カプコン(9697)株の買い時|1Qで利益計画の半分、PER30倍でもまだ買いか

江口 裕臣

日本投資機構株式会社 テクニカルアナリスト(CMTA®)

カプコン(9697)株の買い時|1Qで利益計画の半分、PER30倍でもまだ買いか

カプコン(9697)の株価は2026年7月29日、4,229円まで急騰しました。前日に発表した27年3月期第1四半期決算が市場予想を上回り、6月の安値圏から一気に年初来高値へ戻しています。

問題は好決算だったかではなく、その成果が現在の株価へどこまで織り込まれたかです。決算を見てから買おうと考えていた投資家ほど、急騰後を追うべきか迷う場面でしょう。利益の質と今後の材料を分け、まだ買える水準なのかを検討します。

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好決算で株価急騰|カプコン株は年初来高値まで反発

好決算で株価急騰|カプコン株は年初来高値まで反発

決算翌日の急騰は、単なる前年同期比の増益だけで起きたわけではありません。市場が評価したのは、会社計画に対して利益が先行し、年間目標の達成確度が一気に高まった点です。調整が長引いていた反動も重なり、買い注文が集中しました。

ただし、決算の評価と現在の投資妙味は別です。発表前より利益見通しは明るくなりましたが、同時に買値も大きく切り上がりました。まず決算と株価反応を確認し、そのあとで利益の持続性と割高感を切り分けます。

カプコン チャート
2026年1月5日から7月30日後場中までの日足チャート TradingViewより引用

1Q営業利益は410億円|前年同期比66.9%増

27年3月期第1四半期の売上高は704億10百万円で、前年同期比54.7%増でした。営業利益は410億54百万円で同66.9%増、経常利益は414億52百万円で同81.1%増、純利益は291億59百万円で同69.2%増です。

営業利益の通期計画に対する進捗率は49.5%、純利益は50.3%でした。会社は通期予想を据え置きましたが、1Q時点で利益計画のほぼ半分を確保した点が、上方修正への期待を高めています。

27年3月期1Q実績前年同期比通期計画進捗率
売上高704億10百万円54.7%増2,100億円33.5%
営業利益410億54百万円66.9%増830億円49.5%
経常利益414億52百万円81.1%増830億円49.9%
純利益291億59百万円69.2%増580億円50.3%
27年3月期第1四半期実績と通期計画(カプコン決算資料をもとに作成)
カプコン 決算
出典:https://www.capcom.co.jp/ir/data/pdf/explanation/2027/1st/explanation_2027_1st_01.pdf

決算翌日は19.8%高|年初来安値から54.6%上昇

株価は2026年6月15日に年初来安値2,736円まで下落したあと、7月28日に3,529円まで戻していました。好決算を受けた7月29日は、始値3,879円から買いが続き、終値4,229円で年初来高値を更新しています。

前日比は700円高、上昇率は19.8%です。年初来安値からの上昇率は54.6%に達しました。52週高値4,464円にも近づいており、株価は短期間で調整局面から高値圏へ戻っています。決算の評価は高い一方、押し目を待たずに追うには値幅が大きい局面です。

1Q好決算の主役はリピート販売|過去作が高利益率を支える

1Q好決算の主役はリピート販売|過去作が高利益率を支える

私は、カプコンはゲーム株のなかでも収益の質が高いと見ています。過去タイトルをデジタル配信や値下げ販売で長く売り、リピート販売を収益の柱にできているためです。開発費を回収した作品が多く、販売本数が伸びるほど利益率も上がりやすくなります。

ただし、旧作は時間とともに販売本数と単価が下がります。現在の高い評価を維持するには、新作を継続的にヒットさせ、次のリピート資産へ変える循環が欠かせません。1Qのデジタルコンテンツ事業は、売上高546億48百万円、営業利益375億97百万円でした。

リピート販売は全体の89.3%|四半期で過去最高

1Qのゲーム販売本数は2,381万本で、前年同期の1,416万本から68.1%増えました。このうちリピート作品は2,126万本です。構成比は89.3%となり、四半期ベースで過去最高を記録しました。

26年3月期も総販売5,907万本のうち4,946万本がリピート作品で、比率は83.7%でした。新作が少ない四半期でも過去作品から売上を積み上げられる点が強みです。発売時期に左右される四半期業績の振れを抑えやすくなります。

カプコン 決算
出典:https://www.capcom.co.jp/ir/data/pdf/explanation/2027/1st/explanation_2027_1st_01.pdf

