「まだ市場にないものを作ろうとすると、とても難しくて、様々な課題が出てきます。
そうすると、逆に面白くなってしまうんですよね」
そう話すのは、犬猫生活株式会社(556A)の佐藤淳代表取締役社長です。
2018年の創業当初、ペットフードの製造委託先を探して佐藤社長は20社近くの工場に声をかけました。
しかし、取り合ってくれる工場はなかなか見つからなかったといいます。
あれから約8年。
国産・無添加のペットフードを自社ECを通じて販売する企業として創業した同社は、2026年4月に東証グロース市場への上場を果たしました。
26年4月期には売上高44億9,480万円(前期比54.9%増)を計上しています。
そして、経常利益の20%を動物福祉活動に寄付しています。
多くの課題を乗り越えて、上場を果たした今、佐藤社長は何を見据えているのでしょうか。
動物病院のM&Aをはじめとする成長戦略について、投資インフルエンサー兼愛犬家のきこさんがうかがいました。
「すべての動物とその家族の幸せな生活のために」との理念を掲げる同社が目指す世界に迫ります。
一頭の野良猫から始まった|犬猫生活社の原点

犬猫生活社の歩みは、佐藤社長が近所にいた弱った野良猫を放っておけずに保護したことから始まりました。
自宅へ連れ帰った猫は妊娠しており、数日後に4頭の子猫が誕生します。
「ペットフード後進国」の日本を変えたい
佐藤氏「保護した猫ちゃんたちのご飯を考えたときに、当時、海外産は品質にこだわっていましたが、鮮度面で不安があり、国産は価格重視の商品が多かったため、安心してあげられるフードがなかなか見つかりませんでした。」
実際に猫たちと暮らすなかで、日本が「ペットフード後進国」と言われていると知った佐藤社長は、日本の食技術を活かしたペットフードの開発・販売に挑む決断を下します。
佐藤社長がこだわったのは、「自分の子に安心して食べさせられるごはん」。
厳選した食材を使い、穀物を使わず(グレインフリー)、国内製造で、無添加(保存料、香料、着色料不使用)の商品を開発し始めました。
佐藤氏「ペットフードの製造を請け負うOEMの会社さんは増えてきているので、既存のフードのレシピに『少しだけこれを入れてください』といった程度なら、すぐに作れはするんです。
でも自分がやろうとしたのは、ゼロからレシピを作るようなものでしたから、簡単ではありませんでした」
創業当初には、製造委託先を探して20社近くに声をかけたものの、どことも話が進まず、開発に着手するだけでも苦労したといいます。
それでも続けられたのは、佐藤社長に「わんちゃん、猫ちゃんのために良いフードをつくりたいという思いに加えて、売れる確信があったからです。
佐藤社長は、2009年の大学卒業後にECコンサルティング会社を立ち上げています。
さらに、2013年にはオイシックス株式会社へ入社し、EC事業本部の販売推進室責任者としてLTV(顧客生涯価値)を高める施策全般を統括してきました。
そうした経験から、まだ市場にないような良いフードを作れば売れるとの確信があったのです。
犬猫が大好きな仲間の存在が事業を軌道に乗せた

きこ「私の周りにもペットフードで起業される方はいらっしゃるんですけど、途中で断念してしまう方が多いです。
難しいのでしょうか」
佐藤氏「開発の難易度は、どこまでこだわるかにもよります。
既存のレシピを少し変えるくらいならすぐ作れはしますから、辞めてしまうのは、実際に売るところまで含めると大変な部分もあるからかもしれません」
きこ「創業から事業が軌道に乗るまでには、何が一番大変でしたか?」
佐藤氏「販売を開始したばかりの頃は、あまり売れなかったんですよね。
自宅の一室を倉庫にして、注文が入った分を家で梱包して、運送会社に渡すところまで一人でやっていました。
お客様からの電話も自分で取っていましたね」

