海底ケーブル関連銘柄が、国策テーマとして投資家の注目を集めています。
本命候補は、通信システムを一括供給するNECや、電力ケーブルを手がける古河電工・住友電工、運営・保守を担う通信大手です。中小型では湖北工業、アイ・ピー・エス、アンリツに注目できます。
ただし、通信向けと送電向けでは、需要の源泉も業績への反映時期も異なります。本記事では8銘柄の最新決算と株価を比較し、本命候補の強みや、出遅れ株を探す際の注意点を解説します。
海底ケーブル関連銘柄はAI需要・更新・国策が追い風

海底ケーブル関連銘柄に注目が集まる理由は、生成AIによる通信需要の拡大、既存設備の更新、経済安全保障への対応です。関連企業の受注につながる経路はそれぞれ異なるため、3つの追い風を分けて確認しましょう。
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生成AI普及で国際通信量が急拡大
生成AIを提供する企業は、世界各地のデータセンターで計算・保存した情報をやり取りします。施設内の配線を増やすだけでは国境を越える通信容量は増えず、データセンター同士を結ぶ国際回線の増強も必要になります。
実際に、NECは2025年9月、日本とシンガポールを結ぶ約8,000kmの光海底ケーブル「Candle」の供給契約を発表しました。運用開始は2028年の予定です。AI需要の拡大が具体的な建設案件へ進んだ例ですが、通信量の伸びが全社利益の伸びにそのまま一致するわけではありません。
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ITバブル期に敷設したケーブルが更新期に
海底ケーブルは長期間使う設備で、NTTグループの事業紹介では耐用年数を約25年としています。2000年前後に整備された設備では更新を検討する時期に入り、老朽化への対応と通信容量の拡大を同時に進める需要が生まれます。
ただし、25年が経過した全路線を一斉に敷き直すわけではありません。既存設備の状態や通信需要、陸上の接続機器の更新で対応できる範囲によって判断が変わります。関連株を見る際は、ケーブルの古さだけでなく、更新対象の路線、供給契約、工事の開始時期まで公表されているかを確かめたいところです。
経済安全保障で供給・敷設・保守能力の強化を推進
総務省の「デジタル海外展開総合戦略2030」は、海底ケーブルの目標シェアを35%とし、自律的な供給体制の維持を掲げています。2026年8月の27年度概算要求でも、敷設・保守能力や防護体制の強化を打ち出しました。
要求額は25億円に、金額を示さず項目を求める「事項要求」を加えた形です。多ルート化や陸揚局の防護を支援し、船団保有体制の整備も検討します。予算要求は成立済みの予算でも、企業の受注済み金額でもありません。今後は支援制度の確定と、各社がどの事業を受注するかを分けて確認します。
海底ケーブルとは|国際通信の99%を支えるインフラ

海底ケーブルは、海を隔てた地域同士をつなぐインフラです。国際データ通信の約99%を担うのは光海底ケーブルで、インターネットやクラウドの利用を支えます。一方、同じ名称でも電気を送る海底電力ケーブルは別の設備です。
通信ケーブルと送電ケーブルでは需要が異なる
通信用は光ファイバーで情報を送り、NECなどが光中継器を含むシステムを供給します。光中継器は、長い距離を進んで弱まった光信号を増幅する装置です。通信量の増加や国際ルートの分散が、新設・増強の理由になります。
送電用は、洋上風力発電所の電気を陸へ運んだり、離島や地域間を結んだりする設備です。古河電工が2026年4月に完工を発表した北九州響灘の案件もこちらに当たります。通信用のシェア目標を、送電用メーカーの成長率へ読み替えないようにしましょう。関連銘柄を比較する際は、まず対象市場をそろえます。
海底ケーブル関連銘柄は製造・運営・部品・計測に分かれる

