京都フュージョニアリングは、2026年9月11日時点で未上場です。公式採用情報にはIPO準備の業務が記載されていますが、確認した会社発表と日本取引所グループの新規上場情報に、上場日を確定できる情報はありません。
核融合発電に必要な機器を供給する同社は、発電所の商用運転に先立って受注を獲得しています。ただし、技術への期待だけでは収益力は測れません。事業の強みと実証計画、資金調達の中身、決算公告から分かる課題を分析します。
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京都フュージョニアリングはIPO準備を進めるも上場時期は未確認

京都フュージョニアリング(KF)は2019年10月設立の核融合エンジニアリング企業です。上場を意識した社内体制の整備は採用情報で確認できますが、具体的な上場時期を示す発表とは分けて読む必要があります。
採用情報で確認できるIPO準備と内部統制の整備
同社の公式採用ページから案内される財務・経理職の募集には、IPO準備に関わる業務が含まれます。内部統制やガバナンスの整備も記載され、単なるインターネット上の噂より、会社が上場に備える意思を読み取れる情報です。確認先はHRMOS掲載の「財務・経理シニアアソシエイト」です。
ただし、求人票には募集時点の役割や将来の業務も含まれます。人材の採用と実際の審査開始には距離があり、求人の掲載期間から上場年度を逆算できません。採用情報が裏付けるのは準備の方向性までです。
上場準備と取引所の上場承認は異なる
上場準備では、企業が決算や組織の管理体制を整えます。一方、上場承認は取引所による審査を経た別の段階です。2026年9月11日に確認した日本取引所グループの新規上場会社情報では、KFの上場承認は確認できませんでした。主幹事証券会社や公開価格も、確認した公式資料では不明です。
大型の資金調達や有名企業の出資は、取引所の承認に代わる証拠にはなりません。「上場に向けた準備がある」と「近日中に上場する」を混同せず、日程は会社と取引所の公表資料で確かめる必要があります。
株価・証券コード・株の購入方法の現状
KFは未上場のため、証券取引所で売買される市場株価はありません。一般的な証券口座で同社の上場株を購入する方法も、現段階では使えません。上場銘柄としての証券コードは未確認で、株価チャートや市場時価総額を前提にした割安・割高の分析はできない状態です。
会社が公表する第三者割当増資は、誰でも申し込めるIPOの募集とは異なります。過去の増資価格が分かっても、株式の種類や付帯する権利が同じとは限りません。将来の公開価格や初値を、その金額から直接予想する根拠にはできません。
核融合発電の商用化に先立ち、機器・開発サービスを供給する

KFの特徴は、核融合による電力販売だけに収益化を依存しない事業構造です。研究施設や開発企業へ機器と技術を提供するため、商用発電所が完成する前にも販売機会があります。主要技術の役割と、顧客が求める性能を見ていきます。
プラズマを加熱するジャイロトロン
ジャイロトロンは、高出力の電磁波で核融合に必要なプラズマを加熱する装置です。KFは装置単体に加え、電源などを含むシステムを扱います。2025年12月18日の年末報告では、米DIII-Dや英Tokamak Energy向けの納入に言及しており、研究段階の構想だけではありません。
顧客の装置に合う周波数や出力を安定して出すには、設計から試験までの技術が必要です。納入後も稼働を支える対応が求められます。導入実績を次の案件につなげる余地がある一方、個別仕様への対応が増えれば製造や試験の負担も大きくなります。
燃料を回収・循環させる燃料サイクル
重水素とトリチウム(三重水素)を用いるD-T方式では、反応せずに残った燃料を回収し、再び炉へ供給する仕組みが必要です。KFは燃料の分離・回収から計量、循環までのシステムを開発しています。公式のUNITY計画では、カナダ原子力研究所(CNL)との連携がこの分野を担います。
燃料の漏出を抑える性能と、運転を継続できる処理能力の両立が課題です。燃料が十分に戻らなければ発電設備も安定して動かせません。なお、核融合には異なる燃料を使う開発方式もあり、同じ燃料循環設備が全方式に必要なわけではありません。
熱回収と燃料増殖を担うブランケット技術
ブランケットは炉の周囲でエネルギーを熱として受け取る設備です。D-T方式では、リチウムと中性子の反応を利用してトリチウムを生み出す役割も担います。KFは熱の取り出しと燃料の供給を結び付ける設計を手掛け、2026年2月には英国の計画向けに一部の開発・製造を受注しました。
発電に使える高温の熱を取り出せても、材料が短期間で傷めば交換費用が増えます。燃料を増やす性能と耐久性を同時に満たせるかが、将来の採用拡大を左右します。技術的な成功だけでなく、保守費用を含めて発電所に採用される設計が必要です。
累計受注は140億円超、売上高100億円は今後の目標

