アンソロピックCEOが語る「AIの指数関数の終わり」AI半導体バブル後の投資戦略

アンソロピックCEOが語る 「AIの指数関数の終わり」 AI半導体バブル後の投資戦略

2026年2月、AI開発企業Anthropic(アンソロピック)のCEOダリオ・アモデイ氏が、テック系ポッドキャスト「Dwarkesh Podcast」で「我々は指数関数の終わりに近づいている」と発言しました。
指数関数的に進化してきたAIの能力が、人間の知能の上限というゴールに近づいているというのです。

「指数関数の終わり」とは何を意味し、投資家にはのような影響があるのか。
本記事では、アモデイ氏のインタビュー内容をもとに、AI関連株への今後の投資戦略を考えます。

目次

「指数関数の終わり」とは何か

アモデイ氏によれば、AIモデルの知的能力は指数関数的に、つまり性能が倍々のペースで進化してきました。
かつては「優秀な高校生」程度だったAIの能力は、「優秀な大学生」「博士課程」「専門家」へと進み、コーディング(プログラミング)の分野ではすでに人間の専門家を超え始めていると明かしています。

この急速な進化のカーブが、いよいよ「終わり」、つまり人間の知能の上限というゴールに近づいている。
これが「指数関数の終わり」の意味です。

アモデイ氏が驚いたと語ったのは、この現実に対する世間の無関心です。
バブルの中にいる人も外にいる人も、同じような使い古された政治的な話ばかりしている。我々は指数関数の終わりに近づいているのに」と述べています。

データセンターの中の天才の国とは

アモデイ氏は、AIの到達点を「データセンターの中の天才の国」と表現しています。
ノーベル賞受賞者レベルの知能を持つAIが何千体もデータセンターの中で同時に働き、コンピュータを操作し、データを分析し、人間と対話しながら高度な知的作業をこなす世界です。

実現時期については「1~3年以内」との直感的な見通しを示し、10年以内に実現する確率は90%以上だとも述べています。
ただし、「天才の国」が実現しても、その恩恵が経済全体にすぐ届くわけではないと強調しました。

今感じる「天井感」とアモデイ氏が語る「収穫逓減」

私はAnthropic社のAI「Claude」を業務に本格導入しています。
これまで10分かかっていた作業をボタン1つで自動化したり、外注していた機械学習の検証を片手間でこなしたり、画像や音声ファイルの処理も難なくこなしたりできるようになりました。

率直に言えば、デスクトップ上でやりたいことは大体できてしまいます。
一般消費者として「これ以上どんな新機能が必要だろう」と感じるほどです。

これはアモデイ氏が語った「収穫逓減」の話とも関係があるかもしれません。
同氏はインタビューの中で、「人間の生物学の問題をすべて解決した後に、さらに難しい数学ができるようになったとして、それがどれほど重要か」と述べています。
AIが賢くなり続けても、その「賢さの上積み」が我々にもたらす価値は、徐々に小さくなっていく可能性があるのです。

もちろん、同氏が見ているAIの未来はデスクトップの作業にとどまりません。
創薬、ロボティクス、科学研究といった、社会を根底から変える領域が待っています。

しかし一般消費者の目から見たときに、AIは「もう十分すごい」と感じる段階にすでに到達しており、これは株式市場にとって重要な意味を持ちます。

技術の完成と経済的な収益化は別問題

アモデイ氏がインタビューで最も繰り返していたのが、この点です。
AIの技術は極めて速く進歩する。しかし、経済への普及は無限に速くはない

技術的にはAIが「天才の国」に到達しても、企業の利益に変わるまでにはタイムラグがあります。
大企業がAIを導入するには法務・セキュリティ・コンプライアンスの承認が必要で、スタートアップより何ヶ月も遅れるのが実態です。

アモデイ氏はこのタイムラグのリスクを具体的に語りました。
データセンターの建設には1~2年かかるため、需要予測を間違えると壊滅的な損失を被ります。
成長率がたった1年ズレたり、年10倍ではなく年5倍だったりしたら、倒産する」と明言しています。

OpenAIの巨大データセンター拡張が頓挫

このリスクはすでに現実化しています。
2026年3月6日、米ブルームバーグの報道によると、OpenAIとオラクルが、テキサス州の巨大AIデータセンター「Stargate」の拡張計画を取りやめました。

もともとは施設の規模を約1.7倍に広げる計画でしたが、資金の条件が折り合わなかったことに加え、OpenAI自身によるAIの需要見通しの度重なる変更が原因だと報じられています。
さらに、データセンターに入れる予定であったAIチップが完成する頃にはもう「型落ち」になってしまうため、新しいチップを別の場所に入れたいとの、OpenAIの考えも背景にあるとされています。

