ティアフォー(593A)の将来性は、Autowareを使う企業の増加を、量産車両と継続収入へつなげられるかにあります。提携は広がっていますが、足元の株価には収益化への大きな期待が含まれています。
2026年9月7日終値は2,409円。通期予想売上に対する時価総額は約18倍です。最新決算、ルネサス協業、サウジアラビア事業を基に、株価を支える条件と崩れる条件を整理します。株価・開示情報の基準日は2026年9月7日です。
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ティアフォーはAutowareの商用化を支え、製品と導入支援で稼ぐ

ティアフォーは、公開型の自動運転ソフト「Autoware」の開発を主導する企業です。無償ソフトを入口に、車両への搭載、開発支援、商用製品の販売を収益へ変える仕組みを採っています。
無償のAutowareから商用製品と導入支援へつなげる
Autowareは、ソースコードを公開し、企業や研究者が利用・改良できる自動運転の基盤です。ただし、ソフトを入れれば、そのまま公道で無人運行できるわけではありません。センサーとの接続、車両制御、安全検証、運行管理まで整える必要があります。
ティアフォーは、この実装を製品とサービスで支えます。無料で使える技術の普及と、顧客が対価を払う商用化支援が両輪です。利益を生むのは利用者数そのものではなく、有料の開発契約や製品販売、運用後の契約です。
自治体・自動車メーカー・開発企業で収益源が異なる
同社は顧客向けサービスを次の3区分で提供しています。会計上は自動運転関連事業の単一セグメントであり、3社分の独立した利益が公表されているわけではありません。
| サービス | 主な顧客と対価 |
|---|---|
| Mobility | 自治体・交通事業者向け。車両導入、実証、運行支援 |
| Development | 自動車メーカーなど向け。自動運転システムの開発支援 |
| Solution | 開発企業など向け。ライセンス、機器、コンサルティング |
車両の販売額と、ソフトの継続利用料では利益の残り方が違います。売上総額に加え、どの契約が増えたかを追います。
実証地域の増加と継続収入の積み上がりは別の指標
26年9月期の実証実験・実装地域数は、6月末の44地域から7月には受注ベースで58地域へ増えました。会社の8月決算説明資料が示す数字です。過去からの累計実績と、当期の案件数を混ぜて成長率を出すと実態を見誤ります。
実証を終えた地域でも、翌年度の予算や運行条件次第で継続契約は変わります。収入の安定を確かめるには、継続運行に移った車両数、保守・ライセンス収入、契約更新が必要です。地域数が伸びただけでは、毎年同額の収入が続くとは判断できません。
ルネサスとの協業で乗用車にも広がるが、量産収入には時間がかかる

