含み資産とは、企業が帳簿(決算書)に記録している金額よりも、実際の市場価値(時価)の方が高い資産を指します。
「財務諸表には載っていない隠れた価値」で、投資家の間では「含み益」とも呼ばれます。
含み資産は、土地や不動産を大量に保有する老舗の製造業・倉庫業・商社、または株式を長期保有している企業に多く見られます。
本記事では、含み資産の基本的な意味から、含み資産株の見つけ方・実質PBR(株価純資産倍率)の計算方法・投資するときの注意点までを、投資を始めたばかりの方にもわかりやすく解説します。
含み資産とは|帳簿に載らない「隠れた価値」をわかりやすく解説

含み資産とは、企業が実際に保有する資産の現在価値が、帳簿に記録された金額(簿価)を上回っている状態を指します。土地・株式・建物など幅広い資産で発生し、帳簿だけを見ても見えてこない「隠れた企業価値」として投資家に重視されています。
企業の財産は貸借対照表(バランスシート)に記録されています。
貸借対照表とは、企業が何を持っていて、それをどうやって調達したかを一覧にした財務書類です。
ただし土地などの資産は、価値が上昇していたとしても購入したときの金額(簿価)のまま記録され続けます。
帳簿を見るだけでは気づかない隠れた価値が企業にはあるわけです。
含み資産の計算式|資産の時価 – 帳簿価格(簿価)
含み資産(含み益)は、次のシンプルな式で計算できます。
含み益 = 資産の時価(現在の市場価格) – 帳簿価格(簿価)
具体例で確認しましょう。
50年前に5億円で購入した土地が、現在の時価では50億円になっているとします。
このとき含み益は「50億円 – 5億円 = 45億円」です。
この45億円は貸借対照表には載っていませんが、企業が実際に持っている隠れた資産価値にあたります。
含み益・含み損・簿外資産の違い
含み資産・含み益の反対が「含み損」です。
含み益は時価が簿価を上回る状態で、今売れば利益になります。
含み損は時価が簿価を下回る状態で、今売れば損失になります。
どちらも「まだ売っていないので利益や損失が確定していない」点は共通です。
日本の会計ルールでは、含み益は貸借対照表に計上されません(一部の有価証券を除く)。
一方、含み損が一定の基準を超えると「減損処理」といって、損失を強制的に計上しなければならないルールがあります。
含み益は実際に資産を売却するまで利益として認識されない点が重要です。
また、含み資産は貸借対照表に載っていない(または低く評価されている)潜在的な価値であるため「簿外資産」とも呼ばれます。
投資家が企業の本当の価値を見極めるには、帳簿上の純資産だけでなく含み資産を加えた「実質純資産」の計算が欠かせません。
含み資産が生まれる資産の種類

含み資産は不動産・有価証券・その他の資産と幅広い種類で発生します。
それぞれの特徴と投資家が確認すべきポイントを解説します。
不動産(土地・建物)|最も規模が大きくなりやすい含み資産
含み資産が最も大きくなりやすいのは不動産(特に土地)です。
日本の会計基準では土地は原則として取得原価(買ったときの値段)で記録し、価値が上がっても評価を変えません。
戦後や高度成長期に安く取得した土地が、現在では数十倍・数百倍の価値になっているケースがあります。
不動産の含み益は、決算書の「注記」(補足説明のページ)に「土地の時価情報」として開示されるケースがあります。
ただし全ての企業が開示しているわけではなく、路線価・公示地価・不動産鑑定などを使って投資家が自分で概算を計算しなければならないケースも多いです。
有価証券(株式・債券)|長期保有株の値上がり益
長年持ち続けている株式(政策保有株・持合い株)の値上がりによる含み益も、日本企業に多く見られる含み資産です。
「その他有価証券(売買目的でも満期保有目的でもない有価証券)」は時価評価が義務づけられており、含み益は「その他有価証券評価差額金」として貸借対照表の純資産の部に記載されます。
貸借対照表には反映されますが、損益計算書(損益を示す書類)には載らない点が、少し特殊な扱いです。
その他(ゴルフ会員権・美術品など)
ゴルフ会員権・絵画・骨董品・コレクションなども時価が変動するため、含み益の源泉になり得ます。
ただしこれらは流動性が低い(すぐに現金化しにくい)うえ、時価の評価精度も低いため、含み資産としての判断は慎重に進める必要があります。
含み資産株とは|バリュー投資家が注目する理由

