2026年9月25日、日米の財務相は円の過小評価が問題だとの認識を再確認しました。円安の修正が議論されるなか、円高へ動いた場合に備えて、恩恵を受ける日本株と現在の業績を確認しておきたいところです。
この記事では、円高メリット銘柄を探す個人投資家に向け、ニトリ、神戸物産、ANAHDを中心に8社を比較します。過去の値動きと最新決算から、利益が増える条件、決算への反映時期、買う前の注意点を整理します。
円高メリット銘柄とは|輸入費用の低下が追い風になる日本株

円高メリット銘柄は、円高による輸入費用の低下などが業績の追い風になる企業の株です。候補にはニトリ、神戸物産、ANAHDなどがあります。ただし、外貨で払う費用と外貨で得る収入の差によって恩恵は変わります。
海外から仕入れ、国内で販売する企業が中心
円高になると、同じドル価格の商品を買うために必要な円が減ります。国内の販売価格を維持できれば、売上高から仕入原価を引いた粗利益が増える仕組みです。ニトリのように海外調達と国内販売を組み合わせる企業は、輸入費用の低下が国内売上の円換算額を減らさずに効く点が特徴です。
一方、輸入品を扱うだけでは恩恵の大きさを判断できません。国内商社を通じた円建て仕入れなら、仕入先の価格改定を待つ場合もあります。セリアの海外製商品の比率を、そのまま同社の外貨支払比率と読むのは不適切です。調達通貨と契約先まで確かめて候補を選びます。
小売・食品・航空では円高が効く費用が違う
小売では完成品の仕入れ、食品では輸入食材や製造に使う原材料、航空では燃油や機材関連の外貨支払が主な経路です。ただし、食品メーカーの国内製造費や、航空会社の運賃収入も採算に効く要素です。商品原価だけを追う小売と、燃油・運賃を合わせて追う航空を同じ感覚で比べないようにします。
例えばANAHDは、国内線と国際線で燃油価格の変動への対応が異なります。国内線は先々の購入価格を固定する取引、国際線は運賃に上乗せする燃油サーチャージが中心です。業種を分ける理由は、円高の大きさ以上に、費用の変化を会社と顧客のどちらが負担するかが違うためです。
円高メリット銘柄を今見る理由|円安是正の議論と輸入物価の変化

今回取り上げる背景には、日米の為替協議と輸入物価の変化があります。政策上の問題意識と、企業が実際に負担する調達価格は別です。円高が定着したと決め付けず、投資候補を調べるきっかけとして両方を確認します。
日米財務相は9月25日に円の過小評価を問題視
2026年9月25日の日米財務相による電話会談では、円の過小評価を問題とする認識が再確認されました。金融市場の動向などを話し合い、両国の協力強化も確認しています。ただし、円の適正水準や特定の日の為替介入を約束した発表ではありません。会談の内容だけで円高の進行幅を予想するのは困難です。
投資への使い方は、円高へ動いたときに注目される企業を先に調べておく、というものです。政策発言で株価が反応しても、企業の決算に効果が出るまでには時間差があります。発表直後の値動きに追随する前に、その会社のどの費用が減り、どの収入が減るのかを整理します。
8月の円建て輸入物価は前月比低下でも前年より高い
2026年8月の輸入物価指数は、円建てで前月比3.0%低下した一方、前年同月比では24.8%上昇しました。契約通貨建てでは前月比1.0%低下、前年同月比16.7%上昇です。直前の月から安くなっても、前年より調達環境が楽になったとは限らない数字です。
円建てと契約通貨建ての動きが異なるため、為替と商品そのものの価格を分けて確認できます。ただし、指数には各社が購入しない品目も含まれ、輸入物価の下落率を個別企業の原価削減率にはできません。食品なら原材料、航空なら原油価格を加え、実際の仕入れへの影響を調べる必要があります。
円高メリット銘柄の過去事例|2024年夏にニトリと神戸物産が上昇

2024年夏は、円高への反応を確かめる事例です。ニトリと神戸物産には上昇が見られましたが、為替の変化と企業固有の材料が重なっていました。当時のチャートを、次の円高で同じ上昇率になるという予想には使いません。
ニトリ|円高への期待に販売好調も重なって株価が反発
ニトリHDの終値は、2024年7月10日の3,292円から8月27日の4,468円へ35.7%上昇しました。価格は2025年10月の1対5の株式分割を反映した調整値です。2024年7月には、米物価指標の公表後に円高が進み、輸入企業の採算改善への期待が買いにつながりました。
その後の2024年9月4日も、同社株は前日比2.6%上昇しています。8月の既存店売上高が前年同月比7.8%増えた販売面の材料もありました。円高だけで上昇を説明せず、客数や売上の改善を重ねて確認するのが、この事例から得られる銘柄選びの教訓です。

