JT(2914)の株価はまだ上がる?上方修正・増配後の今後を分析

大畠 典仁

日本投資機構株式会社 アナリスト

JTの株価はまだ上がる?上方修正・増配後の今後を分析

JT(2914)の株価は2026年9月15日終値で6,780円となり、7月31日の上場来高値7,218円から約6.1%下落しました。業績の上方修正と増配を受けた急騰は一服し、予想配当利回りは約4%へ戻っています。

今後も値上げで利益を伸ばし、Ploomの収益性が改善すれば上昇余地はあります。ただし、配当利回り4%だけで株価の底は決まりません。最新決算と10月の価格改定から、買値と次に確かめたい数字を整理します。

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目次

JTの株価は高値から約6%下落し、利回り4%へ戻った

株価を確認するノートパソコンと投資資料

JT株は決算後の7,000円台から調整しました。長期では上昇基調でも、短期の値動きは変わっています。株価指標は9月15日終値で統一し、7月の急騰とその後の反落を分けて確認します。

7月の最高値7,218円から調整し、9月は6,780円へ

JT株は7月31日、前日終値6,665円から7,135円へ約7.1%上昇しました。場中には7,218円を付け、上場来高値を更新しています。7月30日の通期予想引き上げと増配が買い材料になりました。

その後は高値を更新できず、9月11日に一時6,500円まで下落。9月15日は6,780円まで戻りましたが、高値更新が続いている状態ではありません。好決算後の上昇分をどれだけ保てるかを見る段階です。

JT(2914)日足チャート 2025年9月16日から2026年9月15日
2025年9月16日〜2026年9月15日の日足。TradingViewを参照し、Yahoo!ファイナンスの株価データで弊社作成

予想PER18.7倍でも、利益成長を織り込んだ評価

予想PERは会社予想EPS362.74円を使うと18.7倍です。高値時の約19.9倍から低下しましたが、利益予想が上がった結果ではなく、株価が下がったためです。割安感が強まったかは翌期の増益余地によって変わります。

PBRは6月末の1株純資産2,474.86円で計算しています。時価総額は自己株式を含む発行済み20億株を使い、予想PERとは株式数の基準が異なる点にも注意が必要です。利益と資産の両方に照らした評価です。

株価指標は9月15日終値と7月修正予想でそろえる

9月16日時点で確認できる最新の通期業績予想は7月30日公表分です。9月16日の場中株価は混ぜず、以下を今回の基準とします。

指標数値
株価6,780円
予想PER18.7倍
実績PBR2.74倍
予想配当利回り4.01%
時価総額(自己株式含む)13兆5,600億円
年初来高値7,218円(7月31日)
年初来安値5,451円(1月29日)
株価は2026年9月15日終値。EPS362.74円、BPS2,474.86円、年間配当予想272円で算出

JT株の上昇は値上げ・上方修正・増配が支えた

JT株の上昇は値上げ・上方修正・増配が支えた

株価上昇を支えたのは、販売本数だけに頼らない利益成長です。海外の価格改定がコスト増を吸収し、株主還元にもつながりました。ただし、約5年の上昇実績と、これから得られる収益は分けて考える必要があります。

海外たばこの価格改定が数量面の弱さを補った

26年12月期上期のたばこ総販売数量は前年同期比1.0%増でした。自社たばこ製品売上収益は19.1%増、為替一定では10.6%増となり、数量以上に単価が伸びています。

たばこ事業の調整後営業利益への寄与は、価格・商品構成が1,542億円のプラスでした。一方、数量効果は80億円のマイナスです。本数は増えても売れる国の構成が悪化し、数量面では利益を押し下げた点が決算の特徴です。

JTのたばこ事業利益の増減要因 価格・商品構成が1,542億円寄与
JT「2026年度第2四半期決算説明会資料」2026年7月30日、6ページ

約5年で株価は約3.1倍となり、配当も拡大した

JT株は2021年9月17日終値2,185円から、2026年9月15日の6,780円へ約3.1倍になりました。これは配当を含めない株価の比較です。2022年以降の上昇に、2025年後半からの利益拡大が重なりました。

直近1年でも2025年9月16日終値4,753円を大きく上回ります。ただし、2024年夏や2025年春には下押しも経験しました。長期保有で配当を受け取る投資でも、途中の株価変動は避けられません。

