長期金利3%で株価はどうなる?日銀9月会合と銀行株・REITへの影響

日本投資機構 編集部

日本投資機構株式会社

日銀9月会合と銀行株・REITへの影響

2026年9月1日、日本の長期金利を示す新発10年国債利回りが3%に達しました。1996年以来、およそ30年ぶりの水準です。翌2日の日経平均株価は前日比1,889円70銭安の6万4,325円64銭で終えました。

ただし、金利上昇が全銘柄へ同じように響くわけではありません。銀行や生命保険には収益改善の余地がある一方、借入依存度の高い企業や高PER株には重荷です。この記事では、金利の上がり方まで含めて日本株への影響を解説します。

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目次

長期金利3%で金融株が相対優位でも一括買いはできない

長期金利3%で金融株が相対優位でも一括買いはできない

銀行株が上がり、REITが下がるという見方だけでは不十分です。長期金利の水準より、利益へ届く順番を見ます。同じ業種でも、負債の形や金利改定の速さによって利益への影響は変わります。

メガバンク・生保には収益改善の追い風

貸出金利が預金金利より先に上がる銀行は、預貸金利ざやが広がります。預貸金利ざやとは、貸出で受け取る金利と預金へ支払う金利の差です。変動金利型の法人融資が多く、低コストの普通預金を厚く持つメガバンクほど追い風を受けやすくなります。

生命保険会社は、満期を迎えた国債を以前より高い利回りで買い直せます。ただし、銀行も生保も保有債券の価格下落が先に表れる場合があります。金利上昇の恩恵が利益へ届くまでの時間を無視できません。

REIT・不動産・高PER株には金利負担

借入金の多いJ-REITや不動産会社は、借換時の支払利息が増えます。物件価格を計算する際の期待利回りも上がりやすく、不動産の評価額には下押し圧力がかかります。高PER株では、数年先の利益を現在価値へ割り戻す金利が上がるため、同じ利益予想でも株価の許容水準が下がります。

もっとも、固定金利で長期調達しているREITは影響が遅れて表れます。賃料を引き上げられる物件なら、利息増を吸収できる余地もあります。業種名ではなく、借換時期と利益の伸びを確かめる必要があります。

株価反応は金利上昇の理由とスピードで変わる

9月1日は長期金利が3%へ上昇する中、三菱UFJFGなど銀行株が堅調でした。ところが2日は世界的な金利高と原油高が重なり、東証33業種がすべて下落しています。銀行業と保険業は下落率が比較的小さかったものの、相場全体の売りを免れたわけではありません。

この差を生んだのが、金利の上昇速度と背景です。成長に伴う緩やかな上昇なら金融株の収益期待が勝ります。インフレや財政不安で金利が急騰すると、金融株を含めて現金化の売りが広がります。

日銀・海外金利・財政不安が長期金利3%を招いた

日銀・海外金利・財政不安が長期金利3%を招いた

今回の3%到達には、日銀だけでなく海外金利と財政への警戒が重なっています。国内外の要因を分けると、次の変化も追いやすくなります。単一の材料で説明できない点が、株価の反応を複雑にしています。

10年国債利回りは1996年以来の3%台へ

ロイターによると、新発10年国債利回りは9月1日に3%へ上昇しました。3%台は1996年以来です。債券価格と利回りは反対方向へ動くため、利回り上昇は国債が売られた結果を示します。2年債と5年債の利回りも数十年ぶりの高さへ達しました。

一方、同日の10年国債入札では需要の弱さが表面化していません。3%という数字だけで国債市場の機能不全とはいえず、価格調整と市場不安を分けて読む必要があります。次に、入札の不調や金利の上昇幅拡大が続くかを確認します。

原油高と物価上振れで日銀の利上げ観測が強まった

中東情勢を受けた原油高は、輸入価格を通じて国内物価を押し上げます。総務省によると、2026年7月の生鮮食品を除く消費者物価指数は前年同月比1.8%上昇でした。現時点の実績は、日銀が掲げる2%を下回っています。

ただし、日銀は7月の展望レポートで、同指数が2026年度後半に2%を明確に上回ると予測しました。米欧でも金利上昇が進み、国内債券だけを買い戻しにくい状況です。現在の物価と先行き予測の差が、9月利上げ観測を強めました。