エヌビディアのAIチップは毎年新しいモデルが出るようになった一方で、データセンターの建設には1~2年かかります。
建てている間にチップが古くなるタイミングのズレが現実に起きているのです。

なお、OpenAIとオラクル全体の提携関係は続いており、完全に決裂したわけではありません。
しかし、AIへの巨額投資が「計画通りには進まない」印象を市場に強く与えました。

ガートナーのハイプサイクルが示す現在地

IT調査企業ガートナー社は、イノベーションが市場に登場し、黎明期・「過度な期待」のピーク期・幻滅期・啓発期・生産性の安定期を通じて、社会に浸透するまでの過程を図示した「ハイプサイクル」を発表しています。
それぞれのイノベーションが、今どのフェーズにあるのか、見解を定期的に示しているのです。

この「ハイプサイクル」によれば、日本において生成AI自体はすでに「幻滅期」に差し掛かりつつあり、AIエージェントは「過度な期待のピーク期」に位置付けられています。

ガートナー社はさらに、2027年末までにAIエージェント導入プロジェクトの40%以上が中止になると予測しています。

社会へ浸透するために超えなければならない課題

企業がAIを導入するにあたっては、セキュリティリスク、AIのミス(ハルシネーション)、そしてAIを使いこなせる人材の不足といった課題がつきまといます。

あずさ監査法人の調査では、AI導入に際して「新たな人員が必要」と回答した企業が28%に上り、「人員削減に取り組む」とした17%を上回りました。
AIで仕事が減るどころか、AIを使いこなせる人材が足りないのが現実です。

株式市場に現れた変調

2026年2月、マグニフィセントセブン(Google、Amazon、Meta、Apple、Microsoft、Tesla、NVIDIA)が軒並み高値を取れなくなっていました。

特に象徴的だったのがエヌビディアの動きです。 2月の決算発表では市場予想を上回る業績見通しを示したにもかかわらず、株価は失速しました。
「一部の高い予想には届かなかった」ため、売りに押されたと説明されています。

【NVDA】エヌビディア 日足チャート 2025年10月8日~2026年3月26日
※TradingViewより引用

好業績でも株価が上がらない。
これは一般的には、「期待の買い」が一巡したサインと捉えられます。

グーグルの新技術発表でメモリ半導体株が急落

さらに3月25日には、グーグルがメモリ圧縮技術「TurboQuant」を発表し、AIが動く際に必要なメモリの量を6分の1に減らせるとされたため、メモリ半導体株が急落しました。

冷静に見れば、TurboQuantが節約できるのはAIの「作業用メモリ」の一部に過ぎず、多くのアナリストはこの売りを過剰反応と評価しています。
しかし、市場はこの手のニュースに極端に敏感になっているようです。

それでもAIは成長を続ける

アモデイ氏は、「天才の国」に到達した後もAIはさらに賢くなり続けるとしています。
「基盤技術の指数関数は以前と同じように続く」と語り、計算資源は年3倍のペースで増え続けると予測しました。
2026年に10~15ギガワット、2028年に100ギガワット、2029年には300ギガワット規模です。

AIがもたらす変革について、アモデイ氏が特に言及したのは医療です。
「すべての病気の治療」がAIの射程圏内だとし、ロボティクスについても「天才の国ができたら、その後1~2年で革命化される」と予測しています。

ただし「2030年までにAI産業が数兆ドルの収益を生まないとは考えにくい」とする一方、「即座にすべてが変わるわけではない。極めて速いが、無限に速くはない」とも語りました。

AIの進化は続き、経済的な価値も生まれる。
しかし、そのスピードは多くの人が期待するほど即座ではない。
そこに投資家が向き合うべきリスクと機会がある、というのがアモデイ氏のメッセージです。

投資家としてどうすべきか

AIの進化は続くが、市場は幻滅に傾きつつある。
この状況を踏まえた投資戦略を考え、AIの普及とともに再度大きく評価される余地のある注目セクターをご紹介します。

iPhoneが教えてくれる「幻滅期の後」

幻滅期はテクノロジーそのものが否定されるフェーズではありません。
2007年1月にiPhoneが発表された後、アップルの株価は1年で約2.4倍になりましたが、2009年のリーマンショックでピークから約62%下落しました。
しかしその後、iPhoneの本格普及とともに長期上昇トレンドを形成し、2025年末の高値ではiPhone発表前と比較して約94倍にまで上昇しています。