JT(2914)週足チャート 2021年9月13日週から2026年9月14日週
2021年9月13日週〜2026年9月14日週の週足。最終週は15日まで。TradingViewを参照し、Yahoo!ファイナンスの株価データで弊社作成

配当の増加は続いたが、2021年には減配もあった

2021年の年間配当は前年の154円から140円へ減りました。JTは減配しないと約束した銘柄ではありません。下表のEPSは各期の連結利益を基にした数値です。医薬事業の売却やカナダ訴訟の影響も含むため、増減率だけで本業を比べないでください。

12月期EPS年間配当
21年190.76円140円
22年249.45円188円
23年271.69円194円
24年100.95円194円
25年287.36円234円
26年予想362.74円272円

26年12月期中間決算は為替を除いても増益だった

26年12月期中間決算は為替を除いても増益だった

9月16日時点の最新決算は、7月30日発表の中間決算です。円安に加え、たばこ・加工食品の両事業が増益となりました。医薬事業を除いた比較と連結全体の比較では増益率が異なるため、数字の基準をそろえます。

売上収益17.7%増、連結最終利益35.0%増

上期の売上収益は1兆9,861億円、営業利益は6,449億円でした。親会社株主に帰属する利益は4,318億円で、前年の連結全体に対して35.0%増です。前年の継続事業と比較すると28.9%増となり、どちらも同じ4,318億円を表します。医薬事業の非継続事業への分類による違いです。

上期実績金額前年同期比
売上収益1兆9,861億円+17.7%
営業利益6,449億円+29.0%
為替一定の調整後営業利益6,261億円+19.4%

通期利益とFCFの上方修正は下期減速も織り込む

通期の親会社株主帰属利益予想は5,700億円から6,440億円へ、営業利益は9,210億円から1兆80億円へ引き上げられました。売上収益は3兆8,850億円、FCFは6,510億円の予想です。

FCFは投資後に残る現金を示す指標で、JTは営業・投資キャッシュフローに独自の調整を加えています。設備投資だけを引いた数字とは異なります。下期の減速も想定した計画のため、上期の増益率を単純に2倍へ延ばす読み方はできません。

JTの26年12月期修正予想とFCF6,510億円
JT「2026年度第2四半期決算説明会資料」2026年7月30日、11ページ

加工食品も増益だが、全社の収益はたばこが中心

加工食品事業の上期売上収益は792億円、調整後営業利益は41億円です。前年同期よりそれぞれ25億円、15億円増え、冷凍食品や常温食品の価格改定が原材料高を上回りました。

一方、同期間のたばこ事業の調整後営業利益は6,829億円です。医薬事業を売却したJTでは、加工食品の改善だけでたばこ需要減を補うのは難しい規模差があります。加工食品の通期利益見通しも80億円で据え置かれており、今回の上方修正の主役はたばこです。

Ploomはシェアを伸ばしたが、黒字化はまだ計画段階

Ploomの成長を考える加熱式たばこのイメージ

JTは紙巻たばこで現金を稼ぎ、PloomなどのRRPへ投資しています。RRPは喫煙に伴う健康リスクを低減する可能性のある製品群です。販売拡大と利益貢献は別であり、数量が伸びた段階で黒字化済みとは読めません。

日本のPloomシェアは2026年6月に18.3%へ上昇

26年12月期上期のPloomなど加熱式製品の販売数量は前年同期比43.5%増でした。日本の加熱式カテゴリ内シェアは、2026年6月に18.3%まで上がっています。2025年末の15.7%を使うより、直近の浸透を反映した数字です。

RRP関連売上収益は40.7%増の786億円。一方、自社たばこ製品売上収益に占める割合は約4.3%です。成長率は高くても、全社の稼ぐ力を置き換える規模には届いていません。

JTのRRP関連売上収益786億円と日本の加熱式シェア18.3%
JT「2026年度第2四半期決算説明会資料」2026年7月30日、8ページ

8,000億円投資の黒字化目標は間接費配賦前

JTは2026〜2028年の3年間で、RRPへ約8,000億円を投じる計画です。2028年までに主要加熱式市場でシェア10%台半ばを獲得し、RRPビジネスの黒字化を目指します。

黒字化は、粗利益からマーケティング費用を引いた損益の合計が基準です。間接費を配賦する前の会社定義であり、全費用を負担した営業黒字とは異なります。販促費の吸収が進むかを確かめながら、連結利益への寄与を評価します。

