2026年4月28日、ソフトバンクグループ(9984)の株価が前日比9.86%安という急落を記録しました。
引き金となったのは「TSMCによるアーム株の全売却」と「OpenAIの売上未達報道」という2つのニュースです。
どちらの材料も表面だけ見ると悪材料に映りますが、中身を丁寧に分解すると、過度の警戒は不要との見方もできます。
また、AIやロボティクスを手がける新会社「Roze」の設立といった新たな材料も伝わっています。
本記事では、「今ソフトバンクグループに何が起きているか」「なぜ株価は下落したのか」を整理したいと思います。
ソフトバンクグループの足元の株価推移
まずは、ソフトバンクグループの足元の株価を確認しておきましょう。
▼改めて振り返ると、ソフトバンクグループの株価は、2025年10月29日に上場来高値を取って以降、5ヶ月ほど低迷を続けていました。

※TradingViewより引用
AI開発競争激化とアームの収益伸び悩みが重荷に
2025年11月に、Google社が手がける最新AIモデル「Gemini 3」が発表され、AI開発競争が激化するとの警戒感が広がりました。
その後2026年2月には、米AIベンチャー「アンソロピック」がAIモデル「Claude」の画期的な新機能を続々発表。
この間、OpenAI社は革新的なモデルや新機能を発表することができませんでした。
さらに、ソフトバンクグループ傘下の英半導体大手アーム・ホールディングスの収益も、過去の大型ライセンス収入の反動で伸び悩んでいました。
ソフトバンクグループにとって大型投資先であるOpenAIとアームの評価の伸び悩みは、同社株の上値を抑える要因となりました。
結果として同社の株価は、2025年12月から2026年4月上旬にかけて、3,500~5,000円程度でのもみ合いを続けました。
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4月後半から急速に買い戻される展開に
しかし、2026年4月14日にソフトバンクグループの株価は、突如として75日線を上抜いての反転攻勢に出ます。
この背景には、OpenAIの新モデルへの期待と高い評価があったとみられます。
アンソロピックのClaudeは、自社の強みであるコーディングを非エンジニアでも使いやすい形に落とし込むことで、2026年2月以降急速にシェアを拡大しました。
体感として、パソコンの中でできる作業であれば大抵はできるレベルの「エージェントAI」の地位を最初に確立したと思います。
この時点でOpenAIのChatGPTは、コーディングツールであるcodexの生成するコードの正確さが一部のエンジニアから高い支持を得ていたものの、非エンジニアにはやや扱いづらいという点で出遅れていました。
そうしたなか、2026年4月上旬頃から、OpenAIが4月中旬にも新しいAIモデルを発表するとの見方が浮上。
2026年4月14日には、「マイクロソフトはエージェント型AIに注力し、AIアシスタント『Copilot』の大幅な刷新を計画している」と伝わりました。
Copilotは、マイクロソフトが提供しているAIアシスタントで、OpenAIのモデルを基盤としています。
Copilotがエージェント型AI機能を強化するのであれば、ChatGPTも同等の使いやすい機能を持つと考えるのが自然です。
この頃から、ChatGPTの新モデルに対する期待感が高まり始めたという実感を持っています。
ChatGPTの新画像生成機能は競合を圧倒
ChatGPTの新モデルよりも先んじて発表され、世界中の生成AIユーザーを熱狂させたのが、ChatGPTの新たな画像生成機能「Images 2.0」です。
4月16日頃から、ChatGPTや生成AI比較ツール内でテスト公開が始まり、21日に正式なリリースが行われました。
この画像生成機能では、これまでのAI画像にありがちだった日本語のフォント崩れ、パッと見てAIだと分かる不自然さが完全に払しょくされています。
これまでAI画像生成の分野では、Googleの手がけるGeminiがトップを走ってきましたが、一気に追い抜いた形です。
そして、23日にはChatGPTの新モデルGPT-5.5がリリース。
実際に使ってみると、AIエージェントとしてClaudeに遜色ないレベルにまで達しており、昨年からのGeminiやClaudeに負け続ける流れを断ち切ったと感じました。
この過程では、画像生成のレベル向上がインパクトを与え、AIにできることが増えたとの見方が世界中に広がりました。
そうであれば、AIを動かす半導体やデータセンターがもっと必要との見方から、株式市場では半導体・データセンター株が上昇。
アーム株の上昇もあって、ソフトバンクグループ株も連騰を見せました。
日経平均株価の構成率が7.08%に達している(2026年4月30日時点)ソフトバンクグループの上昇は、日経平均6万円到達の原動力にもなりました。
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TSMCのアーム株売却|利益確定と中立性の回復

