ヒュンダイ自動車(現代自動車)といえば、韓国を代表する世界規模の自動車メーカーです。
しかし、実は最近「AIロボティクス企業」として注目されています。
なぜなら、ヒュンダイは、世界最高水準のロボット技術を持つボストンダイナミクスの株式を80%保有しているからです。
エヌビディアやGoogleのAI部門であるDeepMindとも協力関係があります。
世界の機関投資家も、ボストンダイナミクスに間接投資できる唯一の上場株としてヒュンダイに注目し始めています。
そこで本記事では、ヒュンダイがどんな企業・業績で、どのようなロボット戦略を掲げているのか、投資判断に必要な情報をまとめて解説します。
ヒュンダイ自動車とは?沿革と事業ポートフォリオ

ヒュンダイ自動車(現代自動車・韓国証券コード: 005380)は、韓国ソウルに本社を置く世界有数の自動車メーカーです。
グループ全体(ヒュンダイ・起亜・高級車ブランドのジェネシス)では2025年に年間約727万台を販売し、トヨタグループ・フォルクスワーゲングループに次ぐ世界第3位の規模を誇ります。
1967年創業、海外展開を進め世界3位へ
ヒュンダイは1967年12月29日、鄭周永(チョン・ジュヨン)氏が創業しました。
創業初期は三菱自動車から技術供与を受けながら成長し、1983年にカナダ、1985年にアメリカへと海外展開を進めました。
1999年には経営危機に陥った起亜自動車を傘下に収め、グループとしての規模を一気に拡大しています。
「価格の安い韓国車」というイメージが強い時期もありましたが、品質改革と電動化への注力で評価を大きく改善。
現在は世界193カ国で約6,000の販売拠点を展開するグローバル企業に成長しています。
自動車・金融・ロボティクス|3つの事業セグメントと収益構造
現在、ヒュンダイの事業は大きく「自動車セグメント」「金融セグメント」「その他(ロボティクス含む)」の3つに分かれています。
26年第1四半期(26年1-3月)の売上45.94兆ウォン(約4.8兆円)のうち、自動車セグメントが34.54兆ウォン(約3.6兆円)、金融・その他が11.40兆ウォン(約1.2兆円)を占めています。
EV(電気自動車)はIONIQ(アイオニック)ブランドで展開し、HEV(ハイブリッド車)の比率も急速に高まっています。
2025年通期のEV・HEV合算の電動化車両は約96万台で、全体販売の約23%を占めるまで成長しました。
HEV単独では前年比27.9%増・63万台と過去最高を記録しています。
ロボティクス事業はまだ赤字の段階ですが、将来的な成長に期待が高まっています。
ヒュンダイがボストンダイナミクスを取得した理由