海底ケーブル事業には、設備を納める企業と、完成後の回線利用から収益を得る企業が関わります。どの工程で売上が立つかを整理すると、同じ受注ニュースでも業績への影響が異なる理由を理解しやすくなります。
ケーブル製造・敷設のメーカー
メーカーでは、ケーブルだけを販売するのか、ルートの設計や中継器、工事まで一括で引き受けるのかが違います。NECの海底通信システムと、古河電工の海底送電工事を同じ尺度だけで比較するのは適切ではありません。
NECが2026年6月に示した資料では、2011~2024年度の海底ケーブル市場における同社シェアは25%でした。大規模案件を引き受ける実績と供給能力が参入障壁になります。一方、契約額が大きくても建設期間は長く、売上の計上時期や資材・工事費によって、四半期ごとの利益は変動します。
通信事業者・コンソーシアム参加企業
KDDIやNTT、アイ・ピー・エスなどは、国際回線の保有・運営や敷設・保守に関わります。複数社で設備投資を分担する共同事業体をコンソーシアムと呼び、参加企業は担当する回線容量などの権利を取得します。
この分野では、回線を持つだけでなく、どれだけ販売・利用できるかが収益に影響します。長期使用権を引き渡して一括で売上を計上する契約と、毎期の運用保守収入も区別が必要です。KDDIやNTTは携帯電話などの事業規模も大きいため、海底ケーブルの好材料だけで全社業績を説明しないようにしましょう。
光部品・コネクタなどの部材メーカー
光部品メーカーを選ぶ際は、一般的な光通信向け製品があるだけでなく、海底ケーブルへの採用や販売が確認できるかを見ます。例えば湖北工業は、光中継器などに使う光アイソレーターを供給しています。戻ってくる光を抑え、信号の安定を支える部品です。
通信容量を増やす方法には、光ファイバーの本数を増やす手法や、1本に複数の光の通り道を設けるマルチコア化があります。方式の変化に合う製品を供給できる企業は需要を取り込みやすくなります。光電融合など隣接技術との共通点はありますが、採用先と売上の内訳は個別に確認が必要です。
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計測・試験を担う計測機器メーカー
海底ケーブルは敷設して終わりではなく、通信品質の確認や故障箇所の特定が必要です。アンリツの「MW90010B」は、海底ケーブルの障害地点を測定するC-OTDRという装置で、最大20,000kmの測定範囲に対応しています。
計測器は、ケーブルの長さと同じ比率で毎年売れる消耗品ではありません。新設・保守の計画と、顧客が装置を購入する時期を確認する必要があります。また、通信計測事業にはデータセンターや携帯電話向けの需要も含まれます。同部門の増益をすべて海底ケーブルの効果と扱わず、用途別の説明まで読みましょう。
海底ケーブル本命5銘柄|製造・運営を担う大手が候補

本命候補として、設備の供給や通信網の運営に実績を持つ5社を紹介します。本命とは値上がりの確実性ではなく、事業との関係の明確さを重視した分類です。各社の強みに加え、足元の利益を支える事業も確認します。
NEC(6701)|通信システムの供給と大型案件に強み
NECは、ケーブルや光中継器などを含む海底通信システムを一括供給する企業です。2026年6月の事業説明では、2030年度に向けた同分野のシェア目標を35%としました。大型案件の供給実績を持つ本命候補です。
27年3月期1Qの全社営業利益は前年同期比66.1%増の587億円でした。通期予想には、一時的な損益などを調整した「Non-GAAP営業利益」4,300億円を掲げています。実績の営業利益と調整後の計画値を混ぜないように注意しましょう。ITサービスなども含む全社の数字であり、海底ケーブル単独の利益ではありません。

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古河電工(5801)|洋上風力向け海底送電で施工実績
古河電工は、海底電力ケーブルの製造・施工を手がけます。北九州響灘洋上ウインドファームでは約59kmのケーブル工事を完工し、2026年4月に発表しました。洋上風力や送電網整備の需要を受ける銘柄として、通信向けとは分けて評価できます。
27年3月期1Qの全社営業利益は前年同期比約3.1倍の254億円となり、通期予想を1,230億円へ上方修正しました。ただし、情報通信など他事業の成長も含みます。株価は年初来で約3.8倍の水準まで上昇しており、受注拡大への期待がどこまで価格に織り込まれたかも確認が必要です。