含み資産を多く持つ企業の株式は「含み資産株」と呼ばれ、特定の業種・企業タイプに集中しています。
定義と特徴を整理します。
含み資産株の定義|老舗企業・特定業種に多い理由
含み資産株とは、保有する不動産や有価証券に大きな含み益を持つ企業の株式です。
株価(時価総額)が帳簿上の純資産を下回っている場合(PBR1倍割れ)でも、含み益を加えた「実質純資産」は時価総額を大きく上回るケースがあります。
「資産は豊富なのに株価が安い」という割安感から、バリュー投資家(割安株を狙う投資家)やアクティビスト投資家(経営陣に改善を求める投資家)に注目されます。
含み資産は長年の事業活動の結果として積み上がります。
創業数十年〜百年以上の老舗企業は、バブル期以前や戦後復興期に不動産を低価格で取得したまま保有し続けているケースが多く、含み資産が大きくなる傾向があります。
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含み資産株が多い業種|製造業・不動産業・商社・金融
含み資産株は特定の業種に集中しています。
不動産業・倉庫業は広大な土地・建物を昔から保有しており、製造業(重工業・化学・食品)は工場用地を長年保有している老舗メーカーが多いです。
商社・金融は政策保有株として多くの上場企業株式を長期保有しており、鉄道・電力などの公益事業は路線・設備に附随する広大な土地を持ちます。
これらの業種で含み資産株を探すと効率的です。
含み益の算出方法|有価証券報告書の注記から数字を拾う

含み資産株を正しく評価するには、帳簿には載っていない含み益を自分で算出する必要があります。
不動産・有価証券それぞれの具体的な算出手順を解説します。
含み益の確認方法|まず有価証券報告書の「注記」を開く
含み益を調べる出発点は、有価証券報告書(または決算短信)の「注記」です。
注記とは財務諸表の補足説明ページで、本文の数字だけでは読み取れない詳細情報が記されています。
金融庁の「EDINET」(https://disclosure2.edinet-fsa.go.jp/)で企業名を検索すれば誰でも無料で閲覧できます。
有価証券報告書のPDFを開き、「時価情報」「土地の再評価」「その他有価証券」といったキーワードで検索すると該当箇所にすぐたどり着けます。
不動産の含み益算出|路線価・公示地価を使った3ステップ
不動産の含み益は、企業が自主開示していないケースも多く、投資家が自分で概算を出す必要があります。
手順は次の3ステップです。
- STEP1|帳簿上の土地簿価を確認する
有価証券報告書の貸借対照表(または固定資産の注記)を開き、「土地」の金額を確認します。
これが簿価です。企業によってはセグメントや用途別に分けて記載しているケースもあります。 - STEP2|土地の時価を推計する
時価の推計には主に2つの方法があります。
①企業が「土地の時価情報」を注記に自主開示している場合はその数値をそのまま使います。
②開示がない場合は、国土交通省が毎年発表する公示地価や路線価(国税庁、公示地価の約80%)を使って概算します。
所在地・面積が有価証券報告書の「主要な設備の状況」に記載されている場合が多いため、面積×公示地価で時価の目安を算出できます。 - STEP3|含み益を計算する
時価から簿価を引いた金額が不動産の含み益です。
不動産含み益 = 土地の時価(推計) – 土地の帳簿価格(簿価)
あくまで概算ですが、割安度を判断するには十分です。
有価証券の含み益算出|貸借対照表から直接読み取る
有価証券(株式)の含み益は、不動産より簡単に確認できます。
「その他有価証券(売買目的でも満期保有目的でもない株式)」については時価評価が義務づけられており、含み益は貸借対照表の純資産の部に「その他有価証券評価差額金」として記載されています。
この金額をそのまま含み益として使えます。
さらに詳しく確認したい場合は、注記の「金融商品に関する注記」または「有価証券の時価情報」を参照します。
銘柄別の簿価・時価・差額が一覧で記載されており、どの銘柄でどれだけ含み益が生じているかまで確認できます。
含み資産株の見つけ方|実質PBRで割安度を判断する

算出した含み益をもとに「実質PBR」を計算すれば、含み資産株の割安度を数値で判断できます。
計算式と実践的な活用法を解説します。
実質PBR(修正PBR)とは|計算式と見方
PBR(株価純資産倍率)とは「株価 ÷ 1株あたり純資産(BPS)」で計算する割安指標です。
PBRが低いほど「純資産に対して株価が安い」と言えます。
ただし帳簿上の純資産には含み益が反映されていないため、含み益を加えた「実質純資産」を使って計算し直したものが実質PBR(修正PBR)です。
具体例で考えてみましょう。
時価総額300億円・純資産200億円・含み益(不動産・有価証券の合計)300億円の企業の場合、実質PBRは0.6倍となります。
時価総額は実質純資産の60%しか評価されておらず、本当の資産価値より4割安く買える状態です。
実質PBR1倍割れ|解散価値より安く買える可能性
実質PBRが1倍を下回る企業は、含み資産を考慮した実態価値に対して、株価が割安に放置されています。
理論上は、会社を解散して全資産を売却すれば現在の株価より多くの現金が得られる状態であり、アクティビスト投資家が注目する典型的な銘柄の特徴です。
実質PBRの通し計算例|数字を拾って実際に計算してみる
ここまでの手順をまとめ、実質PBRを実際に計算する流れを確認しましょう。
以下は架空の企業Aを例にした通し計算です。
【企業Aの前提データ】
・時価総額: 400億円
・貸借対照表上の純資産: 300億円
・土地の簿価(有価証券報告書「主要な設備」より): 20億円
・土地の時価推計(公示地価×面積): 120億円 → 不動産含み益 = 100億円
・その他有価証券評価差額金(貸借対照表より): 80億円 → 有価証券含み益 = 80億円
【実質純資産の計算】
実質純資産 = 純資産 + 不動産含み益 + 有価証券含み益 = 300億円 + 100億円 + 80億円 = 480億円
【実質PBRの計算】
実質PBR = 時価総額 ÷ 実質純資産 = 400億円 ÷ 480億円 = 約0.83倍
帳簿上のPBRは「400億円 ÷ 300億円 = 1.33倍」で割高に見えますが、含み資産を加味した実質PBRは0.83倍と1倍割れになります。
株価スクリーニングツールで表示される通常のPBRだけを見ていると、こうした割安銘柄を見落としてしまいます。
含み資産株とアクティビスト投資・TOBの関係