2026年8月24日の会社発表は、契約獲得の進展と売上拡大の目標を示しています。ただし、契約金額の累計をそのまま今期の業績として読むと、事業規模を過大評価します。受注の対象と納入能力まで確かめる必要があります。
累計受注契約額と売上高・受注残は別の数字
会社が公表した累計受注契約額140億円超は、これまでに結んだ契約の合計です。まだ売上に計上していない受注残とは区別されます。同じ発表の売上高100億円規模は今後の目標で、達成年度や直近の売上実績は明示されていません。
累計には既に納入した案件も含まれ得るため、140億円を翌期の売上予想に置き換える計算はできません。どの契約がいつ納入され、どの段階で売上になるかで各期の業績は変わります。目標への進捗を測るには、年間売上と期末受注残の開示が必要です。
UKIFSやQSTからの受注が示す機器・開発需要
2026年2月24日の発表では、英国子会社がUKIFSからブランケットの一部分の開発・製造を受注しました。UKIFSは英国の核融合計画STEPを担う組織です。核融合炉全体の建設契約を獲得したという発表ではありません。
同年5月15日には、量子科学技術研究開発機構(QST)から燃料の回収・計量設備のモックアップ開発を受注しています。ITER向け設備を試す模擬装置で、国内試験に用います。研究から実機設計へ進む途中にも商機がありますが、これらの発表だけでは契約金額や利益は分かりません。
滋賀の生産拠点と量産投資で供給を増やせるか
KFは2026年2月25日、滋賀県高島市にKF滋賀イノベーションファクトリーを開設すると発表しました。ジャイロトロンシステムの開発・生産拠点で、同年秋ごろからの順次稼働を計画しています。大きな電力を必要とする試験設備の確保が、供給を増やすうえで重要です。
受注が増えても、試験を待つ製品が積み上がれば納期は延びます。量産投資の効果は、建屋の開設だけでなく出荷台数や納入期間の短縮に表れます。基準日時点で本格稼働の完了は確認できず、拠点の整備を売上増加の実績と同一視できません。
UNITYは熱・燃料循環・燃料増殖を段階別に実証する

UNITYはKFの技術を検証する施設群です。施設ごとに試験対象と開発段階が異なり、一つの施設の稼働が核融合発電所全体の完成を意味するわけではありません。2026年9月11日までの公式発表を基に、それぞれの到達点を確認します。
UNITY-1は核融合反応を使わず熱回収・発電を試験
京都のUNITY-1は、ヒーターで核融合炉の熱を模擬する施設です。公式説明では核融合反応を起こさず、トリチウムや中性子も使いません。発電の試験と核融合反応による発電実証は別です。熱を運ぶ流体や熱交換器を組み合わせ、設備全体として動くかを試します。
2026年8月の会社発表は、秋以降に高温ループで発電・水素製造の統合試験を進める計画を示しました。得られるのは熱回収設備の運転データです。中性子による材料への影響など、この施設だけでは再現できない条件の検証は別に必要になります。
UNITY-2は2026年内のトリチウム運転を計画
UNITY-2は、CNLと連携してカナダのチョークリバーに整備する燃料サイクルの試験施設です。2026年8月の会社発表では、国内の予備試験を進めながら、年内に現地でトリチウムを使った運転を目指しています。計画の公表と運転開始の実績は分けて読む必要があります。
燃料が装置内のどこに残り、どの程度戻ってくるかを把握できれば、商用設備の設計に役立ちます。ただし、試験が始まっただけでは連続運転の性能まで証明できません。運転時間や回収性能の結果が示されて初めて、顧客が採用する際の技術的な裏付けが増えます。
UNITY-3は2028年末の完成を目指す増殖ブランケット試験施設
UNITY-3は米オークリッジ国立研究所(ORNL)と進める、増殖ブランケットの試験施設です。ORNLの2026年8月11日発表でも共同開発を確認できます。KFが掲げる2028年末の完成は計画であり、現時点で燃料の自給を達成したという意味ではありません。
燃やしたトリチウムより多くを生み出せるかが重要な試験対象です。生成量と消費量の比率を表すTBRが1を超えても、回収時の損失などを考慮する必要があります。装置の試験値と、発電所全体が必要な燃料を継続供給できる性能には違いがあります。