ヒュンダイ会長の鄭義宣(チョン・ウィソン)氏は、将来的に自動車50%・UAM(都市型空中交通)30%・ロボット20%の事業構成を目指しています。
この実現に向けて、2021年にボストンダイナミクスの取得に踏み切りました。
自動車メーカーとしての製造能力・グローバル市場展開力と、ボストンダイナミクスのロボット技術を掛け合わせて、スマートモビリティ企業への転換を加速する狙いです。
ソフトバンクGから2021年に株式を取得
ボストンダイナミクスはもともと1992年にMIT(マサチューセッツ工科大学)から独立したロボット工学企業です。
4足歩行ロボット「Spot(スポット)」や人型ロボット「Atlas(アトラス)」の開発で世界的に知られています。
2013年にGoogleが買収し、2017年にソフトバンクグループへと移った後、2020年12月にヒュンダイへの売却が発表されました。
ヒュンダイは2021年6月に80%の株式取得を完了し、その際の企業評価額は11億ドル(約1,749億円/1ドル=159円換算)でした。
残りの20%はソフトバンクグループの子会社が保有を続けています。
ヒュンダイによるボストンダイナミクスへの累計投資額は、3.28兆ウォン(約3,434億円)に達しています。
[関連]ソフトバンクGはどうなる?アーム株下落とOpenAI売上未達報道、新会社設立を解説CES 2026でのAtlasデモが評価され、評価額は取得時の25倍超へ
2021年の買収時に11億ドル(約1,749億円)だったボストンダイナミクスの企業評価は、2026年1月のCES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー:毎年1月にラスベガスで開催される世界最大級のテクノロジー・家電見本市)を機に劇的に変わりました。
CES 2026でヒュンダイが新型Atlasロボットの生産版を初公開すると、韓国系証券会社のアナリストは企業価値を210〜280億ドル(約3.3兆〜4.5兆円)と推計。
取得時の約25倍に達する評価額です。
強気シナリオでは最大1,000億ドル(約15.9兆円)という試算も一部アナリストから出ています。
一方でボストンダイナミクスは2022〜2025年第3四半期の累計で1.38兆ウォン(約1,445億円)の損失を計上しており、まだ利益が出る事業ではありません。
それでも企業価値評価が急騰した理由は、CES 2026での新型Atlasのデモンストレーションによって、ヒューマノイドロボットの工場実用化が近いとの見方が広がったからです。
ソフトバンクグループのプットオプション行使がIPOを加速させるか?
ヒュンダイがボストンダイナミクスの株式を取得する際には、「4年以内にIPOを実施する」契約条項が盛り込まれました。
未上場株を現金化できないソフトバンクグループにとっては、投資リターンを回収するための当然の要求です。
また、IPOを実施しなかった場合、ソフトバンクグループ側は「プットオプション(保有株をヒュンダイに買い取らせる権利)」を行使できます。
この4年の期限は、2025年6月に到来していますが、2026年6月現在もIPOは実現していません。
「赤字のまま上場しても適正評価が得られない」としてヒュンダイが先送りしたためです。
これによりソフトバンクグループはプットオプションを行使できる状態にあり、行使期限は2026年6月、つまり今月です。
そうしたなか、市場関係者からは「ソフトバンクグループがプットオプションを行使すれば、ボストンダイナミクスのIPOが加速する」との見方が出ています。
プットオプションが行使されればヒュンダイは買い取り資金の調達を迫られ、結果としてIPOを急ぐ動きにつながるからです。
アナリストは最短で2027年のナスダックへの上場を想定しています。
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Atlasは2026年に生産開始、2028年に年産3万台体制へ

ここからは、ボストンダイナミクスが市場からどう評価されているかを見ていきましょう。
新型Atlas(電動式)の能力|CES 2026で披露した工場向け実用デモの中身
CES 2026でボストンダイナミクスが発表した新型Atlasは、市場から高い評価を得ています。
これは、従来の油圧式から電動式(電気アクチュエーター)に一新された完全新設計のロボットです。
身長190cm・体重約90kgで、多くの関節を360度回転させられるため、「人間には物理的に不可能な動き」もできます。
これが、工場での活用時に強みとなります。
電動化により信頼性が向上し、油圧式で課題だった油液漏れリスクも解消されました。
Atlasは、ヒュンダイ自身のRMAC(ロボット・メタプラント・アプリケーションセンター)とGoogle DeepMindの施設の2か所で、2026年中の初期導入が予定されています。
2026年中に生産・出荷されるユニットはこの2社への導入分ですべて埋まる見通しです。
2027年から追加顧客への供給が始まる計画で、最初の工場用途として自動車部品の「部品シーケンシング(順序付け作業)」から投入し、徐々により複雑な組み立て作業へと拡張していく方針です。
2030年にはヒュンダイのEV製造工場(ジョージア州サバンナ近郊)への本格投入が予定されており、Atlasが重量物の持ち上げや反復的な組み立て作業を担います。
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エヌビディア・Google DeepMindとの3社連携でフィジカルAIの覇権を狙う
ヒュンダイはCES 2026にて、「グループバリューネットワーク(Group Value Network)」と名付けたAIロボティクスのエコシステム構想を発表しました。
この構想では、まずエヌビディアと連携し、同社のAIインフラ・シミュレーションライブラリ・フレームワークをヒュンダイ本体・起亜・現代モービス・現代グロービスといったグループ全社で活用します。
エヌビディアのジェンスン・フアンCEOがCES 2026で「フィジカルAI(物理空間でAIが自律的に動く技術)」を核心トレンドと位置づけた中で、ヒュンダイはその最有力パートナーの1社として名乗りを上げています。
さらに、グループ内では「SDF(Software-Defined Factory: ソフトウェア定義工場)」プラットフォームを構築します。
SDFとは、工場の生産工程をソフトウェアで定義・制御し、AIロボットが学習した内容をリアルタイムで反映させながら製造ラインを自律的に最適化する仕組みです。
ヒュンダイは2028年までに年産3万台のロボット生産体制を確立する計画で、米国への280億ドル(約4兆4,520億円)の投資計画にもロボット工場の建設費用が含まれています。
Google DeepMindとの協業|Gemini Roboticsで広がるAtlasの学習能力
加えて注目されるのが、Alphabet(Google親会社)のAI研究部門であるDeepMindとの協業です。
ボストンダイナミクスは、DeepMindが開発した「Gemini Robotics(ジェミニ・ロボティクス)」と呼ばれるAIの基盤モデルをAtlasに組み込む計画です。
Gemini Roboticsとは、テキストや画像だけでなく、物理的な動作の「指示」や「文脈」を理解できるAIモデルです。
このモデルをAtlasに統合すれば、ロボットは新しい作業を短期間で習得できます。
さらに特筆すべきは「フリート学習(Fleet Learning)」の仕組みです。
1台のAtlasが新しいタスクを覚えると、その「知識・スキル」はネットワーク上のAtlas全台にリアルタイムで共有・展開されます。
これはEV業界でテスラが行っているOTA(無線ソフトウェア更新)と同じ発想をロボット動作の学習に応用したものです。
最初の共同研究は自動車製造の現場に焦点を当てており、ヒュンダイのRMACで蓄積されたデータがAIの訓練に活用されます。
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ヒュンダイの足元の業績・株価