佐藤社長note(https://note.com/sato_jun/n/n146b8f9d3a26)より引用
売れる確信があった佐藤社長でも、最初は販売に難航したそうです。
そして、この状況を変えたのは、大学時代の友人だったといいます。
マーケティングを得意とする友人に助けを求めたところ、友人はさらに後輩を連れてきました。
その後輩が、現在犬猫生活社で取締役兼マーケティング部長を務める近藤誠人氏です。
幼い頃から犬と暮らしてきた経験のある近藤氏は、佐藤社長のビジョンや考え方に共感。
犬猫生活社の事業を軌道に乗せる上でのキーパーソンになりました。
佐藤氏「仲間に入ってくれてからは、私が商品側、彼がマーケティング側を担う体制になり、事業が一気に軌道に乗ってきました」
前澤ファンドからの出資決定の鍵は「経常利益20%の寄付」

軌道に乗り始めた犬猫生活社は、2020年にさらなる転機を迎えます。
ZOZO創業者・前澤友作氏が、「前澤ファンド」を設立し、10億円を10人の起業家に出資する企画を発表。
犬猫生活社(当時はオネストフード社)は、応募総数4,331件のなかから見事選ばれ、同ファンドの出資を受けることになりました。
前澤氏が「このままだと爆発力はない」と指摘
きこ「前澤さんからの出資を受ける過程で、印象的なエピソードはありますか?」
佐藤氏「書類審査を通過した後の面談で、前澤氏から『確かに商品が良いのも分かるし、成長もしているけど、このままだと爆発力はない。どこかで頭打ちになってしまうし、成長スピードもそんなに伸びないかもしれない。そこに一軸欲しいよね』と言われました。
かつ、『動物福祉みたいなものをやりたいんだったら、それを一つ軸にしてみるのも面白いかもね』という話があったんです。
これを社内でもんだ末に、今の会社の軸になっている『経常利益の20%を動物福祉のための資金に充てる』方針が生まれたんです。
書類審査の段階で、『ペットフードの収益の一部を寄付して、動物福祉の活動をしていきたい』とは言っていたのですが、前澤氏との話が具体化したきっかけになりましたね」
きこ「その方針が出資の決め手にもなったんですね」
佐藤氏「はい、普通のVCですと、なかなか20%の寄付といった方針は受け入れられないと思いますが、前澤ファンドは逆に面白がってくれました」
同社は、佐藤社長自身が理事長を務める「一般財団法人犬猫生活福祉財団」を2021年9月に設立。
同財団をはじめとする動物福祉活動に、経常利益の20%(※)を寄付しています。
※現金での寄付は上限1億円、1億円を上回る部分はフードの現物寄付などに使用する形で運用(26年4月期時点)。

「経常利益の20%」を寄付すると決めた戦略的な理由

きこ「なぜ、売上ではなく利益、そして20%に決めたのでしょうか」
佐藤氏「これは結構、戦略的に設計しているもので、大きく3つの軸からバランスを取っています。
1つ目はインパクトです。
当時、東洋経済新報社が出していた社会貢献支出比率(経常利益における社会貢献支出費の割合)のランキングを見ると、例年1位になる企業の比率は10%から15%程度でした。
ですから、20%の寄付をしたら、間違いなくこのランキングで毎年1位になると思ったんですよね。
『毎年1位の上場企業』というのは、インパクトを残せるだろうなと思いました。
2つ目は、財団の活動をしっかり行い、実績を残すために、必要な金額です。
これも10%程度ですと少し足りないけれど、20%あれば十分だと考えました。
3つ目の軸は、基準を売上高ではなく経常利益に置いた理由につながります。
売上高比で固定すると、利益が落ち込んだ年や赤字の年にも支出が発生し、企業体力を削ってしまいます。
そこで利益にしたのですが、利益の20%は、売上高に対してもバランスの良い水準なんです。
当社の利益は売上高に対して15%を目標にしていて、そのうち2割となると、売上高に対しては3%になります。
現在は広告費が売上高の30%程度ですから、広告費の10分の1くらいの金額でブランディングとPRができる、バランスの良い投資だと考えています」
利益の20%を寄付に回し、動物福祉活動でも実績を残す方針は、多くの愛犬家・愛猫家を惹きつけています。
上場後の株主からも、ブランディング・PRの費用として理解を得ているといいます。
犬猫生活福祉財団が行う「3つのゼロ」への取り組み