神戸物産|2024年7月の円高時に上昇しても再現は保証されない
神戸物産の終値は2024年7月11日の3,612円から、翌12日に3,819円へ上昇しました。1日で5.7%の上昇です。円高が進んだ日に、輸入食品を扱う業務スーパーへの期待が株価に表れた例といえます。ただし、これは短期の市場評価であり、その日に利益が5.7%増えた意味ではありません。
同社には、食品の仕入れと別に為替予約の評価損益があります。円高で先々の調達が有利になっても、決算の利益が同時に改善するとは限りません。当時の上昇を再現する銘柄を探すより、次の決算で原価と営業利益が改善するかを確かめる方が、購入理由を具体化できます。

円高メリット銘柄の注意点|円高でも利益が増えるとは限らない

銘柄名を覚えるだけでは、買う時期や業績への影響まで判断できません。確認したいのは、効果が出るまでの時間、他の費用による相殺、株価への織り込みの3つです。会社の増益と株価の上昇も分けて考えます。
在庫と為替予約により原価への反映が遅れる
円安のときに仕入れた在庫を販売している間は、足元の円高が売上原価へ十分に反映されません。新しい為替で調達した商品に在庫が入れ替わり、販売されて初めて利益へ効きます。ニトリが仕入為替と在庫為替を分けて説明するのも、この時間差を読むうえで役立ちます。
為替予約は、将来の外貨取引に使うレートを先に決める契約です。円安への備えになる一方、予約した期間は円高の恩恵を受けにくい場合があります。予約残高・適用レート・満期と在庫の回転期間を合わせて読む必要があります。円高になった翌四半期からの増益を、一律に予想できるわけではありません。
海外利益の円換算と物流費・人件費が恩恵を相殺する
海外で稼ぐ会社では、現地通貨の利益が同じでも、円高で円換算額が小さくなります。良品計画の26年8月期第3四半期累計では、海外売上高が全体の約43.4%を占めました。国内の輸入仕入れだけを見れば、この規模の海外事業に生じる逆方向の影響を落としてしまいます。
また、輸入原価が下がっても物流費や人件費が増えれば、営業利益は伸びません。神戸物産では足元の輸送費など、食品メーカーでは製造費も確認対象です。国内の原価率と海外の現地通貨利益を別々に見てから、全社利益へ足し合わせると、為替の追い風を過大評価せずに済みます。
増益への期待が先に株価へ織り込まれる場合がある
利益改善を期待して株価が先に上がると、好決算でも材料出尽くしで下落する場合があります。予想PERは株価を会社予想EPS(1株利益)で割った倍率で、将来利益に対する評価を比べる入口です。倍率の低さだけで選ばず、その利益予想が実現しそうかを先に考えます。
下表は2026年10月5日終値で計算しました。ニチレイは変則決算、JALは種類株への配当控除を考慮する必要があるため、PERの単純比較から外しています。良品計画も次期予想ではなく、終了済み年度の公表予想です。同じ表の数値でも、予想期間や算出条件が違うまま順位を付けません。
| 銘柄 | 株価(円) | 予想EPS(円) | 予想PER(倍) | 予想年間配当(円) | 予想利回り | 比較上の注意 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| ニトリHD | 3,121 | 161.05 | 19.38 | 32 | 1.03% | 27年3月期会社予想 |
| セリア | 4,470 | 245.72 | 18.19 | 80 | 1.79% | 27年3月期会社予想 |
| 良品計画 | 4,312 | 126.19 | 34.17 | 32 | 0.74% | 26年8月期の7月時点予想。次期計画未発表 |
| 神戸物産 | 2,953 | 133.24 | 22.16 | 32 | 1.08% | 26年10月期予想。9月末の自社株買いを独自にEPSへ加算しない |
| ニチレイ | 2,096 | 81.40 | 比較対象外 | 50 | 2.39% | 26年12月期:国内9カ月・海外12カ月の変則予想 |
| 日清食品HD | 2,850 | 159~167 | 17.07~17.92 | 70 | 2.46% | 27年3月期会社予想はレンジ表示 |
| JAL | 3,011 | 掲載省略 | 比較対象外 | 96 | 3.19% | 27年3月期予想。種類株配当の控除が必要なため普通株EPSを独自算出しない |
| ANAHD | 2,932 | 209.26 | 14.01 | 60 | 2.05% | 27年3月期会社予想EPSを使用 |
注目の円高メリット銘柄8選|小売・食品・航空で恩恵を比較