2026年8月は半導体や自動車部品企業との協業が進みました。バス中心の実装経験を乗用車の開発にも広げる動きです。ただし、開発基盤の提供と完成車への量産搭載では、売上の時期と規模が異なります。
R-Carとの統合で運転支援からレベル4まで狙う
2026年8月20日、ティアフォーはルネサスとの協業を発表しました。車載半導体「R-Car Gen 5」にAutowareと参照用AIモデルを組み合わせ、自動車メーカーや部品企業が使う開発基盤を構築する計画です。
対象はレベル2+/2++の運転支援からレベル4まで。半導体とソフトを組み合わせて提供できれば、顧客の統合作業を減らす余地があります。一方、この発表で量産車種、確約台数、契約総額は示されていません。協業先の規模を、そのままティアフォーの売上へ置き換えられない段階です。
AIと走行データの開発環境を整え、採用の入口を増やす
8月26日の発表では、データ収集や学習・評価を支えるCo-MLOps、参照用AIモデル、計算基盤を統合した展示を予告しました。車両機能をソフトで更新するSDVの開発を支える狙いです。NVIDIAのCosmosを使う合成データの活用も含まれます。
難しい走行条件を学習・検証する負担を下げられれば、開発契約を獲得しやすくなります。ただし、デモの公開は量産採用の確約ではありません。実車での評価結果、顧客への提供開始、ライセンス契約という順に進捗を確かめる必要があります。
Astemoとの開発基盤は2030年頃の実用化を目指す
8月5日のAstemoとの発表は、Co-MLOpsのアーキテクチャーなどをライセンス提供し、次世代の開発基盤を共同開発する内容です。基盤の実用化は2030年頃、それを使う量産乗用車は2030年代初頭を目指しています。
開発段階のライセンス収入と、量産後に車両台数に応じて増える収入は分けて評価します。数年先の搭載構想を26年9月期の増収へ直接加算するのは不適切です。今後の開示で開発契約の範囲と金額が具体化すれば、収益への寄与をより正確に測れます。
サウジアラビア事業の採択は支援材料だが、40億円の受注ではない
9月4日、サウジアラビアでの自動運転バス事業が経済産業省の補助事業に採択されたと発表しました。申請ベースの対象経費は60億円、補助率は3分の2です。計算上は約40億円ですが、交付額は未確定で、車両販売の受注額でもありません。
実施期限は2029年12月末。2027年にバス製作など、2028年に閉鎖空間での実証、2029年に走行条件の拡張を進める計画です。26年9月期への影響は軽微とされ、27年9月期以降の利益寄与は、費用負担と補助金の計上を合わせて評価します。
最新決算は増収でも営業赤字、粗利益より研究開発費が大きい

2026年8月14日の第3四半期決算では、売上と粗利益が伸びました。ただし、研究開発費だけで粗利益の約3倍に達しており、本業の黒字化には距離があります。補助金を含む経常損益と分けて確認します。
3サービスが伸び、累計売上は51.78億円に増加
26年9月期第3四半期累計の売上高は51.78億円です。決算説明資料の前年同期比較では30.0%増。全サービスで増収となりました。
| サービス | 前年同期 | 当期累計 |
|---|---|---|
| Mobility | 11.76億円 | 16.39億円 |
| Development | 9.43億円 | 14.43億円 |
| Solution | 18.64億円 | 20.95億円 |
粗利益は20.03億円、粗利益率は38.7%です。売上の伸びに対して利益がどれだけ残るかも、収益化の進捗を示します。
補助金36.61億円があっても、経常損失は40.87億円
第3四半期累計の研究開発費は59.89億円、これを含む販管費は88.29億円でした。粗利益20.03億円では賄えず、営業損失は68.26億円です。売上が伸びても赤字が続く主因は、研究開発を中心とする先行支出の大きさにあります。
営業外では補助金収入36.61億円を計上しましたが、持分法による投資損失9.18億円なども発生しています。経常損失は40.87億円、最終損失は41.74億円でした。補助金で損失が軽くなっても、本業の採算改善と同じには扱えません。

通期予想を達成するには第4四半期に33.06億円の売上が必要
会社は26年9月期の売上84.84億円、営業損失112.39億円という予想を維持しました。売上の進捗率は61.0%で、残る第4四半期に33.06億円が必要です。官公庁予算の影響で第2・第4四半期に売上が偏るため、単純な4分の3との比較では測れません。
8月の決算説明資料は、第4四半期の見込みとして受注済案件の進行売上19.84億円、バス販売9.60億円などを示しています。残る受注見込みの実現に加え、期末までの進行・販売の遅れがないかが達成を左右します。
6月末現金93.91億円にはIPO資金が含まれていない
第3四半期末の現金及び預金は93.91億円でした。7月の公募増資より前の残高です。会社資料では公募により資本金・資本準備金が合計約174.07億円増加しますが、両者を足した金額は9月7日現在の現金残高を示しません。
期中の支払い、借入返済、補助金の入金時期があるためです。25年9月期の営業キャッシュ・フローは72.82億円の流出でした。第3四半期のキャッシュ・フロー計算書は作成されていません。次の通期決算で、調達後に本業が消費した現金を確かめます。