犬猫生活福祉財団の具体的な取り組みも見ておきましょう。
国内では年間およそ6,800頭の犬や猫が殺処分されているといいます。
こうした現状を変えるために、同財団は、収容ゼロ・殺処分ゼロ・不適切飼育環境ゼロという「3つのゼロ」を掲げて活動。
具体的には、保護シェルターの運営、不妊去勢&ケア専用の病院運営、既存の他団体への助成金提供などを行っています。
不妊去勢専門の病院まで構えるのは、多くの子猫が殺処分になっている現状があるからです。
また、佐藤社長自身も、自宅で保護猫を預かっていたといいます。
保護猫は病気をもっている可能性があるため、いきなりシェルターに迎え入れるのではなく、預かりボランティアのもとで2週間ほど様子を見てから合流させる必要があります。
自宅で最大7頭を預かり、自身が暮らす3頭とあわせて10頭が家にいた時期もあったと話していました。
犬猫生活社のビジネスモデルと業績|何が数字を動かすか

ここからは改めて、犬猫生活社のビジネスモデルや業績を見ていきましょう。
同社の主力は、国産・無添加のペットフードを自社ECの定期購入で届けるD2Cモデルです。
26年4月期時点で売上の85.7%を自社EC販売が占め、その注文の約90%が定期購入によるものです。
22年4月期に4億4,096万円だった売上高は、26年4月期に44億9,480万円へと4年で約10倍に拡大しました。
利益面では25年4月期に経常黒字への転換を果たしています。
27年4月期も20%超の増収増益を見込む
27年4月期についても、売上高が前期比26.5%増の56億8,400万円、経常利益が同20.1%増の7億2,000万円と増収増益を見込んでいます。
▼本業は順調ですが、繰越欠損金の消化により税負担が通常水準に戻ったため、最終利益は前期比5.6%減の4億6,800万円となる見通しです。

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この減益見通しもあってか、犬猫生活社の株価は、上場後最初の本決算発表を受けて大きく下落する場面も見られました。
きこ「最終減益の発表が、株価が売られた理由との見方もあるのですが、本業はしっかり伸びていますし、悪い決算ではありませんでしたよね。
この辺りを個人投資家に説明するとしたら、どこを見てほしいとアピールされますか」
佐藤氏「まさしく純利益のところは、今期だけ少し特殊なところがあるので、基本的には営業利益だったり、経常利益のところを見ていただければと思います」
さらに、利益については、寄付を除いた場合の水準も開示しています。
佐藤氏「経常利益の伸びが20.1%と売上高の伸び(26.5%)を下回って見えるのですが、これは寄付が前年度の利益を原資とする仕組みだからです。
前期の利益が急拡大した反動で、当期の寄付額も大きく膨らんでいます。
この寄付額を除くと、利益は30%強伸びていますから、より収益が出やすい構造になっていると思います」
広告クリエイティブが顧客獲得を左右

きこ「定期会員数が一時的に減少していて、それは広告を抑制したからと説明されていました。
足元の回復の手応えと、広告の回し方で気をつけている点を教えてください」
佐藤氏「基本的にはサブスクリプションの中で利益をしっかり取れるようにすることが大事なので、『何カ月で回収できます』というLTV側から上限のCPA(顧客獲得単価)を決めて、その中で運用しています。
無理をして許容CPAを超えるのではなく、決めた上限のなかでコントロールしています」
また、期初から前半6カ月は上限CPAの範囲内で取れるだけ会員を獲得し、後半6カ月は抑制しながら年間の売上・利益を着地させる運用を行っています。
きこ「そう考えると、足元は期初にあたるので、広告をかけて取りにいく時期なんですね」
佐藤氏「そうですね。
それでも取れるときと取れないときとあるので、取れるときは取れるだけ伸ばしていく。
後半6カ月は、少し調整して横に引いていくイメージです」
きこ「会員が獲得できるかどうかを決める要因としては何が考えられますか?」
佐藤氏「オンライン広告は、クリエイティブが当たるか当たらないかも、要素としては大きいです。
面白く、目を引く、興味を持ってもらえるものを作れると、一気に上がりますね」
同社は現在、月次売上高と自社EC定期会員数の前年同月比を開示しています。
そうした開示を見て投資判断をする上では、広告を絞ったのか、クリエイティブが当たらなかったのか、需要そのものが落ちたのかを考え、業績を見極める必要がありそうです。
犬猫生活社の成長戦略|動物病院M&Aと海外展開
収益を大きく伸ばしている犬猫生活社ですが、国内ペットフードの市場規模約4,900億円(※富士経済「2025年 ペット関連市場マーケティング総覧」による)のうち、同社が占めるシェアはわずか0.9%。
▼今後は、店舗卸販売の拡大や、動物病院のM&A推進、新商品開発などを主軸に、シェア拡大・成長を狙います。

