日経平均はなぜ暴落して急反発したのか|2026年6月前半の乱高下を整理

日本投資機構 編集部

日本投資機構株式会社

日経平均はなぜ暴落して急反発したのか|2026年6月前半の乱高下を整理

2026年6月、日経平均株価がわずか数日のうちに暴落し、その後すぐに急反発しました。6月8日には一時3,000円を超える下落となり、週の終わりにはほぼ元の水準まで戻すという、ジェットコースターのような値動きでした。投資助言を行う弊社にも「今回の暴落は何があったのですか」というお問い合わせが増えています。

この記事では、何がきっかけで下げて、なぜここまで戻したのかを、できるだけやさしく整理します。専門用語にはそのつど説明を添えますので、投資を始めたばかりの方も安心して読み進めてください。

目次

2026年6月の日経平均|暴落から数日でほぼ全戻しの乱高下

2026年6月の日経平均|暴落から数日でほぼ全戻しの乱高下

2026年6月の日経平均株価は、1週間のあいだに暴落と急反発の両方を経験しました。6月8日に大きく下げたあと、わずか数日でほぼ元の水準まで戻しています。下げた理由と戻した理由はそれぞれ別にあり、両方を押さえると今週の値動きの全体像が見えてきます。

まずは、いつ・どれくらい動いたのかという事実を時系列で確認しましょう。数字を追うだけでも、相場がどれほど荒れたのかが伝わるはずです。そのうえで、下げと戻しの背景を順番にほどいていきます。

2026年6月8日に3.85%安・64,000円台まで急落した

2026年4月17日からの6月12日までの日経平均株価日足チャート Trading Viewより引用

今週の起点は、6月8日の急落でした。この日の日経平均株価は前営業日比2,563円安の64,024円で取引を終え、下落率は3.85%に達しました。これは2026年に入って2番目に大きい下げ幅です。

下げの背景には、前週末の米国市場の急落があります。週明けの東京市場では、米国株安の流れをそのまま引き継ぐ形で主力銘柄に売りが広がりました。取引時間中には下げ幅が一時3,000円を超え、日経平均は6万3000円台まで沈む場面もありました。

その後わずか数日で66,000円台まで戻した

ところが、相場はそこから急速に立ち直りました。翌6月9日の日経平均株価は1,392円高の65,416円と4日ぶりに反発し、上昇率は2.17%となりました。

さらに週末の6月12日には1,802円高の66,020円まで上昇し、暴落前の水準をほぼ取り戻しています。取引時間中には一時2,800円高となる場面もありました。

わずか数日で暴落分をほとんど埋めた計算になり、市場では「鬼戻し」とも呼べる急回復でした。下げるときも戻すときも値動きが大きく、1週間を通して非常に荒い相場だったと言えます。なぜこれほど短期間でV字を描いたのか、次の章から下げと戻しの理由を順番に見ていきます。

暴落の引き金は米雇用統計とAI・半導体株の急落

暴落の引き金は米雇用統計とAI・半導体株の急落

日経平均が大きく下げた直接のきっかけは、日本ではなく米国市場にありました。前週末の6月5日、米国でAIや半導体に関連する株が急落し、その流れが週明けの東京市場に波及したのです。

下落の要因は大きく3つ:①米国の雇用統計が予想より強かった点、②AI・半導体株が買われすぎていたという警戒感、③中東情勢の緊迫です。それぞれが重なり、売りが一気に膨らみました。ここからは、この3つの要因を1つずつやさしく解説していきます。

強すぎた米雇用統計でFRBの利上げ警戒が再燃した

暴落の最初のきっかけは、強すぎる米国の雇用統計でした。5月の米雇用統計では、景気の強さを示す非農業部門雇用者数が市場予想を大きく上回りました

雇用が好調なのは本来よい話ですが、いまの米国はインフレ(物価上昇)を警戒している最中です。雇用が強いと賃金や物価が上がりやすく、中央銀行にあたるFRB(米連邦準備制度理事会)が金利を下げにくくなります

市場が見込んでいた年内の利下げ観測は大きく後退しました。金利が高いままだと、借り入れに頼って成長する企業の株価には逆風になります。こうした金利の先高観が、株式市場全体を押し下げる重しとなりました。FRBが金融を引き締める方向に傾くという見方を、市場では「タカ派的」と表現します。

過熱していたAI・半導体株に売りが集中した

2つ目の要因は、買われすぎていたAI・半導体株への警戒感です。前週末6月5日の米国市場では、SOX指数(フィラデルフィア半導体株指数)が前日比10.3%安と記録的な下落になりました。

