2026年10月5日、焼肉きんぐと大和証券が個人情報の漏えい、または漏えいの可能性を公表しました。タイムズカーや日経の被害公表も重なり、AIで攻撃が強まったのか、既存の対策企業では防げないのかが気になります。
確認できる侵入先や手口は事案ごとに異なり、一連の被害をAIのせいとは断定できません。サイバーセキュリティ関連銘柄は、攻撃への対処能力と、その仕事を利益に変える力を分けて比べる必要があります。
最近の事案から原因、対策の限界、今後の社会への影響を読み解き、上場8社を比較します。事案は10月6日確認、業績情報は10月5日時点、株価は10月2日終値です。
相次ぐ個人情報流出は、委託先・会員システム・アカウントで起きている

直近の公表を比べると、会員データの保管先、外部の委託先、業務用アカウントがそれぞれ狙われています。同じ情報流出でも、侵入経路と被害の確度は異なります。必要な対策も分けて考えられます。
| 公表日 | 企業・サービス | 確認された経路・状況 | 公表された規模と確度 |
|---|---|---|---|
| 2026年10月5日 | 焼肉きんぐ | 会員管理システムへの不正アクセス。詳細原因は調査中 | 1,078万8,963件の漏えいを確認 |
| 2026年10月5日 | 大和証券 | 問い合わせ管理の委託先サーバーへの不正アクセス | 約11万人の個人情報。匿名の問い合わせ等を含む情報全体は約22万件。漏えいの可能性 |
| 2026年10月4日 | 日本経済新聞社 | Google Workspaceアカウントへの不正ログイン | 社員・取引先など1,646人分の漏えいの疑い |
| 2026年9月28日・29日 | タイムズカー | Webシステムへの不正アクセス。詳細な侵入経路は未公表 | 約660万アカウントの漏えい。本人確認書類の画像は約160万アカウント |
| 2026年9月11日 | デジタル庁GSS | VPN機器の脆弱性を利用した侵入 | 職員や業務関係者など約24.6万件の漏えいの可能性 |
大和証券と焼肉きんぐは、保管先まで守る必要性を示す
大和証券の事案では、同社自身のシステムへの不正アクセスは確認されていません。問い合わせ履歴を保存していた委託先が侵入を受けました。自社の防御が保たれていても、外部に預けた顧客情報は別の場所で漏れる恐れがあります。同社は既存の委託先の点検を進めています。
焼肉きんぐでは、会員番号や連絡先の漏えいが確認された一方、ログインパスワードや店舗利用履歴は対象外でした。保管するデータと漏れたデータを区別すれば、被害を過大にも過小にも扱わず、調査や保管方法の見直しに必要な範囲を絞れます。
日経の事案は、乗っ取られたアカウントが次の攻撃に使われる怖さを示す
日経が10月4日に公表した被害には、表のGoogle Workspaceとは別にMicrosoft 365の事案があります。9月30日に社員のアカウントから、悪性サイトへ誘うなりすましメールが約9,000件送られました。これはメール送信件数であり、漏えいした人数ではありません。
乗っ取られた業務用アカウントは、情報を盗む入口にも、取引先へ攻撃を広げる足場にもなります。ただし、公表が同時期でも攻撃が同時に起きたとは限りません。GSSでは6月に異常を検知しており、最近の公表件数だけで攻撃件数の急増率は計算できません。
AIで攻撃が速まっても、既存のサイバーセキュリティ対策は無効にならない