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また、急成長するアジアのプレミアムペットフード市場でシェアを獲得するため、台湾への本格展開も推進中。
▼中期経営計画では、29年4月期に売上高90億~110億円、営業利益率15%を掲げています。

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ここに向けて収益を積み上げるための戦略についても詳しくうかがいました。
飼育数は減る、それでも無理には増やさない
犬猫生活社が事業を行う市場全体に目を向けると、国内では、犬の飼育数の減少が続き、増加傾向にある猫を合わせても総数は減っていく見通しです。
きこ「社長が現場で感じておられる業界の課題や、足元で起きている変化をお聞かせいただきたいです」
佐藤氏「ペット業界としては、国内のペット飼育数がだんだん減っていくので、そこが課題と言われることもあります。
ただ、無理やり増やすのが良いわけではないとも思います」
無闇に飼育数を増やせば、不幸な動物を増やしかねません。
そこで、同社が目指すのは、飼いたいのに飼えない人を減らすことです。
佐藤氏「最近は住宅の制限で、迎えたいけど迎えられないケースもあります。
また、ペットと暮らしたいけれど、自分の年齢を考えるとなかなか踏み切れない方もいらっしゃる。
そういった『迎えられない理由』をうまく解消する取り組みを進められれば良いと思っています。
例えば、私たちで、もしくはどこかと組んで、ペット共生住宅を整える取り組みですね。
高齢者の場合には、先に保険をかけておいて、万が一飼い主の方に何かあった時に、わんちゃんや猫ちゃんがしっかりした施設にいけるようにする仕組みを整えれば、安心して一緒に暮らせると思います。
財団も含めて、こうした仕組みを整えていけたらなと思いますね」
きこ「私の周りでも、人気エリアの物件では『小型犬2匹まで』といった条件が多くて、みんな苦労しています。
引っ越しもしづらいですし、この問題は難しいですよね」
佐藤氏「ペット共生住宅にすることで、家賃を上げられたりとか、部屋が埋まったりするのであれば、大家さん側にもメリットがありますし、バランスだと思いますけどね」
いずれも長期の取り組みですが、「すべての動物とその家族の幸せな生活のために」という理念に沿って頭数を追わずに障害を取り除く発想です。
一方で、飼育頭数が減少するなかでも、ペットフードやペット用品の単価は上がっているといいます。
佐藤氏「昔は『ペットは自分の子と同じぐらいかわいい』という感じでしたが、最近は『自分の子よりもわんちゃん、猫ちゃんのほうがかわいい』という方も増えてきました。
自分や子どもに使うお金を削って、わんちゃん猫ちゃんに良いものを買ってあげたいという方が増えてきています」
きこ「私も自分の私服は我慢するのに、わんちゃんのお洋服は買ってしまいます。
出費が全然違いますね」
販売チャネルと商品軸|小さな店舗で売り方を作る

