親のNISA株を相続したら売る?持ち続ける?|判断のポイントを徹底解説

西村 万友奈

AFP・NISA取引アドバイザー

親のNISA株を相続したら売る?持ち続ける?判断のポイントを徹底解説

親が亡くなり、相続の手続きを進める中でNISA口座での株式運用が判明した。
証券会社に残高証明書を請求すると、見覚えのない銘柄がいくつも記載されている。
株をやっていることは知っていたが、まさかNISA口座で個別株をこんなに持っていたとは。
いざ相続となっても、自分自身は株式投資の経験がなく、この銘柄をどうすればいいのか判断がつかない。

そんな経験をされた方は、意外と多いのではないでしょうか。

株のことはよくわからない。
でも、放置するわけにもいかない。
売ればいいのか、持ち続けるべきなのか。
そもそも何から手をつければいいのか。

特に親がNISA口座で個別株を運用していた場合、通常の株式相続とは異なるルールが適用されます。

本記事では、株式投資の知識がない方でも迷わず動けるよう、NISA口座の株を相続した場合の判断ポイントをわかりやすく解説します。

目次

まず知っておきたい大前提|取得価格はすでにリセットされている

相続したNISAの個別株について、最初に理解しておきたい最重要ポイントがあります。

それは、相続の手続きが終わってあなたの口座へ移された時点で、株の取得価格が「親が亡くなった日の株価」へ自動的に書き換えられているという点です。

この仕組みを知らないと、売ったときの税金を実際より多く見積もってしまったり、持ち続けるかどうかの判断を誤ったりしかねません。

まずは個別株と取得価格の基本を確認したうえで、なぜNISAの相続では取得価格が変わるのかを見ていきましょう。

個別株と取得価格の基本を確認する

個別株とは、1つの企業が発行する株式です。
投資信託が「複数の企業をまとめて買うセット商品」だとすれば、個別株は「自分で企業を選んで1社ずつ買う」イメージです。トヨタやソニーなど、特定の企業の成長や配当に期待して投資します。

取得価格とは、株を買ったときの値段です。
株を売ったとき、取得価格より高く売れた分だけが利益になり、その利益に対して税金がかかります。
たとえば1株1,000円で買った株を1,500円で売れば、利益は500円です。
この500円の売却益に20.315%の税金(所得税15% + 復興特別所得税0.315% + 住民税5%)がかかります。
逆にいえば、取得価格が高いほど利益は少なくなり、税金も少なくなります。

NISAからの相続では取得価格が書き換わる

通常の株式相続では、親が1,000円で買った株を、そのまま1,000円の取得価格で引き継ぎます(特定口座の株を相続した場合)。

しかしNISA口座から相続した場合は異なります。
親が1,000円で買った株でも、亡くなった日に株価が3,000円になっていれば、あなたが引き継ぐ取得価格は3,000円と記録されます。
親が買ったときの値段は関係なく、亡くなった日の株価がそのままあなたのスタート地点になります。

これが意味するのは、相続後すぐに売っても税金は思ったより少ない、という点です。
あなたのスタート地点はすでに3,000円です。
その後3,500円で売っても、利益は500円だけです。税金は利益500円×20.315%なので、1株当たり約100円です。
取得価格がリセットされている分、相続後すぐに売った場合の税負担はとても軽くなります。

売った場合の税金はどうなるのか|3パターンで確認



それでは、相続したNISA株を売った場合、税金は実際にいくらかかるのでしょうか。
具体的な数字で確認してみましょう。
ここでは、親が新NISA開始直後の2024年1月に三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306)を1株1,225円で100株購入し、2026年6月に亡くなったと仮定します。
死亡日の株価は3,183円だったため、あなたが引き継ぐ取得価格は3,183円です。

この取得価格を出発点に、売るタイミングで税金がどう変わるかを3つのパターンで見ていきます。

パターン①|移管後すぐに3,183円で売る

移管後すぐに、取得価格と同じ3,183円で売った場合です。

項目金額
売却額31万8,300円(3,183円×100株)
あなたの取得価格31万8,300円(リセット済み)
課税対象の利益0円
税金0円

取得価格と売却価格が同じなので、税金はゼロです。
その後の株価が上がるとすれば、移管直後が最も税負担の少ないタイミングになります。
ただし株価は常に動いているため、相続後すぐに売っても取得価格とぴったり同じ金額で売れるとは限りません。

パターン②|少し値上がりした4,000円で売る

移管後に値上がりし、4,000円で売った場合です。

項目金額
売却額40万円(4,000円×100株)
あなたの取得価格31万8,300円
課税対象の利益8万1,700円(40万−31万8,300円)
税金(20.315%)約1万6,340円

値上がりした分にしか税金はかかりません。
この場合は約1万6,340円です。
なお、特定口座で運用していれば自分で税金を計算する必要はなく、利益から税金を引いた金額が証券口座へ払い戻されます。

パターン③|値下がりした2,500円で売る

移管後に値下がりし、2,500円で売った場合です。

項目金額
売却額25万円(2,500円×100株)
あなたの取得価格31万8,300円
損失▲6万8,300円(25万−31万8,300円)
税金0円

売却損が出た場合、特定口座内の他の利益と損益通算できます。
他に利益のある銘柄があれば、その税負担を減らせる可能性があります。
損益通算は後ほど詳しく説明します。