『プラグマタ』250万本|新作が過去作品も動かす

2026年4月発売の完全新規IP『プラグマタ』は、1Q末までに251万本を販売しました。完全新作としては好調な立ち上がりです。『バイオハザード レクイエム』も累計806万本へ伸び、シリーズ過去作品の販売を押し上げました。

新作の役割は発売直後の売上だけではありません。作品への関心が高まると、旧作の値下げ販売やセット販売も動きます。『デビル メイ クライ 5』は累計1,424万本、『モンスターハンター:ワールド』は3,045万本です。新作が将来のリピート資産へ加わる循環ができています。

カプコン 決算
出典:https://www.capcom.co.jp/ir/data/pdf/explanation/2027/1st/explanation_2027_1st_01.pdf

営業利益進捗は単純に倍にできない|1Q固有の押し上げを確認

営業利益進捗は単純に倍にできない|1Q固有の押し上げを確認

今回の1Qは非常に強い決算でした。ただ、利益進捗だけを見て通期予想を単純に上振れさせるのは、まだ早いと考えます。過去に繰り延べた売上の戻入と、採算の高いリピート販売が重なり、通常より利益率が高く出やすい四半期だったためです。

一方、会社計画の想定より円安が進んでおり、2Q以降の追い風も残ります。一時的な利益と継続しやすい利益を分ければ、通期予想を据え置いた理由と、なお残る上方修正余地が見えてきます。ここでは利益の出方を変える主な3要因に絞ります。

収益繰延の影響は77億円|残高減少額とは分けて考える

カプコンは本編発売後に無償コンテンツを提供する場合、売上の一部を繰り延べます。1Q決算説明資料では、コンシューマ売上に含まれる収益繰延の影響を77億円と開示しました。今回は過去に繰り延べた売上の戻入が利益を押し上げています。

カプコン 決算
出典:https://www.capcom.co.jp/ir/data/pdf/explanation/2027/1st/explanation_2027_1st_01.pdf

キャッシュフロー計算書上の繰延収益は84億円減りましたが、この残高変動をそのまま営業利益の増加額とはみなしません。損益への影響は会社資料の開示値を基準にします。1Q末の繰延収益残高は5億98百万円まで減り、同規模の押し上げは繰り返しにくい状態です。

カプコン 決算
出典:https://www.capcom.co.jp/ir/data/pdf/explanation/2027/1st/explanation_2027_1st_01.pdf

営業利益率58.3%|通期計画39.5%との差が大きい

1Qの営業利益率は58.3%で、前年同期の54.1%を4.2ポイント上回りました。通期計画の営業利益率は39.5%です。リピート販売の拡大に加え、収益繰延の戻入が重なり、1Qの利益率が高く出ています。

会社が通期計画を据え置いた以上、2Q以降は新作の販売費、開発費、人件費などの増加を見込んでいると読めます。1Qと同じ利益率が続く前提は置けません。次の決算では、収益繰延の戻入が縮小した状態でもデジタル販売の高い採算を維持できるかが焦点です。

想定為替は1ドル140円|円安継続は上振れ要因

27年3月期の会社計画は1ドル140円を前提としています。2026年7月29日のドル円中心相場は163円68銭で、計画より20円以上の円安です。海外販売比率が高いカプコンには、海外売上を円換算する際の追い風になります。

会社は1円の変動で営業利益へ年間4億〜5億円程度の影響があると説明しています。ただし、23円分をそのまま掛けた金額が利益へ乗るわけではありません。為替予約や海外費用もあるためです。それでも、円安が続けば収益繰延の反動を補う材料になります。

カプコン 決算
出典:https://www.capcom.co.jp/ir/data/pdf/explanation/2027/1st/explanation_2027_1st_01.pdf

27年3月期は販売6,500万本を計画|新作とIP展開が上振れ材料

27年3月期は販売6,500万本を計画|新作とIP展開が上振れ材料

カプコンは27年3月期も、新作の初動だけに依存しない販売計画を組んでいます。年間販売の8割超を過去作品で稼ぎ、新作を次のリピート資産へ育てる設計です。1Qの販売ペースは年間計画を上回って進みました。

ただし、下期には新作の発売と販促費が控えています。販売本数だけでは採算まで読めません。利益の上振れを判断する際は、既存作品が計画を超えたか、新作関連費用を吸収したあとも高い利益率を残せたかを分けて確認します。

リピート5,300万本が本線|『鬼武者』は9月4日発売

年間計画の81.5%を占めるリピート作品が業績の本線です。1Qでは『バイオハザード RE:4』が243万本、『RE:2』が142万本、『デビル メイ クライ 5』が129万本を販売しました。複数シリーズが同時に伸びています。