しかし、こうした熱狂のなかで2つの悪材料が舞い込み、ソフトバンクグループの株価は急失速します。
1つ目の悪材料は、 TSMCによるアーム株の売却です。
TSMCは2026年4月28〜29日にかけて、子会社「TSMC Partners」を通じてアーム株111万株を1株207.65ドルで売却し、総額2億3,100万ドル(約340億円)を回収しました。
この届出が台湾証券取引所に公表されると、アーム株は急落し、それに連動する形でソフトバンクグループも大きく売られました。
市場が敏感に反応した理由は、TSMCがアームの2023年IPO(新規株式公開)における主要な戦略的投資家の1社だったからです。
IPO時に約1億ドルを投じた著名な投資家が完全撤退したとなれば、「アームへの信頼が揺らいでいるのではないか」という連想が働きます。
これが売りを加速させました。
しかし、売却の背景を考えると、TSMCにとって合理的かつ必然的な判断だったことがわかります。
重要なのは、この売却がアームの成長ポテンシャルを否定するものではないという点です。
詳しく見ていきましょう。
初期投資1億ドルから合計3.3億ドルを回収
TSMCは2023年9月のアームIPO時に約1億ドルを1株51ドルで投資しました。
その後2024年には85万株を1株119.47ドルで売却し約1億200万ドルを回収。
今回の売却(111万株、1株207.65ドル)で2億3,100万ドルを加え、合計回収額は約3億3,300万ドルに達します。
初期投資額の約3.3倍の水準での回収です。
留保利益(企業が蓄積してきた過去の利益)への影響は1億7,400万ドルのプラスと届出には記載されています。
TSMCは年間設備投資額が数百億ドル規模の超巨大企業であり、アーム株はその中では財務的には小規模な投資でした。
2025年から2026年にかけてTSMCは2ナノメートルプロセスの量産体制構築に向けた大規模投資を進めており、ポートフォリオ整理と資金確保という観点でも売却のタイミングは合理的です。
ArmのAGI CPU参入でTSMCの中立的立場が揺らいだ
TSMCが完全撤退に動いたもう1つの理由として、業界専門家が指摘するのが、アームの事業拡大に伴う利害関係の変化です。
アームはこれまで半導体の「設計(IPライセンス)」を専業としてきましたが、近年はAGI(汎用人工知能)向けCPUの自社開発など、チップ設計の上流工程に踏み込む動きを強めています。
TSMCは世界中の半導体メーカーから製造を受託するファウンドリ(受託製造会社)で、すべての顧客に対して中立的な立場を保つことが信頼の源泉です。
アームが自社チップを開発してTSMCの顧客と競合する可能性が高まった場面で、アームの株式を保有し続けることはTSMCの中立性に疑問符を付けることになりかねません。
業界分析メディアDigitimesは「TSMCが3倍の利益で持分を清算したのは、中立的ファウンドリとしての立場を回復するための戦略的切り離しだ」と評しています。
これはアームが成長し、業界内で大きな存在感を持つようになったからこそ生まれた必然的な調整です。
OpenAIの売上未達|過去の数字に市場は過剰に反応

2つ目のソフトバンクグループにとっての悪材料は、OpenAIの売上未達報道です。
2026年4月27日に、WSJは「OpenAIは2025年末までにChatGPTの週間アクティブユーザー数を10億人にする内部目標を達成できなかった。また2026年に入っても複数の月で月次売上目標を下回っている」と報じました。
この報道を受けてOpenAI関連株が連鎖安し、ソフトバンクグループも大きく売られました。
売上未達はGeminiとClaudeに負けていた時期の結果
しかし、前述したように、報道にあった2025年末はGemini3が話題になった時期、2026年に入ってからつい最近まではアンソロピックのClaudeがシェアを伸ばした時期です。
実際、筆者自身も、2025年秋からつい最近までは、ChatGPTには誤字チェックしかさせず、Geminiで画像を作って、Claudeでシステム構築をしていました。
それが、GPT-5.5のリリースで、Claudeと同程度にはChatGPTを触るようになりつつあります。
OpenAI自身も、WSJの報道に対して「消費者・法人向け事業はフル稼働している」と反論しており、売上目標未達の数字はあくまで2025年の過去のデータです。
この調子であれば、今後数ヶ月後には、シェアの回復を示すデータが出てくる可能性が高いでしょう。
こうしたことから、WSJの報道を受けたOpenAI関連株売りは、直近上昇が急速であった分の調整の範囲内にとどまる可能性が高いと思います。
孫正義氏が描くフィジカルAI戦略|次の成長の軸に

