続き方が違います。
当社は、国内の継続収益に配当を支える力がある一方、米国の販売低迷が株価の評価を抑えやすいと考えます。米国の利益率が改善すれば、国内利益への依存も和らぎます。反対に、国内の売却が一巡して米国の赤字が残れば、今回の高い増益率を維持するのは難しくなります。
配当利回り4.3%と値上がり余地は別々に検討する
9月10日終値3,372円に対し、年間配当予想145円から計算した税引前利回りは4.30%です。100株の購入額は33万7,200円となります。利回りは保有中の収入を比べる指標であり、株価が下がらない保証ではありません。
値上がりを期待するなら、利益予想が増えるか、市場が利益に対して付ける評価が高まる必要があります。米国事業の下方修正が続けば、配当を維持しても株価は下落し得ます。配当目的でも、受取額だけでなく購入額に対する値下がりの影響を含めて検討しましょう。
積水ハウス株は高値から調整|予想PER9.8倍でも割安とは限らない

9月10日の終値は、2026年2月の年初来高値を約12%下回っています。最新の会社計画で計算すると、予想PERは9.8倍、実績PBRは1倍未満です。低い指標の前提には、今後の利益を維持できるかという不確実性があります。
5年の株価推移と、2026年高値3,832円からの調整
株価は2024年9月27日に4,134円を付け、その後は調整が続きました。2026年2月26日の高値3,832円から、6月2日には3,181円まで下落しています。9月10日終値は2024年の高値を約18%下回り、長期の上昇が再開した形にはなっていません。


PER・PBRが低くても、利益予想が下がれば割安感は変わる
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 株価 | 3,372円 |
| 時価総額 | 約2兆1,971億円 |
| 予想PER | 9.76倍 |
| 実績PBR | 0.97倍 |
| 予想EPS(27年1月期) | 345.55円 |
| 実績BPS(2026年7月末) | 3,469.27円 |
| 予想年間配当利回り | 4.30% |
PERは株価を1株利益、PBRは1株純資産で割った値です。利益予想が下がれば、株価が横ばいでもPERは上がります。PBR1倍未満も底値を意味せず、海外在庫の評価損などで純資産が減るリスクを併せて考える必要があります。
中間最高益は国内がけん引|都市再開発の増益額が全体の増益額の約9割

27年1月期中間は減収でも営業増益となりました。都市再開発の増益額は、連結全体の増益額の約9割に相当します。ただし、売却だけでなく賃貸管理なども伸びています。利益を生んだ事業と収入の性質を分けて捉えます。
減収でも営業利益16%増、都市再開発が増益に寄与
| 中間実績 | 金額 | 前年同期比 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1兆9,656億円 | 2.5%減 |
| 営業利益 | 1,803.7億円 | 16.0%増 |
| 純利益 | 1,250.5億円 | 23.1%増 |
都市再開発の営業利益は273.5億円となり、前年同期から222.7億円増えました。全体の増益額は249.0億円です。物件売却は通常の営業活動であり、特別利益ではありません。ただし、引渡しの時期や案件規模で利益が振れるため、今期の伸び率を翌期へ延長するのは適切ではありません。

賃貸管理・リフォームの利益は合計13.3%増
賃貸住宅管理の営業利益は417.5億円で前年同期比12.7%増、リフォームは150.4億円で14.8%増となりました。端数処理前の数値で合計すると567.8億円、増加率は13.3%です。既存の建物から収入を得る事業の拡大が、開発利益の変動を補っています。
管理事業は保有・管理する物件の家賃や稼働状況、リフォームは工事の受注と採算が収益を左右します。大規模な不動産売却より収入を積み上げやすい反面、空室や修繕費の増加には影響されます。継続収益も必ず増えるわけではなく、管理収入の伸びと利益率を一緒に追う必要があります。
営業利益計画は据え置き、純利益の上方修正には株式売却益も寄与
通期の営業利益予想は3,500億円で据え置きです。経常利益は3,140億円から3,160億円、純利益は2,180億円から2,240億円へ引き上げました。政策保有株式の売却益なども寄与するため、純利益の上方修正を本業全体の上振れと同じ意味には扱えません。
新しい純利益予想でも、前期の2,320.9億円に対して3.5%の減益です。中間実績を通期営業利益予想から引くと、下期に必要な利益は1,696.3億円となります。前年下期比では約8.8%少なく、会社計画は中間の16%増益がそのまま続く前提ではありません。
米国戸建住宅は通期152億円の営業赤字予想|引渡し計画も下方修正

米国戸建住宅は、売上を増やす以前に在庫販売と利益率の回復が課題です。通期の営業損益予想は25億円の黒字から152億円の赤字へ変わりました。この数字は米国戸建のもので、海外事業全体の損益とは区別します。
引渡し計画は9,500戸へ減額、完成在庫の販売が採算を圧迫
米国戸建の中間引渡し戸数は4,572戸で、前年同期の6,064戸を下回りました。通期計画も11,500戸から9,500戸へ減額されています。完成在庫を販売するための値引きや販売促進策は、現金回収を進める一方で利益率を下げます。
外部環境も厳しく、フレディマックの2026年9月10日公表値では、米30年固定住宅ローン金利は6.76%です。前年同週の6.35%より高く、買い手の返済負担を重くしています。高い金利が続く間は、売れ残りを減らそうとする販売促進策が必要になりやすく、採算の回復にも時間がかかります。
買収会計の影響を除いても利益が減少|受注と採算の回復が必要
MDC買収の会計処理(PPA)に伴うのれん償却などを除いても、米国戸建の中間営業利益は前年同期の191億円から38億円へ減少しました。利益率も3.8%から0.9%に低下しています。赤字の原因を買収会計だけで説明するのは不十分です。
同じ調整後ベースの通期利益予想は333億円から173億円へ下方修正されました。受注してから建てるBTOの比率引き上げや費用削減は改善策ですが、実際の引渡し利益へ反映されるまで時間差があります。出所は同社「27年1月期第2四半期経営計画」2026年9月10日、21〜24ページです。

