トヨタ(7203)は上方修正と1兆円の自社株買いを発表しましたが、決算当日は株価が下落しました。1Qの営業減益と、上方修正に占める為替寄与の大きさが、評価を慎重にする要因です。
その後は持ち直し、9月15日終値は3,021円と決算当日を約3.5%上回りました。本記事では9月16日確認の公式資料と最新チャートを基に、利益回復の条件、自社株買いの実績、今後の株価見通しを整理します。
注目テーマや最新の市場動向を深掘りした、編集部おすすめの記事をお届けします。
-
♛ 01【2026年版】テンバガーの急騰候補銘柄と10倍を達成するお宝株の特徴を解説!
-
02光電融合の関連銘柄|IOWN本命の光半導体を業績と株価で解説【2026年】
-
03レアアース関連銘柄【2026】|南鳥島の採掘企業と本命株を解説
トヨタ決算当日は株価1.5%安、その後は3,000円台へ回復

8月4日の決算当日は下落しましたが、9月15日終値は3,000円台へ戻っています。反発が続くには、還元策に加えて利益率の回復が必要です。まず決算日の値動きと、発表された業績・還元策を確認します。
決算日は1.52%安|9月15日は当日終値を3.5%上回る
8月4日は高値3,028円、安値2,871円、終値2,918.5円でした。前日終値から45円下げた一方、9月15日は3,021円まで回復しています。
上方修正と還元策はプラス材料ですが、1Qは営業減益で、利益予想の増額にも為替寄与が大きく含まれます。市場全体の動きや需給も株価に影響するため、決算当日の下落もその後の反発も、一つの材料だけでは説明できません。

1Q営業利益は1兆634億円で前年同期比8.8%減
27年3月期1Qの営業収益は13兆5,254億円(前年同期比+10.4%)、営業利益は1兆634億円(同△8.8%)でした。営業利益率は前年同期の9.5%から7.9%へ1.6ポイント低下しています。
親会社所有者帰属四半期利益は1兆4,770億円(同+75.6%)と大幅増益でしたが、営業外損益が8,143億円改善した影響が大きく、本業の採算改善をそのまま表す数字ではありません。投資判断では純利益の伸びに加え、営業利益率の低下と一時的な損益の内訳を確認する必要があります。

通期営業利益を3.4兆円へ上方修正|配当100円は維持
トヨタは27年3月期の営業収益予想を51兆円から54兆円、営業利益を3兆円から3兆4,000億円、親会社所有者帰属当期利益を3兆円から3兆2,500億円へ引き上げました。営業利益率の見通しも5.9%から6.3%へ改善します。
年間配当予想は100円で据え置きました。営業利益は前期比9.7%減の計画で、3期連続減益の見通し自体は変わりません。ただし従来予想の同20.3%減から減益幅が縮まり、5月時点より業績の下振れ懸念は後退しました。
1兆円の自社株買いは8月末までに約865億円を実行
トヨタは8月4日、取得金額1兆円・取得株数5億株をそれぞれ上限とする自己株式取得を決議しました。期間は2026年8月5日〜2027年8月4日です。9月3日の開示では、8月末までに2,821万1,700株、864億9,417万5,900円を市場で取得しています。
金額上限に対する進捗率は約8.65%、残額は約9,135億円です。ただし、残額すべての取得が確約されたわけではありません。別途決議された2億株の消却は、今回の取得が完了した日を含む四半期の末日に行う予定で、決算発表時に消却を終えたわけではありません。

