量子コンピュータ関連銘柄2026年版|米国の支援契約と日本企業の開発段階を解説

江口 裕臣

日本投資機構株式会社 テクニカルアナリスト(CMTA®)

量子コンピュータ関連銘柄2026年版|米国の支援契約と日本企業の開発段階を解説

量子コンピュータ関連の日本株は、計算機や部材を開発する企業、技術を利用して業務を改善する企業で役割が違います。研究への参加、実証の採択、製品・サービスの売上は別の段階です。テーマ名だけで同じ利益成長を期待するのは避けたいところです。

本記事では2026年10月6日までに確認した米国の支援契約と、日本企業の具体的な取り組みを整理します。現在の候補3社は2026年9月までの確定月足で比較し、過去事例のチャートとは区別して紹介します。

目次

「量子コンピュータ」は成長テーマの代表格

将来に期待して投資をするなら「量子コンピュータ」関連銘柄は外せない存在です。今後10年で社会実装が進むと見込まれ、株式市場でも注目が集まっています。

国家戦略と世界の投資加速が追い風

2026年5月21日、米商務省は量子関連9社への総額20.13億ドルの支援に関する意向表明書を公表しました。9月8日にはPsiQuantumへ最大1億ドル、9月16日にはIBM傘下Anderonへ最大10億ドルの最終契約を発表しています。意向表明、最終契約、支払完了は別の段階です。

Anderonへの支援は量子ウエハー製造基盤の研究開発向けで、IBMも10億ドルを投じます。2029年の大型計算機の構築計画と、製造基盤への投資額を混同しないようにしましょう。今回確認した発表には支払済み総額の記載がなく、日本企業の受注を保証する制度でもありません。

量子コンピュータが変える産業構造

量子コンピュータは、創薬や新素材開発、物流・金融の最適化、人工知能(AI)の強化など、複数の産業を同時に変革する可能性を持っています。

特定分野に限らず、幅広い業界に波及効果が及ぶため、「技術テーマ株」ではなく「社会インフラ株」として長期視点で評価されやすいのが特徴です。

こうした全方位的な応用可能性が、政府や大手企業による巨額投資を正当化しています。

量子コンピュータ関連銘柄が注目される理由

量子コンピュータは単なる「次世代コンピュータ」ではなく、国や企業の競争力そのものを左右する基盤技術です。

従来のコンピュータが苦手とする膨大な組み合わせ計算や最適化処理を短時間で解けるため、これまで数年単位かかっていた開発や解析が、わずか数分〜数時間で完了する可能性があります。

応用範囲の広さと「技術的覇権」の争奪戦

量子コンピュータは創薬、材料設計、金融取引最適化、人工知能の強化など、産業横断的な応用が見込まれています。

このため各国政府・大手IT企業が“次の産業覇権”を賭けて投資を加速中。米中欧の競争に日本も参入しつつあり、日本企業の技術蓄積に注目が集まっています。

日本政府の「量子技術イノベーション戦略」支援

日本では内閣府が「量子技術イノベーション戦略」を策定し、2030年までの量子分野の国家プロジェクトを推進中。

NTT、NEC、富士通、日立などが連携する形で、量子通信・量子暗号・量子アニーリングなど多領域にわたり研究が進んでいます。

過去の急騰事例から見える投資パターン

(6501)日立製作所|国家プロジェクトとの接点を確認

日立は2023年6月、シリコン量子コンピュータの大規模化に向けた制御方式を発表しました。分子科学研究所との量子OS共同研究も開始しており、国の研究支援を受ける先端分野との接点があります。光量子計算機とは方式が異なります。

下図は2020年1月〜2025年8月の株価推移です。この長期間の値動きを、量子研究の発表だけに結び付ける根拠は確認できません。デジタル事業や社会インフラなどの材料も含まれるため、研究テーマへの参加と株価上昇の原因を同一視しないようにしましょう。

2020年1月~2025年8月までの月足チャート Tradingviewより引用

(6702)富士通|国家プロジェクトで量子計算機を開発

富士通と理化学研究所は2025年4月、256量子ビットの超伝導量子コンピュータを開発したと発表しました。同年8月には、NEDO事業で2030年度に1万物理量子ビット超の計算機を目指す研究開発も公表しています。