株価の短期的な動揺とは別に、ソフトバンクグループは中長期の成長に向けた大きな布石を打ち続けています。
孫正義会長が掲げる新たな成長テーマが「フィジカルAI(物理世界で自律的に行動するAI)」です。
AIの頭脳だけではなく、現実世界で動く垂直統合戦略の実現に向けて、2025年から2026年にかけて大型の投資・買収を相次いで行っています。
さらに新たに浮上したのが、AIやロボティクスを手がける新会社「Roze」を米国で設立し、上場させる構想です。
報道によれば、ソフトバンクグループは早ければ2026年内にもRozeの設立・上場を目指しており、時期は2027年にずれ込む可能性もあるとされています。
Rozeの企業価値は1,000億ドル、円換算で約16兆円規模と評価される可能性があるとも報じられており、実現すれば孫氏のAI投資をさらに加速させる資金調達装置になる可能性があります。
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ABBロボティクス買収8,187億円の戦略的意味
2025年10月8日、ソフトバンクグループはスイスの総合電機大手ABBのロボティクス事業を53億7,500万ドル(約8,187億円)で買収すると発表しました。
この買収は2026年半ばから後半のクロージングを見込んでいます。
孫正義会長はプレスリリースで「次のフロンティアは『フィジカルAI』だ。ABBロボティクスとともに、ASI(人工超知能)とロボティクスを融合させる」と述べています。
ABBのロボットは欧米の自動車・電機メーカーで広く採用される世界標準のプラットフォームです。
ソフトバンクグループはアーム・アンペア・グラフコアの3社で半導体エンジニア約8,400人を結集した「AIコンピューティング事業」を新たに立ち上げています。
そして、このAIチップにABBのロボットという「身体」を組み合わせる戦略です。
さらに同社はバークシャー・グレイ、オートストア、アジャイル・ロボッツ、スキルド・エーアイなどのロボティクス関連投資先も保有しており、ABBの買収でこれらの技術基盤が補完されます。
Roze構想がこのロボティクス領域の中核会社として機能する場合、ABB買収は単なる大型M&Aではなく、将来のAIロボティクス上場企業を作るための重要なピースになります。
スターゲート計画とデジタルブリッジ買収で固めるAIインフラ
フィジカルAI戦略のもう1つの柱がAIデータセンターです。
ソフトバンクグループは2025年1月にトランプ政権と組んでAIインフラ構築プロジェクト「スターゲート計画」を発表し、米国に最大5,000億ドルを投資する構想を掲げました。
主要パートナーはOpenAIとオラクルです。
この計画は、AIモデルを開発するだけでなく、それを動かすための巨大なデータセンター、電力、半導体、通信インフラをまとめて整備する構想です。
2025年12月29日にはデジタルインフラへの投資を専門とするオルタナティブ資産運用会社「デジタルブリッジグループ」を31億ドルで買収する最終契約を締結(2026年後半のクロージング予定)。
デジタルブリッジはデータセンター・通信タワー・ファイバーネットワーク・エッジインフラなどに投資する世界有数の運用会社であり、この買収によってソフトバンクグループはAIインフラを押さえる体制に近づきます。
ソフトバンクグループにとって、ABBのロボティクス買収、デジタルブリッジ買収、スターゲート計画、OpenAI投資はバラバラの投資ではありません。
AIの頭脳をOpenAIで押さえ、半導体をアームやアンペア・コンピューティングで押さえ、インフラをスターゲートとデジタルブリッジで押さえ、物理世界の実行部分をABBやRozeで押さえる計画なのです。
投資家が今チェックすべきポイント