革新的なテクノロジーでも、期待を先に織り込みすぎれば短期的には大きな調整が入ります。
しかし、技術が本格的に普及すれば、株価は調整を経ても力強く回復するのです。

注目セクター①|AI・半導体

AIの幻滅期が訪れても、関連需要そのものの拡大は続くと見られます。
アモデイ氏が語った「計算資源は年3倍で増加」というデータが、半導体需要の構造的な下支えになるためです。

ただし、アモデイ氏は「AI産業は3~4社の少数プレイヤーによる寡占になる」とも予測しており、どの企業がシェアを獲得するかの見極めが重要になってきます。
OpenAIとアンソロピックの上場が報じられていますので、上場後の株価動向がAI業界の勢力図を映す指標になりそうです。

半導体株については、どのAI企業が勝っても恩恵を受ける銘柄が多い反面、設備投資サイクルによる業績変動が大きいため、買いタイミングの分散やリスク管理が欠かせません。

注目セクター②| AI導入支援企業

アモデイ氏が語った「普及のボトルネック」は、裏を返せば、そのボトルネックを解消できる企業にとっての大きなビジネスチャンスです。

iPhoneの普及で携帯ショップが爆発的に増えたように、AIの普及期には企業へのAI導入をサポートできるSaaS企業やITベンダーが成長する余地があります。

これらの企業の多くは「アンソロピックショック」に巻き込まれて株価が大きく下落していますが、半導体株や市場全体との連動性が薄れているため、ポートフォリオの分散先としても有望です。

注目セクター③|電力・原子力

生成AIの普及に伴い、データセンターの電力消費は急増が見込まれます。
アモデイ氏はインタビューで、業界の計算資源が2029年には300ギガワット規模に達する可能性に言及しており、これはエネルギーインフラへの巨額投資が不可避であることを示しています。

原子力発電や次世代の小型モジュール炉(SMR)に加え、核融合発電関連にも注目が続く展開が想定されます。

注目セクター④|先端ベンチャー(創薬・宇宙・量子)

アモデイ氏はインタビューの中で、AIが大きなインパクトを与える分野として「すべての病気を治す」創薬領域を繰り返し挙げました。

臨床試験のスピードアップや新薬の発見加速が見込まれる中で、先端的な研究開発を行うベンチャー企業は、生成AIの活用によって黒字化時期を早められる可能性があります。

創薬に加えて、宇宙開発や量子コンピューターといった領域も、AIによる研究加速の恩恵を受ける分野です。

注目セクター⑤|フィジカルAI(ロボティクス)

アモデイ氏は「天才の国ができたら、ロボティクスもその後1~2年で革命化されるだろう」と予測しています。

デスクトップ上でのAI活用はすでに大きく進んでいますが、物理的な世界でのAI活用、つまりロボットの設計と制御にはまだ長い発展の道のりが残されています。

フィジカルAI関連銘柄は、実証実験と受注獲得を重ねながら業績を徐々に拡大させ、ある時点で期待が一気に高まるシナリオが想定されます。
日本のものづくり企業がこの分野で世界的なシェアを獲得する可能性にも期待が持てます。

まとめ|AIの進化と不確実性

アモデイ氏が語った「指数関数の終わり」は、AIの進化が止まるという意味ではありません。
AIの性能は人間の知能の上限に追いつきつつあり、到達後もさらに賢くなるとみられます。

しかし、技術の完成と収益化の間には大きなタイムラグがあり、その読み違いは企業にとって致命的になり得ます。

AIの進化は続く。しかし、それが利益に変わるスピードは不確実
この不確実性の中で、AI関連株が大きく調整した場面を長期目線での買い場と捉え、AI導入支援、電力インフラ、フィジカルAIといった「普及のボトルネックを解消する」セクターに注目することが、これからの投資戦略の要になると考えます。

※インタビュー全文はこちらから
AnthropicのCEOダリオ・アモデイによるDwarkeshポッドキャストでのインタビュー(書き起こし)– The Singju Post

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執筆者情報

nari

石塚 由奈

日本投資機構株式会社 証券アナリスト(CMA) テクニカルアナリスト(CMTA®)

国内株式、海外株式、外国為替の領域で経験豊富なアナリスト・ファンドマネージャーのもと、金融市場の基礎・特徴、マクロ経済の捉え方、個別株式の分析、チャート分析、流動性分析などを学びながら、日本投資機構株式会社では唯一の女性アナリストとして登録。自身が専任するLINE公式など各コンテンツに累計7000名以上が参加。Twitterのフォロワー数も3万人を超える人気アナリスト。

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