自動運転の需要は広がるが、普及した技術が受注を独占するとは限らない

国内では政府が自動運転サービス車両を2030年度に1万台へ増やす目標を掲げています。導入の追い風はある一方、その需要を各社が取り合う市場です。公開型ソフトの強みと、価格・安全性の競争を併せて考えます。
オープンソースの普及は有料製品を選んでもらって初めて収益になる
公開型のAutowareは、顧客が基盤を試しやすく、多様な開発者が改良に参加できる強みがあります。特定の完成車メーカーだけに閉じず、複数の企業へ製品や開発支援を提供しやすい仕組みです。
反面、他社も公開コードを利用できます。Autowareの利用拡大が、ティアフォーの有料契約へ自動的につながるわけではありません。商用製品の品質、支援の速さ、安全評価の経験が選ばれる理由になります。顧客が自社開発を選んだり、他社の支援を使ったりする余地も、投資判断に含める必要があります。
競争相手は運行会社だけでなく、自動車メーカーの開発基盤にもいる
競合のWayveは、AI Driverを自動車メーカーや運行事業者へ提供する企業です。Uberは2026年9月3日、Wayveの技術によるロンドンでの配車サービス開始を発表しました。開始時点では運転者が同乗して監督する形で、無人運行と同一ではありません。
ティアフォーはバス・特殊車両で先行し、乗用車では市場の成熟に合わせる戦略です。受注を左右するのは、顧客がどの基盤を採用するかです。学習主体のAIか公開型基盤かという区分だけで優劣は決まりません。搭載コスト、安全評価、改修の自由度まで比較します。
導入費用と安全対策が、政府目標を実際の台数へ変える速度を決める
自動運転のレベル4は、定められた走行条件の下でシステムが運転を担う方式です。場所や天候を問わず走れるレベル5とは異なります。対応する道路・速度・天候が広がれば用途も増えますが、その分だけ検証に時間と費用がかかります。
国土交通省の2026年1月資料は、車両コストの低減と安全確保を普及の課題に挙げています。政府の1万台目標はティアフォーへの発注を約束する数字ではありません。車両費、遠隔監視、保守まで含む導入後の負担が下がり、運行主体が継続できる採算が必要です。
ティアフォーの株価は急騰後に反落、予想売上倍率はなお約18倍

上場後の株価は8月後半から上昇し、9月に急反落しました。高値から下がっても、現在の利益や資産だけで安いとは判断できません。最新終値と会社予想を同じ基準で組み合わせ、評価に含まれる期待を確かめます。
日足チャートは9月4日の高値3,790円からの反落を示す
株価は2026年8月7日に上場来安値871円を付けた後、9月4日に高値3,790円へ上昇しました。9月7日の終値は2,409円で、前日比16.06%安。高値からは36.4%下落しています。8月20日のルネサス協業などと上昇時期は重なりますが、値動きの原因を単独の発表に限定できません。終値同士の比較と、日中高値からの下落率も区別します。

赤字でPERは使えず、PSRは予想売上と実績売上を分ける
2026年9月7日終値2,409円に、発行済株式6,352万4,090株を掛けた時価総額は約1,530.3億円です。会社予想売上84.84億円で割ると、予想PSRは約18.0倍になります。PSRは時価総額が年間売上の何倍かを示す指標です。
25年9月期の実績売上64.10億円を使えば約23.9倍。分母を混ぜて比較してはいけません。26年9月期は最終赤字予想のためPERでの評価は不向きで、配当予想は0円(予想利回り0%)です。PSRの仕組みと注意点は次の記事で詳しく説明しています。
[関連]PSR(株価売上高倍率)とは?グロース企業の割安/割高を判断する重要指標を解説
高値から3割超下がっても、将来売上への要求は大きい
予想PSR18倍という数字だけで、割高の境界を断定するのは難しいものです。ただし、株価を今の水準で保ち、倍率が10倍へ低下すると仮定すると、必要な年間売上は約153億円です。26年9月期予想の約1.8倍に当たります。
これは目標株価でも会社計画でもなく、現在の価格が要求する成長を逆算した試算です。増収だけでなく、ソフトの継続収入や粗利益率が伸びれば高い評価を支えやすくなります。反対に、低採算の車両販売だけで売上を増やしても、同じ倍率が維持されるとは限りません。
PBR約11.33倍の分母はIPO前、資産評価には時点の差がある
2026年9月7日のYahoo!ファイナンスは、実績PBRを11.33倍、1株当たり純資産(BPS)を212.57円と表示しています。株価2,409円をBPSで割れば、同じ倍率になります。このBPSは26年9月期第3四半期末の自己資本と株数に対応する水準です。
6月末の財務には7月の公募増資が含まれず、現在の純資産に対する倍率とは一致しません。調達した資金と増えた株数の両方を反映する必要があります。次回決算で増資後の純資産を確認するまでは、このPBRを補助指標として扱います。
今後の株価を支えるのは、量産台数と粗利益が資金消費を上回る道筋