1万超は将来目標で、誤り訂正後に使える論理量子ビット数とは異なります。下図は2020年1月〜2024年7月の株価で、2025年の開発発表後の反応を示す図ではありません。技術の進歩と、全社業績や株価への寄与は分けて比べる必要があります。

2020年1月〜2024年7月の月足チャート TradingViewより引用

量子コンピュータ株はテーマ性だけで飛びつかない

量子コンピュータは未来性が非常に高いテーマですが、全ての「量子コンピュータ関連銘柄」が短期的に成果を出せるわけではありません。

研究段階にある企業や、事業のごく一部しか量子分野に関わっていない企業も多く存在します。テーマの話題性だけで買ってしまうと、材料が一巡したあとに株価が大きく下がるリスクがあるため、冷静な選別が必要です。

テーマ性が先行し、実績が乏しい企業も存在

量子コンピュータ関連とされる企業の中には、まだ売上や利益に直結していないケースが少なくありません。

たとえば「研究開発を開始した」という発表だけで株価が上がることもありますが、実際の収益化までは数年かかる可能性があります。

初心者のうちは、すでに事業化や実証段階に入っている企業かどうかを確認してから投資判断をするのがおすすめです。

「量子関連」とされる領域が広く、取捨選択が重要

量子技術は「量子通信」「量子暗号」「量子センサー」「量子ソフト」など多岐にわたります。同じ「量子関連」といっても、通信インフラや材料開発、ソフトウェアアルゴリズムなど、関わる分野によって収益化のタイミングも違います。

自分が狙いたい分野がどの成長フェーズにあるのかを把握することが、利益を得るための第一歩です。

収益化までの時間軸を理解しておく

量子コンピュータは2030年代以降に本格的な実用化が見込まれており、現時点では多くの企業がまだ研究・実証段階にあります。

「量子関連」と報道されただけで株価が急騰するケースもありますが、実際の収益に結びつくまでには数年から10年以上かかる可能性があります。

短期的な値上がりを期待して飛びつくのではなく、その企業が「研究段階」「実証段階」「商用段階」のどこにいるのかを確認した上で、長期目線で投資判断をすることが重要です。

注目したい量子コンピュータ関連銘柄

量子コンピュータ分野は、まだ成長の初期段階にある一方で、すでに商用化や実証実験が進んでいる企業も存在します。ここでは、日本を代表する大手企業の中から、量子分野で確かな進展を見せている企業を紹介します。

(9432)NTT

NTTは光通信の技術を光量子コンピュータの開発に活用します。2026年8月3日、OptQCとの資本業務提携と共同研究を発表しました。2027年度までに、大規模な光量子計算機に必要なシステム構成と主要技術の設計完了を目指します。

共同研究は実用化に向けた段階で、量子計算機の量産販売や利益の確定を示す発表ではありません。量子分野だけの利益は今回の資料で比較できず、通信・ITサービスなど既存事業の収益も含めて保有を考える候補です。

NTTの月足株価チャート
TradingViewより引用(月足:2022年1月~2026年9月)

(6701)NEC

NECは量子計算の研究と最適化サービスを並行して進めます。Vector Annealingは通常のサーバで動く疑似量子アニーリングで、量子実機ではありません。D-Waveの量子計算クラウド「Leap」の利用支援とは、提供内容が異なります。

2026年10月2日には、大鵬薬品などとの創薬向け共同研究のNEDO採択を発表しました。予定期間は2029年3月までで、研究・実証の成果を探る段階です。提供中のサービスと新規研究を分け、主力IT事業などの利益まで量子の成果とみなさないようにしましょう。

NECの月足株価チャート
TradingViewより引用(月足:2022年1月~2026年9月)

(6503)三菱電機

三菱電機は量子計算機の制御部品と、製造業向け計算手法を開発しています。2026年9月17日、制御用レーザーと極低温の増幅器の開発がNEDO事業に採択されました。計算機を大規模化するための機器・部品を支える取り組みです。