257.2億円の資金確保には増資だけでなく融資枠も含まれる

資金調達の規模は開発を続けるうえで重要ですが、発表額のすべてが手元現金として入るとは限りません。株式による調達と借入関連の枠では、返済や株主への影響が異なります。2026年8月24日発表のシリーズD初回調達を分解します。
増資167.2億円と融資枠などを含む90億円
公表額の内訳は、第三者割当増資167.2億円とデット90億円です。デットには融資枠・与信枠が含まれます。合わせて257.2億円ですが、90億円の全額を既に借り入れた、あるいは同日に現預金が同額増えたとは読み取れません。
増資は返済を前提としない一方、新株発行によって既存株主の持株比率が低下し得ます。借入は利用条件に従う資金で、実行すれば通常は利息や返済の負担が生じます。会社の資金余力を評価するには、発表総額に加えて借入実行額と利用条件の確認が欠かせません。

累計増資329.8億円は企業価値を示す数字ではない
会社が示す累計エクイティ調達額329.8億円は、過去からの株式による調達の積み上げです。2025年9月9日発表の162.6億円に、今回の167.2億円を加えると一致します。ただし、この合計は全株式の評価額でも、現在の現預金残高でもありません。
未上場企業の評価額は、直近の発行価格や株式数、優先株式に付く権利などで変わります。研究開発に支出済みの資金もあるため、過去の調達額から手元資金は逆算できません。本記事で確認した公式資料だけでは、株式が割安かを評価するための条件がそろいません。
実証施設・量産・海外展開に資金を振り向ける
今回の資金は、UNITYの整備とジャイロトロンの量産、海外事業の拡大などに充てる方針です。性能を証明する投資と、製品を届ける投資を並行する計画といえます。試験の成功が受注につながっても、生産能力が足りなければ売上拡大は遅れます。
反対に、需要より先に固定費が増えれば損益は悪化します。各分野への配分額や回収期間は、確認した発表では明らかではありません。投資の評価には、施設完成という工程だけでなく、その後に得る有償案件や製品の納入実績が必要です。支出の大きさだけでは収益性を説明できません。
25年9月期は純損失24.8億円、黒字化の時期は読み取れない

大型調達の発表とは別に、決算公告から損失と財務状態を確認できます。25年9月期の公告は2026年8月の調達より前の情報です。新しい資金の確保だけで、事業が既に黒字化したとはいえません。年度ごとの数字を切り分けて分析します。
純資産105.8億円と赤字の拡大を分けて読む
Gビズインフォ掲載の決算公告を億円単位に換算すると、次のようになります。25年9月期の純損失は前期より約5.4億円拡大しました。純資産は株主資本に新株予約権を含めています。
| 決算期 | 総資産 | 負債 | 純資産 | 純損失 |
|---|---|---|---|---|
| 24年9月期 | 128.5億円 | 7.2億円 | 121.3億円 | 19.3億円 |
| 25年9月期 | 151.5億円 | 45.8億円 | 105.8億円 | 24.8億円 |
純資産がプラスなので、この公告を債務超過と表現するのは誤りです。ただし、資本の厚みは利益を生む力の証明にはなりません。赤字の原因別内訳が分からないため、損失増加の全額を研究開発投資による一時的な負担と断定するのも避けるべきです。