投資を検討する上で重要となる、足元の業績や株価推移も確認しておきましょう。
26年第1四半期は売上高が過去最高も営業利益は前年比30.8%減
ヒュンダイ自動車の近年の業績推移は以下の通りです。
| 期 | 売上高 | 営業利益 | 営業利益率 | 純利益 |
|---|---|---|---|---|
| 23年12月期 | 162.7兆ウォン(約17.0兆円) | 15.1兆ウォン | 9.3% | 12.3兆ウォン |
| 24年12月期 | 175.2兆ウォン(約18.3兆円) | 14.2兆ウォン | 8.1% | 13.2兆ウォン |
| 25年12月期 | 186.3兆ウォン(約19.5兆円・過去最高) | 11.5兆ウォン | 6.2% | 10.4兆ウォン |
| 26年12月期第1四半期 | 45.9兆ウォン(約4.8兆円・四半期最高) | 2.5兆ウォン | 5.5% | 2.6兆ウォン |
売上高は3年連続で増加し、26年第1四半期も四半期ベースで過去最高を更新しています。
これはハイブリッド車(HEV)の好調と、ジェネシスなどの高付加価値モデルのミックス改善によります。
一方で、25年12月期の営業利益は前期比19.5%減、さらに26年12月期第1四半期は前年同期比30.8%減と大幅に悪化しています。
主因は米国の自動車関税の直撃と、原材料費の上昇(売上原価率が前年比+2.7ポイントの82.5%)です。
26年第1四半期の関税コストだけで8,600億ウォン(約900億円)に上りました。
米国関税問題|15%合意後も続く綱引き
ヒュンダイ自動車にとって米国市場は最重要市場の1つで、米国向け売上は全体の約40%を占めます。
2025年、トランプ政権が自動車への追加関税を発動した結果、韓国産自動車には事実上25%の関税が課される状態になりました。
その後、米韓交渉が進み、自動車関税は25%から15%への引き下げで合意が成立。
しかし、2026年1月にトランプ政権は韓国が合意した3,500億ドルの対米投資の履行に向けた進展が不十分として、関税を再び25%に引き上げると警告。
現在も交渉は継続中で、関税水準は依然として流動的な状況です。
こうした不透明感の中でも、ヒュンダイが取っている対策は主に3つです。
1つ目は米国内での生産拡大で、ジョージア州のEV工場での生産を加速させています。
2つ目は米国への280億ドル(約4兆4,520億円)の投資計画の実行です。
関税政策を政治的な対応でリカバーしようとしているのです。
3つ目は高付加価値モデルへの販売ミックスのシフトで、利幅の大きいSUVやハイブリッド車の比率を上げることで利益率の低下を抑えています。
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株価はボストンダイナミクス株の評価を織り込み年始に急伸
ヒュンダイは米関税政策の影響を受けて、収益性が悪化していることもあって、2025年末頃まではあまり市場で注目されていませんでした。
▼しかし、2026年1月に行われたCESでボストンダイナミクスの評価が高まったタイミングで、株価は急伸。