同年8月にはQunaSysと物理シミュレーション向けの量子アルゴリズムを開発しました。いずれも研究成果であり、工場全体の利益改善や量子部品の量産納入を示してはいません。量子以外の空調・FAなども含む全社利益と、新技術の事業化を分けて比べる候補です。

三菱電機の月足株価チャート
TradingViewより引用(月足:2022年1月~2026年9月)

その他の量子コンピュータ関連注目銘柄

開発への参画と、自社工場での利用は区別します。未確認の関係は確定した事業として扱いません。

銘柄名市場確認できた接点・留意点
(6723)ルネサスエレクトロニクス東証プライム量子耐性暗号。量子計算機の開発とは区別
(6963)ローム東証プライム2026年6月、量子技術を工場の前工程へ導入
(3854)アイル東証プライム量子アルゴリズムの大学連携は一次資料未確認
(6857)アドバンテスト東証プライム研究所がNEDOの2024年度採択事業へ参画
(6619)ダブル・スコープ東証プライム量子機器冷却用フィルム事業は一次資料未確認

2030年に向けて量子コンピュータ市場は拡大する

量子コンピュータは2030年代には産業の一部で本格活用が始まると予測されています。特に創薬や素材開発、物流の最適化など「膨大な計算が必要な分野」での需要が先行すると見られます。これらの業務は量子技術の性能を最大限に活かせるため、各国企業や研究機関が今から開発競争にしのぎを削っています。

産業分野ごとに加速する実用化の動き

経済産業省の見通しでは、2030年代前半に特定分野での量子コンピュータ利用が広がるとされています。

中でも新薬開発では、化合物の膨大な組み合わせを短時間で計算できるため、試薬コストや開発期間を大幅に削減できる可能性があります。製薬・化学メーカーはこの技術を活用すべく、大学やIT企業との共同研究を加速中です。

日本企業の国際競争力が強まる背景

NEC、日立、NTTといった日本企業は、誤り訂正技術や独自アーキテクチャの分野で世界的に高い評価を受けています。

今後は米中欧のライバル企業との競争だけでなく、海外企業との共同開発や技術ライセンス供与を通じて、収益化の道も開かれる見込みです。将来的には「日本発の量子知財」を世界市場に輸出するビジネスモデルも期待されています。

まとめ|研究・実証と収益化を分けて選ぶ

量子技術への支援は進んでいますが、研究への参加と商用収益の獲得は分けて比べる必要があります。企業ごとに、期待できる役割と残る課題が異なります。

発表された目標機数や採択額だけで、将来の利益を決めつけないようにしましょう。計算機の開発と、自社業務への技術利用も収益の生まれ方が違います。

既存事業を含む株価の変動も負うため、長期保有なら安全とは言えません。具体的な事業との接点を確かめ、自分が取れるリスクの範囲で候補を比較してください。

将来の社会インフラに近い存在

量子コンピュータは創薬、物流、素材開発、金融など幅広い分野で活用が期待されており、インターネットや電力網のように、将来的には社会インフラの一部となる可能性があります。テーマ株の中でも、このスケール感を持つ分野は多くありません。

銘柄選びは技術領域と開発段階を確認

関連株を比べる際は、計算機の開発、周辺部品の供給、技術の利用を分けると、何の収益を狙う投資かが明確になります。自社工場の効率化は利用側の成果であり、量子計算機を外部へ販売して得る収入とは異なります。

また、研究採択や提携発表は商用受注の確定ではありません。量子分野だけの利益が分からない企業では、既存事業の収益と株価評価も外せません。長く保有すれば成果が得られるとは限らず、開発の遅れや採算の変化があれば保有理由を見直せる範囲で投資してください。

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執筆者情報

nari

江口 裕臣

日本投資機構株式会社 テクニカルアナリスト(CMTA®)

著名な元機関投資家や経験豊富なアナリスト・ファンドマネージャーより培った知識と経験を基に、数多くの市場動向の予測や個別銘柄の動向をピンポイントで分析。銘柄の推奨実績において社内の月間最高勝率記録を持つテクニカルアナリスト。

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