AIが攻撃を効率化するリスクはありますが、被害の発生だけで既存製品が役に立たなくなったとはいえません。機器の弱点、盗まれた認証情報、侵入後の行動に応じて防ぐ手段が違います。企業の製品と顧客側の運用を対応させます。
AIは攻撃の手間を減らすが、今回の事案での利用は確認されていない
AIは攻撃対象の調査や偽メールの作成、ソフトの弱点を探す作業を効率化し得ます。英国の国家サイバーセキュリティセンターは、2027年に向けて既存の攻撃手法がAIで強化され、修正前のシステムを狙う攻撃が増えると評価しています。
ただし、ここで取り上げた各事案の公表資料に、攻撃者がAIを使ったとの確認はありません。GSSで公表された原因はVPN機器の脆弱性です。AIによる攻撃の効率化という一般的な脅威と、個別事件の原因を分けると、必要な対策も具体的になります。
Web防御と端末防御は、更新が必要な機器まで一括して守れない
サイバーセキュリティクラウドのWAFはWebへの攻撃、FFRIの製品は端末側の脅威に対応します。保護する場所が違うため、WAFを導入してもVPN機器の更新まで完了するわけではありません。GSSの再発防止策にも、脆弱性管理と外部からの接続方法の見直しが挙げられました。
デジタルアーツのフィルタリングも、危険なサイトとの接触を抑える役割です。各製品が担当する範囲を組み合わせ、修正プログラムの適用や設定確認を続ける必要があります。今回の被害を特定製品の性能不足と結び付けるには、実際の導入状況と調査結果が必要です。
認証と不正検知は、正規アカウントを装う攻撃に別々の段階で備える
盗まれた認証情報で入られる場合は、入口で本人や端末を確かめ、ログイン後の動きも監視します。ソリトンの認証製品とカウリスの不正検知は、この異なる仕事に関わります。カウリスが扱う金融サービスの不正利用と、社員用クラウドのアカウント管理は対象も異なります。
対策には、偽サイトへ認証情報を渡しにくい認証方式や、利用者に必要な権限だけを与える運用があります。認証を通過した後も不審な利用を調べれば、入口だけでは気付けない被害を捉える余地が生まれます。製品名だけで、今回の各事件を防げたとまでは判定できません。
監視サービスは、警告を出した後に誰が止めるかまで整えて機能する
トレンドマイクロの脅威検知・対応、セキュアヴェイルの監視やログ管理は、侵入後の異常を把握する仕事に関わります。警告が届いても、確認する担当者や通信を止める手順がなければ被害の抑制は遅れます。GSXの教育・診断は、その運用を担う人材や対策の不足を補う事業です。
AIを使った防御も、業務を止めてよい範囲や誤検知への対応まで自動的に決められるわけではありません。既存企業は防御を担えますが、顧客の設定、権限管理、対応手順との組み合わせが必要です。継続運用の仕事が増えるかは、後半の契約・利益の比較につながります。
今後のサイバーセキュリティは官民連携と継続的な運用が支える

今後の変化は、攻撃側の技術だけで決まりません。データの預け方、事故後の対応、官民で共有する情報も変わります。企業の日々の運用と国の対処は役割が異なり、制度が始まっても個社の対策は続きます。
社会の差は、AIを使うかより被害を抑えて業務を戻せるかに広がる
今後は、修正や監視を継続できる組織と、人手・費用が足りず対応が遅れる組織で、被害の受けやすさに差が開く恐れがあります。本記事では、外部サービスを選ぶ際も、価格や便利さに加えてデータ管理と事故対応が重くなると見ます。
利用者側では本人確認が増え、企業側では委託先の点検や復旧体制の整備が継続費用になり得ます。残す情報を絞り、盗まれた後の悪用と業務停止を抑える取り組みも欠かせません。対策費の増加をすべて製品売上と見なさず、運用・教育を含めて支出先を追う必要があります。
官民連携と無害化措置が始まり、基幹インフラの報告義務が変わる
内閣府の施行説明では、官民連携とアクセス・無害化措置は2026年10月1日に施行されました。特別社会基盤事業者には、対象システムの導入やインシデントの報告が求められます。防衛省も10月2日の会見で関連任務の開始に言及しており、制度は準備から運用へ進んでいます。
企業側では報告に使う記録の収集や状況把握が必要になり、ログ管理、監視、診断などとの接点が生まれます。ただし、民間ベンダー全社に無害化の権限が与えられる制度ではなく、製品を提供する役割とは分けて読む必要があります。
通信情報の利用は2027年秋予定、全面施行とは分ける
通信情報の利用について、政府説明は2027年秋の施行予定としています。2026年10月に全機能が同時に始まったとは書けません。政府が扱う情報の範囲や監督の仕組みを整える期間と、企業が既存システムを見直す期間には時間差があります。
また、既に導入済みの対象システムの報告は2027年3月まで、新たな導入は原則として導入後4カ月以内が期限です。報告に備えた棚卸しと将来の通信情報分析は、別々の発注になり得ます。両方の予算が同じ決算期の売上に入るとの推計は置きません。
制度との接点があっても受注・増益の確認が必要
基幹インフラの対策強化は、受注先の選定や契約を経て初めて企業の収益になります。既存案件の伸びを、そのまま新制度の効果とは扱えません。例えば今回比較する最新決算の対象期間は、いずれも10月の施行前です。制度を見据えた準備需要が含まれる可能性と、施行後に獲得した仕事は区別します。
顧客の支出が増えても、機器の仕入れや外注が多い案件では利益が伸びにくくなります。生成AIを使った検知の高度化も別の競争要因です。技術名の新しさに加え、有償利用の増加とサービス提供原価まで確認すると、収益につながる取り組みを比較できます。
サイバーセキュリティの本命候補|政策接点と継続収益の3社