新作では『鬼武者 Way of the Sword』を2026年9月4日に発売する予定です。さらに『ドラゴンズドグマ 2:ダークアリズン』なども年間計画へ含まれます。新作の初動だけでなく、発売に合わせて過去作品の販売がどこまで動くかを確認したいところです。

実写映画は計画未算入|ゲーム販売への波及が焦点

実写映画『ストリートファイター/ザ・ムービー』は、2026年10月16日の公開を予定しています。会社は映画の業績影響を27年3月期計画へ含めていません。直接収入だけでなく、ゲームやグッズへの波及も現時点では未算入です。

映画のヒットを先に利益へ足すのは早いですが、公開を機に『ストリートファイター6』の販売が再加速すれば上振れ材料になります。Netflixで配信する『Devil May Cry』のアニメも、IPの認知拡大を支えます。ゲーム以外の接点がリピート販売へ戻るかが評価点です。

カプコン 決算
出典:https://www.capcom.co.jp/ir/data/pdf/explanation/2027/1st/explanation_2027_1st_01.pdf

株価の推移とバリュエーション|急騰後は割安ではない

株価の推移とバリュエーション|急騰後は割安ではない

1Q末の自己資本を自己株式控除後の株式数で割ると、1株当たり純資産は約685円です。7月29日終値に対するPBRは約6.2倍、年間配当46円を基準にした予想配当利回りは1.09%となります。

自己株式を除く発行済み株式を基準にした時価総額は約1.77兆円です。私は、会社計画ベースのPER30倍前後はカプコンの収益力を考えれば許容範囲だと見ています。ただし、割安感はありません。過去推移と同業比較を重ね、どの利益成長まで織り込んでいるかを確認します。

会社予想では30.5倍|市場予想では26倍台

株価情報サイトによってカプコンの予想PERが異なるのは、分母に使うEPSが違うためです。会社予想EPS138円65銭なら30.5倍ですが、市場予想を使うReutersの表示は26.4倍です。市場側は会社計画を上回る利益を見込んでいます。

ただし、まだ発表されていない上方修正を前提に割安と判断するのは順序が逆です。買い時の基準には会社予想EPSを使い、市場予想は上振れ期待の強さを測る補助材料にとどめます。決算後の株価には、すでに一定の増額期待が入っています。

過去5期のPER中央値は27.0倍|上限は31.6倍

有価証券報告書に記載された22年3月期から26年3月期のPERは、19.5倍、27.1倍、27.0倍、31.6倍、25.7倍です。5期の中央値は27.0倍となり、会社予想ベースの現在値は上限に近い位置です。

会社予想EPSに過去中央値27.0倍を掛けた株価は約3,744円です。過去上限31.6倍なら約4,381円となります。現在値はこのレンジの上側にあり、会社計画だけで評価すると余白は大きくありません。

任天堂・コナミも30倍前後|同業内では高収益を評価

2026年7月29日時点の会社予想ベースでは、任天堂のPERは29.7倍、コナミグループは30.8倍、バンダイナムコHDは23.4倍です。カプコンは任天堂やコナミとほぼ同水準で、ゲーム株のなかで突出してはいません。

一方、PBRは比較対象のなかで高く、配当利回りも1%前後にとどまります。無形のIPが収益源となるためPBRだけでは測りにくいですが、リピート販売による高利益率と安定成長へ相応の価格が付いています。同業比較でも、収益の安定性に対するプレミアムが確認できます。

銘柄株価予想PERPBR予想配当利回り
カプコン(9697)4,229円30.5倍約6.2倍1.09%
任天堂(7974)7,986円29.7倍3.1倍2.03%
コナミグループ(9766)22,705円30.8倍5.8倍0.98%
バンダイナムコHD(7832)4,747円23.4倍3.5倍約1.1%
スクウェア・エニックスHD(9684)2,923円10.2倍約3.0倍1.59%
2026年7月29日終値と各社予想をもとに作成。算出元により数値は異なる

高PERの反動に注意|開発費・ハード価格がリスク

高PERの反動に注意|開発費・ハード価格がリスク

好業績企業でも、期待を多く織り込んだ株価は決算の小さな失速で下がります。カプコンは営業利益率が高く、財務も健全ですが、ゲームの発売時期や販売本数によって四半期利益が動きやすい会社です。

現在の評価は、開発投資を将来の利益へ変えられるという信頼に支えられています。新作の採算や販売環境が崩れると、利益の下方修正だけでなく評価倍率の低下も重なります。業績とPERが同時に下がる点が、高評価銘柄の主なリスクです。