相続した株を持ち続ける場合の注意点|配当と利回り


相続した株をそのまま持ち続ける場合にも、知っておきたい注意点があります。

特に見落としやすいのが、配当金への課税と、配当利回りの考え方です。
親のNISA口座では非課税だった配当も、あなたの特定口座では課税対象になります。
さらに、同じ銘柄・同じ配当額でも、取得価格が変わったことで利回りの水準は親の時代とはまったく別物になっています。

ここでは、配当金と配当利回りが相続によってどう変わるのかを、具体的な数字で確認していきます。

配当金はもらえるが課税対象になる

相続した株の配当金は、これまでどおり受け取れます。
ただし、親のNISA口座では非課税だった配当金も、あなたの特定口座では課税対象(税率20.315%)になります。
そのため、受け取る金額は税金が引かれる分、親の時代より少なくなります。

配当が振り込まれるたびに約2割が差し引かれるため、手取りベースで家計に入る金額を把握しておくと安心です。

配当利回りは親の時代とは別物になる

配当利回りとは、買った値段に対して毎年どのくらいのお金が戻ってくるかを表す割合です。
銀行預金の金利に近いイメージで考えるとわかりやすいでしょう。
たとえば100万円を銀行に預けて毎年1万円の利息がもらえるなら、利回りは1%です。

株も同じように、いくらで持っている株から毎年いくらの配当をもらえるかを示したのが配当利回りです。
計算式はシンプルです。

配当利回り(%) = 年間配当金 ÷ 取得価格 × 100

たとえば三菱UFJの年間配当は96円(27年3月期予想)です。
親の取得価格1,225円なら、96円 ÷ 1,225円 × 100 = 約7.8%です。
一方、あなたの取得価格3,183円なら、96円 ÷ 3,183円 × 100 = 約3.0%になります。

重要なのは、利回りは「いくらで買ったか」によって変わるという点です。
同じ株・同じ配当額でも、安く買った人ほど利回りは高くなります。

持ち続けようと考えている方に知っておいてほしいのは、配当利回りが親の時代とはまったく異なる水準になっているという事実です。

配当利回りの差が生む影響を知る

では、この利回りの差は実際にどれだけの違いを生むのでしょうか。

100株保有している場合、親の取得価格1,225円(利回り約7.8%)でも、あなたの取得価格3,183円(利回り約3.0%)でも、受け取る年間配当は同じ9,600円です。
違うのは、いくらの元手に対して9,600円を稼いでいるかという点です。

高い利回りの銘柄を持つ本質は、お金に効率よく働いてもらうところにあります。
同じ30万円の元手なら、利回り3%の株より7%の株に投資したほうが、年間で受け取れる配当は2倍以上になります。
これが複利で積み上がると、長期の資産形成に大きな差が生まれます。

親が1,225円で仕込んだ持ち分は、まさにお金が効率よく働く状態でした。
それがあなたの手元に届いた時点で3,183円にリセットされているため、同じ銘柄を持ち続けても出発点の効率はすでに変わっています。

持ち続けるかどうかを判断するときは、親がいくらで買ったかではなく、今の自分の取得価格でこの利回りに満足できるかを基準に考えることが大切です。

含み損を抱えたまま相続した場合の注意点|損益通算


NISAの相続は、値上がりしている銘柄ばかりとは限りません。
値下がりした銘柄を引き継ぐケースも十分あり得ます。
そのとき見落としがちなのが、損益通算という制度です。
通常の株取引では、損失を他の利益と相殺して税金を減らせますが、NISA口座に在籍していた期間の損失にはこの仕組みが使えません。

ここでは、損益通算の基本と、NISA相続で注意すべきポイントを整理します。

損益通算とは損失で税金を減らせる仕組み

損益通算とは、株で出た損失を他の株で出た利益と相殺して税金を減らせる仕組みです。
たとえばA株で10万円の利益、B株で6万円の損失が出た場合、損益通算を使えば課税対象は4万円(10万円−6万円)になり、税金は約8,000円で済みます。
通常なら約2万円かかるところ、約1万2,000円の節税になります。

項目損益通算なし損益通算あり
課税対象10万円(A株の利益)4万円(A株−B株)
税金(20.315%)約2万円約8,000円
節税効果約1万2,000円お得

また、その年に損失を使いきれなかった場合は、翌年以降3年間にわたって損失を繰り越せる繰越控除という制度もあります。

NISA口座の運用損益は損益通算できない

通常の特定口座であれば、損益通算も繰越控除もどちらも使えます。
しかしNISA口座は、利益も損失も税制上はなかった扱いになる制度です。
利益が出ていても、もともと税金を払っていません。そのため損失が出ても、税金が戻ってくることはありません。

そして、相続によってNISA口座から特定口座へ株式の移管が完了した時点で、取得価格は死亡日の時価に自動リセットされます。
値上がりしていても値下がりしていても、その時点で損益は確定した状態になります。