含み資産株はアクティビスト投資家の標的になりやすく、TOB(株式公開買付け)や経営改革の引き金になるケースが増えています。
その背景と「含み資産の解放」の具体的な手段を解説します。
含み資産が大きい企業はアクティビストのターゲットになりやすい
「隠れた資産価値があるのに株価が低い」状況は、アクティビスト投資家(物言う株主)にとって格好のターゲットです。
アクティビストとは、株式を大量に取得したうえで経営陣に改善を要求する投資家。
含み資産株に投資し、経営陣に含み資産の「解放(Unlocking Value)」を求めるケースが増えています。
含み資産の「解放」とは|具体的な手段
含み資産を現金化・株主に還元するための主な手段として、政策保有株(持合い株)の解消・売却による増配・自社株買いへの活用があります。
不動産の売却・賃貸化による配当原資の確保、含み益のある事業や子会社の売却、子会社の上場なども代表的な方法です。
また、MBO(経営陣による買収)やTOBを通じた非公開化によって含み益を顕在化させる手法も近年増えています。
含み資産株投資の注意点

含み資産株への投資には独自のリスクがあります。
「資産が豊富なのに株価が上がらない」状況に陥りやすい理由を理解しておきましょう。
含み益は「売るまで利益にならない」
含み益はあくまで「潜在的な利益」であり、資産を実際に売却して初めて「実現利益」となります。
売却するかどうかは経営陣の判断次第で、含み益がいつ・どのような形で現金化されるかは不確実です。
含み資産が大きくても長年活用されなければ、株価への貢献は限定的にとどまります。
流動性リスク|不動産や非上場株はすぐ売れない
流動性とは「資産をすぐに現金に換えられるかどうか」を表す概念です。
不動産・非上場株式などは株式市場のようにすぐ売れません(流動性が低い)。
急いで現金化が必要な場面では、希望する価格で売れないリスクがあります。
そのため、含み益の実質的な価値は、流動性を考慮した割引後の価値として評価する必要があります。
含み資産だけではなく、収益力・キャッシュフローも確認
含み資産株投資でよくある失敗は、「資産は豊富だが本業の収益力が低い企業」に長期投資してしまうパターンです。
含み資産がいつまでも解放されなければ、赤字が続く企業への長期投資は含み資産を食いつぶすリスクがあります。
含み資産の評価に加えて、本業のROE(自己資本利益率)・営業キャッシュフロー・配当政策・コーポレートガバナンス(株主との対話姿勢)の総合的な確認が、含み資産株投資を成功させる重要なポイントです。
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まとめ|含み資産株投資のポイント

含み資産とは、企業が保有する資産の時価が簿価を上回る差額部分で、財務諸表には表れない潜在的な価値を示します。
特に不動産・有価証券に多く見られ、実質PBR(修正PBR)を使った割安判断が含み資産株投資の基本手法です。
含み益はあくまで「潜在的な利益」であり、実現するまでは不確実な点に注意が必要です。
アクティビスト投資との関係も理解しつつ、収益力・キャッシュフロー・コーポレートガバナンスの総合的な確認が、含み資産株投資を成功に導く鍵となります。

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執筆者情報
日本投資機構株式会社 証券アナリスト(CMA) テクニカルアナリスト(CMTA®)
国内株式、海外株式、外国為替の領域で経験豊富なアナリスト・ファンドマネージャーのもと、金融市場の基礎・特徴、マクロ経済の捉え方、個別株式の分析、チャート分析、流動性分析などを学びながら、日本投資機構株式会社では唯一の女性アナリストとして登録。自身が専任するLINE公式など各コンテンツに累計7000名以上が参加。Twitterのフォロワー数も3万人を超える人気アナリスト。

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