本命候補は、事業と業績を対応させて選びます。政策への近さと、継続収益の伸びは別の選定理由です。国家向け事業、公共向け契約、クラウドの継続課金を持つ3社について、収益を確認できる数字と採算上の違いを見ます。
FFRIセキュリティ(3692)|国家安全保障案件は増員後の採算を確認
FFRIセキュリティ(3692)は、国家安全保障向けの研究・技術支援と端末防御製品FFRI yaraiを展開しています。8月13日公表の27年3月期第1四半期は、国家安全保障向け売上が3.01億円でした。政府向け事業が実際にある点で制度との接点は明確です。
一方、全社営業利益は1.85億円と前年同期比30.0%減少しました。政府の研究案件には原価のみを請求し、利益を含めない契約もあります。受注規模が膨らんでも高採算とは限らず、増員した技術者が利益を伴う案件をどれだけ担えるかが次の確認点です。

デジタルアーツ(2326)|公共契約の増加が売上に移る時期を見る
デジタルアーツ(2326)はi-FILTERなどのフィルタリングを提供し、学校・自治体・企業の安全な利用を支えます。7月31日公表の27年3月期第1四半期は、公共向け契約高が21.95億円、前年同期比89.2%増でした。GIGAスクール構想第2期と省庁案件が伸びを支えています。
下の図では、公共向け売上の増加率が契約高より小さくなっています。獲得した契約が一度に全額売上になるわけではないためです。会社全体の契約高が先に増えていても、販売期間やサービス提供期間に沿って利益への寄与を確かめる必要があります。


サイバーセキュリティクラウド(4493)|ARRと新料金プランの効果を見る
サイバーセキュリティクラウド(4493)は、Webへの攻撃を防ぐWAFを攻撃遮断くんやWafCharmで提供します。8月14日公表の26年12月期上期では、継続契約を年換算したARRが52.74億円、前年同期比15.5%増でした。クラウド上の防御を外部サービスへ任せる需要とのつながりがあります。
6月16日に公表した攻撃遮断くんの「Web/DDoSセキュリティタイプNeo」は、小規模サイト向けの料金プランも追加しました。新規顧客が増えるかと、顧客単価への影響を次の四半期で確かめます。過去の政府向け単発案件も継続課金と分け、運用費を差し引いた利益を追います。

防御・認証・人材育成の3社は製品需要と採算で選ぶ

企業の対策を支える仕事は、製品の提供から人材育成まで広がります。海外契約、認証製品の更改、技術者の稼働では成長を測る数字は別です。国内制度との接点を確認しながら、各社の主力事業に合う指標で利益の持続性を比べます。
トレンドマイクロ(4704)|世界の継続契約と提供費用を照合
トレンドマイクロ(4704)はTrendAI Vision Oneなどで企業の脅威検知と対応を支えます。8月13日公表の26年12月期上期説明では、ARRは約17億ドル、為替変動を除く伸び率は5%でした。円換算の増収だけでは、契約の実質的な伸びを測れません。
上期営業利益は217.92億円で前年同期比23.5%減少しています。クラウド利用費や新ブランドの推進費用が利益を圧迫しました。海外事業が大きいため国内制度だけに期待せず、継続契約の拡大と提供費用の効率化が両立するかを確かめます。

ソリトンシステムズ(3040)|認証製品の更新後も販売が続くか
ソリトンシステムズ(3040)はNetAttest EPSなどの認証製品を持ち、接続する端末や利用者の確認を支えます。8月12日公表の26年12月期上期では、ITセキュリティ部門の利益が23.35億円でした。全社営業利益17.77億円とは範囲が違い、他部門や全社費用の影響があります。
2026年6月の旧製品サポート終了に伴う更改需要も業績を支えました。この需要を制度による新規需要と混同すると、成長が続く期間を長く見積もりかねません。認証製品の販売が更改後も続くかと、IT部門の利益が全社に残る割合を併せて追います。