JTのRRP投資計画と間接費配賦前の黒字化目標
JT「2025年度決算説明会資料」2026年2月12日、12ページ

年間配当272円は維持見通しでも、買値で受取効率は変わる

年間配当272円は利益とキャッシュフローで支えられる

配当予想は7月の増額後、年間272円です。当初予想比30円増、前年実績比38円増を区別します。利回りの回復は買値を考える材料ですが、利益が減った場合まで同額を約束する内容ではありません。

配当性向75.2%はカナダ調整後の利益が基準

JTの還元方針は配当性向75%を目安とし、±5%程度の範囲で決める設計です。26年12月期の予想配当性向75.2%は、カナダ調整後の利益6,420億円を使っています。報告利益6,440億円やEPSから単純計算した比率とは一致しません。

利益の約4分の3を配当に回すため、増配の継続には利益拡大が必要です。配当性向が方針内でも現金支出が重なる年はあり、利益と資金繰りの両方を確認したい銘柄です。

JTの年間配当予想272円と予想配当性向75.2%
JT「2026年度第2四半期決算説明会資料」2026年7月30日、15ページ

FCF予想は配当を上回るが、余剰資金は無制限ではない

年間配当272円と自己株式を除く約17.75億株を使うと、配当総額は約4,829億円です。通期FCF予想6,510億円との差は約1,681億円となり、計画上は配当を賄えます。発行済み20億株をそのまま掛けると必要額を過大に計算します。

ただし、この差額がそのまま翌期の増配余力になるわけではありません。資金の発生・支払い時期も異なり、事業投資や借入返済、訴訟和解金の支払いを踏まえて手元資金を確保する必要があります。

利回り4%の買値は6,800円で、株価の下値保証ではない

年間272円の配当を前提にすると、希望利回りから逆算した株価は下表の通りです。現在値は4%の目安をわずかに下回ります。ただし、6,800円に必ず買いが入る根拠にはなりません。

4.5%や5%を待つ間に株価が上がる可能性もあります。目安は配当予想が変われば計算し直し、含み損を配当で確実に埋められるとは考えないでください。

希望利回り株価の目安
4.0%6,800円
4.5%約6,044円
5.0%5,440円
年間配当272円÷希望利回りで試算。目標株価ではありません

100株の年間配当は2万7,200円、今から狙う期末分は半分

100株の購入代金は9月15日終値で67万8,000円です。年間配当予想は税引前2万7,200円ですが、今から買って26年12月期分として狙うのは期末1万3,600円です。中間分の基準日6月30日はすでに過ぎています。

期末配当の基準日は12月31日で、受け取りには権利付最終日までの保有が必要です。権利落ち後は配当分が株価に反映されるため、受取額だけを利益とは扱えません。株主優待は2023年発送分で廃止されています。

下期は数量減とPloom値上げで成長率が鈍化しやすい

下期は数量減とPloom値上げで成長率が鈍化しやすい

上期は増収増益でも、JTは下期の成長鈍化を見込んでいます。10月の値上げは認可済みで、実施前後の販売動向が次の確認対象です。価格改定による利益への影響と、買いだめによる数量の振れを分けて読みます。

年間販売数量は1.0%減〜横ばいを想定する

JTは26年12月期の総販売数量を前年比1.0%減〜横ばいと見込んでいます。上期は1.0%増でも、下期は複数市場の需要減や前年との比較影響を想定し、数量計画は当初から変えていません。

上期の総販売数量も、流通在庫調整の好影響を除けば0.4%増でした。出荷数量と最終需要の伸びは一致しません。価格改定を控えた四半期ほど、在庫を積み増した分まで継続的な成長と扱わない読み方が必要です。

JTの総販売数量見通し 前年比1.0%減から横ばい
JT「2026年度第2四半期決算説明会資料」2026年7月30日、12ページ

Ploomの40円値上げは8月5日に認可され、10月1日実施

Ploom用スティック全31銘柄の小売定価改定は8月5日に申請通り認可されました。10月1日から1箱40円上がり、エボは580円から620円、メビウスは550円から590円、キャメルは530円から570円となります。

今回は加熱式たばこの課税方式見直しへの対応です。店頭の40円増がそのままJTの増益になるわけではありません。2027〜2029年も毎年4月に国のたばこ税が1本0.5円ずつ上がるため、税負担と需要の両面を追います。

為替・ロシア・カナダ訴訟は利益と現金収入を変える

為替・ロシア・カナダ訴訟は利益の振れ幅を広げる

JTは海外で事業を広げているため、円換算利益と各地域の規制を切り離せません。営業が好調でも、為替や和解金で現金の残り方は変わります。配当を目的に保有する場合も、本業以外の損益・支出は確認が必要です。