ソフトバンクグループは投資会社であり、投資先企業の評価によって株価が大きく振らされます。
この点を踏まえて、今後のソフトバンクグループの株価を左右するポイントを整理しておきましょう。
OpenAIのシェア回復がデータで確認できるか
最大のチェックポイントはOpenAIの事業動向です。
ソフトバンクグループは、OpenAIに対して追加で300億ドルを投じることを決めており、この出資などに充てるため、ドル建てとしては過去最大規模となる400億ドルの融資契約も締結しています。
OpenAIは2026年4月にGPT-5.5とImages 2.0を相次いで発表し、AIユーザーから高い評価を受けています。
これが本当に実際のユーザー数・売上高の回復につながっているかどうかが今後数ヶ月で明らかになるでしょう。
特にコーディングと法人向け市場でのシェア回復が見えてくれば、ソフトバンクグループの評価益拡大への期待が戻り、株価の追い風になります。
OpenAIの26年3月期第3四半期末時点の公正価値544億ドルが維持・拡大されるかどうかも重要な確認項目です。
Roze上場構想は実現するか
今回報じられたRoze構想は、単なる新会社上場ではなく、ソフトバンクグループが進める「フィジカルAI戦略」の受け皿になる可能性があります。
これまで同社は、OpenAIへの巨額投資、アームを軸とする半導体戦略、AIデータセンター整備、ロボティクス事業の買収を同時並行で進めてきました。
ただし、これらは投資金額があまりに大きく、投資家からは「どこまで資金負担が膨らむのか」「本当に回収できるのか」という懐疑的な見方も出ています。
そこでRozeを米国市場で上場させることができれば、ソフトバンクグループ本体だけで資金負担を背負うのではなく、外部資本を取り込みながらAI・ロボティクス領域を拡大する道が開けます。
一方で、この構想はまだ正式発表ではなく、上場時期や放出する持ち分、評価額などの詳細は決まっていません。
そのため現時点では、買い材料として単純に評価するのではなく、ソフトバンクグループがAI投資の拡大をどのような資本政策で支えるのかを示す重要なサインとして見るべきでしょう。
スターゲート計画の進捗とDC投資の継続可否
スターゲート計画(AIインフラ構築プロジェクト)の進捗も重要な確認ポイントです。
2026年3月には「OpenAIとオラクルがデータセンターの拡張計画を縮小した」との報道でソフトバンクGのCDS(クレジット・デフォルト・スワップ、企業の信用リスクを示す指標)が380bpに急拡大し、株価が一時12%急落する場面もありました。
今後もマイクロソフト・アルファベット・アマゾン・ドットコムなど主要クラウド企業の決算でAIインフラ投資の方向性を確認し、スターゲート計画の継続意思が示されるかどうかをチェックしたいです。
アーム株が上昇トレンドに回帰するか
ソフトバンクグループの保有資産の中で最大級の影響力を持つのがアームです。
TSMCの売却でアーム株は急落しましたが、足元では反発する場面も見られています。
アームはスマートフォン・データセンター・自動車・AIロボットと幅広い市場でIPライセンス収入を得るビジネスモデルを持ち、AI時代のチップ設計においてなくてはならない存在です。
TSMCが売却した後もアップル・エヌビディア・アドバンスト・マイクロ・デバイセズなど世界の主要な半導体メーカーはアームの設計を使い続けており、事業の根幹は揺らいでいません。
アーム株が再び上昇トレンドに回帰するかどうかが、ソフトバンクグループの株価回復の大きなカギを握ります。
まとめ|ソフトバンクグループ株価下落の本質と今後

今回のソフトバンクグループの株価急落を招いた材料は、長期的に警戒すべき悪材料にはならない可能性が高いです。
TSMCのアーム株売却は初期投資の合理的な利益確定であり、アームのAGI CPU参入に伴うTSMCの中立性回復という必然的な調整です。
アームの成長ストーリーを否定するものではありません。
OpenAI売上未達報道は2025年の過去データを反映したものです。
2026年4月21日のImages 2.0、4月23日のGPT-5.5と相次ぐ新機能発表により、OpenAIは反転攻勢に出ており、数ヶ月後にはシェア回復を示すデータが出てくる可能性があります。
個人的には、これらの悪材料よりも、OpenAIがやっと競合に負けない評価を得る新機能・新モデルを出せたという事実の方が重要だと考えています。
これが投資した分を上回るだけの収益を生むか、それはいつになるのかという本質的な課題は残っており、まだまだ厳しい局面は到来するかもしれません。
しかし、AIのない世界にはもう後戻りはできないと思います。
今後もフィジカルAIの普及、さらなる社会への浸透に向けた動きが続いていくでしょう。
収益を生む時期が先送りになるリスクは念頭に置きながらも、先行きを見守りたいと思います。

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執筆者情報
日本投資機構株式会社 証券アナリスト(CMA) テクニカルアナリスト(CMTA®)
国内株式、海外株式、外国為替の領域で経験豊富なアナリスト・ファンドマネージャーのもと、金融市場の基礎・特徴、マクロ経済の捉え方、個別株式の分析、チャート分析、流動性分析などを学びながら、日本投資機構株式会社では唯一の女性アナリストとして登録。自身が専任するLINE公式など各コンテンツに累計7000名以上が参加。Twitterのフォロワー数も3万人を超える人気アナリスト。

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