売上実績・利益率・資金繰りには公開情報の限界がある
確認した決算公告では、売上高や営業利益、キャッシュフローの詳細を把握できません。したがって、純損失だけから利益率や資金の持続年数は計算できません。売上の数字が見当たらないからといって、売上ゼロを意味するわけでもありません。
会計上の損失には現金支出と時期が一致しない費用も含まれます。設備の購入や売掛金の回収も資金繰りに影響するため、損失額をそのまま年間の現金流出額にはできません。また、25年9月末の資産に翌年の調達額を単純加算して、現在の財務状態を推定する方法も不適切です。
開発の遅れと顧客の資金調達が受注を左右する
業界団体FIAの2026年7月公表調査では、回答56社のうち67%が資金調達を短期的な課題に挙げました。業界全体を網羅した統計ではありませんが、顧客側の開発資金も供給企業の受注を左右するリスクがうかがえます。
顧客の試験が遅れれば、機器の発注や納入時期が後ろへずれる可能性があります。日本政府は2030年代の発電実証を目指していますが、これはKFの売上や契約を保証しません。KF自身の試験結果に加え、顧客の開発計画と資金確保が進むかで、将来の販売機会は変わります。
出資・協業の関係は異なるため、関連企業の利益へ直結させない

KFには上場企業も出資・協業しています。ただし、出資者と設備の供給者では得られる利益の仕組みが異なります。社名が並ぶだけで業績への影響は測れません。具体的な関係を確認し、将来のIPOで追加開示される項目へつなげます。
JR東日本の出資とニチコンの生産拠点協力
2026年8月の資金調達ではJR東日本が新たな出資者に加わりました。一方、ニチコンは出資に加え、草津安曇川工場内でのKFの拠点整備に関わります。資本参加と製品を作るための協力は別の関係であり、同じ材料として扱えません。
KFの企業価値が上がっても、出資先の上場が直ちに株主企業の大幅増益を生むとは限りません。出資比率や会計処理、事業全体に占める規模で影響は変わります。核融合関連銘柄を探す場合も、KFへの出資と機器供給の契約を分け、各社の本業や受注の内容まで確認する必要があります。
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NGKとのFLiBe共同開発は将来の事業化に向けた取り組み
2026年7月16日、KFとNGK(旧日本ガイシ)は、FLiBeの技術開発・事業化で連携する覚書を発表しました。FLiBeはフッ化リチウムとフッ化ベリリウムからなる溶融塩で、熱の輸送や燃料増殖を担う材料として開発が進んでいます。
NGKは材料の製造や精製・分析、KFは循環系の設計や試験などを担う計画です。材料と装置を組み合わせた性能の検証に意味がありますが、覚書の締結は量産品の売上計上を示しません。実際の製造方法や寿命の確認を経て、顧客向けの供給に進めるかが次の課題です。
上場承認後は公開価格・資金使途・株主構成を確認
将来IPOが承認された場合、KFの評価では上場時の時価総額と開示される売上・資金需要の釣り合いが重要です。現時点の資料で不足する採算や受注残がどこまで分かるかによって、価格評価の精度は変わります。純損失が続く場合、黒字を前提とするPERだけでは評価できません。
目論見書では、公募資金が新たな設備向けか運転資金向けかを確認します。既存株主の売出しと会社が受け取る資金も区別が必要です。新株予約権による株式数の増加や、既存株主の売却制限が解ける条件は、技術とは別に上場後の需給へ影響します。
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まとめ|上場への期待と事業の実績を分けて追う

京都フュージョニアリングは、上場を意識した体制整備を進める未上場企業です。商用発電前にも機器供給で受注を得られる事業構造に注目できます。
一方、施設の実証計画と販売実績、調達できる資金と手元現金は、それぞれ異なります。次は試験結果や納入の進捗、売上と採算の開示を追いたいところです。
上場が正式に決まれば、技術の将来性に加えて公開価格と資金需要を比較できます。現段階では、日程や初値を先回りして断定せず、事業の進展を確認する段階です。

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執筆者情報
日本投資機構株式会社 アナリスト
大学時代に投資家である祖母の影響で日本株のトレーディングを始める。大学時代、アベノミクスの恩恵も受けて資金を増やすことに成功する。卒業後、証券会社、投資顧問会社を経て2019年2月より日本投資機構株式会社の分析者に就任。モメンタム分析を最も得意としており、IPO(新規上場株)やセクター分析にも長けたアナリスト。

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