グローバルセキュリティエキスパート(4417)|人員増と利益率を確認
グローバルセキュリティエキスパート(4417)は、教育、診断、コンサルティングで企業の対策を支えます。7月31日公表の27年3月期第1四半期は、営業利益4.99億円、前年同期比41.7%増でした。教育や調査を実行する人材の稼働が、収益の拡大に直結しやすい事業です。
技術者は前期末の221人から237人へ増え、新卒採用も進めています。増員直後には育成期間があるため、人数の増加を同率の売上増へ置き換えられません。次回は売上だけでなく、受注をこなせる人員の育成と営業利益率の維持が両立するかを確認します。

小型の注目銘柄2社は赤字縮小と顧客定着を確認

セキュアヴェイルとカウリスは、監視・不正検知の専門サービスを持つ企業です。専門性があるだけでは、全社の利益拡大を保証できません。直近の営業赤字と顧客数の減少をそれぞれ確認し、売上の伸びが持続する条件を見ます。
セキュアヴェイル(3042)|監視サービスの成長を赤字縮小で確かめる
セキュアヴェイル(3042)はNetStareやLogStareを通じ、監視・運用とログの分析を支えます。8月14日公表の27年3月期第1四半期は、売上高2.60億円に対し営業損失0.52億円でした。継続サービスを持つ企業でも、全社で利益が出ているとは限りません。
仕入れや人件費、広告宣伝費の増加が採算に影響しています。黒字企業と同じ基準で契約の伸びだけを評価せず、売上総利益が増加費用を吸収できるかが先です。AI-SOCの展開も、名称の新しさより有償契約への転換と赤字幅の縮小を確認してから評価します。

カウリス(153A)|不正検知は顧客数と単価を分けて見る
カウリス(153A)はFraud Alertで不正アクセス・不正送金を検知し、金融機関などの対策を支えます。8月14日公表の26年12月期上期資料では、契約顧客数は47社で前期末より1社減少しました。新規2社に対して解約が3社あり、顧客の裾野が広がった成長ではありません。
一方、月次の継続収益であるMRRは前年同期比9.1%増でした。顧客当たりの収益が伸びて全体を支える構造です。単価上昇がどこまで続くかに加え、解約の抑制と新規獲得が回復するかを追います。官公庁向けの直接受注を期待する銘柄とは分けて比較します。