ペットの飼育頭数が減少する一方、ほんとうに健康に良いものにこだわってつくられた同社のペットフードは、引き続き底堅い需要が見込まれます。
そうしたなか同社は、短期的にはサプリメントなどの商品ラインナップを拡充し、中長期ではフードの販売先を増やす戦略を描いています。
佐藤氏「サプリメントは、市場規模は小さいのですが、悩みが深い方が購入されています。
オンラインで悩みに合った商品を探して、ウェブ上で説明をしっかり見て、購入いただく方が多いので、当社のオンライン広告と相性が良いです。
ですから、商品ラインナップの拡充によって短期的に伸びていくだろうと思っています」
犬猫生活社は、2026年8月に株式会社SARABiO温泉微生物研究所とのライセンス契約を締結。
SARABiO社が保有する特許に係る技術に基づいて生成された成分を使用した、わんちゃんや猫ちゃんの健康維持をサポートする新商品を2026年秋頃に発売予定です。
一方、フードについては、段階を踏みながら、着実に展開を進める方針です。
佐藤氏「ペットフードは、やはり買い替えるのに一定のハードルがあります。
ですから、信頼性や認知をちゃんと積み重ねていく必要があると思います」
きこ「店舗などオフラインでの販売も増やしていく方針ですよね」
佐藤氏「はい、今卸しているのは動物病院やペット用品の専門店などが中心ですが、ゆくゆくはホームセンターなどへの展開も考えています。
ホームセンターが一番、ペットフード販売のシェアが大きいんですよね。
ペットショップに関しても、今は1~数店舗でやっている店舗さんが中心で、いわゆるチェーンで何十とか何百みたいな店舗さんはもう少し後にしようとしています。
大きい店舗さんからも興味を持ってはいただいているんですけど、当社の商品は安くはありませんので、いきなり卸しても、そんなにスムーズには売れないと思うんですよね」
オンラインでは商品説明を尽くせる一方、店頭で伝えられる情報量は限られます。
どんなに良い商品であっても、その良さが伝わらなければ購入にはつながりません。
そこで同社はディスプレイや動画を含めた売り方そのものを開発中で、柔軟に対応してくれる小規模店舗で実験を重ね、確立した型を大手へ持ち込む段取りを描いています。
撤退リスクを潰してから展開する、手堅い進め方です。

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きこ「そうやって販売を増やしていく過程では、供給力も合わせて拡充する必要があるかと思いますが、そのあたりも段階を踏みながら同時に進める計画でしょうか」
佐藤氏「そうですね、需要を見込みながら進めていきます。
これは商品によって異なるのですが、ドライフードが一番特殊で、OEMで作っているのですが、当社専用の工場を建ててつくってもらっています。
そこだけキャパが決まっていて、今の2.5倍ぐらいが上限になるので、上限が見えてきた段階で、もう1つ工場を作るなど、次のステップに進めていきたいと思います。
サプリメントは、人向けの工場でつくっているのですが、わんちゃん猫ちゃんの摂取量は人に比べるとさほど多くはありません。
ですから、まだまだ何倍でもつくれますね」
日本製フードを海外へ|アジアは強みを発揮できる市場
犬猫生活社は国内にとどまらず海外への展開も視野に入れています。
▼すでに台湾では冷凍の犬用「手作りごはん」のテスト販売を開始し、順調な滑り出しを見せているとのこと。

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きこ「今は台湾への本格展開を進められていて、将来的には米国などへの展開もお考えかと思います。
海外展開について、足元の手応えはいかがでしょうか」
佐藤氏「過去の資料に米国とは書いてあったのですが、現地の人にも話を聞くなかで、欧米は優先度を下げています。
アメリカとヨーロッパは、現地のメーカーさんが強く、現地の会社を応援したい方も多いです。
そのため、『なぜ、わざわざ日本のフードを』と思われてしまいやすいです。
一方、アジアでは、わんちゃん猫ちゃんと暮らす文化が、欧米ほど根付いていません。
現地の強い会社もないなかで、新しく暮らし始める方が増えていくフェーズにあります。
そうしたなか、日本の食に対してはアジアの方々も良いイメージを持ってくださっているので、とてもチャンスがあると考えています」
きこ「アジアで、わんちゃんや猫ちゃんと暮らす文化は、あまりイメージがありません。
韓国なら、少し流行ってきているイメージがありますが…」
佐藤氏「そうですね。韓国、台湾、中国とだんだん根付いてきています。
でも、東南アジアにも徐々に広まってきています。
アジアが面白いのは、もともとペットと暮らす文化がないので、新しくわんちゃん、猫ちゃんと暮らし始めるのは、一定の収入がある方なんですよね。
ですから、市場は小さくても、プレミアムフードが求められています」
市場規模が小さいため、店頭で大量に売る必要がなく、販売はオンライン中心。
同社が培ってきたオンラインでプレミアムフードを売るビジネスモデルが、そのまま通用しやすい市場です。
サプリメントを中心とした商品ラインナップ拡充、手堅くステップを踏みながらの店舗卸販売の拡大、そしてアジアへの海外展開によって、犬猫生活社は中長期的な収益拡大を狙っています。
動物病院M&A|地方の一次診療を、誰が守るのか
こうした商品販売に加えて、同社が進めているのが動物病院のM&Aです。
▼中長期では全国50病院以上のグループ化を目標とし、動物病院事業を「第2のコア事業」とする方針です。