過去最大規模の概算要求で財政不安も意識された

2027年度予算の概算要求総額は、報道各社の集計で約143兆円とされています。これは確定予算でも財務省の公式集計でもありません。財務省が公表したのは、上限を設けない成長投資枠を含む概算要求の基本方針です。143兆円は要求段階の推計値として扱う必要があります。

それでも市場が警戒する理由は、国債費の増加です。財務省の要求では国債費が36兆6,386億円、利払い費を計算する想定金利は3.8%と報じられました。最終予算と新規国債発行額が膨らめば、長期金利への上昇圧力が残ります。

長期金利3%だけでは危険水準と決まらない|良い上昇と悪い上昇

長期金利3%だけでは危険水準と決まらない|良い上昇と悪い上昇

3%は30年ぶりでも、それだけで株安が決まるわけではありません。株価を決めるのは、3%という数字ではなく企業利益との組み合わせです。名目成長に沿った上昇か、財政とインフレへの不信による上昇かで意味は逆になります。

成長と2%インフレに伴う正常化なら株高と両立できる

物価が2%程度で上昇し、企業の売上と賃金も増えるなら、名目金利が3%へ上がる流れは不自然ではありません。日銀は日本の潜在成長率を0%台半ばから後半と試算しています。2%の物価上昇と合わせれば、名目経済の伸びは2%台半ばに近づきます。

この範囲で企業利益も伸びれば、金利上昇による評価の低下を増益で補えます。売上が物価上昇以上に増え、営業利益率を維持できる企業は、3%の金利とも両立しやすい銘柄です。単なる低PERより価格転嫁力が効きます。

割引率と借入コストの上昇は高PER株を圧迫する

株価は将来受け取る利益や現金を、現在の価値へ置き換えた金額として説明できます。長期金利はこの計算の土台です。金利が上がるほど、5年後や10年後に利益の多くを稼ぐ企業の現在価値は小さくなります。利益が遠い高PER株ほど金利変化へ敏感です。

借入企業では、社債発行や銀行融資の金利も遅れて上がります。現在の借入が固定金利でも、満期時には高い金利で借り換える可能性があります。株価を見る際は、今期利益だけでなく、3年以内の返済額と営業キャッシュフローを並べると負担が見えます。

財政不安や制御不能なインフレによる上昇は要警戒

政府支出の拡大や原油高でインフレが長引くと、投資家は国債に高い利回りを求めます。企業の需要が強くなくても資金調達費が上がるため、売上停滞と利息増が同時に起きます。企業利益を伴わない金利上昇は、日本株全体にとって厳しい形です。

国内債券の利回り上昇は、株式との資金争いも生みます。ロイターによると、日本の投資家は2026年初から8月22日までに海外債券を約3兆円売り越しました。安全資産の利回りが上がれば、高い値動きのリスクを取る株式の魅力は相対的に薄れます。

金利上昇で追い風を受ける株|メガバンク・生命保険

金利上昇で追い風を受ける株|メガバンク・生命保険

金融株では、金利上昇が実際の利益へ表れているかを決算で確認できます。どの収益項目が動いたかまで確かめます。代表例として三菱UFJFGと第一生命HDの開示を見ます。

三菱UFJFGなどメガバンク|預貸金収益の拡大が焦点

三菱UFJFGの2025年度親会社株主純利益は、前年度比5,642億円増の2兆4,272億円でした。3年連続で過去最高益です。業務純益も7,860億円増の2兆3,772億円となり、会社は円金利上昇を取り込んだ預貸金収益の増加を理由の1つに挙げています。

金利上昇の恩恵がすでに決算へ表れた点は、メガバンクの強みです。ただし、増益には国内外の手数料収益も含まれます。銀行株を見る際は、純利益全体ではなく、国内の資金利益と預貸金利ざやがさらに伸びるかを確認します。

第一生命HDなど生保|債券の再投資利回りが改善

第一生命HDは2026年2月の決算資料で、金利上昇に合わせた円建て債券の入れ替えにより、円建て確定利付資産の利回りが改善したと説明しました。2025年4〜12月の運用による効果は、当期分と翌期分を合わせて約240億円です。高い金利で債券を買い直せる効果が数字に表れています。

同時に、同社は金利上昇に伴う大量解約リスクが前年度末比で約5,000億円増えたと開示しました。資産側の利回り改善だけを見れば片手落ちです。経済価値ベースの資本余力と、保険契約の解約率を合わせて確認します。