上方修正の為替寄与は4,800億円|実力値の改善を点検

営業利益予想は4,000億円増額されましたが、為替・スワップ等を除く改善は600億円です。円安の支援と事業そのものの改善を分けると、次回決算で確認すべき利益率や費用の動きが分かります。
上方修正4,000億円のうち為替変動が4,800億円寄与
今回の決算で最も重要なのは、営業利益予想を4,000億円引き上げた理由です。為替前提は1ドル=150円から160円、1ユーロ=180円から181円へ変更されました。営業利益の上方修正額を分解すると、為替変動による増益効果が4,800億円を占めています。
営業面の努力は2,300億円の上振れ要因ですが、原価改善関連の項目、諸経費、その他にはマイナスもあります。為替・スワップ等の影響を除いた上方修正は600億円であり、増額4,000億円をそのまま本業の改善額とは評価できません。

1Qは円安が3,450億円寄与|為替を除く利益は2,050億円減
1Qの営業利益増減では、為替変動が3,450億円の増益要因となりました。一方、「原価改善の努力」の項目は850億円の減益要因です。ただし、その内訳は原価改善550億円のプラスと、資材価格・仕入先基盤強化1,400億円のマイナスであり、原価低減そのものは進んでいます。
会社が示す為替・スワップ等を除いた営業利益は、前年同期比2,050億円減です。諸経費の項目にはBEV開発プロジェクト見直しの影響も含まれています。次回決算では一時費用の減少と利益率の回復を確認します。

北米は211億円の赤字から1,854億円の黒字へ転換
所在地別では、北米の営業利益が前年同期の211億円の赤字から1,854億円の黒字へ転換しました。営業収益も前年同期比14.9%増の6兆1,057億円です。前期に通期赤字となった北米事業が改善した点は、今回の決算で明確なプラス材料です。
ただし、北米の連結販売台数79万2千台は、小売販売台数とは集計範囲が異なります。会社は北米増益について、諸経費の減少・低減努力などを説明しています。金利スワップ取引等の評価損益を除いても、前年同期の636億円の赤字から1,253億円の黒字へ改善しており、採算が改善しています。

中国販売は28%減|中東影響は通期5,100億円を見込む
トヨタ・レクサスの中国販売は1Qに32万4千台となり、前年同期の45万台から28.0%減少しました。中国事業の持分法投資利益は550億円から415億円へ、連結子会社の営業利益は233億円から160億円へ減少しています。両者を合計した利益と、持分法投資利益だけの数字を混同しないようにしましょう。
中東情勢による通期営業利益への影響見込みは、従来の6,700億円から5,100億円へ縮小しました。8月4日の説明会では、代替物流ルートの活用により、9月以降の輸送能力を通常時の約75%へ回復させる見通しも示しています。これは当時の計画であり、実際に回復したかは今後の開示で確認する必要があります。
HEV販売は6.7%増|電動車比率55.3%が収益を支える

1Qは販売台数全体が減った一方、電動車販売が伸び、比率は55.3%へ上昇しました。台数の中心はHEVです。今後の利益回復には、電池の供給能力と車両生産を増やし、需要に応える必要があります。
HEV123.8万台で前年同期比6.7%増
1QのHEV販売は123万8千台(前年同期比+6.7%)でした。PHEVは5万8千台(同+24.5%)、BEVは11万4千台(同+141.1%)です。複数の電動化技術を展開するマルチパスウェイ戦略が、地域ごとの需要差を補っています。
27年3月期のHEV販売見通しは508万8千台で、前回予想から1万7千台引き上げました。電動車全体の見通しは590万5千台へ5万1千台下げており、BEV計画の引き下げをHEVで補う構成です。利益面ではHEVの増産効果が焦点になります。

次世代HEV用電池へ2027〜2028年に60万台規模で切り替え
トヨタはHEV需要へ対応するため、リチウムイオン電池の生産能力を2030年に向けて拡大します。次世代HEV用電池への切り替えは2027〜2028年に60万台規模と説明しており、性能と原価競争力の両方を高める計画です。投資や立ち上げ費用を、性能向上・原価低減で吸収する狙いです。