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住友電工(5802)|海底光ファイバーと送電の両方に関与
住友電工は、海底送電ケーブルに加え、大容量通信を支える光ファイバーにも強みがあります。2026年8月には、海底マルチコア光ファイバーの量産商用化が評価された受賞を発表しました。1本の光ファイバーで運べる情報を増やす技術を供給しています。
27年3月期1Qの全社営業利益は前年同期比61.0%増の970億円で、通期予想を4,500億円へ上方修正しました。複数の成長分野を持つ一方、自動車用ワイヤーハーネスなども大きな事業です。海底ケーブルだけに投資する会社ではなく、関連部門の受注と全社の利益率を合わせて見たい銘柄です。

KDDI(9433)|国際回線の運営と敷設・保守を担う
KDDIは国際海底ケーブルの運営に加え、グループ会社を通じて敷設・保守も担います。2025年7月には、参加する共同事業体がアジアを結ぶ約10,500kmの「SJC2」の運用開始を発表しました。完成した回線を事業として運用する立場の銘柄です。
27年3月期1Qの全社営業利益は前年同期比21.1%増の3,142億円でした。会社予想の年間配当84円と9月16日終値3,079円から計算した配当利回りは約2.73%です。通信・金融・法人事業などを含む収益が配当を支えており、海底ケーブルの受注増だけで増配が決まるわけではありません。

NTT(9432)|グループで海底ケーブルの敷設・保守を展開
NTTは、グループのNTTワールドエンジニアリングマリンが海底ケーブルの設計、海洋調査、敷設、修理などを担います。光通信という共通点だけでなく、海上工事と保守に直接関わる事業があるため、本命候補に含めました。
27年3月期1Qの全社営業利益は前年同期比4.9%増の4,251億円でした。年間配当予想5.4円と9月16日終値177.1円から計算した配当利回りは約3.05%です。一方、同社は移動・固定通信やITサービスを広く展開する大企業です。海底ケーブル事業の成長率を、そのまま株価の上昇余地とみなすのは避けましょう。

海底ケーブル関連の中小型3銘柄は部品・回線・計測に強み

中小型では、海底ケーブル向けの製品・契約が確認できる3社を取り上げます。規模が小さいだけで割安・出遅れとは限りません。新しい案件が今期の売上に入るのか、数年後の収益なのかまで区別して比較します。
湖北工業(6524)|海底向け光部品の需要増で上方修正
湖北工業は、海底ケーブルの光中継器などに使う光部品を供給します。26年12月期上期は、新規案件やファイバーの多芯化を背景に、海底向け小型アイソレーターの売上が増えました。テーマとの関係を実際の製品販売で確認できる企業です。
上期の全社売上高は前年同期比27.3%増の100億円、営業利益は62.7%増の29億円でした。8月には通期営業利益予想を67.54億円へ上方修正しています。ただし、リード端子やデータセンター向け部品なども含む数字です。株価は年初来で56.2%上昇しており、高値から下がっただけで出遅れとは判断できません。

アイ・ピー・エス(4390)|Candle契約の売上計上は完成後
アイ・ピー・エスはフィリピンを中心に国際通信事業を展開し、Candleの建設に参加しています。2026年8月には一部回線の長期使用権と運用保守サービスの提供を決議しました。使用権の契約額は9,820万米ドルです。
ただし、建設中の受取金は前受金で、使用権の売上は2028年予定の完成・引き渡し時に一括計上します。会社は27年3月期への影響を軽微としています。1Qの全社営業利益は前年同期比14.3%増の11.98億円でした。契約額を今期の売上へ加算せず、工事の進捗と完成後の継続的な保守収入を分けて確認しましょう。

アンリツ(6754)|海底回線の故障箇所を測る機器を供給
アンリツは、海底ケーブルの障害箇所を測る機器などを供給する計測器メーカーです。27年3月期1Qの全社営業利益は前年同期比約3.2倍の42.78億円に増加しました。通信計測の需要には、海底回線の新設に加え、データセンターの高速化も含まれます。
同四半期の通信計測事業は、売上収益193億円、営業利益31.53億円でした。海底向けの直接的な製品を持つ一方、用途は海底ケーブルに限定されません。携帯電話や高速通信機器の開発・生産投資も業績に影響するため、関連ニュースの件数だけでなく、部門の受注と利益を追う必要があります。