AIブームを背景に半導体株は大きく値上がりしてきたぶん、過熱を冷ます売りが一気に出た形です。週明けの東京市場でも、半導体や電子部品、電線などAIのデータセンターに関わる銘柄に売りが集中しました

これらは日経平均への影響が大きい銘柄が多く、指数全体を押し下げました。米国の半導体株安が、そのまま東京の半導体株安に直結したわけです。

中東情勢の緊迫と原油高への警戒も重なった

3つ目の要因は、中東情勢の緊迫でした。中東はおもな原油の産地で、情勢が不安定になると原油価格が上がりやすくなります。日本は原油の多くを輸入に頼っているため、原油高は企業のコスト増や景気の重しにつながると受け止められます。

6月8日の時点では、米国とイランをめぐる緊張が解けておらず、投資家がリスクを避ける動きを強めました。株式のように値動きの大きい資産を売り、安全とされる資産に資金を移す流れです。

3つの不安が同じタイミングで押し寄せた点が、今回の下げを大きくした理由です。

「鬼戻し」の理由は半導体株の反発と中東リスクの後退

「鬼戻し」の理由は半導体株の反発と中東リスクの後退

これだけ大きく下げた相場が、なぜ数日で元に戻ったのでしょうか。答えは、下げの原因になっていた不安が、相次いで和らいだからです。暴落を招いた要因のうち、特にAI・半導体株と中東情勢の2つが短期間で改善に向かいました。

下げの理由がそのまま戻しの理由に裏返った形と言えます。市場心理は振り子のように動きやすく、行きすぎた売りのあとには買い戻しが入りやすいという面もあります。ここからは、急反発を支えた具体的な動きを順番に見ていきます。

米半導体株が急反発し買い戻しが東京に波及した

急反発の最大のけん引役は、米国の半導体株でした。暴落の翌営業日にあたる6月8日の米国市場では、SOX指数が一転して5.61%高と大きく反発しました。売られすぎていた反動で、半導体株に買い戻しが入った形です。

この流れは週明けの東京市場にもそのまま波及しました。前日に大きく売られた半導体関連株が買い直され、日経平均を押し上げました。下げのときに最も売られた銘柄が、戻りのときには最も買われたわけです。

半導体株は日経平均への影響が大きいため、これらが反発すると指数全体も大きく戻ります。米国株安で下げ、米国株高で戻るという、今週の連動の強さがここにも表れています。

中東情勢の沈静化でリスク回避の動きが巻き戻った

2つ目の戻し要因は、中東情勢が沈静化に向かった点です。週の後半にかけて、米国とイランの戦闘が終結するとの期待が市場に広がりました。緊張が和らげば、原油高への警戒も後退します。暴落時にリスクを避けて売られていた資産に、買い戻しが入りやすくなります。

実際、6月12日の日経平均は戦闘終結への期待を追い風に大きく上昇し、暴落前の水準をほぼ取り戻しました。下げの一因だった地政学リスクが薄れたことで、投資家の不安心理も和らいだようです。

中東情勢は原油や為替を通じて日本株に影響しやすく、今回はその改善が戻りを後押ししました。悪材料が好材料に変わると、相場はこれほど速く反応するという一例です。

キオクシアなど半導体株が急騰し相場を牽引した

戻り相場の主役になったのが、半導体メモリー大手のキオクシアでした。6月12日にかけてキオクシアの株価は急騰し、時価総額は一時トヨタ自動車を抜いて国内首位に立ちました。AIの普及でデータを保存するメモリーの需要が伸びるとの期待が、買いを集めた背景です。

1銘柄の急騰が相場全体のムードを明るくし、ほかの半導体株にも買いが波及しました。暴落時に売りの中心だった半導体株が、戻りでは買いの中心になったわけです。前場には日経平均が一時2,800円高まで上昇し、大引けでも1,802円高で取引を終えました。特定の人気銘柄が指数を大きく動かす展開は、いまの日本株の特徴の1つと言えます。

暴落時に市場が注目するVIX(恐怖指数)とは

暴落時に市場が注目するVIX(恐怖指数)とは

暴落のニュースでは、株価の下げ幅とあわせて「VIX」や「恐怖指数」という言葉をよく目にします。これは投資家がどれくらい不安を感じているかを数値で示す指標です。

今回の暴落では、このVIXの動きに少し変わった特徴がありました。値動きは荒かったものの、VIXは過去の大暴落ほどには跳ね上がらなかったのです。この点は、その後の早い戻りとも符合します。ここでは、VIXがどんな指標なのか、そして今回はどう動いたのかをやさしく説明します。

VIXは投資家の不安心理を数値化した指標

VIXは、米国の代表的な株価指数S&P500の予想変動率から計算される指標で、「恐怖指数」とも呼ばれます。投資家が今後の値動きは荒くなると身構えているときほど数値が大きくなり、相場が落ち着いているときほど小さくなります。一般に20を下回ると平常、30や40を超えると不安がかなり強い状態とされます。