貸出金利・預金金利・保有債券をセットで確認する

日銀統計では、主要行の短期プライムレート最頻値は2026年8月に2.375%へ上がりました。三菱UFJ銀行の普通預金金利は9月2日時点で0.4%です。両者は対象が異なるため単純な差は利ざやになりませんが、貸出側の改定が先行している様子は読み取れます。

次に見るのは、預金の構成と保有債券の残存期間です。無利息や低利の預金が厚ければ支払利息は増えにくくなります。反対に長期債を大量に持つ銀行は、金利上昇直後の評価損が膨らみます。この3点が銀行間の株価差につながります。

金利上昇で逆風を受ける株|J-REIT・不動産・高PER株

金利上昇で逆風を受ける株|J-REIT・不動産・高PER株

逆風を受ける業種でも、負担が利益へ届く時期は同じではありません。影響が遅れて出る企業は、最初の下落後に差が開きます。借換までの年数と値上げ余地が、下落後の戻りを分けます。

J-REIT|固定金利比率と今後の借換期限で差がつく

アイビー総研の集計では、2026年5月末時点のJ-REIT58銘柄の借入金は11兆4,000億円超です。固定金利での調達は約80%、平均調達年数は約7.4年でした。長期金利が3%へ上がっても、支払利息の大半がすぐ増える構造ではありません。

差が出るのは、今後2〜3年に借換が集中する銘柄です。オフィスやホテルで賃料・宿泊単価を引き上げられれば、金利負担を補えます。分配金を見る際は現在の利回りだけでなく、固定金利比率、平均残存年数、賃料増減を並べます。

不動産・住宅関連|フラット35の3.46%が購入負担を高める

住宅金融支援機構によると、2026年9月のフラット35は、融資率9割以下、借入期間21〜35年の最頻金利が3.46%でした。4,000万円を35年、元利均等、ボーナス返済なしで借りると、毎月返済は概算で約16万4,000円です。購入者の返済余力を直接削る水準です。

住宅会社には販売件数の減少や値引きの拡大、不動産会社には物件取得費の上昇が響きます。一方、都心の希少物件など価格転嫁しやすい資産は影響を抑えられます。契約戸数、平均販売価格、在庫回転日数に悪化が出るかを追います。

高PER成長株|遠い将来の利益ほど現在価値が低下しやすい

高PER株は、現在の利益に対して高い株価が付いています。市場が数年先の大幅増益を織り込んでいるためです。長期金利が上がると、遠い将来の利益に適用する割引率も上がり、期待だけで付いていた評価が縮みます。赤字が続き、増資へ頼る企業は特に金利高へ弱くなります。

ただし、PERが高いだけで売りとは限りません。営業キャッシュフローが増え、利益予想の上方修正が続けば、高い評価を維持できます。予想PERの低下が株価下落によるものか、利益増加によるものかを区別すると、成長株の質が見えます。

銀行株にも落とし穴|金利上昇が速すぎると含み損が先行

銀行株にも落とし穴|金利上昇が速すぎると含み損が先行

金利上昇は銀行へ長期的な利益をもたらしますが、途中で損失が膨らむ銀行もあります。資産と負債の満期差が損益を左右します。利ざやだけを理由に銀行株を一括買いするのは危険です。

地域銀行は保有国債の年限と評価損を確認する

固定利率の国債は、市場金利が上がると価格が下がります。満期までの期間が長い債券ほど値下がり幅は大きくなります。金融庁の有識者会議でも、金利上昇は最終的に金融機関へプラスでも、その過程で有価証券の含み損へ耐えられるかが課題とされました。

地域銀行では自己資本に対する金利リスク量も株価へ響きます。満期保有なら損失が直ちに確定するとは限りませんが、預金流出で売却を迫られると実現損になります。決算資料の有価証券評価損益と円債のデュレーションを確認します。

預金金利の引き上げと預金流出が利ざやを削る

預金者が高金利の定期預金や個人向け国債へ移れば、銀行は金利を引き上げて資金をつなぎ留めます。財務省が9月に募集した個人向け国債「変動10年」の表面利率は年1.95%です。普通預金との差が広がり、預金の移動が起きやすくなっています。

金融庁の会議でも、預金が高利回りの商品や大手銀行へ移るリスクが指摘されました。貸出金利が上がっても、預金コストと流出が上回れば利ざやは広がりません。預金残高と預金利息の増加率が確認点です。

