ソフトバンクグループ(9984) ─AI時代の中核か評価先行か、今後の株価の本質を読み解く─

ソフトバンクグループ(9984) ─AI時代の中核か評価先行か、今後の株価の本質を読み解く─

【9984】ソフトバンクグループは、かつての通信会社という枠を完全に超え、「AI時代の投資会社」として再定義されつつあります。

生成AIブームを背景に、傘下のアーム(Arm)が再評価され、株価は市場全体のリスクオン局面で強く反応する展開が続いています。一方で、過去のビジョン・ファンドの失敗や投資先の不透明さから、「実力以上に評価されているのではないか」という慎重論も根強く残ります。

本記事では、ソフトバンクグループの事業構造、AI戦略の実態、株価評価の考え方を整理し、今後の投資判断に必要な視点を掘り下げていきます。

目次

ソフトバンクグループは通信企業ではなく「AI投資会社」である

結論から言えば、現在のソフトバンクグループを通信株として捉えるのは適切ではありません。 市場が評価しているのは、国内通信事業の安定収益ではなく、AIを軸とした投資会社としての将来性です。

経営資源の配分は「投資」へ

その理由は、経営資源の配分が明確に投資事業へと移行している点にあります。国内通信は【9434】ソフトバンクとして切り出され、持株会社である【9984】は、アームを中心とした半導体・AI投資に集中しています。

株価もテック指数と連動

実際、決算説明や孫正義氏の発言を見ても、AI・半導体・データセンターといったキーワードが繰り返し強調されており、通信事業の成長性が語られる場面は限定的です。株価がNASDAQや半導体指数と高い連動性を示している点も、同社が「グロース投資会社」として見られている証拠と言えるでしょう。

アーム(Arm)が株価評価の大部分を占めている

ソフトバンクグループの現在の株価を理解するうえで、アームの存在は避けて通れません。結論として、【9984】の株価はアームの企業価値に大きく依存しています。

アーム(Arm)とは:AI時代の「設計図」を握る企業

アームは半導体を自ら製造するのではなく、その「設計図(IP)」を開発し、世界中のメーカーにライセンス供与する英国企業です。

スマートフォンの心臓部ではほぼ100%のシェアを独占していますが、最大の強みは「圧倒的な省電力性能」にあります。膨大な電力を消費するAIデータセンターにおいて、アームの技術は不可欠なインフラとなっており、これがソフトバンクグループの将来価値を担保する最大の要因です。

アーム株価がNAVを押し上げる

ソフトバンクグループはこのアーム株式の大半を保有しており、アームの株価上昇はそのままNAV(純資産価値)の押し上げ要因となります。そのため、市場では「ソフトバンクグループ=アームのレバレッジ投資」という見方が強まり、株価も期待先行で上昇しやすい構造になっています。 

ソフトバンクグループの株価は「ビジョン・ファンド」の評価と表裏一体

2025年12月18日~2026年1月28日までの日足チャート TradingViewより引用

【9984】ソフトバンクグループの株価は、アームという明確な評価軸を持つ一方で、ビジョン・ファンドという不透明要素も同時に抱えています。これが株価の振れ幅を大きくしている最大の要因です。

市場環境に左右される評価額

その理由は、ビジョン・ファンドが未上場株を中心とした投資で構成されており、評価額が市場環境に大きく左右される点にあります。株式市場がリスクオンの局面では将来期待が先行しやすく、逆にリスクオフ局面では評価が一気に切り下がる構造です。

過去の損失が示すリスク

実際、過去にはWeWorkをはじめとする大型投資案件で巨額の損失を計上し、株価が長期低迷する局面もありました。この経験から、市場では「孫正義氏の先見性」と「投資の振れ幅」が常にセットで評価されています。

AI戦略は株価を押し上げるが、実態はまだ道半ば

現在のソフトバンクグループの株価上昇は、AI戦略への期待が大きく影響しています。結論としては、方向性は正しいものの、収益化という点ではまだ途上段階と言えます。

収益化には時間を要する

理由として、AI関連投資の多くがインフラ・基盤技術への先行投資であり、短期的な利益貢献が限定的である点が挙げられます。アームはライセンスモデルで安定収益を持つ一方、AI向け需要の本格的な業績反映には時間を要します。