輸入費用への経路を確認でき、2026年10月6日時点の公表決算で比較できる8社を選びました。小売のニトリ、食品の神戸物産、航空のANAHDを詳しく取り上げ、他の5社を一覧にします。恩恵の大きさや推奨順位を示す並びではありません。
ニトリHD(9843)|仕入為替と在庫為替を分けて利益への反映を追う
家具・生活用品を展開するニトリHDは、為替の効果を開示資料で追いやすい候補です。27年3月期第1四半期の営業利益は365.45億円で、前年同期比1.1%減でした。税引前利益の増減説明では、仕入為替が45億円の減益要因、在庫為替が33億円の増益要因になっています。
両要因の差は12億円のマイナスです。この内訳は税引前利益の説明であり、営業利益への影響額と混同しないようにします。今後は仕入為替の悪化が弱まり、安く調達した在庫が販売へ回るかを確認します。既存店の販売減や値下げ処分が続くなら、為替だけで利益回復を見込むのは難しいでしょう。


神戸物産(3038)|輸入コストだけでなく物流費と営業利益を確認
業務スーパー向けの商品供給を担う神戸物産は、26年10月期第3四半期累計の営業利益が313.16億円となり、前年同期比3.2%増えました。一方、直近の2026年5〜7月だけでは102.79億円、同8.7%減です。累計増益の陰で足元の採算が悪化している点を先に押さえたい銘柄です。
物流費や買収関連費用の負担があり、円高による仕入改善がそのまま営業増益に変わるとは限りません。次に確認する数字は、四半期単独の粗利益と販売管理費です。為替予約の評価損益は営業外の項目として分け、輸入食品を売って残る利益が戻るかを判断します。個別分析では、この直近減益をさらに分解しています。

[関連]神戸物産の株価は今後どうなる?直近減益と通期達成に必要な22.5%増益を分析
ANAHD(9202)|燃油費・ヘッジ・外貨収入を合わせて見る
ANAHDの27年3月期第1四半期営業利益は207.82億円で、前年同期比43.5%減でした。燃油費などの負担に加え、日本貨物航空(NCA)の新規連結で事業範囲も変わっています。前年との増減を為替だけで説明せず、既存事業と新たな連結対象を分けて確認する必要があります。
国内線燃油は3年前からヘッジ取引を始め、国際線燃油は主にサーチャージで変動を吸収する方針です。ヘッジは価格変動を抑える取引を指し、外貨の収支不足にも為替ヘッジを行います。円高時は燃油費だけでなく外貨収入も変わるため、旅客・貨物収入を含めた採算改善を購入の条件にします。


その他の円高メリット関連注目銘柄
その他の円高メリット銘柄一覧では、事業概要に加え、利益の種類と次に確認する数字をそろえました。セリアは仕入先や商品構成、良品計画は海外展開、食品2社は事業別の採算、JALは燃油と収入の両面を比べます。表の増益率だけで円高の恩恵が大きい順に並べないでください。
ニチレイは国内と海外の決算期間が異なるため、期間を調整した部門比較を使います。日清食品HDの既存事業コア営業利益は新規事業などを除く独自指標で、通常の営業利益と同一ではありません。JALのEBITも金利・税金調整前の利益です。下の引用図版は、こうした比較条件を確かめるためのものです。
| 銘柄名(コード) | 市場 | 企業概要 | 最新業績 | 円高の恩恵と相殺要因 | 次回確認項目 |
|---|---|---|---|---|---|
| セリア(2782) | 東証スタンダード | 100円ショップを展開。輸入商品も国内で販売 | 27年3月期1Q営業利益61.63億円、前年同期比48.7%増 | 仕入原価率58.2%へ低下。ただし低原価商品の構成比も影響 | 仕入原価率、既存店客数、取引条件 |
| 良品計画(7453) | 東証プライム | 無印良品を国内外で展開 | 26年8月期3Q累計営業利益808.22億円、前年同期比36.0%増 | 国内調達費には追い風。海外営業利益には為替が11億円の増益寄与だったため、円高反転時の逆風も確認 | 国内粗利益率と海外の現地通貨利益 |
| ニチレイ(2871) | 東証プライム | 食品製造・調達と低温物流を展開 | 26年12月期1Qは比較期間調整後で食品利益40%減、低温物流利益1%増 | 食品の輸入原料と製造費、海外通貨を分解。物流まで一括して円高効果としない | 同じ期間での食品・低温物流の部門利益 |
| 日清食品HD(2897) | 東証プライム | 即席麺などを国内外で製造・販売 | 27年3月期1Qの既存事業コア営業利益197億円。為替一定なら187億円 | 国内原材料費の低下と海外利益の円換算減が併存し得る | 国内原価と、為替一定で比較した海外利益 |
| JAL(9201) | 東証プライム | 国内・国際旅客と貨物輸送を展開 | 27年3月期1QのEBIT127.03億円、前年同期比72.1%減 | 燃油費1,488億円、前年同期比58.4%増。円高でも原油高や外貨収入減が相殺し得る | 燃油費、ヘッジ、国際線収入、EBIT |
円高メリット銘柄の将来展望|為替の追い風が利益に残る企業を選ぶ