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動物病院事業は、単に収益の上乗せになるだけではなく、社会課題の解決にもつながると佐藤社長は話します。
佐藤氏「他の会社さんだと、都市部の1.5次診療とか2次診療を中心に展開する場合が多いです。
これに対して、私たちは地方の一次診療を守る方向で事業を進めています。
地方は動物病院がほんとうに少ないんです。
東京には人口7,000~8,000人に対して1病院があるのですが、地方の少ないところでは1.5万~2万人に対して1病院しかないんですよね」
きこ「東京の動物病院は、患者さんを獲得するのに争っていたりしますよね」
佐藤氏「地方はそれどころではなくて、高齢化によって今ある病院がなくなってしまうと、さばききれずに医療崩壊のような状況に陥ってしまいます。
ですが、地方の個人でやっている動物病院が新しい獣医師さんを募集しても、なかなか集まりません。
そこで私たちは、都市部と地方の双方に病院を持つグループをつくって、人材を流通させて、地方の一次診療をしっかり守っていこうとしています」
佐藤社長は、獣医師など働く人の確保もポイントになると話します。
佐藤氏「実は、都市部よりも地方の病院のほうが、全体的に収益性が高い傾向にあるんです。
もちろん東京にも突出して高い収益を上げている病院は見られます。
一方、地方は一部の病院だけが高収益というわけではなく、全体的に安定した収益を上げているのが特徴です。
ところが、求人の年収を見ると、地方よりも都市部の病院のほうが高く設定されているケースが多いんです。
その理由を聞いてみても、『なんとなくそういうものじゃない? 周りに合わせるとそうなってしまう』といった答えしか返ってきません。
でも、それだけの収益を上げているのであれば、『地方の求人は東京の1.5倍くらいの年収に設定してもいいのではないか』と思うんです」
地方の病院が持つ収益力を、獣医師の待遇改善や人材確保につなげる仕組みを整え、地域医療の維持と事業の成長を両立させる考えです。
では、この動物病院M&Aは、中期経営計画のなかでどの程度の成長を担うのでしょうか。
きこ「中期経営計画はレンジで出されていましたが、上限の達成には、M&Aが何件ぐらい必要でしょうか」
佐藤氏「最終の29年4月期のところで出しているのが、90億円から110億円です。
オーガニックの成長で90億円をやりつつ、20億円分をM&Aで伸ばせたら、という感じで置いています」
検討対象とする病院の売上規模は5,000万円から3億円程度に分布し、仮に平均1.5億円とすれば13~14病院で20億円に達します。
事業承継案件は年々増えており、計画に対しては順調に推移しているといいます。
1件あたりの規模は大きくないものの、積み上がれば業績のベースアップとして効いてきます。
上場で広がる信頼|お客様から株主へ、応援の輪を広げる

5年で売上高を25倍に伸ばし、2026年4月に上場を果たした犬猫生活社。
佐藤社長は上場を「できることの幅を広げるために必要な機能の一つ」と位置づけてきました。
では実際に、できることの幅は広がりつつあるのでしょうか。足元の手応えをうかがいました。
佐藤氏「ペットフードって、信頼性がとても大事じゃないですか。
ですので、お客様はもちろん、今M&Aを進めている動物病院さん、一緒に会社で働いてくれるスタッフの方々から一定の信頼をしてもらう手段として、上場を目指してきました」
きこ「実際に上場されてから、変わったと感じることはありますか」
佐藤氏「採用の応募数は上場してから2倍以上に増えました。
また、動物病院のM&Aでも、病院さんの反応が変わってきています。
今までは、ほんとうに運営できるか不安視されることもありました。
しかし、上場を機に『今後が楽しみですね』と言ってもらえるようになりましたね」
上場によって得た信頼が、人材確保や事業拡大を後押しし始めているようです。
投資家との対話を重視、株主優待も検討中