電池関連株を比較する際は、セル・材料・制御の役割と用途別需要を分けましょう。次の記事で、定置用も含む蓄電池関連企業の事業とリスクを確認できます。
北米は2030年、インド第4工場は2029年に稼働予定
米テキサス工場では年15万台のタコマ生産能力を新設し、2030年の稼働を予定しています。インドでは2029年稼働予定の第4工場と、2026年稼働の第3工場を合わせ、年20万台を増強する計画です。
海外拠点から日本向けにランドクルーザーFJやノア・ヴォクシーを供給する方針も示しました。設備の増強には年単位の時間がかかるため、今期の利益回復と将来の増産効果は分けて評価します。

金融事業は24.0%増益|自動車事業の減益を補う
金融事業の営業収益は1兆4,006億円(前年同期比+23.3%)、営業利益は2,756億円(同+24.0%)でした。融資残高の増加などが利益を押し上げ、自動車事業の減益を補っています。
一方、自動車事業は営業収益12兆127億円(同+8.8%)に対し、営業利益7,199億円(同△21.0%)でした。全社利益だけを見ると金融の増益で弱点が見えにくくなります。自動車本体の利益率が回復するかが、中長期の評価を左右します。
9月15日株価3,021円の評価|予想PER11.10倍・PBR約0.96倍

9月15日の株価は予想PER約11.10倍、PBR約0.96倍です。純資産との比較では1倍を下回りますが、今期も営業減益の計画です。株価の安さだけで結論を出さず、利益と還元の持続性を点検します。
9月15日の株価・会社予想・6月末純資産で指標を比較
株価は9月15日終値、予想EPSは8月4日公表値、純資産と株式数は6月末を使用しています。指標ごとの計算基準は次のとおりです。
| 項目 | 数値・基準 |
|---|---|
| 株価 | 3,021円(2026年9月15日終値) |
| 会社予想EPS | 272.17円(8月4日公表) |
| 予想PER | 約11.10倍 |
| BPS/PBR | 約3,150.60円/約0.96倍(6月末純資産・株式数) |
| 年間配当予想/利回り | 100円/約3.31% |
| 参考時価総額 | 約44.09兆円(6月末発行済株式数を使用・自己株式を含む) |
PERは株価÷EPS、PBRは株価÷BPSで算出しました。6月末以降の自己株式取得・処分による株式数の変動は反映していません。
過去5年の高安から見てもPBR1倍割れだけでは決められない
直近1年では2月9日に高値4,000円を付け、9月15日終値はそこから24.5%低い水準です。トヨタ公式の事業年度別株価では、22年3月期〜26年3月期の分割調整後安値は1,622〜2,227円、高値は2,283〜4,000円でした。
PBR約0.96倍は純資産との比較では1倍を下回りますが、営業利益が3期連続減益となる計画も踏まえる必要があります。株価が過去の高値より低いという理由だけで割安とは判断できません。利益率と資本効率の改善が必要です。

自社株買いの進捗率は8.65%|残りの枠と取得価格を確認
8月末までの取得総額を取得株数で割ると、自社株買いの平均取得価格は約3,065.90円でした。9月15日終値はこれを約1.5%下回ります。ただし、平均取得価格は会社の買付実績にすぎず、適正株価や下値の保証を示す水準ではありません。
買付は今後の需給を支え得ますが、EPSを直接押し上げるのは自己株式を除いた株数の減少であり、保有済み自己株式の消却だけでEPSがもう一段増えるわけではありません。買付と消却の効果を二重に計上しないようにしましょう。

[関連]自社株買いが株価へ与える影響は?発表翌日には1株も買われない理由・仕組みを解説
年間100円配当の予想利回りは3.31%|利益と資金繰りを確認
27年3月期の年間配当予想は100円で、前期95円から5円増配する計画です。9月15日終値に対する予想配当利回りは約3.31%となります。配当収入を目的に検討する際も、利回りだけでなく、利益計画の達成状況や株価下落のリスクを併せて確認したいところです。
年間100円配当を会社予想EPS272.17円で割った配当性向は約36.7%です。一方、1Qの営業キャッシュフローは前年同期の1兆8,764億円から5,365億円へ減っています。金融事業の資金需要なども影響するため単純には判断できませんが、還元と成長投資を継続できる資金余力を追う必要があります。
今後の上昇には円安以外の利益回復が必要|確認したい3条件