今後の銘柄選びでは、為替の方向を当てるより、原価が下がった後に利益を残せる企業かを確かめます。次の決算での確認項目を決めたうえで、円高が続く場合と円安へ戻る場合に、購入理由が保たれるかを考えます。
次の決算では原価率・販売数量・会社計画の変化を追う
次の決算では、前四半期から原価率が改善したかを確認し、販売数量や客数の変化を重ねます。原価率が下がっていても、客数減少で売上が縮めば全社利益は増えにくいためです。為替の改善、売れ行き、通期計画の修正が同じ方向かを、監視候補ごとに記録しておきます。
小売では年末商戦などの販売期にも注意が必要です。為替とは別に販売量が動くため、月次の既存店売上と粗利益率を組み合わせて読みます。セリアの仕入原価率が低下しても、商品構成の変化による改善なら円高の成果とは区別します。増益の理由を分けるのは、次の四半期にも続く効果かを判断するためです。
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円高が続く場合は価格競争への還元と利益率改善を比べる
円高が続いて調達費用が下がると、企業は利益率の改善に回すか、値下げや販促で顧客へ還元するかを選べます。値下げで利益率が横ばいでも、客数や販売数量が伸びれば利益額の増加は可能です。利益率だけを見て円高の恩恵がなかったと決めないようにします。
ニトリや業務スーパーでは、価格面の競争力と販売増がつながるかを確認したいところです。一方、競合も同時に値下げすれば、数量を増やせず利幅だけが薄くなる恐れがあります。円高メリット株の中でも、調達網や商品力で顧客を増やせる会社を優先する、という選び方が有効だと考えます。
円安へ戻る場合は会社計画の想定為替と原価負担を確かめる
円高が反転した場合は、会社が計画で置く想定為替に対して、実際の調達レートがどれほど悪化するかを確認します。予約済みの支払いには影響が出にくい一方、未予約分には費用増が及ぶ可能性があります。会社予想をそのまま保てるかは、相場の水準だけでなく未予約の期間と金額次第です。
海外利益の円換算増が支えになる良品計画や日清食品HDと、国内販売中心の企業では反転時の姿も違います。航空会社なら原油価格や外貨収入の変化を加えます。購入前に「この数字が悪化したら見直す」と原価率や利益計画の条件を決めておく方が、円高というテーマだけで保有し続けるより合理的です。
まとめ|円高メリット銘柄は利益への反映時期と相殺要因で選ぶ

円高メリット銘柄は、輸入費用が下がる経路に加え、効果が利益へ出る時期と相殺要因で選びます。まずはニトリ、神戸物産、ANAHDの違いから、追いやすい事業を絞るとよいでしょう。
その他の5社も、海外利益や決算期間の違いまで比較して候補に加えます。過去に円高で上がった実績は、将来の値上がりを約束しません。
銘柄を選んだ後は、次の決算で確認する原価率・売れ行き・利益計画を決めます。為替の追い風が実際の利益に変わるかを追い、株価が先に期待を織り込んでいないかも確かめましょう。

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執筆者情報
日本投資機構株式会社 証券アナリスト(CMA) テクニカルアナリスト(CMTA®)
総合鉄鋼メーカーに勤務していた経験を活かした、鉄鋼・自動車市場の分析及び情報収集を得意とし、データの集計・分析に基づいた統計学により銘柄の選定を行う希少なデータアナリスト。AIに関する資格も有しておりデータサイエンティストとしても活躍の場を拡げている。

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