これは相続人にはどうにもできない制度上の決まりで、手続きのタイミングや順番を変えても結果は変わりません。
損をしているのに節税に使えないという事実を知っておくと、手続き後に混乱せずに済みます。

引き継いだ後の損失には損益通算が使える

一方、引き継いだ後に特定口座でさらに値下がりして売却した場合、その損失は通常どおり損益通算できます。
あくまでNISA口座に在籍していた期間の損失が対象外になる、という意味です。

売る・持つ・一部売るの判断基準|3つのケース


相続した株をどうするかは、自分で選んだ銘柄ではないからこそ、判断に迷う方が多いところです。
大切なのは、一般論ではなく今の自分の状況に当てはめて考えることです。
ここでは、すぐに売ることを検討すべきケース、持ち続けることを検討すべきケース、そして迷ったときの一部売却という3つの選択肢を整理します。

相続した銘柄の数や取得価格、相続税の有無、他の資産の状況によって最適な答えは変わるため、自分の状況に近いものを探しながら読んでみてください。

すぐに売ることを検討すべきケース

次のような場合は、すぐに売ることを検討してよいでしょう。

・株の管理が難しく今後の値動きを追う自信がない場合
・相続税の納税資金が必要な場合
・引き継いだ株の配当利回りが現在の取得価格基準で低い(2〜3%未満)場合

自分の資産である株式を持ち続ける以上、どんな会社なのかある程度は理解しておきたいところです。
まったく分からない、あるいは将来の安定成長が描けない企業の株であれば、無理に持ち続ける必要はありません。
相続直後は税負担も少ないため、売却して整理してしまうのも選択肢になります。

持ち続けることを検討すべきケース

逆に、次のような場合は持ち続ける選択が向いています。

・現在の取得価格基準でも配当利回りが十分に魅力的(3〜4%以上)な場合
・業績が安定していて今後も増配が期待できる優良銘柄の場合
・相続税の納税資金を他で確保できている場合

将来の安定成長が描ける企業の株を相続したなら、そのまま保有を続けるのも良い判断です。
利益が出た分には税金がかかりますが、優良株への投資は長期的な資産の増加につながると期待できます。
特にビジネスモデルが理解でき、収益が長期的に右肩上がりの企業であれば、投資初心者でも比較的保有を続けやすい銘柄です。

また、配当利回りが高い銘柄の場合は、企業の公式ホームページなどで配当方針を調べてみると良いでしょう。
「業績に関わらず〇円以上は配当を出す」「減配はしない(累進配当)」といった方針を掲げる企業であれば、今後も安定した配当収入が期待できます。

迷ったときは一部売却も選択肢になる

複数の銘柄を引き継いだ場合、すべてを一律に決める必要はありません。
配当利回りが高い銘柄は持ち続け、利回りが低い銘柄や値下がりリスクが高い銘柄から売却するという方法も合理的です。

まとめ|相続したNISA株は迷ったら売り時かもしれない

相続したNISA株のポイントは、次のとおりです。

項目内容
取得価格死亡日の時価にリセット済み(親の仕込み値は消えている)
売却時の税金値上がり分にしかかからない(リセット直後ならゼロに近い)
配当金もらえるが課税対象(約20%)
配当利回り親の利回りではなく自分の取得価格で再計算が必要
含み損の扱いNISA在籍中の損失は損益通算できない
売り時の目安取得価格リセット直後が最も税負担は少ない

「株はよくわからないから怖い」という方ほど、取得価格がリセットされている相続直後が、最も税負担の少ないタイミングです。
悩み続けて値下がりしてから売るより、早めに判断したほうが結果的に有利になる場合も少なくありません。

なお、NISA資産そのものに相続税がかかるのかという基本ルールは、別の記事で詳しく解説しています。
あわせてご覧ください。

相続した銘柄の判断に迷ったら専門アナリストにご相談ください

「この銘柄を売るべきか、持ち続けるべきか」という判断を、一人で抱え込む必要はありません。

これまで株式投資に触れてこなかった方が、急な判断を迫られてインターネットやYouTubeの情報だけで売買を決めるのは、とても危険です。
ネット上にあふれる情報は、あなたの状況に合わせたものではないからです。

相続した銘柄の数、取得価格、相続税の有無、他の資産状況は、すべて人によって異なります。
一般論だけで判断すると、大切な資産を思わぬ形で失うおそれがあります。

日本投資機構株式会社では、相続した個別銘柄について専門のアナリストが分析し、あなたの状況に合った判断をサポートします。

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※本記事は2026年7月時点の税制・制度に基づく一般的な情報です。個別の税務判断については、税理士や税務署にご相談ください。

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執筆者情報

nari

西村 万友奈

AFP・NISA取引アドバイザー

日本投資機構株式会社のカスタマーサクセスとして、日々お客様の資産運用に寄り添う。服飾系大学卒業後、15年間アパレル業に従事。コロナ禍を機に資産形成の重要性を再認識して金融業界へ転身。さらに大学へ3年次編入し、ファイナンシャルプランナーコースを修了。培った金融知識をもとに、金融リテラシーの大切さと資産運用の重要性を発信している。

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