為替の追い風は円高へ転じると利益を押し下げる

たばこ事業の調整後営業利益に対する為替影響は、当初の90億円減から470億円増へ見直されました。当初予想との差は560億円です。為替一定でも増益する一方、円換算した上方修正幅のすべてが販売改善ではありません。

JTは多数の通貨で売上を得るため、ドル円だけでは影響を説明できません。ロシアルーブルや新興国通貨の動き、超インフレ会計による調整も加わります。次回決算でも為替一定の増益率が保たれるかが、本業の確認点です。

ロシアでは数量が減り、カナダでは和解後も支払いが続く

ロシアの上期総販売数量は前年同期比1.8%減でした。値上げで収益を補えても、需要減や規制変更の影響は残ります。現地で得た利益を円で回収できるかも、販売実績とは別に注意が必要です。

カナダでは2025年8月に再生計画が発効し、現地子会社が頭金を支払いました。その後も同社の税引後純利益の70〜85%を毎年分割払いする仕組みです。2024年の引当金計上が終わっても、和解に伴う現金流出まで消えたわけではありません。

JT株の今後は10月29日決算と値上げ後の販売で確かめる

JT株の買い判断は利益・利回り・Ploomの3条件で絞る

JT株は利益予想の達成とPloomの採算改善を条件に、上昇余地が残ると考えます。次は10月29日の第3四半期決算です。ただし、集計期間は9月までのため、10月値上げ後の販売実績がどこまで示されるかも分けます。

営業利益の進捗64.0%でも、追加上方修正は確定しない

上期営業利益6,449億円は通期予想1兆80億円の約64.0%です。下期に必要な利益は約3,631億円となり、一見余裕があるように見えます。ただし、季節性や下期の数量減を含めた計画なので、進捗率だけでは追加上方修正を予測できません。

10月29日は販売数量と価格効果、為替一定利益、FCF見通しを確認します。値上げ効果がコスト増を上回れば再評価の余地があり、数量減が会社想定を超えて利益予想を下げるなら、買い増しの根拠は弱まります。

値上げ前の出荷増だけではPloomの実力は分からない

日本では4月の価格改定前に一時的な需要増があり、4〜6月には反動が出ました。10月の改定でも、9月の買いだめと10月以降の反動減を一組で見る必要があります。第3四半期の出荷が強くても、そのまま年末まで伸びるとは限りません。

加熱式のカテゴリ内シェアを保ちつつ、継続購入が増えれば販促投資の回収が進みます。反対に数量やシェアの伸びが止まり、費用が増え続ければ、Ploomへの期待だけで高いPERを維持するのは難しくなります。

銀行株と比較するなら、配当を増やす仕組みの違いを見る

配当目的で候補を広げるなら、JTと銀行関連銘柄では利益が増える条件が違います。JTはたばこの価格改定と海外通貨、銀行は国内金利や貸出残高、貸倒費用の影響を受けます。利回りだけの比較では、減配につながる要因が見えません。

銀行株を組み合わせても市場全体の下落は避けられませんが、たばこ増税やPloomの競争に偏った投資は抑えられます。銀行側も金利上昇だけで選ばず、収益改善が増配を支えられるかを比べてください。

まとめ|JT株の上昇継続には利益成長とPloomの収益化が必要

まとめ|JT株の上昇継続には利益成長とPloomの収益化が必要

JT株は急騰後の調整で配当の受取効率が改善しました。ただし、高値から下がっただけで買い得とはいえず、利益予想の達成が必要です。

次回決算の増益の内訳と、Ploom値上げ後の継続購入が今後の上昇を支える条件です。認可や販売数量だけで、収益化まで達成したとは考えないでください。

購入するなら希望利回りと保有額を先に決め、減配や数量減にも耐えられる範囲に収めたいところです。配当収入と株価の変動を合わせて投資成果を考えましょう。

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執筆者情報

nari

大畠 典仁

日本投資機構株式会社 アナリスト

準大手の証券会社にて資産運用のアドバイザーを務めた後、日本株主力の投資顧問会社の支店長となる。現在は日本投資機構株式会社の筆頭アナリストとして多くのお客様に株式投資の助言を行いつつ、YouTubeチャンネルにも積極的に出演しており、資産運用の重要さを発信している。

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