ティアフォーの評価を引き上げる材料は、提携先の数だけではありません。量産契約の具体化、採算改善、調達後の資金残高がそろうほど事業への期待を裏付けられます。次回決算は、この3点を同じ資料で照合します。
経常黒字化の目安は累計約800台だが、達成年は確約されていない
8月の決算説明資料は、経常利益の黒字化に向けた車両運用台数の目安を累計約800台としています。ただし、車両タイプや案件単価などに左右される会社の試算です。800台に届けば無条件で黒字になる、という保証ではありません。
同資料の2030年の累計1,800台超も将来見通しです。受注を確約した台数ではありません。台数が増えても、持分法適用会社の案件か、連結売上を計上する案件かで収益への反映は異なります。台数、契約単価、収益の計上先がそろって初めて、黒字化との距離を測れます。

粗利益が開発負担を吸収すれば強気、量産が遅れれば評価を見直す
強気に評価できるのは、開発案件が量産へ移り、継続収入の増加で粗利益が伸び、研究開発費の負担を吸収し始める展開です。売上だけが伸び、営業赤字が縮まらなければ、成長期待の裏付けは弱いままです。
反対に、量産開始の延期、想定を下回る粗利益、営業資金流出の拡大が重なれば評価を引き下げる必要があります。次の26年9月期通期決算では、第4四半期売上33.06億円の実現と、27年9月期予想を併せて確認します。サウジアラビア事業の補助金と事業費の反映も対象です。
潜在株式とロックアップは、事業の進捗と別に株価へ影響する
2026年6月29日の上場申請資料に記載された新株予約権の潜在株式は613万3,000株です。当時の発行済株式に対する比率13.3%を、公募後の比率として使ってはいけません。権利行使で株数が増えれば、1株当たりの持分は薄まります。
主要株主には原則180日のロックアップが設けられていますが、主幹事側の同意などによる解除余地があります。期間の終了は売却の確定ではありません。売却制限、権利行使、追加調達を分けて追います。公開価格・初値・募集条件はIPO記事にまとめています。
[関連]ティアフォー(593A)のIPO結果|公開価格・初値・上場時の募集条件
まとめ|ティアフォーの将来性は、量産後に利益が残るかで判断する
ティアフォーは、Autowareを軸に商用車から乗用車へ顧客を広げています。ルネサスやAstemoとの協業は、その入口を増やす材料です。
一方、2026年9月7日時点の予想PSRは約18倍で、成長期待は大きく織り込まれています。提携の発表と確定受注、補助金と本業の利益を分ける視点が欠かせません。
今後は量産台数、粗利益、営業資金流出を確認します。約800台という会社の黒字化目安も、単価と費用の前提を伴う数字として追っていきましょう。

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執筆者情報
日本投資機構株式会社 アナリスト
大学時代に投資家である祖母の影響で日本株のトレーディングを始める。大学時代、アベノミクスの恩恵も受けて資金を増やすことに成功する。卒業後、証券会社、投資顧問会社を経て2019年2月より日本投資機構株式会社の分析者に就任。モメンタム分析を最も得意としており、IPO(新規上場株)やセクター分析にも長けたアナリスト。

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