期待と実績のギャップに注意

加えて、ビジョン・ファンド内のAI関連企業も多くが成長フェーズにあり、黒字化前の企業が中心です。市場がAIというテーマに強気である間は評価が維持されますが、業績が伴わなければ期待調整が起きやすい点は注意が必要です。

NAV(純資産価値)から見たソフトバンクグループの株価

2018年3月~2026年1月までの月足チャート TradingViewより引用

ソフトバンクグループを分析するうえで欠かせないのがNAV(Net Asset Value)による評価です。 結論として、同社株価は常にNAVとの乖離を意識して動いています。

NAVとは何か

NAVとは、保有する上場株式・未上場株式・現金などの資産価値から負債を差し引いた純資産価値を指します。 アームの株価が上昇すればNAVは拡大し、逆にテック株全体が下落すればNAVも縮小します。

ディスカウントとプレミアムの繰り返し

市場では、ソフトバンクグループ株がNAVに対してディスカウント(割安)で取引される場面と、期待先行でプレミアム(割高)を付ける場面を繰り返してきました。 足元ではAI期待を背景にディスカウントが縮小する局面にありますが、これが持続するかどうかは市場環境次第と言えるでしょう。

財務戦略と自己株取得が下値を支えている

ソフトバンクグループの株価が一定水準で踏みとどまりやすい理由として、積極的な財務戦略が挙げられます。 結論として、自己株取得は株価の下支え要因として機能しています。

アセット売却と還元のサイクル

同社は過去数年にわたり、アセット売却と自己株取得を組み合わせる戦略を取ってきました。 アリババ株の売却や資産の流動化によって得た資金を、自社株の買い戻しに充てることで、1株あたり価値の向上を図っています。

市場へのメッセージ効果

この姿勢は、市場に対して「株価を意識している経営」というメッセージを発信する効果があり、急落局面では一定の安心感につながります。 ただし、資産売却余力には限界があるため、将来的には本業の価値創出がより重要になります。

株価が崩れるときに起きやすい3つのパターン

ソフトバンクグループ株が調整局面に入るときには、いくつか共通したパターンが見られます。 結論として、テーマの変調と外部環境の悪化が同時に起きると下落が加速します。

①AI・半導体期待の後退

第一に、AIや半導体に対する市場期待が後退した場合です。好材料が出尽くし、成長ストーリーに疑問が出始めると、評価修正が一気に進みます。

②金融環境の変化

第二に、米国金利の急上昇など金融環境の変化です。金利上昇局面では、将来価値を重視するグロース株が売られやすく、同社も例外ではありません。

③ビジョン・ファンドの悪材料

第三に、ビジョン・ファンド関連の悪材料です。未上場投資先の評価損や上場延期といったニュースは、投資家心理を冷やしやすく、株価の下押し要因になります。

短期資金と長期投資家が混在する需給構造

ソフトバンクグループの株価変動が激しい背景には、需給構造の特殊性があります。 結論として、短期資金と長期投資家が同時に参加することで、値動きが荒くなっています。

短期筋と長期筋の思惑

短期筋はAI関連ニュースや米国株の動きを材料に、機動的に売買を行います。

一方で、長期投資家はNAVやアームの成長性を評価し、押し目を拾うスタンスです。

ボラティリティは宿命

この二者が交錯することで、好材料が出た際には急騰しやすく、悪材料が出ると急落しやすい相場が形成されます。 ボラティリティの高さは、この銘柄の特徴として受け入れる必要があります。

ソフトバンクグループへの投資スタンスは「期間」で明確に分けるべき

 【9984】ソフトバンクグループへの投資は、短期・中期・長期で考え方を明確に切り分ける必要があります。 理由は、株価変動要因が「業績」よりも「テーマ・外部環境」に強く左右されるためです。

 同社はAIや半導体といった世界的テーマの影響を受けやすく、相場環境次第で評価が大きく振れます。 そのため、自身の投資期間とリスク許容度に応じたスタンスを取らなければ、値動きに振り回されやすい銘柄と言えます。