関連銘柄の選び方|契約の質と費用を株価評価に照らす

同じ対策需要を追っていても、契約の計上時期や費用負担で株主に残る利益は変わります。契約の増加を確かめ、費用を差し引いた利益と株価を比べます。成長指標の読み違いと、一時的な利益による割安感を避けるための確認項目です。
受注・ARR・売上は意味を分けて成長を比較する
契約高とARRは将来の収益を考える手掛かりですが、算定方法が異なります。デジタルアーツは契約高を期間中に獲得した受注の総額とし、売上には繰入と繰延を反映します。ARRは継続収益を年換算した指標で、その期の確定売上ではありません。各社の定義や為替換算条件もそろえて読む必要があります。
カウリスの契約負債のような前受け分も、現金の受領と利益計上の時期がずれます。受注額、年換算額、会計上の残高を横に足すと、同じ契約を重複して数えかねません。比較表には同じ種類の指標を並べ、異なる指標同士に成長順位を付けない方が正確です。
PERと利益の中身を2026年10月2日終値で照合する
予想PERは、株価を会社予想の1株当たり純利益(EPS)で割って算出しました。2026年10月2日終値と最新会社予想を使用し、株価サイトごとに違う予想の採用時点をそろえています。高い倍率には成長の持続が必要で、制度への関心だけでは正当化できません。
セキュアヴェイルのPERは通期の黒字予想に基づくため、直近の営業赤字を覆い隠す面があります。表の倍率が近くても、現在の利益で裏付けられた会社と今後の回復を織り込む会社は別です。未定の配当を前年実績で補って、予想利回りを高く見せる計算も行いません。
| 銘柄 | 終値(円) | 会社予想の対象期 | 予想EPS(円) | 予想PER(倍) | 予想配当利回り |
|---|---|---|---|---|---|
| FFRIセキュリティ(3692) | 7,600 | 27年3月期 | 143.25 | 53.1 | 0.24% |
| トレンドマイクロ(4704) | 6,798 | 26年12月期 | 234.92 | 28.9 | 未定 |
| デジタルアーツ(2326) | 5,080 | 27年3月期 | 280.45 | 18.1 | 1.97% |
| ソリトンシステムズ(3040) | 2,648 | 26年12月期 | 144.01 | 18.4 | 2.72% |
| サイバーセキュリティクラウド(4493) | 1,973 | 26年12月期 | 84.41 | 23.4 | 0.30% |
| セキュアヴェイル(3042) | 338 | 27年3月期 | 12.45 | 27.1 | 0.89% |
| グローバルセキュリティエキスパート(4417) | 5,630 | 27年3月期 | 133.19 | 42.3 | 0.87% |
| カウリス(153A) | 1,544 | 26年12月期 | 54.07 | 28.6 | 0.36% |
[関連]EPS(1株当たり純利益)とは?計算方法やPERとの関係、注意点を解説
公共案件と製品更改は受注から売上までの時間差を見る
公共向けの伸びを来期まで延ばす際は、契約の残高だけでなく、同じ需要が再発するかを確認します。デジタルアーツの学校端末更新と、ソリトンの旧製品更改では需要の発生理由が違います。どちらも更新を終えた顧客から同規模の注文が翌年も来るとは限りません。
比較には、前年同期に大型案件があったか、新規導入と更新がどの程度含まれるかを使います。納期のずれなら後の四半期に売上が戻り得ますが、更新需要の一巡なら別の顧客獲得が必要です。単なる進捗率の低さから失速と決めず、未計上と需要消失のどちらかを説明資料で確かめます。
一時利益を除き、採用・研究開発・広告費を確認する
純利益の増加だけで本業の改善を測ると、投資有価証券の売却や採用の遅れを成長と取り違えます。セキュアヴェイルの24年3月期には、投資有価証券売却益4.21億円がありました。過去の利益との比較では、営業利益まで戻って継続性を確かめる必要があります。
カウリスの上期では採用費用が想定より少なかった影響もあり、増益はサービスの成長だけによる結果ではありません。一方、FFRIの研究開発費には政府プログラムへの原価振替の影響があります。費用の減少を効率化と即断せず、支出をやめたのか、計上先や時期が変わったのかまで確認します。
株価に織り込まれた成長と小型株の流動性を確認する
本命候補でも、会社計画の達成を既に十分織り込んだ株価なら、決算通過だけで上がるとは限りません。増益の有無と、市場が期待した増益を上回るかは別です。ここでは根拠のない目標株価を置かず、利益予想が下がった場合に現在の倍率がさらに高くなる銘柄を慎重に扱います。
小型株では、購入予定額と日々の売買代金の関係も確認対象です。少ない約定で株価が動く日は、希望する価格で売れない恐れがあります。カウリスなど社歴の短い上場銘柄を含む比較では、過去5年の株価がそろわないため、同じ長期騰落率による順位付けも行いません。
サイバーセキュリティ関連銘柄一覧|8社は制度接点と業績で絞る