日本株版にあたる「日経平均VI」という指標もあり、考え方は同じです。2024年8月に日経平均が史上最大の下げ幅を記録した際には、日経平均VIが一時50台まで急上昇し、コロナショック以来の高水準になりました。数字そのものよりも、投資家がどれだけ怖がっているかを映す体温計のような指標だと考えるとわかりやすいです。

今回はパニックの割にVIXが低めだった

今回の暴落で特徴的だったのは、これだけ大きく下げたわりにVIXは21台にとどまりました。過去のパニック相場で40や50まで跳ね上がったのと比べると、かなり落ち着いた水準です。

実際、米国株のETF全体では資金の流入が続いており、市場全体が総崩れになったわけではありませんでした。極端な恐怖が広がらなかった点は、その後の早い立ち直りとも整合的です。

ただし、VIXが低いから安全と決めつけられるわけではなく、あくまで当時の投資家心理を映した数字です。今回はパニックというより、過熱を冷ます調整に近い下げだったと読み取れます。

過去の暴落と比べた今回の規模と戻りの速さ

過去の暴落と比べた今回の規模と戻りの速さ

今回の下げを「歴史的な暴落」と感じた方も多いかもしれません。

実際の数字を過去の大暴落と並べてみると、今回の規模がはっきりします。下落率という尺度で見ると、今回はブラックマンデーやコロナショックほどの規模ではありませんでした。

一方で、暴落のあとに短期間で急回復するという値動きは、過去にも例があります。ここでは事実として、過去の代表的な暴落と今回を比べてみます。規模感を知っておくと、次に似たニュースに触れたときも落ち着いて受け止めやすくなります。

ブラックマンデーやコロナショックとの規模比較

過去の代表的な暴落と比べると、今回の下落率はそれほど大きくはありません。1日の下落率で見ると、1987年の昭和ブラックマンデーは14.9%安、2024年8月の令和ブラックマンデーは12.4%安でした。いずれも10%を超える急落です。これに対し、今回の6月8日は3.85%安にとどまりました。

下げ幅(円の値幅)が2,500円超と大きく見えたのは、日経平均が6万円台という高い水準にあったためです。同じ2,500円でも、株価水準が高いと下落率は小さくなります。コロナショックの2020年には、日経平均が高値からおよそ3割下落しました。こうして並べると、今回は数字のインパクトほど歴史的な暴落ではなかったと整理できます。

短期間で全戻しする相場は過去にもあった

暴落のあとに短期間で急回復する値動きも、今回が初めてではありません。記憶に新しいのが2024年8月で、史上最大の下げ幅を記録した翌営業日には一転して急騰し、相場は比較的短い期間で水準を戻しました。

今回も、6月8日に大きく下げたあと、わずか数日でほぼ元の水準まで回復しています。下げの原因が業績の悪化ではなく、金利や地政学といった外部の要因だった場合、不安が和らぐと相場は戻りやすい傾向があります。

今回の下げも、企業の稼ぐ力が崩れたわけではなく、外部環境への警戒が主な理由でした。もちろん、毎回必ず急回復するとはかぎりません。ただ、暴落イコール長期低迷とは限らないという点は、過去の事例からも読み取れます。

まとめ|2026年6月の暴落と急反発で何が起きたのかを整理する

2026年6月の日経平均株価は、6月8日に3.85%安の64,024円まで急落し、その後わずか数日でほぼ全戻しという荒い1週間でした。下げの理由は、①米雇用統計の上振れによる金利の先高観、②買われすぎていたAI・半導体株への警戒、③中東情勢の緊迫という3つでした。

戻しの理由は、①米半導体株の反発、②中東情勢の沈静化、③キオクシアなど半導体株の急騰でした。下げを招いた不安が和らいだことが、そのまま急反発につながりました。下落率で見れば過去の大暴落ほどの規模ではなく、暴落後に短期間で戻る値動きも過去に例がありました。

なお、来週は6月15日から16日に日銀の金融政策決定会合、16日から17日に米国のFOMCが控えています。いずれも金利の方向性を左右する重要な会合で、今週のような値動きにも影響しうるため、引き続き注目が集まりそうです。

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執筆者情報

nari

日本投資機構 編集部

日本投資機構株式会社

INVEST LEADERSを運営する顧問投資会社「日本投資機構株式会社」の代表取締役を含めたスタッフ及びサポートアナリストの記事を掲載しています。株式投資や金融に纏わる話題は勿論のこと、読者の暮らしや生活を豊かにするトピックスや情報を共有していきます。

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