海底ケーブル関連銘柄は工事・採算・株価のリスクも確認

通信量の拡大や政策支援が続いても、関連株の価格が一方向に上がるわけではありません。設備事故の負担、案件ごとの採算、株価に織り込まれた期待を分けて点検すると、好材料だけに偏った判断を避けやすくなります。
切断による事業中断・コスト増リスク
海底ケーブルは、船の錨や漁具、自然災害などで損傷する可能性があります。修理には専用船と作業期間が必要で、運営会社には復旧費用や通信の迂回手配が発生します。ただし、利用者への補償や費用負担は契約により異なります。
アイ・ピー・エスは2026年9月の質疑応答で、完成後は所有者が修理費用の負担責任を持つと説明しました。そのうえで、複数ルートの提供、免責、利用者への費用転嫁などを想定しています。切断リスクの存在だけで損失額は決まらないため、回線の代替性と契約上の負担を一緒に確認する必要があります。
受注集中と業績変動の特性に注意する
大型設備の事業では、受注、前受金の入金、売上計上が同じ期になるとは限りません。Candleのように完成まで収益を計上しない契約もあり、契約額の増加と今期利益の増加を分けて読む必要があります。予定工期の遅れは売上時期の後ずれにもつながります。
メーカーは、受注残が増えていても資材費や船舶・人件費が上がれば利益率が低下します。通信会社は、先行投資に対して回線の販売が追いつかないリスクを抱えます。NECや電線大手のような複数事業の会社では、海底関連の成長がほかの部門の悪化を補える規模なのかも確認しましょう。
出遅れ株は高値からの下落率だけで選ばない
下表は9月16日終値を基準に、前年末からの騰落率と会社予想利益に対する株価の倍率をそろえた比較です。湖北工業やアンリツは高値から下落していても年初来では上昇しており、押し目と出遅れは同じ意味ではありません。
予想PERは株価を予想1株利益で割った指標ですが、低いだけで割安とは判断できません。利益の継続性や設備投資負担も確認します。NECとKDDIは会社が示す調整後の予想1株利益を使用しているため、通常の純利益を使う他社との単純比較にも注意が必要です。今期に入らない将来案件の収益を足して倍率を下げないようにしましょう。
| 銘柄 | 9月16日終値 | 年初来騰落率 | 予想PER |
|---|---|---|---|
| NEC(6701) | 4,841円 | -8.8% | 22.1倍※ |
| 古河電工(5801) | 3,812円 | +280.8% | 25.5倍 |
| 住友電工(5802) | 2,046.5円 | +29.4% | 18.8倍 |
| KDDI(9433) | 3,079円 | +13.7% | 15.7倍※ |
| NTT(9432) | 177.1円 | +12.3% | 14.6倍 |
| 湖北工業(6524) | 4,820円 | +56.2% | 27.0倍 |
| アイ・ピー・エス(4390) | 4,090円 | +35.0% | 12.7倍 |
| アンリツ(6754) | 3,156円 | +40.6% | 26.9倍 |
まとめ|需要の拡大と各社の利益寄与を分けて選ぶ

海底ケーブルは、通信量の増加と設備更新、経済安全保障の対応が重なる投資テーマです。通信用と送電用を分け、各社の製品や契約から関連性を確かめると、候補を絞りやすくなります。
本命の大手企業と、部品・回線・計測に強みを持つ中小型企業では、利益の源泉が違います。大型契約の発表だけで買い判断を急がず、売上になる時期と費用負担も確認しましょう。
出遅れ株を探す際も、高値からの下落だけで判断せず、業績予想と現在の株価を照らし合わせる姿勢が大切です。

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執筆者情報
日本投資機構株式会社 証券アナリスト(CMA) テクニカルアナリスト(CMTA®)
国内株式、海外株式、外国為替の領域で経験豊富なアナリスト・ファンドマネージャーのもと、金融市場の基礎・特徴、マクロ経済の捉え方、個別株式の分析、チャート分析、流動性分析などを学びながら、日本投資機構株式会社では唯一の女性アナリストとして登録。自身が専任するLINE公式など各コンテンツに累計7000名以上が参加。Twitterのフォロワー数も3万人を超える人気アナリスト。

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