※TradingViewより引用
2026年6月時点での時価総額は163.48兆ウォン(約17.1兆円)、PER(株価収益率)は22倍程度に落ち着いています。
同時期のトヨタ自動車のPERが11倍程度で推移していることを考えると、PER22倍は自動車株としてはやや割高な印象も受けます。
とはいえ、今後関税の悪影響が抑えられて収益性が回復し、ボストンダイナミクスに高い評価額がつくのであれば、さらに株価が上昇する余地もあるでしょう。
特に210〜280億ドル(約3.3兆〜4.5兆円)と推計されているボストンダイナミクスの評価額が、一部のアナリストが強気シナリオとして試算する1,000億ドル(約15.9兆円)規模にまで膨らむのであれば、足元の株価はまだ安いと見ることもできます。
ヒュンダイ株の買い方|SBI証券なら日本からも取引可能

ヒュンダイは韓国の証券取引所(KRX)に上場しているため、日本国内株の口座とは別に「海外株(韓国株)」の取引口座が必要です。
とはいえ、個人投資家にも人気のSBI証券でも取り扱いがあるため、比較的簡単に購入できます。
詳しく手順を解説します。
SBI証券での韓国株口座開設と注文方法
日本からヒュンダイ自動車株を買うもっともシンプルな方法は、SBI証券の外国株口座を通じて買い付けることです。
まずSBI証券に総合口座を開設し、外国株式取引口座を追加開設します(多くの場合、ウェブ上で申込と同時に即日開設できます)。
次に、取引画面の「外国株式」から、銘柄検索欄に「HYUNDAI」または証券コード「005380」と入力すれば、ヒュンダイ株の買い付け画面に移行できます。
後は株数・指値/成行を指定して注文するだけです。
取引通貨は韓国ウォン(KRW)で、日本円からウォンへの両替は証券会社が自動的に行いますが、その際に為替手数料(スプレッド)が発生します。
韓国市場の取引時間は日本の株式市場と同じ9:00〜15:30で、日本とは時差もありません。
最低購入株数は1株から可能で、2026年5月時点の株価は1株約707,000ウォン(約7.4万円/1ウォン=0.1047円換算)程度です。
まとめ|ヒュンダイの株価はボストンダイナミクス次第!?
ヒュンダイ自動車は、売上高186兆ウォン(約20兆円)を誇る世界第3位の自動車メーカーです。
しかし足元では、米国関税の直撃によって営業利益が大幅に悪化しており、純粋な「自動車株」としての評価は難しい局面にあります。
しかし、注目すべきはボストンダイナミクスの存在です。
CES 2026でのAtlasのデモを契機に、企業価値は取得時の25倍超となる210〜280億ドル規模へと急騰。
ヒュンダイは「ボストンダイナミクスに間接投資できる唯一の上場株」として、世界の機関投資家からも視線を集め始めています。
自動車株としては割高に見えるPER22倍も、ロボティクス企業としての成長期待を加味すれば、むしろ割安とも見られます。
ヒューマノイドロボットという巨大な成長機会を手に入れつつある銘柄として、引き続き注目に値しそうです。

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執筆者情報
日本投資機構株式会社 テクニカルアナリスト(CMTA®)
著名な元機関投資家や経験豊富なアナリスト・ファンドマネージャーより培った知識と経験を基に、数多くの市場動向の予測や個別銘柄の動向をピンポイントで分析。銘柄の推奨実績において社内の月間最高勝率記録を持つテクニカルアナリスト。

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