開発投資629億円を計画|仕掛品は565億円

27年3月期の開発投資計画は629億円で、22年3月期の298億62百万円から約2.1倍へ増えています。作品の大規模化と開発期間の長期化により、ヒットした際の利益だけでなく、発売延期や販売不振の影響も大きくなりました。

ゲームソフト仕掛品は26年3月期末の546億28百万円から565億10百万円へ増えました。未発売作品に投じた開発費であり、販売が想定を下回れば評価損や利益率低下につながります。発売本数だけでなく、開発費を回収できる販売期間まで見る必要があります。

Switch 2値上げと円高反転|販売本数と利益率を下押し

Nintendo Switch 2の国内価格は2026年5月25日に49,980円から59,980円へ引き上げられました。カプコンは複数機種とPCへ展開しているため、Switch 2だけで業績が決まるわけではありません。それでも、ハード価格の上昇はゲーム購入の予算を圧迫します。

円相場が会社想定の水準へ戻れば、現在の為替上振れ期待も弱まります。さらに「バイオハザード」など主力IPの販売が鈍れば、リピート作品全体へ影響が広がります。ハード普及、為替、新作評価が同時に悪化する場面では、PERの低下も起こり得ます。

今後の株価シナリオ|強気・中立・弱気で見通す

今後の株価シナリオ|強気・中立・弱気で見通す

リスクまで確認すると、すでに保有している場合は継続、新規購入は押し目待ちが妥当です。判断の基準には会社予想EPSを使い、業績上振れが実現した場合だけ利益水準を引き上げます。発表前の期待ではなく、会社計画を出発点にします。

現在の4,000円台は、次の上方修正や新作ヒットを先回りする価格です。株価が同じでも、利益の前提が変われば割高感は変わります。弱気、中立、強気の3つに分け、どの条件なら現在の評価を説明できるかを確認します。

カプコン チャート
2026年6月29日から7月30日後場中までの日足チャート TradingViewより引用

弱気|3,700~3,900円で過去中央値に近づく

会社予想EPSを基準にすると、3,700円はPER26.7倍、3,900円は28.1倍です。過去5期の中央値27.0倍に近く、上方修正がなくても説明しやすい価格帯になります。新規で買うなら、現在より判断の余裕が生まれます。

ただし、好決算後に必ずこの水準まで下がるとは限りません。先に通期予想が引き上げられれば、株価の基準自体が切り上がります。急騰後を追うより、この価格帯まで待つか、次の決算後に利益の前提を計算し直す場面です。

中立|4,000~4,200円は追加材料を先回り

会社予想EPSを基準にすると、4,000円はPER28.9倍、4,200円は30.3倍です。カプコンの収益力を考えれば説明は付きますが、1Qの進捗だけを理由に買い上がる場面ではありません。期待が剥がれた際の下落幅を先に考えたい位置です。

この価格帯で買うなら、通期予想の増額か、『プラグマタ』『バイオハザード レクイエム』に続く新作ヒットを先回りする投資です。追加材料が出なければ、高い評価だけが残ります。

強気|EPS150円なら4,050~4,740円

通期純利益が会社計画580億円を上回り、EPSが150円まで伸びた場合、PER27.0倍の株価は4,050円です。過去上限31.6倍なら4,740円となります。現在値のPERは28.2倍まで低下し、株価にも説明が付きます。

強気シナリオの条件は、リピート販売5,300万本の達成、円安効果、新作の順調な販売です。どれか1つでは足りません。2Qで収益繰延の戻入が減ったあとも利益率を維持し、会社が通期予想を引き上げれば、4,000円台前半が新たな基準になり得ます。

まとめ|保有継続、新規購入は押し目待ち

まとめ|保有継続、新規購入は押し目待ち

カプコンは、リピート販売を収益の柱にできる質の高いゲーム会社です。今回の1Qも非常に強い決算でした。ただし、株価は好決算と一定の上方修正期待へすぐ反応しています。良い会社だから、どの価格でも買えるわけではありません。

私は、すでに保有している場合は継続でよい一方、新規購入では押し目を待つのが妥当だと考えます。現在の高値圏を強く買い上がるには、もう一段の利益成長を示す材料が必要です。

保有継続の判断では、リピート販売の継続、新作の販売動向、2Q以降の利益率、通期予想の上方修正を確認します。これらがそろって上向けば、買値の基準も切り上がります。

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執筆者情報

nari

江口 裕臣

日本投資機構株式会社 テクニカルアナリスト(CMTA®)

著名な元機関投資家や経験豊富なアナリスト・ファンドマネージャーより培った知識と経験を基に、数多くの市場動向の予測や個別銘柄の動向をピンポイントで分析。銘柄の推奨実績において社内の月間最高勝率記録を持つテクニカルアナリスト。

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