紹介した8社を、事業内容と次に見る数字へ戻して一覧にしました。採用基準は、事業と決算を確認できる国内上場企業です。制度への直接受注を期待する会社と、企業の対策強化から需要を受ける会社を分け、候補を残す条件まで比較します。
制度との接点・具体サービス・業績・次の決算を比較する
政府の防御活動を支える技術と、民間企業が自社を守る製品では、売上が発生する相手が異なります。下表の「接点」は事業内容からの分類であり、制度関連の受注認定ではありません。政府への直接受注を想定する会社と、顧客の対策強化を通じて需要が増える会社を区別しました。
業績欄は各社の最新決算で確認した変化です。3月期企業の第1四半期と12月期企業の上期は集計期間が違うため、売上額だけで優劣を付けません。契約の増加と利益への転換を、会社ごとに追うための一覧です。
| 銘柄 | 制度との接点 | 具体サービス | 最新決算の裏付け | 次の確認項目 |
|---|---|---|---|---|
| FFRIセキュリティ(3692) | 国家安全保障の技術支援 | FFRI yarai、研究・解析 | 国家向け売上を開示。全社は減益 | 国家向け採算、技術者の稼働 |
| トレンドマイクロ(4704) | 企業・重要インフラの防御 | TrendAI Vision One | 継続契約は拡大。提供費用が増加 | 固定為替ARR、営業利益率 |
| デジタルアーツ(2326) | 公共・企業の利用環境整備 | i-FILTERなど | 公共契約が増加。売上とは計上差 | 契約の売上化、クラウド売上 |
| ソリトンシステムズ(3040) | 端末・利用者の認証 | NetAttest EPSなど | 旧製品更改が寄与。IT部門は黒字 | 更改後の販売、IT部門利益 |
| サイバーセキュリティクラウド(4493) | クラウドのWeb防御 | 攻撃遮断くん、WafCharm | ARRが拡大。新料金の効果を待つ | ARR、顧客数、提供原価 |
| セキュアヴェイル(3042) | 監視と報告に使うログ管理 | NetStare、LogStare | 直近四半期は営業赤字 | 売上総利益、赤字縮小 |
| グローバルセキュリティエキスパート(4417) | 人材育成・診断・対策支援 | 教育、診断、コンサルティング | 増員と営業増益を確認 | 技術者の稼働、営業利益率 |
| カウリス(153A) | 金融サービスの不正対策 | Fraud Alert | 顧客減を単価上昇が補う | 新規と解約、顧客単価 |
次の決算で評価を変える数字を8社ごとに整理する
次回決算は、候補を増やす機会だけでなく、期待が外れた銘柄を外す機会にもなります。見る数字と見送り条件を先に対にすると、好材料だけを拾う読み方を避けられます。下表は会社の予想ではなく、本記事が決算を比較するための確認項目です。
FFRIセキュリティの上期決算は、公式IRカレンダーで2026年11月12日が予定されています。他社は次の四半期資料の公表時に確認し、未確認の日付は断定しません。売上が計画を超えても、新料金への移行後の解約や部門別の減益があれば、本命候補として残す理由は弱まります。
| 銘柄 | 次に確認する数字 | 候補に残す条件 | 見送る条件 |
|---|---|---|---|
| FFRIセキュリティ | 国家向け売上・粗利益、技術者数 | 売上増が人件費を吸収 | 低採算研究案件が拡大 |
| トレンドマイクロ | 固定為替ARR、営業利益率 | 契約成長と費用効率が改善 | 売上増に対して利益率が低下 |
| デジタルアーツ | クラウド売上、契約高と繰延の増減 | 契約が継続売上に移る | 契約減と計上遅れが重なる |
| ソリトンシステムズ | 認証製品販売、IT部門利益 | 更改需要の一巡後も販売が持続 | 更改後に販売・利益が減少 |
| サイバーセキュリティクラウド | ARR、顧客数、サービス提供費用 | 新料金で顧客層が広がり増収に寄与 | 顧客単価低下や原価増が成長を相殺 |
| セキュアヴェイル | 継続サービス売上、売上総利益 | 粗利益の増加が固定費を吸収 | 売上が増えても損失が拡大 |
| グローバルセキュリティエキスパート | 技術者数、売上、営業利益率 | 育成後の稼働が売上と利益に寄与 | 人数増に対して利益率が低下 |
| カウリス | 新規・解約社数、MRR、顧客単価 | 顧客数と継続収益がともに増える | 単価上昇でも解約が収益を圧迫 |
ALBERT・ラックは上場廃止済みのため候補から外す
ALBERT(旧3906)とラック(旧3857)は、現在買える上場株の比較対象から外しました。日本取引所グループの上場廃止決定によると、ALBERTは2022年12月26日、ラックは2025年2月25日に上場廃止済みです。旧コードで銘柄を探しても、上場時と同じ形では取引できません。
サービスや技術が事業として残るかと、株式を市場で買えるかは別の問題です。本記事では旧銘柄を新しい候補と混在させず、親会社への波及も自動的には代替しません。投資対象が変われば、利益への寄与率も調べ直す必要があります。
まとめ|サイバーセキュリティ関連銘柄は対処能力と採算で選ぶ

相次ぐ流出をAIのせいと決めず、実際の侵入経路と防御の不足を結び付けると、関連銘柄の役割が見えてきます。
既存企業の製品は対策を担えますが、更新、権限管理、監視後の対応まで組み合わせて初めて被害を抑えられます。
今後の候補は、その運用を継続して支えられる企業です。8社の契約・顧客数・採算を照合し、社会の対策強化が各社の利益に届いているかを確かめます。

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日本投資機構株式会社
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