株価の持続的な回復には、円安の支援が弱まっても利益計画を維持できるかが重要です。為替前提に対する実績、北米・HEVの採算、生産影響の挽回を追い、営業利益の回復を次回決算で確認します。
ドル円160円前提を下回ると上方修正分が縮む
通期営業利益予想3.4兆円の為替前提は、1ドル=160円、1ユーロ=181円です。ドル前提を従来の150円から変更した際の営業利益への寄与は、会社資料で4,200億円と示されています。ただし、これを単純に割って、常に1円の変動で420億円動くと判断するのは適切ではありません。
実際の為替影響は期中平均レート、通貨構成、取引時期などで変わります。今日のドル円が160円を下回っただけで、通期予想が直ちに崩れるわけではありません。為替の支援が弱まっても利益を維持できるかを見るため、営業面の努力と原価改善の内訳を確認します。
中国・中東の販売減を北米とHEVで補えるか
中国販売28%減と中東の混乱は、短期間で解消しにくいリスクです。一方、北米は黒字へ転換し、HEV販売も6.7%増えました。今後は北米と欧州の需要が、中国・中東の台数減を補えるかを確認します。
販売台数を維持しても、値下げや物流費の増加で利益率が落ちれば株価の支援材料にはなりません。HEVの供給不足も機会損失になります。地域別の台数、営業利益、利益率をセットで見て、北米黒字化が一時的な為替効果ではないかを判断する必要があります。
生産影響は8月4日の見通しに未反映|挽回と追加費用を点検
トヨタは8月4日公表の通期見通しについて、令和8年熊本地震の影響を織り込んでいないと説明しました。一方、同日の質疑応答では、年間の稼働停止リスクとして見込んだ範囲でカバーできているとの説明もしています。影響が未反映というだけで、通期の下方修正が確定するわけではありません。
今後確認したいのは、工場が動いているかだけでなく、減産分をいつ取り戻し、挽回生産にどれだけ追加費用がかかるかです。部品供給と物流が回復しても、残業や輸送費が増えれば利益への影響は残ります。最新の生産・販売実績と次の決算で、台数と採算の両方を見極めましょう。
まとめ|トヨタの株価と今後は利益回復と自社株買いの実行が焦点

トヨタ株は決算日の下落後に持ち直しましたが、本業はまだ営業減益です。持続的な上昇には、為替以外の利益改善と還元の実行が必要です。
北米の黒字定着、HEVの供給拡大、生産・物流の回復を追いましょう。設備増強には時間がかかり、今期の業績へ直ちに反映されるわけではありません。
PBR1倍割れや取得枠の大きさだけで買いを決めず、営業利益率と買付実績を確認しながら投資額を決める姿勢が適切です。

今なら急騰期待の“有力3銘柄”を
無料で配信いたします
買いと売りのタイミングから銘柄選びまで全て弊社にお任せください。
投資に精通したアナリストの手腕を惜しげもなくお伝えします。
弊社がご提供する銘柄の良さをまずはご実感ください。
▼プロが選んだ3銘柄を無料でご提案▼
執筆者情報
日本投資機構株式会社 証券アナリスト(CMA) テクニカルアナリスト(CMTA®)
総合鉄鋼メーカーに勤務していた経験を活かした、鉄鋼・自動車市場の分析及び情報収集を得意とし、データの集計・分析に基づいた統計学により銘柄の選定を行う希少なデータアナリスト。AIに関する資格も有しておりデータサイエンティストとしても活躍の場を拡げている。

![Invest Leaders[インベストリーダーズ]](https://jioinc.jp/investleaders/wp-content/uploads/2025/07/logo_01.png)