利上げの織り込み後は材料出尽くしにも注意する

ブルームバーグは9月2日、金利スワップ市場が9月会合での利上げをほぼ織り込んだと報じました。期待が株価へ先に入っていれば、実際の利上げ発表後に利益確定売りが出ます。好材料の発表と株価上昇は、同時に起きるとは限りません。

9月1日に銀行株が買われた翌日、銀行業と保険業を含む全33業種が下落しました。金利の上昇が速すぎると、利ざや改善より債券損失と景気悪化が意識されます。発表直後の値動きより、翌営業日まで売買が続くかを見ます。

9月17〜18日の日銀会合は利上げの有無より次の金利経路が株価を分ける

9月17〜18日の日銀会合は利上げの有無より次の金利経路が株価を分ける

日銀の政策金利は2026年9月3日時点で1.0%で、次回会合は9月17〜18日です。市場が織り込んだ内容との差を追います。高田創審議委員の発言により、利上げ時期だけでなく速度も争点になりました。

1.25%へ利上げした場合|金融株にも材料出尽くしの可能性

日銀が0.25ポイント引き上げれば、政策金利は1.25%になります。高田委員は7月会合で1.25%への利上げを提案しましたが、反対多数で否決されました。9月2日の講演では、年2回など一定のペースに縛られず機動的に利上げする考えを示しています。

利上げ時は銀行株の上昇より、すでに織り込んだ期待との差が株価を動かします。声明が次回利上げを急がない内容なら銀行株は売られ、円高が進めば輸出株にも重荷です。金利水準だけでなく声明文を確認します。

据え置きでもタカ派姿勢継続|長期金利は高止まり

政策金利を1.0%で据え置いても、物価の上振れと早期利上げへ言及すれば長期金利は下がらない可能性があります。日銀は7月時点で、基調的な物価上昇率が2026年度後半から2027年度に2%程度へ達するとの見通しを示しました。

債券市場は今回の金利だけでなく、その先の利上げ回数を価格へ反映します。据え置きを金融緩和と決めつけず、植田総裁が物価予測、原油高、次回会合について何を述べるかを追います。短期金利と10年金利が逆方向へ動く場合もあります。

財政・原油主導で金利だけ上昇|日本株には最も厳しい展開

日銀が据え置いても、国債増発への警戒や原油高が続けば長期金利は上昇します。この場合、企業の売上が伸びる前に借入費と仕入価格が増えます。金融引き締めによる円高も起きにくく、輸入インフレを抑えにくい組み合わせです。

株安・債券安・円安が重なる形は、銀行株だけで逃げ切りにくくなります。政府が示す最終予算、新規国債発行額、原油価格が沈静化するかを確認します。日銀会合後もこの3つが悪化すれば、金利敏感株への売りが続きます。

有利子負債・営業CF・PERを確認する

会合前後に銘柄を選ぶなら、貸借対照表とキャッシュフロー計算書を使います。有利子負債が多く、営業キャッシュフローが細く、借換期限が近い企業ほど金利上昇へ弱くなります。金融株では預貸金利ざやと債券評価損、REITでは固定金利比率と平均残存年数を優先します。

PERは利益が安定している企業に使い、赤字企業へは当てはめません。銀行はPBRとROE、REITはNAV倍率と分配金の伸びも見ます。単一指標で割安と決めず、次回決算で支払利息や資金利益がどちらへ動いたかを確かめます。

まとめ|長期金利3%では業種名より金利耐性を見極める

まとめ|長期金利3%では業種名より金利耐性を見極める

長期金利3%で選ぶのは、金利上昇メリット株という看板ではなく、利益が増える企業です。メガバンクと生保には追い風がありますが、債券損失や預金コストも残ります。

J-REIT、不動産、高PER株には逆風が吹きます。ただし、長期固定調達や賃料上昇、強い営業キャッシュフローがあれば影響を抑えられます。

9月17〜18日の日銀会合では、利上げの有無だけでなく、その後の金利経路と財政・原油の動きを追います。3%という数字より、金利が上がった理由の方が日本株の方向を大きく左右します。

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執筆者情報

nari

日本投資機構 編集部

日本投資機構株式会社

INVEST LEADERSを運営する顧問投資会社「日本投資機構株式会社」の代表取締役を含めたスタッフ及びサポートアナリストの記事を掲載しています。株式投資や金融に纏わる話題は勿論のこと、読者の暮らしや生活を豊かにするトピックスや情報を共有していきます。

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