株価の連動性と短期投資のポイント:米国市場とアームがすべて

ソフトバンクグループへの投資において最も重要な特徴は、TOPIXや日経平均といった国内指数よりも、米国の半導体株指数(SOX指数)やNASDAQ、そして傘下のアーム(Arm)の株価との連動性が極めて高い点です。

実質的な「グローバル・テック株」

同社は国内株でありながら、実質的には「グローバルなAI・テック株」として機能しています。 これは、企業価値の中核を占めるアームが世界の半導体需要に直結しているためです。

生成AIブームでデータセンター需要などが高まれば、アームの評価が上がり、即座にソフトバンクグループの株価も引き上げられます。一方で、米国の金利上昇局面やハイテク株の調整局面では、国内の業績に関わらず真っ先に売られやすい傾向があります。

短期投資における結論

この特性から、短期目線では「テーマ株」として割り切る姿勢が有効です。 米国のAI関連株が買われた翌日は、東京市場で【9984】が好意的に反応するケースが多く見られます。

短期トレードを行う際は、国内材料よりも「アーム株価」「米金利」「半導体指数」といった外部指標を常に監視し、イベントドリブンで機動的に売買する戦略が求められます。

中期投資では「NAV水準」と自己株取得が判断軸

中期目線での結論は、NAVとの乖離を意識した売買が有効です。 理由として、ソフトバンクグループの株価は長期的にNAVに収れんする傾向があるためです。

期待と現実の乖離を見極める

アームの評価が上昇し、NAVが拡大すれば株価も引き上げられますが、期待先行でNAVから大きく乖離すると調整が入りやすくなります。加えて、自己株取得の有無も重要な判断材料です。

下支え要因としての自社株買い

同社は株価が大きく下落した局面で自社株買いを実施することが多く、これが中期的な下値支えとして機能してきました。 中期投資家は、株価水準だけでなく、資産売却・自己株取得の動きにも注目する必要があります。

長期投資は「AI構想の実現力」を信じられるかが全て

長期投資における結論は明確です。 ソフトバンクグループを長期で保有するかどうかは、孫正義氏が描くAI構想の実現を信じられるかに尽きます。 理由は、同社の将来価値がアームを中核としたAIエコシステムの拡大に大きく依存しているためです。

アームを中心としたエコシステム

アームがAI時代の標準アーキテクチャとして地位を確立できれば、ソフトバンクグループの企業価値は大きく跳ね上がる可能性があります。

リスク許容度が問われる

一方で、構想倒れに終わった場合や、競争環境が激化した場合、期待が剥落するリスクも無視できません。 長期投資は高いリターンを狙える反面、相応の忍耐とリスク許容が求められます。

まとめ|ソフトバンクグループは「AI時代への賭け」を映す鏡

 【9984】ソフトバンクグループは、もはや通信株ではなく、AIと半導体という世界的テーマにレバレッジをかけて投資する「グローバル投資会社」です。

株価の中核を成すのはアームの企業価値であり、NAV評価、米国市場のセンチメント、ビジョン・ファンドの成否が複雑に絡み合って株価を形成しています。そのため、実力以上に評価される局面もあれば、悲観が先行して過度に売られる局面も生まれやすい構造です。

短期ではテーマ株としての値動きを活用し、中期ではNAVと自己株取得を軸に判断、長期ではAI構想の実現力を信じ切れるかが分かれ目となります。

ボラティリティの高さを理解したうえで、自身の投資スタンスに合った距離感で向き合うことが、ソフトバンクグループと付き合う最も現実的な戦略と言えるでしょう。

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執筆者情報

nari

江口 裕臣

日本テクニカルアナリスト協会認定テクニカルアナリスト(CMTA®)

著名な元機関投資家や経験豊富なアナリスト・ファンドマネージャーより培った知識と経験を基に、数多くの市場動向の予測や個別銘柄の動向をピンポイントで分析。銘柄の推奨実績において社内の月間最高勝率記録を持つテクニカルアナリスト。

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