一方で、投資家との対話については、課題も感じるといいます。
佐藤氏「こちらが伝えたと思っているよりも、伝わっていることは少ないな、と感じることはあります。
ですから、より分かりやすく、高頻度で伝えていくという基本をしっかりやっていきたいです。
月次の開示を始めたりですとか、株主総会の後に私も含めて、会社のメンバーと話せる会話タイムを設けたりしてきました。
今後は、個人投資家向け説明会なども行っていきたいです」
さらに、同社は取材後の2026年9月14日に、株主優待の導入を発表しています。
毎年4月末日および10月末を基準日として、100株以上を保有する株主に公式オンラインショップで使える1,500円分の優待券を1枚、300株以上を保有する株主に3,000円分の優待券を2枚贈呈する内容です。
こうした取り組みの背景にあるのは、商品を愛用するお客様に、株主としても会社を応援してほしいという思いです。
佐藤氏「一度アンケートを取ったのですが、当社の株の購入に興味があると答えてくださった方も多かったので、そのきっかけとして、お客様が利用できる株主優待を作って、ご案内していけたら良いなと考えてきました」
きこ「売らずに、ずっと応援したい方も多そうですね」
犬猫生活社の株価推移|PER13倍は割安か
▼株価の推移についても、改めて見ておきましょう。

※TradingViewより引用
犬猫生活社は、2026年4月23日に公開価格2,990円で東証グロース市場に上場しました。
上場当初は、前澤ファンドによる出資企業としても話題を呼び、4月27日に高値5,400円をつける場面も見られました。
しかし、人気化した反動で株価は調整局面を迎え、6月15日の通期決算発表後には急落する場面も。
この下落については、前述の通り、純利益ベースでの最終減益見通しや、利益とともに寄付額も増加したため、経常利益ベースの伸びが物足りなく見えたことが主要因だとみられます。
いずれも一過性の要因ですので、本業の順調さが続く限り、来期以降はこうした影響も剥落するとみられます。
その上で、PER13倍台(2026年9月8日時点)の現在の株価には、割高感はありません。
ペットフード販売や動物病院などを手掛ける他企業と比較して極端に割安とは言えないものの、収益の拡大とともに下値を切り上げていくシナリオは十分に描けます。
また、株主優待の開始や動物病院のM&A進展による再評価の余地もあるでしょう。
今後は、月次売上高や定期会員数の動向に加え、動物病院M&Aの進捗と収益への寄与を確認しながら、成長の持続性を見極めたいところです。
「すべての動物とその家族の幸せ」と事業成長を両立

佐藤社長による一頭の野良猫の保護から始まった犬猫生活社。
以来、動物のために何が必要かを考え、それを持続可能な事業として形にしてきました。
国産ペットフードの開発では、品質へのこだわりを商品力につなげてきました。
動物福祉への寄付は、保護活動を支えるとともに、理念に共感するお客様との関係を深める取り組みです。
さらに、動物病院M&Aでは地方の一次診療を守る体制づくりを進めています。
最後に、佐藤社長が今後10年で実現したいことを尋ねました。
佐藤氏「日本、それから一部展開している国において、『犬猫生活という会社、ブランドがあってほんとうによかったな』と思える人を、とにかく増やせるようにしたいです。
商品自体で貢献していくのもそうですし、『犬猫生活があったから、保護犬猫も含めて、日本のわんちゃん、猫ちゃんの動物福祉環境がよくなったよね』と言われる会社を目指します」
犬猫生活社が目指すのは、事業が成長するほど、動物とその家族のためにできることも増えていく好循環です。
上場で得た信頼を力に、お客様や株主、スタッフとともに、その理念をどこまで実現していけるのか。
上場間もない同社のこれからに期待したいと思います。
執筆者情報
投資インフルエンサー
野村證券株式会社2017年入社。法人営業を経験し、CEO賞を受賞。現在はJUNGLE TOKYO GINZAに在籍をしながら、投資インフルエンサーとして活動。各種メディアにも出演。
執筆者情報
日本投資機構株式会社 証券アナリスト(CMA) テクニカルアナリスト(CMTA®)
国内株式、海外株式、外国為替の領域で経験豊富なアナリスト・ファンドマネージャーのもと、金融市場の基礎・特徴、マクロ経済の捉え方、個別株式の分析、チャート分析、流動性分析などを学びながら、日本投資機構株式会社では唯一の女性アナリストとして登録。自身が専任するLINE公式など各コンテンツに累計7000名以上が参加。Twitterのフォロワー数も3万人を超える人気アナリスト。

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