年間配当145円予想は維持|下限方針を支える継続利益と資金回収が必要

会社は中期経営計画で配当の下限を設け、安定した還元を目指しています。最新予想の配当性向は42.0%です。配当を継続する余力は、会計上の利益だけでなく、在庫に使った資金を回収できるかにも左右されます。
145円を下限とする配当方針と、今から購入する場合の受取額
会社は2026〜2028年度の中計期間中、1株配当145円を下限とする方針です。27年1月期は中間72円を決定し、期末73円を予想しています。9月に新規購入しても、7月31日を基準日とする中間配当72円の権利は取得できません。
期末配当の基準日は2027年1月31日です。所定の権利付最終日までに購入・保有した場合、今回の予想に対応する受取額は100株で7,300円となります。税引前の金額で、予想は変更され得ます。年間利回り4.30%を、今から今期末までに受け取れる利回りと取り違えないようにしてください。

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営業CFは黒字化、海外在庫と約1.9兆円の有利子負債には注意
中間の営業キャッシュフローは889.7億円の黒字へ転じ、前年同期の129.6億円の赤字から改善しました。営業・投資キャッシュフローの合計も566.3億円のプラスです。利益を現金へ変える動きは改善していますが、借入負担は残っています。
中間末の有利子負債は約1兆9,156億円で、前期末の約1兆8,817億円から増加しました。海外在庫は約2兆4,504億円です。在庫残高には為替換算の影響も含むため、増加額をそのまま現金支出とは扱いません。今後は販売代金の回収と、借入金が減るかが配当の余力に関わります。出所は同社9月10日公表の中間短信・Fact Bookです。
次の株価上昇を支える条件は米国利益率の回復と国内計画の達成

今後の見通しを更新する際は、受注件数の増減だけでは足りません。米国の販売が利益を伴って戻り、国内で予定した利益を確保できれば、成長期待を持ち直す根拠になります。次の決算では以下の3点を照合します。
米国の受注・引渡しと買収会計の影響を除いた利益率が同時に改善するか
中間の米国戸建受注は5,509戸で、前年同期の6,631戸から減少しました。次の開示で受注が持ち直しても、値引きで戸数を積み上げたのか、採算のよい契約が増えたのかで評価は変わります。受注、引渡し、調整後利益率の3つが改善するなら、回復の確度は高まります。
一方、米国の賃貸開発では物件売却を進める計画があり、戸建以外の利益も海外全体の数字に含まれます。国際事業の利益が増えただけで、戸建が回復したとは判定できません。戸建の実績を切り出し、販売戸数と利益率がどちらも改善しているかを確かめます。

賃貸管理の増益と予定物件の売却が営業利益3,500億円を支えるか
国内では、賃貸管理・リフォームの利益成長と、マンション・都市再開発の引渡し進捗を追います。開発物件の売却が予定通りなら、米国の不振が続いても通期計画を支えられます。ただし、予定案件の翌期へのずれは当期の売上・利益を減らします。
翌期も保有する前提なら、今期の達成率だけでなく、売却した物件を補う開発案件や管理物件の積み上がりが大切です。売却額が大きい年ほど、次の年度に同じ利益を確保する難しさがあります。管理・リフォームの増益が開発利益の減少をどの程度補えるかまで比較すると、利益の持続性を判断しやすくなります。
利回り上昇の理由が株価調整か業績悪化かを区別する
年間145円の配当を仮定すると、株価3,200円の利回りは約4.53%、3,600円では約4.03%です。これは比較のための試算で、目標株価ではありません。配当予想が同じなら安く買うほど利回りは上がりますが、減配を織り込んだ下落なら前提が変わります。
配当目的の購入では、下落後も会社の還元方針と利益計画が保たれているかを確認します。米国の下方修正や資金回収の遅れが重なっている場合、高くなった表示利回りだけでは購入理由になりません。株価上昇を狙う人は、利回りの高さよりも、業績予想の下振れが止まる根拠を優先してください。
まとめ|配当方針を評価しつつ、米国戸建の下方修正を織り込む

積水ハウスの中間最高益は、国内の物件売却と賃貸管理などの成長に支えられました。利益の総額に加え、翌期へ続く収益を見分ける必要があります。
年間配当145円の方針は保有を検討する根拠ですが、米国戸建は通期赤字予想です。配当維持と株価回復の条件は一致しません。
今後は米国の受注・利益率、国内の売却進捗、資金回収を照合しましょう。分析は2026年9月11日時点、株価は9月10日終値を基準としています。
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執筆者情報
日本投資機構株式会社 アナリスト
準大手の証券会社にて資産運用のアドバイザーを務めた後、日本株主力の投資顧問会社の支店長となる。現在は日本投資機構株式会社の筆頭アナリストとして多くのお客様に株式投資の助言を行いつつ、YouTubeチャンネルにも積極的に出演しており、資産運用の重要さを発信している。

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